短い思想の物語

アサツキ ホシナ

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水溜まり

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雨の日は嫌いだ。

という人がこの世界には多くいると思う。洗濯物は乾かないし、外に遊びに行くこともできない。

しかし、僕は好きだ。面倒くさい行事は中止になるし、なにせ人が町を歩かなくなるから。

人がいなくなった雨の日の夜に傘もささずに歩く。それが僕の日常となっている。

どうせ引きこもりの僕にとっては、風邪をひくとか、服が臭くなるととかどうでもいい話だ。

雨の中、何も考えずに歩く。ただ茫然と歩く。頭を真っ白にして歩く。

そうすることで、シャワーのように心の中が雨によって洗われる感覚になる。

帰ってきて、ずぶ濡れになった僕は、流石に本物のシャワーを浴びてから寝ることにする。

次の日も雨だったらいいのにと願いながら。




願いは届かず、晴れの朝が来る。




「雨」という「暗い象徴」は「晴れ」という「明るい象徴」に塗り替えられる。

しかし、前日が雨だった晴れた日の朝には必ず「水溜まり」が存在する。

その「水溜まり」が僕を嬉しい気分にしてくれる。


「明るい象徴」の中で、「暗い象徴」が存在している。

そうすると、ちょった勝った気がする。


真っ白な紙にちょっとだけ黒いインクをかけるような、障子の一枠を破くような、そんな子供みたいな楽しさを彷彿とさせる。

晴れに負けた、雨の最後の強がりを見せつけてくれる。それが嬉しい。




夜にまた雨が降った。「今日はちょっと遠くまで行ってみよう。」そう思って、夜の山を歩き出す。

山頂にまで登った時、拓けた道に出たところで、雨が晴れた。




雲の隙間から満月の光が漏れ、周りを照らし出す。


月光が大きな「水溜まり」を照らした。

水溜まりは光り輝き、その水溜まりには、綺麗な満月の光が反射していた。





「僕もいつか水溜まりの中で輝けるだろうか。」

そんなことを考えさせられた。




その日から、雨の日は好き、そして、晴れの日は「嫌いじゃない」

そう思える日が来るのを待っっている。



ずっと待っている。


また今日も、雨の中を歩きだす。
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