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第18話:誕生日パーティー1
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連日の緊急会議やメイド業務で慌ただしく過ごすこと、一週間。完璧にメイドとして溶け込んでいる私は、王城で情報収集に励んでいた。
国王様に関する新しい情報はなく、随分と意識が戻っていないらしい。代わりにレオン殿下が書類に目を通して国王代理を務めているため、多忙の日々を過ごしている。
同じ王城にいても姿を見ないので、部屋にこもったまま作業しているのだろう。あまり無理をしていないといいのだけれど。
一方、厳しい王妃教育を受けるグレースは、部屋の模様替えが終わった影響か、最近は妙に機嫌が良い。相変わらず我が儘な一面はあり、ウォルトン家のメイドが振り回される姿を見るが、こっちにとっては好都合だ。
彼女たちが不信感を持つほど、裏切りにくくなる。こればかりはうまくいくことを祈るしかなかった。
可能ならば、メイド姿のまま彼女たちと接触して、どういう状況なのか探りたい。しかし、レオン殿下の誕生日パーティーの準備があり、とてもそんな暇はなかった。
グレースを断罪するその日まで、メイドとして潜入していると隠し通さなければならない。今はまだ我慢の時であり、正念場でもあった。
その影響もあって、最近の私は妙にピリピリしている。表情でシャルロットだと気づかれないように口角を上げる意識をしているが、親友のソフィアには異変に気づかれているだろう。
今もソフィアと一緒に誕生日パーティーで使う備品を洗い場で洗っているのだが、苦笑いを浮かべられていた。
「メイドで潜入しているとバレてないんだし、もっと気を抜いたら? 部屋の中くらいは普通に話してもいいと思うんだよね」
「どこで話を聞かれているかわからないわ。極力、シャルロットの痕跡は残したくないの。周囲が確認できる状況じゃない限り、絶対にシャルとして接して」
「気持ちはわかるけど、気を張りすぎるのも良くないよ。素直に話せる時間は少ないと思うし、少しくらいはボクを頼ってよね」
ソフィアは気遣ってくれるが、正直なところ、すでに色々と甘えさせてもらっている。慣れないメイドの仕事はフォローしてくれるし、近くにいてくれるだけでも気が休まる。
前回のウォルトン家のメイドを誘き寄せるのだって、ソフィアがいてくれなかったら、ルイスの協力は得られなかった。結局、私は助けられっぱなしだ。
「十分に頼ってるつもりよ。ドレスの件だって、ソフィ以外には相談できなかったわ」
ウォルトン家を出し抜くためのパーティードレスをドレス屋に依頼したのだが、私には女の子らしい衣装をお願いするセンスはない。だから、代わりにソフィアにデザインをお願いしたのだ。
絶対に私が着そうにない、派手で大人っぽいドレスをデザインして、と。
他にもローズレイ家のシャルロットとしても動きたいところではあるものの、ドレスを発注するので精一杯だった。必要以上に行動すれば、墓穴を掘ってしまうため、最低限の行動に抑えている。
「あの派手なドレス、本当に頼んだんだ……」
「言わないでよ。人生で一度きりの買い物なの」
「まあ、シャルロットの黒髪には合っていると思うよ」
「複雑な気分になるからやめて。それより、アリバイ工作はお願いね」
「わかってる。ボクとしては、シャルロットに演技力があることを願うばかりかな」
裏の事情を理解してくれるロジリーがいるとはいえ、何もしなければ、メイドのシャルはパーティーの裏方に回されてしまう。
誕生日パーティーにソフィアも呼ばれていることもあり、彼女がメイドの仕事をしているうちに、仮病でシャルが寝込む必要があった。
どのタイミングで行動しようかな……と考えていると、ちょうど洗い場に先輩メイドが一人でやってくる。
大興奮の彼女の姿を見れば、何があったのか大体の想像がつく。
「ねえ、聞いた? シャルロット様が王城での着付けを希望したらしいんだけど、すっごい派手なドレスが運ばれてきたらしいよ」
予想通りの展開になったので、私は話の流れに乗っかる。
「意外ですね。シックなドレスで済ませるとばかり思っていました」
まさか彼女も、派手なドレスを頼んだ本人とデザインした人物に向かって話しているとは思わないだろう。
「ソフィアさんは、シャルロット様と仲が良いんでしょ? 何か聞いてる?」
「えっ、う、ううん。ボクは久しぶりに会うからわからないけど、心境の変化でもあったんじゃないカナー。シャルロットは、たまにそういうとこあるし」
ソフィアの演技力に問題があると、私は強く言いたい。キョロキョロと目が泳ぐ姿は怪しく、眉をクイクイッと上下に動かして謎のサインを送ってくるのは、本当にやめてほしい。
このまま長引かせる方が危険だと判断した私は、急遽予定を変更する。日常会話はやめて、予め立てておいた作戦に移行するため、ソフィアに体を預けるように倒れ込んだ。
「ど、どうしたの、シャルさん。まさか……うわっ、すごい熱!」
すごい棒読みのソフィアは、私のおでこに手を乗せ、すぐに高熱だと判断した。
当然、あくまで仮病なので、ザ・平熱である。よって、今からおでこは誰にも触らせてはならない。
「すいません。少しめまいがしてしまって……」
「こんなに熱が出ていたら、仕事なんてできないよ。これはもう、寮のベッドで休むしかないね!」
今までの努力が水の泡になる気がするので、できる限りソフィアには話してもらいたくない。
「大丈夫? 王城のメイドは大変だし、慣れるまでは体調を崩す子も多いの。無理はしない方がいいよ」
しかし、とても優しくて純粋な先輩メイドは騙されている。彼女の健気な姿には、感謝の思いでいっぱいだ。
「まだ仕事が残っております。王城のベッドに馴染めず、寝不足なのが原因ですし、気にしないでください」
ソフィアの肩を借りて立ち上がった後、少し息を荒くし、ボーッとした様子を見せる。
これだけ優しい人なら、風邪だとアピールするだけでは、世話を焼こうと様子を見に来る可能性が高い。でも、寝不足だと伝えておけば、起こさないようにそっとしておこうと考えるだろう。
ただ、思った以上に先輩メイドが心配してくれていて、不安そうな表情を向けてくる。
「本当に大丈夫? 私、おばあちゃんの介護を手伝った経験があるの。どれくらいの熱が出たら危ないかわかるから、ちょっと触るね」
まさかウォルトン家の手先!? と思えるほどピンポイントに嘘を見破ろうとする彼女が、私のおでこに手を近づけた、その時だ。
「あなたたち、何してるの?」
先輩メイドの手を防ごうとした瞬間、ロジリーが止めに入ってくれたので、無事に難が去った。
あまりロジリーには頼りたくないし、彼女がどれほどの情報を持っているのかわからない。でも、メイド長のロジリーが風邪だと認めてくれると、話がスムーズに進む。
「シャルさんが体調不良みたいなんです。先ほど倒れてしまって」
「そう。少し確認させてもらうわね」
ロジリーにおでこを触られてた瞬間、彼女の目が細くなった。思わず、私が目を逸らしてしまうのも、仕方がないことだろう。
ザ・平熱。異常なしなのだから。
「今日一日ゆっくり休みなさい。レオン殿下の誕生日に多くの方が来客されるの。メイドとして、風邪をうつすことは許されないわ」
セーフ……。仮病の意図まで理解してくれて、的確な休日をくれた。
言いかえれば、レオン殿下の誕生日パーティーに出席するのだから、早く準備をしなさい、ということでもある。そうじゃないと、このタイミングで出てきてくれないと思う。
「わかりました。大変申し訳ありませんが、本日は休養させていただきます」
「そうね。同室のソフィアさんに風邪をうつすわけにもいかないし、私の部屋を使いなさい」
ロジリーの提案を受けて、私は一瞬理解ができなかった。
「……えっ?」
「……えっ?」
「……えっ?」
どうやらソフィアたちも同じだったみたいだ。優しすぎるロジリーが、逆に違和感を発生させている。
「今は人手不足なの。風邪が長引かれたり、他の人にうつされたりしたら困るわ。ほら、早くついてきなさい」
ロジリーにガシッと腕をつかまれた私は、そのまま王城の中へと吸い込まれていく。説教されそうで怖い、と謎の不安に襲われながら。
国王様に関する新しい情報はなく、随分と意識が戻っていないらしい。代わりにレオン殿下が書類に目を通して国王代理を務めているため、多忙の日々を過ごしている。
同じ王城にいても姿を見ないので、部屋にこもったまま作業しているのだろう。あまり無理をしていないといいのだけれど。
一方、厳しい王妃教育を受けるグレースは、部屋の模様替えが終わった影響か、最近は妙に機嫌が良い。相変わらず我が儘な一面はあり、ウォルトン家のメイドが振り回される姿を見るが、こっちにとっては好都合だ。
彼女たちが不信感を持つほど、裏切りにくくなる。こればかりはうまくいくことを祈るしかなかった。
可能ならば、メイド姿のまま彼女たちと接触して、どういう状況なのか探りたい。しかし、レオン殿下の誕生日パーティーの準備があり、とてもそんな暇はなかった。
グレースを断罪するその日まで、メイドとして潜入していると隠し通さなければならない。今はまだ我慢の時であり、正念場でもあった。
その影響もあって、最近の私は妙にピリピリしている。表情でシャルロットだと気づかれないように口角を上げる意識をしているが、親友のソフィアには異変に気づかれているだろう。
今もソフィアと一緒に誕生日パーティーで使う備品を洗い場で洗っているのだが、苦笑いを浮かべられていた。
「メイドで潜入しているとバレてないんだし、もっと気を抜いたら? 部屋の中くらいは普通に話してもいいと思うんだよね」
「どこで話を聞かれているかわからないわ。極力、シャルロットの痕跡は残したくないの。周囲が確認できる状況じゃない限り、絶対にシャルとして接して」
「気持ちはわかるけど、気を張りすぎるのも良くないよ。素直に話せる時間は少ないと思うし、少しくらいはボクを頼ってよね」
ソフィアは気遣ってくれるが、正直なところ、すでに色々と甘えさせてもらっている。慣れないメイドの仕事はフォローしてくれるし、近くにいてくれるだけでも気が休まる。
前回のウォルトン家のメイドを誘き寄せるのだって、ソフィアがいてくれなかったら、ルイスの協力は得られなかった。結局、私は助けられっぱなしだ。
「十分に頼ってるつもりよ。ドレスの件だって、ソフィ以外には相談できなかったわ」
ウォルトン家を出し抜くためのパーティードレスをドレス屋に依頼したのだが、私には女の子らしい衣装をお願いするセンスはない。だから、代わりにソフィアにデザインをお願いしたのだ。
絶対に私が着そうにない、派手で大人っぽいドレスをデザインして、と。
他にもローズレイ家のシャルロットとしても動きたいところではあるものの、ドレスを発注するので精一杯だった。必要以上に行動すれば、墓穴を掘ってしまうため、最低限の行動に抑えている。
「あの派手なドレス、本当に頼んだんだ……」
「言わないでよ。人生で一度きりの買い物なの」
「まあ、シャルロットの黒髪には合っていると思うよ」
「複雑な気分になるからやめて。それより、アリバイ工作はお願いね」
「わかってる。ボクとしては、シャルロットに演技力があることを願うばかりかな」
裏の事情を理解してくれるロジリーがいるとはいえ、何もしなければ、メイドのシャルはパーティーの裏方に回されてしまう。
誕生日パーティーにソフィアも呼ばれていることもあり、彼女がメイドの仕事をしているうちに、仮病でシャルが寝込む必要があった。
どのタイミングで行動しようかな……と考えていると、ちょうど洗い場に先輩メイドが一人でやってくる。
大興奮の彼女の姿を見れば、何があったのか大体の想像がつく。
「ねえ、聞いた? シャルロット様が王城での着付けを希望したらしいんだけど、すっごい派手なドレスが運ばれてきたらしいよ」
予想通りの展開になったので、私は話の流れに乗っかる。
「意外ですね。シックなドレスで済ませるとばかり思っていました」
まさか彼女も、派手なドレスを頼んだ本人とデザインした人物に向かって話しているとは思わないだろう。
「ソフィアさんは、シャルロット様と仲が良いんでしょ? 何か聞いてる?」
「えっ、う、ううん。ボクは久しぶりに会うからわからないけど、心境の変化でもあったんじゃないカナー。シャルロットは、たまにそういうとこあるし」
ソフィアの演技力に問題があると、私は強く言いたい。キョロキョロと目が泳ぐ姿は怪しく、眉をクイクイッと上下に動かして謎のサインを送ってくるのは、本当にやめてほしい。
このまま長引かせる方が危険だと判断した私は、急遽予定を変更する。日常会話はやめて、予め立てておいた作戦に移行するため、ソフィアに体を預けるように倒れ込んだ。
「ど、どうしたの、シャルさん。まさか……うわっ、すごい熱!」
すごい棒読みのソフィアは、私のおでこに手を乗せ、すぐに高熱だと判断した。
当然、あくまで仮病なので、ザ・平熱である。よって、今からおでこは誰にも触らせてはならない。
「すいません。少しめまいがしてしまって……」
「こんなに熱が出ていたら、仕事なんてできないよ。これはもう、寮のベッドで休むしかないね!」
今までの努力が水の泡になる気がするので、できる限りソフィアには話してもらいたくない。
「大丈夫? 王城のメイドは大変だし、慣れるまでは体調を崩す子も多いの。無理はしない方がいいよ」
しかし、とても優しくて純粋な先輩メイドは騙されている。彼女の健気な姿には、感謝の思いでいっぱいだ。
「まだ仕事が残っております。王城のベッドに馴染めず、寝不足なのが原因ですし、気にしないでください」
ソフィアの肩を借りて立ち上がった後、少し息を荒くし、ボーッとした様子を見せる。
これだけ優しい人なら、風邪だとアピールするだけでは、世話を焼こうと様子を見に来る可能性が高い。でも、寝不足だと伝えておけば、起こさないようにそっとしておこうと考えるだろう。
ただ、思った以上に先輩メイドが心配してくれていて、不安そうな表情を向けてくる。
「本当に大丈夫? 私、おばあちゃんの介護を手伝った経験があるの。どれくらいの熱が出たら危ないかわかるから、ちょっと触るね」
まさかウォルトン家の手先!? と思えるほどピンポイントに嘘を見破ろうとする彼女が、私のおでこに手を近づけた、その時だ。
「あなたたち、何してるの?」
先輩メイドの手を防ごうとした瞬間、ロジリーが止めに入ってくれたので、無事に難が去った。
あまりロジリーには頼りたくないし、彼女がどれほどの情報を持っているのかわからない。でも、メイド長のロジリーが風邪だと認めてくれると、話がスムーズに進む。
「シャルさんが体調不良みたいなんです。先ほど倒れてしまって」
「そう。少し確認させてもらうわね」
ロジリーにおでこを触られてた瞬間、彼女の目が細くなった。思わず、私が目を逸らしてしまうのも、仕方がないことだろう。
ザ・平熱。異常なしなのだから。
「今日一日ゆっくり休みなさい。レオン殿下の誕生日に多くの方が来客されるの。メイドとして、風邪をうつすことは許されないわ」
セーフ……。仮病の意図まで理解してくれて、的確な休日をくれた。
言いかえれば、レオン殿下の誕生日パーティーに出席するのだから、早く準備をしなさい、ということでもある。そうじゃないと、このタイミングで出てきてくれないと思う。
「わかりました。大変申し訳ありませんが、本日は休養させていただきます」
「そうね。同室のソフィアさんに風邪をうつすわけにもいかないし、私の部屋を使いなさい」
ロジリーの提案を受けて、私は一瞬理解ができなかった。
「……えっ?」
「……えっ?」
「……えっ?」
どうやらソフィアたちも同じだったみたいだ。優しすぎるロジリーが、逆に違和感を発生させている。
「今は人手不足なの。風邪が長引かれたり、他の人にうつされたりしたら困るわ。ほら、早くついてきなさい」
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