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第一部
第37話:黒田、今日はモンブランが食べたい日
充実した勉強会を過ごした翌日、私は上機嫌のまま学園のテストに挑んだ。
一度もペンを止めることなく、テスト用紙にスラスラ~ッと流れるように答えを書き込み、すべての教科で満点が取れたと自負している。
黒田のケアレスミスがあるかもしれないので、油断はできないが。
そんなこんなでテストが終わった後、いまは勉強会をした四人で集まり、お疲れ様のケーキを食べに来ている。
以前にルビアと来たケーキ屋さん『フクロウの休日』だ。
「はぁ~、やっとテスト期間が終わったわね。やっぱりテストの後は甘いものに限るわ」
特に勉強をしていない私が、なぜか一番充実感に浸っている。
逆にジグリッド王子たちは、テスト期間から解放されて脱力感に襲われていた。
「もう、勉強しなくてもいいんだよな……」
「お姉ちゃんのスパルタ授業、今日は受けなくてもいいんだね……」
「今までの人生で一番勉強しましたね……」
途中でルビアがクレームを入れてきたが、私が学生寮で勉強を教えていただけである。
オタクスイッチが入ってしまい、なかなか覚えないルビアに怒った気もするけれど……、それはごめんね。
ちょっぴり反省していると、店員さんが注文を聞きにやって来た。
「ご注文はいかがいたしましょうか」
「俺はショートケーキとコーヒーにしよう」
「僕も同じもので大丈夫です」
「かしこまりました」
なるほどね。男性陣は無難なショートケーキを選択してきたわ。気持ちはわからないでもないけれど……、今日のケーキはもう決まっているのよ。
「デラックスモンブランとコーヒーにするわ」
「じゃあ、私も同じので」
「かしこまりました」
無性にモンブランが食べたくなる日ってあるのよね。それがたまたま今日なの。
前回のチョコレートマウンテンを基準にすると、かなり期待値が高くなってしまう。いったいどういう工夫をしてくるのか、早くも楽しみで仕方がない。
いい日にケーキを食べに来たわ、などと思い、心の中で早くも黒田がウキウキ状態だ。
「クロエ嬢は……相変わらずだな。スイーツが全般好きだとは思わなかったが」
……どうしてわかったのかしら。ジグリッド王子、まさかエスパーなの?
「お姉ちゃん。不思議そうな顔してるけど、すごい顔に出てたよ」
いけないわ。どうもケーキのことになると、黒田が前面に出てきてしまうのよね。頭をフル回転させたから、糖質を欲しがって仕方がないのよ。
だって、今日はモンブランの気分なんだもの!
まあ、こういうときでもアルヴィなら、私のフォローを――。
「………」
してくれないの? どうして顔を赤くして目を逸らすのかしら。私、そんなに子供っぽい顔だったのかな。
アルヴィがフォローできないほど取り乱していたのであれば、さすがに反省しなければならないわ。
とりあえず、適当に誤魔化すとしよう。
「女の子は甘いものが好きなのよ。貴族でも例外はないわ」
「説得力がある言葉だな。クロエ嬢の笑顔を見たいときは、ケーキを差し入れしようと思う」
つまり、ジグリッド王子がケーキを持って現れたときは、私を求めているというサインなわけね。そんなことがあるはずないと思うけれど、一応覚えておくわ。
破滅エンドだけは絶対に回避しないといけないから。
「まあ、今回はクロエ嬢のおかげで随分と良い思いができたよ。まさかクロエ嬢がテストに出ると言っていた場所が、八割近くも出題されるとは思わなかったんだ。ケーキの一つや二つは差し入れしたいな」
「お姉ちゃん、そういうところあるよね。完全に教師側の視点でテスト勉強してるんだもん」
「僕は心から勉強会をしてよかったと思ったよ。父さんに良い報告ができそうだ」
推しに良い点数を取ってもらおうと思って、やり過ぎたかもしれない。感謝されるのを通り越して、呆れられている気がする。
でも、才女のクロエが勉強を教えたのだから、これくらいでちょうどいいはず。
黒田の社会人経験が生きて、テスト問題に出そうな場所がわかったなんて、口が滑っても言えないけれど。
「ルビアは点数よりも、名前がかけているか心配だわ」
「大丈夫だよ。私もそこまでドジじゃないから。テストも八十点は取れたはずだよ」
「すごいじゃない。六十点いけばいいと思っていたのに」
「えへへ、お姉ちゃんのおかげだけどね」
満面の笑みを浮かべるルビアが持ち前の愛嬌を解き放っていると、コンコンッと部屋がノックされて、店員さんがやってくる。
そう、ケーキの時間の始まりだ!
一度もペンを止めることなく、テスト用紙にスラスラ~ッと流れるように答えを書き込み、すべての教科で満点が取れたと自負している。
黒田のケアレスミスがあるかもしれないので、油断はできないが。
そんなこんなでテストが終わった後、いまは勉強会をした四人で集まり、お疲れ様のケーキを食べに来ている。
以前にルビアと来たケーキ屋さん『フクロウの休日』だ。
「はぁ~、やっとテスト期間が終わったわね。やっぱりテストの後は甘いものに限るわ」
特に勉強をしていない私が、なぜか一番充実感に浸っている。
逆にジグリッド王子たちは、テスト期間から解放されて脱力感に襲われていた。
「もう、勉強しなくてもいいんだよな……」
「お姉ちゃんのスパルタ授業、今日は受けなくてもいいんだね……」
「今までの人生で一番勉強しましたね……」
途中でルビアがクレームを入れてきたが、私が学生寮で勉強を教えていただけである。
オタクスイッチが入ってしまい、なかなか覚えないルビアに怒った気もするけれど……、それはごめんね。
ちょっぴり反省していると、店員さんが注文を聞きにやって来た。
「ご注文はいかがいたしましょうか」
「俺はショートケーキとコーヒーにしよう」
「僕も同じもので大丈夫です」
「かしこまりました」
なるほどね。男性陣は無難なショートケーキを選択してきたわ。気持ちはわからないでもないけれど……、今日のケーキはもう決まっているのよ。
「デラックスモンブランとコーヒーにするわ」
「じゃあ、私も同じので」
「かしこまりました」
無性にモンブランが食べたくなる日ってあるのよね。それがたまたま今日なの。
前回のチョコレートマウンテンを基準にすると、かなり期待値が高くなってしまう。いったいどういう工夫をしてくるのか、早くも楽しみで仕方がない。
いい日にケーキを食べに来たわ、などと思い、心の中で早くも黒田がウキウキ状態だ。
「クロエ嬢は……相変わらずだな。スイーツが全般好きだとは思わなかったが」
……どうしてわかったのかしら。ジグリッド王子、まさかエスパーなの?
「お姉ちゃん。不思議そうな顔してるけど、すごい顔に出てたよ」
いけないわ。どうもケーキのことになると、黒田が前面に出てきてしまうのよね。頭をフル回転させたから、糖質を欲しがって仕方がないのよ。
だって、今日はモンブランの気分なんだもの!
まあ、こういうときでもアルヴィなら、私のフォローを――。
「………」
してくれないの? どうして顔を赤くして目を逸らすのかしら。私、そんなに子供っぽい顔だったのかな。
アルヴィがフォローできないほど取り乱していたのであれば、さすがに反省しなければならないわ。
とりあえず、適当に誤魔化すとしよう。
「女の子は甘いものが好きなのよ。貴族でも例外はないわ」
「説得力がある言葉だな。クロエ嬢の笑顔を見たいときは、ケーキを差し入れしようと思う」
つまり、ジグリッド王子がケーキを持って現れたときは、私を求めているというサインなわけね。そんなことがあるはずないと思うけれど、一応覚えておくわ。
破滅エンドだけは絶対に回避しないといけないから。
「まあ、今回はクロエ嬢のおかげで随分と良い思いができたよ。まさかクロエ嬢がテストに出ると言っていた場所が、八割近くも出題されるとは思わなかったんだ。ケーキの一つや二つは差し入れしたいな」
「お姉ちゃん、そういうところあるよね。完全に教師側の視点でテスト勉強してるんだもん」
「僕は心から勉強会をしてよかったと思ったよ。父さんに良い報告ができそうだ」
推しに良い点数を取ってもらおうと思って、やり過ぎたかもしれない。感謝されるのを通り越して、呆れられている気がする。
でも、才女のクロエが勉強を教えたのだから、これくらいでちょうどいいはず。
黒田の社会人経験が生きて、テスト問題に出そうな場所がわかったなんて、口が滑っても言えないけれど。
「ルビアは点数よりも、名前がかけているか心配だわ」
「大丈夫だよ。私もそこまでドジじゃないから。テストも八十点は取れたはずだよ」
「すごいじゃない。六十点いけばいいと思っていたのに」
「えへへ、お姉ちゃんのおかげだけどね」
満面の笑みを浮かべるルビアが持ち前の愛嬌を解き放っていると、コンコンッと部屋がノックされて、店員さんがやってくる。
そう、ケーキの時間の始まりだ!
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