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第23話:シャルロットとレオン殿下2
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ウォルトン家のメイドがいなくなった穴は大きく、ただでさえ人手不足のメイドの仕事が多忙を極めていた。
午前中だけで先輩メイドたちが疲弊しているので、私が疲れ果てるのも無理はない。みんなで集まり、王城の食堂で昼ごはんを食べるのだが、夏バテしたみたいに食欲が沸かなかった。
「シャルさん、ちゃんと食べなきゃダメだよ」
ケロッとしたソフィアだけは元気なものだが。
昨晩、レオン殿下の誕生日パーティーに招待客として参加したソフィアは、この中で唯一ゆっくりと休養できた人物だろう。美味しいものを食べ、ワインでほろ酔い気分のまま眠ったと聞いている。
よって、私とソフィアが欠員となり、ウォルトン家のメイドが二人も失踪したため、パーティー会場の片付けは地獄だったに違いない。先輩メイドたちにガッツリと負担をかけた結果、疲れ果てているのだ。
ここまでメイド業がツラいとは思わなかったし、無事にこの騒動が終われば、お詫びの差し入れくらいは持ってこようと思う。
ひとまず、午後の仕事を乗り切るために、何とか昼ごはんを食べ終えると、ソフィアが先輩メイドたちと何かを交渉していた。
「本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ボクはまだまだ動けるからね」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。レオン殿下の部屋の掃除はお願いね」
グッ! と親指を立てて、ボクのおかげだよ、と私にアピールしてくるソフィアには、天然の称号を送ろう。バレるという言葉の意味を理解してほしい。
でも、ソフィアのファインプレーにより、レオン殿下と接近できるチャンスを作ってもらった。掃除中は本人がいないケースが多いが、レオン殿下は引きこもっているとロジリーから聞いている。
昨日はあいさつ程度の会話しかできなかったし、ナタリーがグレースを引き付けてくれれば、かなり接触しやすい。疲れ果てている中で仕事が増えるのは、地獄でしかないが。
人任せにしたくないけれど、ソフィアの仕事ぶりに期待しよう。
そんなこんなで昼ごはんを食べ終えた後、気合いを入れて仕事をこなし、レオン殿下の部屋にやってきた。
運が良いのか悪いのか、レオン殿下と一緒にグレースがいたため、何食わぬ顔で掃除を始める。
「ねえ、お願い。今すぐ王妃教育の担当者を変えて~」
猫なで声で甘えるグレースは、今日も見境なしにお色気攻撃で迫っていた。裏表もなくベタベタと甘える彼女は、私とは真逆の存在である。
要件を聞く限り、午前中だけで早くも王妃教育が詰んだみたいだ。今後もナタリーが厳しい王妃教育をしてくれることを強く願う。
「ナタリー以上に適切な指導をできる者はいない。それとも、ローズレイ家に頼み込んでみるか?」
昔から王妃教育を担当するのは、ナタリーとロジリーのウルハルト家と決められている。マナーだけでいえば、厳格なローズレイ家よりも適切であることが知られ、由緒正しい家柄なのだ。
いくら王族とはいえ、無下にすることはできない。
「でもね、私、いじめられてるの。可哀想だと思わない?」
「君のマナーに問題があるのだろう」
「愛嬌のある私にマナーは不要よ。ダーリンも、私が笑っていた方が嬉しいでしょ?」
ナタリーを呼んでこようかな、と私が思うのは普通のことだろう。ただでさえ、レオン殿下は体調不良で療養中の身だ。明らかに今日は顔色が優れず、しつこいグレースに嫌気が差している。
あまりにもしつこいグレースのお色気攻撃をレオン殿下は強引に振り払う。そして、部屋に飾られた一輪の花が差してある花瓶を持ち、私の方に向けてきた。
「この花が気に食わない。捨ててくれ」
一見、何気ないことのように思えるが、この花は私が誕生日プレゼントで送った赤いガーベラの花だ。王城の中庭にも植えられていて、レオン殿下と二人で眺めた思い出の詰まった花ともいえる。
「あれ? ダーリンはこの花が好きじゃなかった?」
なんでグレースがそんなことまで知ってるのよ、と言いたいところだが、グッと堪えた。無駄に女子力の高いグレースらしいともいえるから。
「好みが変わることくらいはあるだろ」
「ふーん、そうなんだ。とっても良い傾向ね。うふふふ」
不気味な笑みを浮かべるグレースは、先ほどまで猫なで声を出して甘えていた人物とは思えない。悪巧みする魔性の女のようだった。
「ほらっ、ダーリンが言ってるんだから、早く捨ててきなさいよ。いつまでダーリンに花瓶を持たせるの? 使えないメイドね」
「申し訳ございません。すぐに処分いたします」
いったいどうしたんだろうか、と思いつつ、私は花瓶を受け取った。そのまま何気ない表情で部屋を後にするが、予期せぬ状況に陥り、胸が高鳴り続けている。
花瓶が、軽いのだ。たった一輪しかささっていなくても、普通は水が入ってるため、花瓶は重い。しかし、軽く動かしても水が入っている様子はなかった。
やっぱりレオン殿下は気づいてくれてたのね。私がメイドになっていることを。
手洗い場にたどり着くと、逸る気持ちとは対照的に、周囲を入念に確認。誰もいないため、ゆっくりと花を引き抜く。
すると、花瓶の中に小さな紙が折りたたまれて入っていた。
午前中だけで先輩メイドたちが疲弊しているので、私が疲れ果てるのも無理はない。みんなで集まり、王城の食堂で昼ごはんを食べるのだが、夏バテしたみたいに食欲が沸かなかった。
「シャルさん、ちゃんと食べなきゃダメだよ」
ケロッとしたソフィアだけは元気なものだが。
昨晩、レオン殿下の誕生日パーティーに招待客として参加したソフィアは、この中で唯一ゆっくりと休養できた人物だろう。美味しいものを食べ、ワインでほろ酔い気分のまま眠ったと聞いている。
よって、私とソフィアが欠員となり、ウォルトン家のメイドが二人も失踪したため、パーティー会場の片付けは地獄だったに違いない。先輩メイドたちにガッツリと負担をかけた結果、疲れ果てているのだ。
ここまでメイド業がツラいとは思わなかったし、無事にこの騒動が終われば、お詫びの差し入れくらいは持ってこようと思う。
ひとまず、午後の仕事を乗り切るために、何とか昼ごはんを食べ終えると、ソフィアが先輩メイドたちと何かを交渉していた。
「本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ボクはまだまだ動けるからね」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。レオン殿下の部屋の掃除はお願いね」
グッ! と親指を立てて、ボクのおかげだよ、と私にアピールしてくるソフィアには、天然の称号を送ろう。バレるという言葉の意味を理解してほしい。
でも、ソフィアのファインプレーにより、レオン殿下と接近できるチャンスを作ってもらった。掃除中は本人がいないケースが多いが、レオン殿下は引きこもっているとロジリーから聞いている。
昨日はあいさつ程度の会話しかできなかったし、ナタリーがグレースを引き付けてくれれば、かなり接触しやすい。疲れ果てている中で仕事が増えるのは、地獄でしかないが。
人任せにしたくないけれど、ソフィアの仕事ぶりに期待しよう。
そんなこんなで昼ごはんを食べ終えた後、気合いを入れて仕事をこなし、レオン殿下の部屋にやってきた。
運が良いのか悪いのか、レオン殿下と一緒にグレースがいたため、何食わぬ顔で掃除を始める。
「ねえ、お願い。今すぐ王妃教育の担当者を変えて~」
猫なで声で甘えるグレースは、今日も見境なしにお色気攻撃で迫っていた。裏表もなくベタベタと甘える彼女は、私とは真逆の存在である。
要件を聞く限り、午前中だけで早くも王妃教育が詰んだみたいだ。今後もナタリーが厳しい王妃教育をしてくれることを強く願う。
「ナタリー以上に適切な指導をできる者はいない。それとも、ローズレイ家に頼み込んでみるか?」
昔から王妃教育を担当するのは、ナタリーとロジリーのウルハルト家と決められている。マナーだけでいえば、厳格なローズレイ家よりも適切であることが知られ、由緒正しい家柄なのだ。
いくら王族とはいえ、無下にすることはできない。
「でもね、私、いじめられてるの。可哀想だと思わない?」
「君のマナーに問題があるのだろう」
「愛嬌のある私にマナーは不要よ。ダーリンも、私が笑っていた方が嬉しいでしょ?」
ナタリーを呼んでこようかな、と私が思うのは普通のことだろう。ただでさえ、レオン殿下は体調不良で療養中の身だ。明らかに今日は顔色が優れず、しつこいグレースに嫌気が差している。
あまりにもしつこいグレースのお色気攻撃をレオン殿下は強引に振り払う。そして、部屋に飾られた一輪の花が差してある花瓶を持ち、私の方に向けてきた。
「この花が気に食わない。捨ててくれ」
一見、何気ないことのように思えるが、この花は私が誕生日プレゼントで送った赤いガーベラの花だ。王城の中庭にも植えられていて、レオン殿下と二人で眺めた思い出の詰まった花ともいえる。
「あれ? ダーリンはこの花が好きじゃなかった?」
なんでグレースがそんなことまで知ってるのよ、と言いたいところだが、グッと堪えた。無駄に女子力の高いグレースらしいともいえるから。
「好みが変わることくらいはあるだろ」
「ふーん、そうなんだ。とっても良い傾向ね。うふふふ」
不気味な笑みを浮かべるグレースは、先ほどまで猫なで声を出して甘えていた人物とは思えない。悪巧みする魔性の女のようだった。
「ほらっ、ダーリンが言ってるんだから、早く捨ててきなさいよ。いつまでダーリンに花瓶を持たせるの? 使えないメイドね」
「申し訳ございません。すぐに処分いたします」
いったいどうしたんだろうか、と思いつつ、私は花瓶を受け取った。そのまま何気ない表情で部屋を後にするが、予期せぬ状況に陥り、胸が高鳴り続けている。
花瓶が、軽いのだ。たった一輪しかささっていなくても、普通は水が入ってるため、花瓶は重い。しかし、軽く動かしても水が入っている様子はなかった。
やっぱりレオン殿下は気づいてくれてたのね。私がメイドになっていることを。
手洗い場にたどり着くと、逸る気持ちとは対照的に、周囲を入念に確認。誰もいないため、ゆっくりと花を引き抜く。
すると、花瓶の中に小さな紙が折りたたまれて入っていた。
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