勇者の旅立ち?

とうちゃん

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第2話 聖女と賢者は剣姫の手紙を読んだ。

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「ロワンドが来るの?」

カリーナから届いた手紙を途中まで読んだ私は思わず歓喜の舞を教皇の執務室で踊る。
いつもは感情を抑えて過ごしている私だが嬉しい物は嬉しい。

聖女として魔王討伐の為ロワンドと共に過ごした5年。
苦しい事もあったけどロワンドが居たから頑張れたのは間違いない。

私がハンブルグ聖国の王族でなかったら絶対にロワンドを落としてしたのに。
先にロワンドのアバズレ(アントネット)と婚約を発表されては王族の私はどうする事も出来なかった。(国家間の争いになりかねない)

思い出すだけで頭に血が昇る。
お陰で私は未だに1人者だ。

「さて続きを」

椅子に座り直して先を進める。
手紙の内容は私の想像を越えた展開を見せていた。

あの純情可憐なロワンド様を騙し、ハンブルグ聖教会が支払っていた魔王討伐の報奨金どころか魔物退治の報酬まで取り上げていたなんて。

「ハリス」

手紙を読み終えた私は部下を呼ぶ。
やがて扉が開き黒い神父服キャソックに身を包んだ人間が現れた。
長い黒髪を無造作に束ねている。

「お呼びですか、姉さん」

「こら、教皇様と言いなさい」

「はい、教皇様」

美しい顔に優しい笑みを浮かべるハリス。
小柄で童顔な私と全然似ていないが仕方がない。
聖女はその体が小柄で無垢である事が条件だったんだから。(多分)

決してロワンドのお嫁さんになりたいとか、並んだらお似合いだとか、初めての人はロワンドが良かって訳じゃないもん。

「教皇様?」

あ、いけない!すっかり妄想してたわ。

「バンサロン王国への送金を全て取り止めなさい」

「...宜しいのですか」

ハリスは笑みを消し真剣な表情に変わる。

「構いません、ロワンドの手に全く渡って無かったばかりか彼に酷い仕打ちを...」

駄目だ、手紙の内容にまた涙が。

「分かりました、しかし王国と一戦交えなくては。
姉さ...教皇様はロワンド様やカリーナ殿と殺り合えますか?」

あ、その事ね。

「大丈夫、ロワンド達は王国を見捨てたから」

「なんと!」

「それで2人はハンブルグ聖国に亡命したいって」

「ほう、ならば此方は負けどころか損害すら出ませんな」

「ええ」

当たり前だ、愛する(しまった言っちゃった!)ロワンドと戦えるもんか。
親友であるカリーナと殺り合うのもごめんだ。
カリーナときたらロワンドの事になると見境が無くなるから魔王討伐の時も大変だった。

かすり傷のロワンドに『ケリー、早くハイヒールを施せ』って。

手足が吹っ飛ぶ程の重傷に使うハイヒールをかすり傷に使えとは無茶だ。

まあ使ったけどね。

「手紙見ていいですか?」

ハリスが珍しく希望を言った。
姉である私には気持ちが痛い程分かる。

「どうぞ」

「ありがとう」

手紙を読み進めるハリス。
その目に怒りが滲む。
やはりロワンドのされた仕打ちが許せないのだろう。

「む?」

ハリスが手紙の最後に目を止めた。
何だろう見落としたかな?

「どうしたの?」

「負けませんよ」

ハリスは手紙の最後に書かれた文字を指差した。
そこには、

[カナモノタワシワドロン?]

そう書かれていた。

「意味わかんないよね」

「アナグラムです」

「アナグラム?」

言葉を入れ替えるのか。

「あ!」

解読を終え思わず叫んだ。

[ロワンド ワタシノモノカナ?]

「カリーナ殿、やりますね」

「ええ」

不敵に笑うハリス。
髪を束ねた紐を解き、妖艶な笑みを浮かべた。

彼は...いや彼女は賢者ハリス。
男と偽り魔王討伐に参加した私の妹。
そして彼女もロワンドを愛してる。

「負けないわよ」

凄まじい色気のハリス、だが5年間最後まで女と気づかなかったロワンドに色気が通じるか不安も感じる私だった。
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