魔女と聖騎士 〜女嫌いで有名な聖騎士に呪いをかけたら、むっつりスケベな本性を暴いてしまった〜

香咲りら

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肆 魔女と聖騎士の二人生活

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 そこに、二人に声を掛けてくる者がいた。その人とはシスター・クレアでルーナ達が振り返ると彼女は親し気な笑みを浮かべて近付いてきた。

「奇遇ですね、お会いするなんて」

 どうやらクレアも買い出しに来ているようで、彼女は両手に袋を抱えていた。

 ふと、クレアの目にユニコーンの角が止まる。

「まぁ、綺麗な色ですね」
「ユニコーンの角らしい」

 クレアの言葉にルーナが答える前にラスが反応した。ルーナは驚いてラスを見る。

(ラスさんから女性に話しかけるなんて…)

 別に悪いことでも何でもないけれど、自分以外の女性と言葉を交わすラスの姿が珍しくて驚いてしまう。

 しかし、そんなルーナの目にクレアの胸元で輝くペリドットの宝石が埋め込まれたブローチが入った。

 ルーナはそれを見て、すぐに思う。

(うわぁ、クレアさんの瞳と同じ色の宝石だ…)

 誰かからのプレゼントだろうか? そうじゃなければ、こんなに彼女の瞳に似た宝石を探す筈がないから。

 ルーナの視線にすぐに気付いたクレアは嬉しそうに微笑みながら言うのだ。

「このブローチ、ラスがプレゼントしてくれたブローチなんです……」

 その言葉を聞いたルーナは、何故かドキリと心臓が大きく跳ねた。

「そ……そうなんですか…」

 ルーナがチラリとラスを見れば、彼は懐かしそうな目でそのブローチを見つめている。

『あのブローチは……俺が冒険者の仕事で稼いだ金で初めて買ったプレゼント…』

 ラスの心の声から、そのブローチは確かにラスがクレアに贈ったものらしい。

(宝石が埋め込まれた…綺麗な、装飾品……)

 その瞬間、胸に抱くユニコーンの角が何故か霞んで見えた。さっきまであんなに、輝いて見えたのに、あんなに嬉しい気持ちだったのに…

 今、ルーナの心を埋め尽くしているのは、暗い気持ちだ。

 確かに嬉しい筈なのに、どうして今はこんなにも嬉しくないのだろう……

(ラスさんって、女性にプレゼントするんだ…)

 『女嫌い』が聞いて呆れる。全然、そんな事ないじゃないか。

(私以外にも、親しい女性は他にもいるんだ…)

 いや、果たして自分は『親しい女性』の中に入るのか? 二人を繋ぐのは呪いで、それも期間限定の間柄。

 そもそも呪われる前は必要最低限の会話しかした事のない、ただの店主と客の関係でしかなかったのだ。

 ラスの『親しい女性』はたった一人、シスター・クレアだけなのではないか。だって、彼女は呪いなんて関係なくラスからプレゼントを贈られるほどの関係なのだから。

 それに…

(宝石のブローチと魔法薬の材料って…全然違う。比べるまでもないよね…)

 何となく、ユニコーンの角を贈られて大喜びしていた自分が恥ずかしくなった。

(別にいいし。関係ないし。ラスさんとはあと一週間もすれば元の関係に戻るだけだし……別に、彼が他の女性に宝石を贈っていようが、悔しくなんてない!)

「今でも覚えてるわ。貴方、このブローチを私に贈ってくれた時、すごく照れちゃって…ふふ」
「おい、やめろよ…」

 ラスとクレアは楽しそうに会話していた。ルーナはまるで自分の知らない二人の思い出話に耳を傾けて、ひたすらぎこちない笑顔を浮かべて頷いていたのだった。



 夜、食事を終えたルーナはすぐに自分の寝室へと引きこもった。

 昼間はあんなに楽しそうに買い物をしていたのに、帰宅してからというもの、ルーナはいつも通りに笑っているがどこか元気が無いようだとラスは思っていた。

「ルーナ?」

 寝室の扉がノックされて、ラスが声を掛けてきた。ルーナは少し前からラスが部屋の前に立っていた事を知っていた。彼は暫く扉の前に立ち、ルーナの様子に異変がある事を気にしている心の声が聞こえていたからだ。

「少し話したいんだが…」

 ルーナは一度深呼吸をすると、いつも通りの愛想笑いを浮かべて部屋の扉を開いた。

「どうしたの、ラスさん?」

 一見、いつもと変わらないように見えるルーナの笑顔…でも、ラスはもう彼女の心からの笑顔を知ってしまったから、その笑顔は無理に作られたものだとすぐに分かった。

『…ルーナ、不機嫌なのか? どうしてだ…?』

 理由が思い当たらないと悩むラスに、ルーナはさらに笑って「違うよ、魔法薬の製造レシピの事で頭がいっぱいなだけ!」と明るく答えた。

(ラスさんはただの客、解呪されれば元通りになるだけ…)

 ルーナは自分に何度もそう言い聞かせて、ニコニコとラスに笑いかけていた。

 すると、何故かラスの方が傷付いた表情を浮かべて……ラスは、咄嗟にルーナの小さな体を抱き締めたのだった。
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