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肆 魔女と聖騎士の二人生活
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◆
最後の客の対応を終えて店を閉めながらルーナがラスに言った。
「ラスさん、今日は買い出しに行きたいです」
「あぁ、分かった」
魔法薬のラベルと睨めっこしながら商品棚に並べていたラスが振り返って答えた。
ルーナ達が呪われて10日目。二人が呪われているため、解呪するまでは共同生活を強いられているという事情は、今では殆どの冒険者達が知っていた。
ルーナに想いを寄せる多くの男冒険者達は、初めこそ嫉妬したが相手があのラスだと知り安堵した。
あの筋金入りの女嫌いなら、同じ屋根の下とは言え二人の間に何かが起こる事はありえないだろう…と。
ルーナ達が街へ繰り出すと、今では注目される事も減ってきた。始めの数日は皆に注目されて居心地悪かったけれど、今ではこれまでのような日常を取り戻した気分だ。
『何を買うんだ?』
「えぇと…魔法薬の材料を幾つか…それに日常品も少し買い足した方がいいかな」
普段無口なラスは、今では心の声でよくルーナと会話していた。彼はどうやら、それがとても楽らしい。
ルーナも今ではすっかりそれに慣れており、何の違和感もなく返事を返す。
側から見れば、一言も口を開かずに黙っているラスと独り言を呟くルーナの出来上がりだ。二人の間にはひとつも親しさなんてものは見えず、だからこそ周りは余計に安心するのだ。
「あっ、そうだ。ラスさんも何か買いたい物はある?」
ルーナが尋ねると、ラスは静かに頷く。その様子は素っ気なく、それを目の当たりにしたラスに想いを寄せている女冒険者達は嫉妬に満ちた瞳でルーナを嘲笑っていた。
『食料がそろそろ尽きるから、明日のために買い足す必要があるな』
周りには聞こえないラスの心の声を聞いて、ルーナはさっそく明日からの食事が楽しみになり思わず笑みを浮かべる。
(ラスさんの作るご飯って美味しいんだよね)
初めて一緒に朝食を食べた時から、流れで食事の担当はラスになった。彼はあの日言った通りに、ルーナの食事を自らが準備するようになったのだ。
無表情のラスに、ニコニコと笑いかけるルーナの姿を見て女冒険者達は気に入らなさそうに顔を歪めていた。
「愛想を振り撒いたって、ラス様に相手されるわけないって」
「ね。ラス様は、普段あの子の周りにいる男達とは違うんだから!」
ルーナはすぐに笑顔を引き締めて、呆れたように笑った。その言葉がラスにも聞こえていたらしい。彼は鋭い瞳でその女冒険者達を睨み付けた。
『何だあの女達は…煩わしいな』
「ねぇ、今ラス様が私達の事を見てない!?」
「本当!? きゃあ、本当だわ!」
ラスの視線を勘違いしてはしゃぐ彼女達に、ラスの機嫌はますます悪くなっていく。
「……あ! あんな所に呪物屋が! ラスさん、あの店に入るよ!」
不穏な空気を漂わせ始めるラスの腕を強引に引いて、ルーナは無理やり適当な店内に入るのだった。
ルーナがこれまでにラスから救った女冒険者達は何人になるだろう?
彼女達がルーナの悪口を言うたびにラスが怒るので、何故か中傷されたルーナが大事にならないようこうしてラスの意識を逸らしたり彼女達を庇ったりしている。
(何してるんだ、私……)
最近、それも少し馬鹿らしくなってきたのだった。
必要なものをある程度買い終えたルーナ達は、何となくまだ店を見回っていた。
途中、宝飾店の前を通りかかった時、ルーナはふとウィンドウに飾られた装飾品達に目がいった。
ルーナは装飾品にあまり興味がない。だから彼女は身を飾る物なんてひとつも持っていなかった。
『欲しいのか?』
「え?」
ラスの心の声に話しかけられて、ルーナは顔を上げる。
ルーナ自身も、なぜ今自分はこの宝飾店の前で足を止めたのか分からなかった。
『お前も着飾れば…』
「正直、あんまり興味ないかな」
ラスの言葉を遮るように、ルーナは答えた。
「だって、宝石が何の薬の材料になるっていうの?」
そして平然とした表情でルーナは問い返す。ラスはそんな彼女を見て、少し驚いたようだった。
『女性は皆、宝石や装飾品が好きなんだと思ってた』
「普通の女の子ならね」
ルーナはニヤリと笑う。
「私は魔女だよ?」
そう言ってから、宝飾店の向かいの店を指差す。そこは魔薬材料屋だった。
「私の胸をときめかすのは、いつだって高級材料ちゃんだよ!」
ルーナは笑って、最後のお目当ての店に向かうのだった。
最後の客の対応を終えて店を閉めながらルーナがラスに言った。
「ラスさん、今日は買い出しに行きたいです」
「あぁ、分かった」
魔法薬のラベルと睨めっこしながら商品棚に並べていたラスが振り返って答えた。
ルーナ達が呪われて10日目。二人が呪われているため、解呪するまでは共同生活を強いられているという事情は、今では殆どの冒険者達が知っていた。
ルーナに想いを寄せる多くの男冒険者達は、初めこそ嫉妬したが相手があのラスだと知り安堵した。
あの筋金入りの女嫌いなら、同じ屋根の下とは言え二人の間に何かが起こる事はありえないだろう…と。
ルーナ達が街へ繰り出すと、今では注目される事も減ってきた。始めの数日は皆に注目されて居心地悪かったけれど、今ではこれまでのような日常を取り戻した気分だ。
『何を買うんだ?』
「えぇと…魔法薬の材料を幾つか…それに日常品も少し買い足した方がいいかな」
普段無口なラスは、今では心の声でよくルーナと会話していた。彼はどうやら、それがとても楽らしい。
ルーナも今ではすっかりそれに慣れており、何の違和感もなく返事を返す。
側から見れば、一言も口を開かずに黙っているラスと独り言を呟くルーナの出来上がりだ。二人の間にはひとつも親しさなんてものは見えず、だからこそ周りは余計に安心するのだ。
「あっ、そうだ。ラスさんも何か買いたい物はある?」
ルーナが尋ねると、ラスは静かに頷く。その様子は素っ気なく、それを目の当たりにしたラスに想いを寄せている女冒険者達は嫉妬に満ちた瞳でルーナを嘲笑っていた。
『食料がそろそろ尽きるから、明日のために買い足す必要があるな』
周りには聞こえないラスの心の声を聞いて、ルーナはさっそく明日からの食事が楽しみになり思わず笑みを浮かべる。
(ラスさんの作るご飯って美味しいんだよね)
初めて一緒に朝食を食べた時から、流れで食事の担当はラスになった。彼はあの日言った通りに、ルーナの食事を自らが準備するようになったのだ。
無表情のラスに、ニコニコと笑いかけるルーナの姿を見て女冒険者達は気に入らなさそうに顔を歪めていた。
「愛想を振り撒いたって、ラス様に相手されるわけないって」
「ね。ラス様は、普段あの子の周りにいる男達とは違うんだから!」
ルーナはすぐに笑顔を引き締めて、呆れたように笑った。その言葉がラスにも聞こえていたらしい。彼は鋭い瞳でその女冒険者達を睨み付けた。
『何だあの女達は…煩わしいな』
「ねぇ、今ラス様が私達の事を見てない!?」
「本当!? きゃあ、本当だわ!」
ラスの視線を勘違いしてはしゃぐ彼女達に、ラスの機嫌はますます悪くなっていく。
「……あ! あんな所に呪物屋が! ラスさん、あの店に入るよ!」
不穏な空気を漂わせ始めるラスの腕を強引に引いて、ルーナは無理やり適当な店内に入るのだった。
ルーナがこれまでにラスから救った女冒険者達は何人になるだろう?
彼女達がルーナの悪口を言うたびにラスが怒るので、何故か中傷されたルーナが大事にならないようこうしてラスの意識を逸らしたり彼女達を庇ったりしている。
(何してるんだ、私……)
最近、それも少し馬鹿らしくなってきたのだった。
必要なものをある程度買い終えたルーナ達は、何となくまだ店を見回っていた。
途中、宝飾店の前を通りかかった時、ルーナはふとウィンドウに飾られた装飾品達に目がいった。
ルーナは装飾品にあまり興味がない。だから彼女は身を飾る物なんてひとつも持っていなかった。
『欲しいのか?』
「え?」
ラスの心の声に話しかけられて、ルーナは顔を上げる。
ルーナ自身も、なぜ今自分はこの宝飾店の前で足を止めたのか分からなかった。
『お前も着飾れば…』
「正直、あんまり興味ないかな」
ラスの言葉を遮るように、ルーナは答えた。
「だって、宝石が何の薬の材料になるっていうの?」
そして平然とした表情でルーナは問い返す。ラスはそんな彼女を見て、少し驚いたようだった。
『女性は皆、宝石や装飾品が好きなんだと思ってた』
「普通の女の子ならね」
ルーナはニヤリと笑う。
「私は魔女だよ?」
そう言ってから、宝飾店の向かいの店を指差す。そこは魔薬材料屋だった。
「私の胸をときめかすのは、いつだって高級材料ちゃんだよ!」
ルーナは笑って、最後のお目当ての店に向かうのだった。
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