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第一部
第35話:黒田、勉強会の人数を増やす
昼ごはんを食べ終えた後、ポーラに片付けを任せて、アルヴィと一緒に屋上を後にする。
推しと一緒に教室に戻るなんて、これが幸せというやつで間違いないわね。背中に羽が生えたように軽いのに、ゆっくり歩きたくて足が重いという謎の現象が起きているんだもの。
アルヴィが私の歩くペースに合わせてくれているし、とても紳士的だわ。これは完全に役得ね。
そんなことを思いながら廊下を歩き進めていくと、本物の青春を見せびらかそうとする二人組が歩いてくる。
仲睦まじそうに会話するジグリッド王子とルビアだ。
まずい。ルビアが二人同時に攻略している弊害が出てしまった。いくら優しいアルヴィでも、好きな女性が他の男と仲良くする姿を見せられたら、良い思いをするはずが――。
「お似合いですよね。ジグリッド王子とルビア様」
あるの!? ……いえ、そんなはずはないわ。とても温かい眼差しを送っているけれど、アルヴィが好きなのはルビアだもの。
きっと深い意味があるはずよ。
「クロエ様。もしよろしければ、ジグリッド王子も勉強会にお誘いしませんか?」
どういうことかしら。アルヴィの目的は何? 目の前でカップルみたいなルビアがいるのに、あえてライバルにチャンスを与えるとでもいうの!?
実はクロエのことが好き、なーんてオチがあるはずはないし……ま、まさか!
「私は構わないわ。四人で勉強したら、マンツーマンになれそうだものね」
「そ、そうですね」
やっぱりそうだったのね。アルヴィの狙いがわかったわ。
ジグリッド王子の前でルビアとイチャイチャすることで、恋の宣戦布告をしようとしているのよ! 温かい眼差しとは裏腹に、心は嫉妬で燃え滾っているんだわ!
いくら同級生とはいえ、ジグリッド王子と勉強会をすることになれば、公爵家の長女である私が対応しなければならない。よって、三人で勉強会を開くよりも、ルビアと二人きりになれるチャンスが生まれる。
この短時間でそこまで考えられるなんて、さすが宰相の息子ね。素晴らしい発想だわ。
逆ハールートを通ってほしい私としては、二人が争わないでほしいのだけれど、放っておいて衝突するよりはマシよ。
何より、草食系のアルヴィの決意を無駄にはできない。だって、私の推しなんだもの!
ルビアとのマンツーマンを妄想して、早くも顔が赤くなったであろうアルヴィと一緒に、二人の方へ近づいていく。
「ジグリッド王子、ルビア。今度の休日にアルヴィ様とテスト勉強をしようと思うのだけれど、一緒にどうかしら?」
「俺は構わない」
「私も大丈夫だよ」
「決まりね。苦手なところがあれば、リストアップしておいてもらえると助かるわ。ある程度のことは教えられると思うの」
当然、攻略対象が二人も同時となれば、私は当て馬作戦を決行する。
才女らしいクロエを見せつける良い機会であり、勉強が苦手なルビアが可愛く見えてくるだろう。そのため、私は率先して勉強を教えるつもりだ。
決して、推しに良いところを見せたいなどという黒田の願望が混じっているわけではない。ジグリッド王子とマンツーマンで役得だわ、などとも考えていない。
すべては逆ハールートのためであり、その副産物でちょっとだけ良い思いをするだけである。
「驚いたな。クロエ嬢はそれほど勉学に自信があるのかい?」
「一回授業を聞けば、だいたい頭に入るわ」
私が堂々とした態度で言い放つと、ジグリッド王子の好感度が下がったのは間違いない。険しい表情を向けられた後、目線を逸らされてしまった。
「そんなことを言ってみたいな。俺、王族である以上は不甲斐ない成績を残せないから、必死で勉強しているんだが」
どうりで目の下にクマがあると思ったわ。
王族のプレッシャーに耐えながら、毎日勉強を頑張っているのね。騎士団との訓練もあると思うし、民のために努力する素敵な王子様だわ。
原作では、ジグリッド王子は常に成績が学年トップだったのに、弱音を見せてはくれなかったから、必要以上に胸が高鳴ってしまう。
まさか陰でそんな努力をしていたなんて。いま思えば、テスト期間中はジグリッド王子のイベントがなかったのも、寮にこもって勉強ばかりしていた影響なのかもしれない。
精神が病まないか心配だわ……。私がちゃんと勉強を教えてあげないと。
「お姉ちゃん。私、全部苦手……」
ルビアがすべての科目で平均点しか取れないことは、よく知っているわ。真面目に授業を聞いていないことが発覚したばかりだし、ちゃんと教えないとまずいわね。
でも、略奪愛システムの影響により、ジグリッド王子とアルヴィの好感度は上がるはずよ。私が勉強を教えてあげれば、男性陣の好感度も学園の成績も上がって、一石二鳥ね。
「僕は計算問題なら得意ですが、文系の問題が苦手ですね」
あら、アルヴィも真面目に勉強する気があったのね。てっきりルビアとの恋の方程式を解きたいだけかと思っていたわ。
そういうことなら、アルヴィにも勉強を教えてもいいのだけれど……。
「みんな勉強が嫌いなのね。意外だわ」
貴族は小さい頃から勉強しているイメージだったので、もっと勉強が生活の一部になっていると、私は勝手に思いこんでいた。
黒田の記憶が蘇る前まで、クロエは難しい本を夜更かししてまで読んでいたし、実家で真面目に勉強していた記憶がある。だから、この世界の人は勉強が好きなのかなと思っていたのだけれど、どうやら違うみたいだ。
「ルビア嬢……。公爵家の長女なら、クロエ嬢もかなり厳しい教育を受けていると思うんだが」
「うん、厳しかったよ。私たちは双子だから、教育内容が同じだったもん。お姉ちゃんはいつも涼しい顔で勉強しているなーとは思っていたけど、苦しんでいないとは思わなかったよ……」
「僕にはクロエ様の気持ちが理解できません。勉強が好きな人はこの世にいるのでしょうか」
貴族の教育は相当厳しいのか、三人の心の傷を広げてしまった印象がある。ズズーンッと効果音が出そうなほど、暗い雰囲気になってしまった。
なんか……悪いことをした気分ね、と、さすがに私は反省するのだった。
推しと一緒に教室に戻るなんて、これが幸せというやつで間違いないわね。背中に羽が生えたように軽いのに、ゆっくり歩きたくて足が重いという謎の現象が起きているんだもの。
アルヴィが私の歩くペースに合わせてくれているし、とても紳士的だわ。これは完全に役得ね。
そんなことを思いながら廊下を歩き進めていくと、本物の青春を見せびらかそうとする二人組が歩いてくる。
仲睦まじそうに会話するジグリッド王子とルビアだ。
まずい。ルビアが二人同時に攻略している弊害が出てしまった。いくら優しいアルヴィでも、好きな女性が他の男と仲良くする姿を見せられたら、良い思いをするはずが――。
「お似合いですよね。ジグリッド王子とルビア様」
あるの!? ……いえ、そんなはずはないわ。とても温かい眼差しを送っているけれど、アルヴィが好きなのはルビアだもの。
きっと深い意味があるはずよ。
「クロエ様。もしよろしければ、ジグリッド王子も勉強会にお誘いしませんか?」
どういうことかしら。アルヴィの目的は何? 目の前でカップルみたいなルビアがいるのに、あえてライバルにチャンスを与えるとでもいうの!?
実はクロエのことが好き、なーんてオチがあるはずはないし……ま、まさか!
「私は構わないわ。四人で勉強したら、マンツーマンになれそうだものね」
「そ、そうですね」
やっぱりそうだったのね。アルヴィの狙いがわかったわ。
ジグリッド王子の前でルビアとイチャイチャすることで、恋の宣戦布告をしようとしているのよ! 温かい眼差しとは裏腹に、心は嫉妬で燃え滾っているんだわ!
いくら同級生とはいえ、ジグリッド王子と勉強会をすることになれば、公爵家の長女である私が対応しなければならない。よって、三人で勉強会を開くよりも、ルビアと二人きりになれるチャンスが生まれる。
この短時間でそこまで考えられるなんて、さすが宰相の息子ね。素晴らしい発想だわ。
逆ハールートを通ってほしい私としては、二人が争わないでほしいのだけれど、放っておいて衝突するよりはマシよ。
何より、草食系のアルヴィの決意を無駄にはできない。だって、私の推しなんだもの!
ルビアとのマンツーマンを妄想して、早くも顔が赤くなったであろうアルヴィと一緒に、二人の方へ近づいていく。
「ジグリッド王子、ルビア。今度の休日にアルヴィ様とテスト勉強をしようと思うのだけれど、一緒にどうかしら?」
「俺は構わない」
「私も大丈夫だよ」
「決まりね。苦手なところがあれば、リストアップしておいてもらえると助かるわ。ある程度のことは教えられると思うの」
当然、攻略対象が二人も同時となれば、私は当て馬作戦を決行する。
才女らしいクロエを見せつける良い機会であり、勉強が苦手なルビアが可愛く見えてくるだろう。そのため、私は率先して勉強を教えるつもりだ。
決して、推しに良いところを見せたいなどという黒田の願望が混じっているわけではない。ジグリッド王子とマンツーマンで役得だわ、などとも考えていない。
すべては逆ハールートのためであり、その副産物でちょっとだけ良い思いをするだけである。
「驚いたな。クロエ嬢はそれほど勉学に自信があるのかい?」
「一回授業を聞けば、だいたい頭に入るわ」
私が堂々とした態度で言い放つと、ジグリッド王子の好感度が下がったのは間違いない。険しい表情を向けられた後、目線を逸らされてしまった。
「そんなことを言ってみたいな。俺、王族である以上は不甲斐ない成績を残せないから、必死で勉強しているんだが」
どうりで目の下にクマがあると思ったわ。
王族のプレッシャーに耐えながら、毎日勉強を頑張っているのね。騎士団との訓練もあると思うし、民のために努力する素敵な王子様だわ。
原作では、ジグリッド王子は常に成績が学年トップだったのに、弱音を見せてはくれなかったから、必要以上に胸が高鳴ってしまう。
まさか陰でそんな努力をしていたなんて。いま思えば、テスト期間中はジグリッド王子のイベントがなかったのも、寮にこもって勉強ばかりしていた影響なのかもしれない。
精神が病まないか心配だわ……。私がちゃんと勉強を教えてあげないと。
「お姉ちゃん。私、全部苦手……」
ルビアがすべての科目で平均点しか取れないことは、よく知っているわ。真面目に授業を聞いていないことが発覚したばかりだし、ちゃんと教えないとまずいわね。
でも、略奪愛システムの影響により、ジグリッド王子とアルヴィの好感度は上がるはずよ。私が勉強を教えてあげれば、男性陣の好感度も学園の成績も上がって、一石二鳥ね。
「僕は計算問題なら得意ですが、文系の問題が苦手ですね」
あら、アルヴィも真面目に勉強する気があったのね。てっきりルビアとの恋の方程式を解きたいだけかと思っていたわ。
そういうことなら、アルヴィにも勉強を教えてもいいのだけれど……。
「みんな勉強が嫌いなのね。意外だわ」
貴族は小さい頃から勉強しているイメージだったので、もっと勉強が生活の一部になっていると、私は勝手に思いこんでいた。
黒田の記憶が蘇る前まで、クロエは難しい本を夜更かししてまで読んでいたし、実家で真面目に勉強していた記憶がある。だから、この世界の人は勉強が好きなのかなと思っていたのだけれど、どうやら違うみたいだ。
「ルビア嬢……。公爵家の長女なら、クロエ嬢もかなり厳しい教育を受けていると思うんだが」
「うん、厳しかったよ。私たちは双子だから、教育内容が同じだったもん。お姉ちゃんはいつも涼しい顔で勉強しているなーとは思っていたけど、苦しんでいないとは思わなかったよ……」
「僕にはクロエ様の気持ちが理解できません。勉強が好きな人はこの世にいるのでしょうか」
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