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第37話:ルイスの浮気4
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両想いだと確認できたソフィアは、体を寄せてルイスの隣に座っていた。
この間までムスッとした表情で突っかかっていたのが嘘みたいだ。幸せオーラを解き放つ乙女の姿に変わり、初々しい雰囲気がある。
一方、ルイスは微動だにしない。ジト目で私を見つめてきていた。
「口が堅い女だと聞いた気がするが」
ここで聞いた話をソフィアに言わないという約束をしていただけに、彼が拗ねるのも無理はない。
ソフィアが隣に来てくれて嬉しい反面、まだ自分を許せていないルイスは複雑な気持ちなのだろう。
「私、何か言いましたか? ルイス様が話されていたことを、ソフィアさんが聞いていただけの話ですよ。愛する資格ももらえたのですから、細かいことは水に流しましょう」
当然、ルイスは納得してくれる気配はないが、ちゃんと二人の仲を取り持ったのだから、これくらいは許してほしい。
完全に元の関係に戻った……とまでは言えなくても、あのまま王城でぎこちなく過ごし続けるよりはいいのだから。
「ルイス様の気持ちがわからないでもありませんが、ひとまず前向きに考えてください。今回の浮気に関しては、巧妙な詐欺の可能性があります」
まったく予想していないことだったのか、ソフィアとルイスは互いに顔を会わせ、首を傾げている。
「ルイス様の話だけで断定することはできません。ただ、不自然な点が多いので、細かい話を聞かせてください」
先ほど疑問に抱いたことを中心に、外堀を埋めるような形で、私はルイスを問いただしていく。
現場の状況、宿の間取り、従業員の対応……。改めて聞いてみても、状況がおかしいとしか思えない。ルイスの記憶が明確なことが、それを裏付けるようだった。
注意しなくてはならないのは、私情が入ると中立な立場で見られなくなることだ。ソフィアの幸せのためにルイスが無実であってほしいと思い、判断能力が低下する恐れがある。
それでも、明らかにおかしいと断定できる点があり、私は眉を潜めた。
「被害を受けた方は、男爵家の女性だったんですか?」
「ああ。平凡な街娘みたいな女の子だったが、とても落ち着いていたよ。こんな言い方は申し訳ないが、彼女には助けられたと思っている。冷静に対処してくれたから、宿で大騒ぎにならなかったんだ」
普通、男爵家の娘が被害を受けていたのなら、一夜を共にした責任を取らせるために結婚させるだろう。伯爵家のルイスと縁を結べば、将来が安泰するのは間違いなく、最高の玉の輿案件になる。
朝まで添い寝するほどルイスを受け入れているのであれば、なおさらのこと。
女性が冷静に対処できたのは、慰謝料を請求する予定だったのだろう。細かい事情を聞かれたくなくて大騒ぎにしなかった、とも言い換えることができる。
大きな問題に発展すれば、ローズレイ家が動く。真実がバレることを危惧した可能性が高い。
これは確実に詐欺案件ね、と判断できた時、ルイスが恐る恐る顔を近づけてきた。
「今頃で悪いが、こんな話ばかりしていて大丈夫か?」
当たり前のことだが、いくら私がシャルロットであることを伏せていたとしても、カフェで話せるような内容ではない。
本当はローズレイ家の屋敷にルイスを招き入れて、じっくりと聞きたかった。でも、レオン殿下の誕生日パーティーで出し抜いて以降、ローズレイ家の監視の目が厳しくなっている。
連絡を取るだけでも苦労するし、メイド姿で王城に潜入しているとバレるわけにはいかない。そのため、ソフィアのルーサム家の協力を得て、カフェで話し合いをしていた。
「まあ……ソフィアさんが後ろにいた時点で察してください」
私たちの周りにいる客は関係者ばかりだ。ルイスが反省している姿を見せ、ルーサム家に婚約の話を許可せざるを得ない状況を作る作戦でもある。
最初から言っておいてくれよ……と言いたげなルイスの眼差しを無視して、話を本題に戻すことにしよう。
「被害女性から話が聞けると嬉しいのですが、さすがに話し合いの場は用意できないですよね」
「すでに慰謝料を支払い、解決済みの話だ。昔のことを掘り返すのは、マナー違反になるだろう」
「やはりそうですか。でも、互いに貴族であるのなら、何かのタイミングで話を聞けるかもしれません。一応、被害女性の名前を教えてもらってもいいですか?」
「被害者の名誉に関わる問題だ。言いふらしたり、変に詮索したりすることだけはやめてくれ。それが条件だ」
「わかりました。口外しないと約束しましょう」
ここまでしっかりと女性に気遣うルイスだからこそ、標的にされたのかもしれない。私が聞かない限り、被害女性の名前を誰にも言うことはなかったと思う。
それでも罪悪感があるのか、ルイスは言いにくそうに口をまごまごとしていた。
「……トリンド男爵家の娘だ。名前は確か、ルチア・トリンドだったと記憶している」
予想外の名前が飛び出してきて、私とソフィアは顔を合わせた。学園でグレースに突き放された女の子が、まさかの被害女性だったのだ。
ウォルトン家の推薦を受け、魔力暴走の疑惑をかけられたあの子が……。
レオン殿下とルイスの浮気は似すぎている。僅かでも手がかりをつかめたら嬉しい、そう思っていた。
でも、ここに来てウォルトン家と繋がるのであれば、きっと黒幕は……。
「パーティーの主催者は、どなただったか覚えていますか?」
高鳴る胸を抑えて、ルイスを見つめる。すると、迷うことなくルイスは口を開いた。
「ウォルトン家だ。グレース様も参加されていたし、間違いない」
この間までムスッとした表情で突っかかっていたのが嘘みたいだ。幸せオーラを解き放つ乙女の姿に変わり、初々しい雰囲気がある。
一方、ルイスは微動だにしない。ジト目で私を見つめてきていた。
「口が堅い女だと聞いた気がするが」
ここで聞いた話をソフィアに言わないという約束をしていただけに、彼が拗ねるのも無理はない。
ソフィアが隣に来てくれて嬉しい反面、まだ自分を許せていないルイスは複雑な気持ちなのだろう。
「私、何か言いましたか? ルイス様が話されていたことを、ソフィアさんが聞いていただけの話ですよ。愛する資格ももらえたのですから、細かいことは水に流しましょう」
当然、ルイスは納得してくれる気配はないが、ちゃんと二人の仲を取り持ったのだから、これくらいは許してほしい。
完全に元の関係に戻った……とまでは言えなくても、あのまま王城でぎこちなく過ごし続けるよりはいいのだから。
「ルイス様の気持ちがわからないでもありませんが、ひとまず前向きに考えてください。今回の浮気に関しては、巧妙な詐欺の可能性があります」
まったく予想していないことだったのか、ソフィアとルイスは互いに顔を会わせ、首を傾げている。
「ルイス様の話だけで断定することはできません。ただ、不自然な点が多いので、細かい話を聞かせてください」
先ほど疑問に抱いたことを中心に、外堀を埋めるような形で、私はルイスを問いただしていく。
現場の状況、宿の間取り、従業員の対応……。改めて聞いてみても、状況がおかしいとしか思えない。ルイスの記憶が明確なことが、それを裏付けるようだった。
注意しなくてはならないのは、私情が入ると中立な立場で見られなくなることだ。ソフィアの幸せのためにルイスが無実であってほしいと思い、判断能力が低下する恐れがある。
それでも、明らかにおかしいと断定できる点があり、私は眉を潜めた。
「被害を受けた方は、男爵家の女性だったんですか?」
「ああ。平凡な街娘みたいな女の子だったが、とても落ち着いていたよ。こんな言い方は申し訳ないが、彼女には助けられたと思っている。冷静に対処してくれたから、宿で大騒ぎにならなかったんだ」
普通、男爵家の娘が被害を受けていたのなら、一夜を共にした責任を取らせるために結婚させるだろう。伯爵家のルイスと縁を結べば、将来が安泰するのは間違いなく、最高の玉の輿案件になる。
朝まで添い寝するほどルイスを受け入れているのであれば、なおさらのこと。
女性が冷静に対処できたのは、慰謝料を請求する予定だったのだろう。細かい事情を聞かれたくなくて大騒ぎにしなかった、とも言い換えることができる。
大きな問題に発展すれば、ローズレイ家が動く。真実がバレることを危惧した可能性が高い。
これは確実に詐欺案件ね、と判断できた時、ルイスが恐る恐る顔を近づけてきた。
「今頃で悪いが、こんな話ばかりしていて大丈夫か?」
当たり前のことだが、いくら私がシャルロットであることを伏せていたとしても、カフェで話せるような内容ではない。
本当はローズレイ家の屋敷にルイスを招き入れて、じっくりと聞きたかった。でも、レオン殿下の誕生日パーティーで出し抜いて以降、ローズレイ家の監視の目が厳しくなっている。
連絡を取るだけでも苦労するし、メイド姿で王城に潜入しているとバレるわけにはいかない。そのため、ソフィアのルーサム家の協力を得て、カフェで話し合いをしていた。
「まあ……ソフィアさんが後ろにいた時点で察してください」
私たちの周りにいる客は関係者ばかりだ。ルイスが反省している姿を見せ、ルーサム家に婚約の話を許可せざるを得ない状況を作る作戦でもある。
最初から言っておいてくれよ……と言いたげなルイスの眼差しを無視して、話を本題に戻すことにしよう。
「被害女性から話が聞けると嬉しいのですが、さすがに話し合いの場は用意できないですよね」
「すでに慰謝料を支払い、解決済みの話だ。昔のことを掘り返すのは、マナー違反になるだろう」
「やはりそうですか。でも、互いに貴族であるのなら、何かのタイミングで話を聞けるかもしれません。一応、被害女性の名前を教えてもらってもいいですか?」
「被害者の名誉に関わる問題だ。言いふらしたり、変に詮索したりすることだけはやめてくれ。それが条件だ」
「わかりました。口外しないと約束しましょう」
ここまでしっかりと女性に気遣うルイスだからこそ、標的にされたのかもしれない。私が聞かない限り、被害女性の名前を誰にも言うことはなかったと思う。
それでも罪悪感があるのか、ルイスは言いにくそうに口をまごまごとしていた。
「……トリンド男爵家の娘だ。名前は確か、ルチア・トリンドだったと記憶している」
予想外の名前が飛び出してきて、私とソフィアは顔を合わせた。学園でグレースに突き放された女の子が、まさかの被害女性だったのだ。
ウォルトン家の推薦を受け、魔力暴走の疑惑をかけられたあの子が……。
レオン殿下とルイスの浮気は似すぎている。僅かでも手がかりをつかめたら嬉しい、そう思っていた。
でも、ここに来てウォルトン家と繋がるのであれば、きっと黒幕は……。
「パーティーの主催者は、どなただったか覚えていますか?」
高鳴る胸を抑えて、ルイスを見つめる。すると、迷うことなくルイスは口を開いた。
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