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第48話:エピローグ3
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掃除に向かう予定だったソフィアと一緒にレオン殿下の部屋を訪ねると、レオン殿下が慌ただしく仕事していた。
椅子に腰を掛ける彼は、机に置かれた書類に目を通し、一つ一つ力強くサインする。部屋に入ってきた私たちを見ることもなく、仕事に集中し続けていた。
ウォルトン家の問題が過ぎ去ったとはいえ、国王代理で仕事をこなしているため、かなり忙しいみたいだ。書類の山を見る限り、とても終わりそうな雰囲気はない。
どうしよう。仕事の邪魔をするのは悪いし、何も言わずに帰ろうかしら。今まで緊迫した雰囲気の中でしか会ってなかったから、久しぶりに普通に会うと……なんだか恥ずかしいわ。
レオン殿下との接し方がわからなくなり、もどかしい気持ちになった私は、声をかける勇気が持てなかった。
互いに仕事が落ち着いた時に話そう……なーんて考えて部屋を後にしようとするが、ソフィアに読まれていたみたいで、バンッと背中を押されてしまう。
「掃除に来ました~」
大きな声を出したソフィアは、私をグイグイと部屋に押し込んでいく。
ソフィアの声に反応したレオン殿下が顔を上げると、数秒ほど目線が重なった。が、やっぱり忙しいみたいで、彼はすぐに目線を書類に落とした。
「……」
いや、レオン殿下も恥ずかしがっている気がする。彼もまた、私と同じように緊張しているのだろう。
遠距離恋愛のカップルが久しぶりに再会したような気持ちになり、互いに接する方法がわからないのだ。
「……」
「……」
どうしてこうなったかといえば、過剰な恋愛イベントをこなした弊害だといえる。
元々私たちは口数が少なく、自然体で暮らす熟年夫婦みたいな雰囲気があった。会話がなくても気まずいとは思わなかったし、一緒にいられるだけでも幸せだった。
でも、今は違う。
腹黒聖女に引き裂かれ、険しい恋の障害を乗り越えた私たちは、互いに強く求め合ってしまった。その結果、恋愛の炎が燃え上がり、顔を合わせるだけでも緊張することになるなんて……。
帰りたい。今すぐにこの場を去りたいのだが……。うぐっ、ニマニマとした表情を浮かべるソフィアが、急かすように肘で突いてくる。
初々しいくらいの純愛だね、このこの~、と言いたそうにして!
「ボクは部屋の外で見張りでもしてようか? 久しぶりに燃え上がるようなキスでも――」
「ソフィは仕事があるでしょ! ちゃんと掃除しなさい!」
「ちぇ、そんなに気を張らなくてもいいのに」
なにを言っているのよ、まったくもう! 私はローズレイ家の人間よ。いくら暫定婚約者とはいえ、ソフィアが近くにいる状態でキスなんてできるわけないじゃない。
それに、私にも心の準備というものがある。今日は仕事の合間に顔を見に来ただけであって、イチャイチャするために来たわけではない。
期待せずに来たかと言われれば、ノーと答えるけれど。
一応、本当に一応。レオン殿下の顔をチラッと確認する。
「まだ俺は心の整理ができていない。今は職務を全うすることに専念させてくれ」
そこはグイグイ来てほしかった、と思ってしまうあたり、私は我が儘かもしれない。
でも、媚薬を盛り続けられたレオン殿下には、想像以上の負担がある。精神的な問題には回復魔法が効かないし、時間をかけて癒す必要があった。
「気にしないで。少し顔を見に来ただけで、特に用は――」
そこまで言葉を発すると、不意にソフィアの人差し指で口を塞がれる。
「嘘ばっかり。手紙を持ってきてるんでしょ? シャルロットは手紙を渡そうか悩んでる時、ポケットを触る癖があるからすぐにわかるよ」
ソフィアとルイスの仲を取り持った影響か、珍しく彼女が首を突っ込んでくる。
しかも、自分でも気づかないような癖で手紙の存在までバレるのは、とても恥ずかしい。
書類から目を離したレオン殿下にジーッと見つめられれば、それを出さないわけにはいかなかった。
「仕事の合間に書いたから、うまくまとめられなかったの。読みにくいわよ」
レオン殿下に近づいた私は、しぶしぶ彼に手紙を渡す。
「いま読んでも大丈夫か?」
「……どうぞ」
ソフィアが部屋の掃除を始めるなか、私はレオン殿下の傍に立ち、彼が手紙を読む姿を眺め続けた。
手紙の内容としては、ルチアが行った詐欺の手口とグレースに問い詰めた毒と媚薬の情報だった。
一晩の過ちを冒したと誤解した記憶の消失については、特殊な薬物が原因だ。仮死状態に陥る薬を飲み物に混ぜて、本人に飲ませるだけの単純なものでしかない。
厄介なのは、まぶたが落ちて眠くなる睡眠薬は記憶に残るが、仮死状態に入る薬物は違う。急に意識が遮断されるように倒れ、記憶が飛んでしまうのが特徴だった。
そんな方法を取っている時点で、子作りができる状態ではない。結局、レオン殿下の心を縛るための口実作りに過ぎなかったのだ。
念のためグレースにも確認したが、「あんな不愛想な男を抱くわけがないわ。私は男の顔をグチャグチャに歪ませるのが好きなの。男の命を弄ぶ感覚が堪らないのよね」と言われた。
完全に危ない人なのは間違いない。こんな人が聖女と呼ばれていたことに、国の闇を強く感じる。
余計なことはレオン殿下に知らせる必要ないので、グレースのことはあまり書いていないが。
「そうか。やはり何もなかったんだな」
「気づいてたの?」
「途中から変だと思っていたんだが、確証は持てなかった。シャルロットに髪を切らせてしまった罪悪感もあって、手紙で伝えることにしたんだ」
なるほどね。お母様との思い出の髪だと伝えていたし、色々と考えてくれていたのね。
でも、私は髪を切ったことを後悔していない。むしろ、親友のソフィアですら気づかなかったのに、レオン殿下が一目で気づいてくれて嬉しかった。
それに、罪悪感を持たれるよりは、褒めてもらいたいのが乙女心である。
「髪の長い女性の方が好みだった?」
二人きりの時にだけ見せる笑顔を作ると、私の意図を汲み取ってくれたのだろう、レオン殿下は微笑み返してくれた。
「いや、髪の長さなど関係なく、シャルロットを愛している。とても似合っているよ」
「じゃあ、気にする必要はないわ。私ももう慣れたから」
髪が長いと毎日のケアも大変だし、暫定とはいえ、婚約者に戻れたのはありがたい。また髪を伸ばす楽しみもあるので、私は本当に気にしていなかった。
今一番気になるのは、明らかに掃除をサボって様子を見てくるソフィアである。
「ボ、ボクのことは気にせず、どどど、どうぞ続けて」
どうしてソフィアが興奮しているのだろうか。いくら親友とはいえ、もう二度と女の子らしいところは見せないと誓おう。
「ソフィには任せられないから、私も掃除するわ。早く終わらせましょう」
結局、私が話しかけている限りはソフィアが掃除しないので、一緒に掃除することになった。
窓を拭いたり、部屋を掃いたり、ベッドメイクをしたり。私がいない間はお母様に見守ってもらおうと思い、花瓶にはガーベラの花も添える。
少し重い女になっている気がするが……レオン殿下が好きな花でもあるので、気にしないでおこう。
部屋の掃除が終わると、何事もなかったかのようにレオン殿下の部屋を離れる。
「また時間を見つけてくるわ」
「失礼しました」
ローズレイ家の屋敷に向かおうと、レオン殿下の部屋を後にする……と、見せかけて――。
先に部屋を出たソフィアが廊下を歩き始めたことを確認した後、こっそりと後ずさりをした私は、バタンッとドアを閉めて部屋に残った。
私もレオン殿下も仕事が忙しいし、しばらくは二人きりになれる機会が少なくなる。だから、少しだけ……。
レオン殿下も似たような思いがあったのか、書類からを離して見つめ合った。
「いつもより表情がぎこちないわ。何か隠してない?」
「……大丈夫だ」
「嘘つき。今は落ち着いていても、まだ媚薬の効果が残っているんでしょう? 簡単に耐えられるものではないと聞いているわ」
グレースが使っていたのは、無味無臭の香水タイプの薬物だった。発情させたい人の髪の毛を入れて媚薬を作る古代の秘薬らしい。
同様の形で国王様にも毒を盛っていたので、すでに国王様の容態は安定している。会話ができるくらいには回復しているため、レオン殿下だけが媚薬の影響を引きずっているような状態だった。
「どうしても我慢できなかったら、体を求めてくれても構わないわ。子供を産む覚悟はできているし、愛する気持ちが変わるわけでもないから」
私に心配をかけたくないと思い、レオン殿下が黙っていることくらいは容易に想像がつく。でも、仕事のストレスで暴走し、誰かに欲情することだけは避けてほしい。
王妃の資格があるとかないとかではなく、私は強く嫉妬する生き物であり、独占欲が強いのだ。もう二度と手放したくないと思うほど、強く愛してしまっている。
レオン殿下がすぐに顔を赤く染めるので、困らせてしまったかもしれないが。
「初めてがそれは嫌だろ。ちゃんと愛し合えるときまで待っていてくれ」
「もしもの時の話よ。何も問題が起こらなかったら、いつまでも待っているわ」
そんなことを言いつつも、私はレオン殿下の元まで近づいていく。
ソフィアにそそのかされたし、ひと月以上もお預けされてしまっては、媚薬がなくても人は欲情する。我慢するには、限度というものがあるだろう。
「媚薬の症状が出ても耐えられるおまじないをかけてあげるから、少し目を瞑って」
恥ずかしそうに目を逸らしたレオン殿下は、ゆっくりと目を閉じた。
普通のおまじないでは効きそうにないので、少しばかり燃え上がるような……いや、強めのおまじないをかけておこう。
私だけしか見られなくなるような、とても強いおまじないを。
―――――FIN―――――
椅子に腰を掛ける彼は、机に置かれた書類に目を通し、一つ一つ力強くサインする。部屋に入ってきた私たちを見ることもなく、仕事に集中し続けていた。
ウォルトン家の問題が過ぎ去ったとはいえ、国王代理で仕事をこなしているため、かなり忙しいみたいだ。書類の山を見る限り、とても終わりそうな雰囲気はない。
どうしよう。仕事の邪魔をするのは悪いし、何も言わずに帰ろうかしら。今まで緊迫した雰囲気の中でしか会ってなかったから、久しぶりに普通に会うと……なんだか恥ずかしいわ。
レオン殿下との接し方がわからなくなり、もどかしい気持ちになった私は、声をかける勇気が持てなかった。
互いに仕事が落ち着いた時に話そう……なーんて考えて部屋を後にしようとするが、ソフィアに読まれていたみたいで、バンッと背中を押されてしまう。
「掃除に来ました~」
大きな声を出したソフィアは、私をグイグイと部屋に押し込んでいく。
ソフィアの声に反応したレオン殿下が顔を上げると、数秒ほど目線が重なった。が、やっぱり忙しいみたいで、彼はすぐに目線を書類に落とした。
「……」
いや、レオン殿下も恥ずかしがっている気がする。彼もまた、私と同じように緊張しているのだろう。
遠距離恋愛のカップルが久しぶりに再会したような気持ちになり、互いに接する方法がわからないのだ。
「……」
「……」
どうしてこうなったかといえば、過剰な恋愛イベントをこなした弊害だといえる。
元々私たちは口数が少なく、自然体で暮らす熟年夫婦みたいな雰囲気があった。会話がなくても気まずいとは思わなかったし、一緒にいられるだけでも幸せだった。
でも、今は違う。
腹黒聖女に引き裂かれ、険しい恋の障害を乗り越えた私たちは、互いに強く求め合ってしまった。その結果、恋愛の炎が燃え上がり、顔を合わせるだけでも緊張することになるなんて……。
帰りたい。今すぐにこの場を去りたいのだが……。うぐっ、ニマニマとした表情を浮かべるソフィアが、急かすように肘で突いてくる。
初々しいくらいの純愛だね、このこの~、と言いたそうにして!
「ボクは部屋の外で見張りでもしてようか? 久しぶりに燃え上がるようなキスでも――」
「ソフィは仕事があるでしょ! ちゃんと掃除しなさい!」
「ちぇ、そんなに気を張らなくてもいいのに」
なにを言っているのよ、まったくもう! 私はローズレイ家の人間よ。いくら暫定婚約者とはいえ、ソフィアが近くにいる状態でキスなんてできるわけないじゃない。
それに、私にも心の準備というものがある。今日は仕事の合間に顔を見に来ただけであって、イチャイチャするために来たわけではない。
期待せずに来たかと言われれば、ノーと答えるけれど。
一応、本当に一応。レオン殿下の顔をチラッと確認する。
「まだ俺は心の整理ができていない。今は職務を全うすることに専念させてくれ」
そこはグイグイ来てほしかった、と思ってしまうあたり、私は我が儘かもしれない。
でも、媚薬を盛り続けられたレオン殿下には、想像以上の負担がある。精神的な問題には回復魔法が効かないし、時間をかけて癒す必要があった。
「気にしないで。少し顔を見に来ただけで、特に用は――」
そこまで言葉を発すると、不意にソフィアの人差し指で口を塞がれる。
「嘘ばっかり。手紙を持ってきてるんでしょ? シャルロットは手紙を渡そうか悩んでる時、ポケットを触る癖があるからすぐにわかるよ」
ソフィアとルイスの仲を取り持った影響か、珍しく彼女が首を突っ込んでくる。
しかも、自分でも気づかないような癖で手紙の存在までバレるのは、とても恥ずかしい。
書類から目を離したレオン殿下にジーッと見つめられれば、それを出さないわけにはいかなかった。
「仕事の合間に書いたから、うまくまとめられなかったの。読みにくいわよ」
レオン殿下に近づいた私は、しぶしぶ彼に手紙を渡す。
「いま読んでも大丈夫か?」
「……どうぞ」
ソフィアが部屋の掃除を始めるなか、私はレオン殿下の傍に立ち、彼が手紙を読む姿を眺め続けた。
手紙の内容としては、ルチアが行った詐欺の手口とグレースに問い詰めた毒と媚薬の情報だった。
一晩の過ちを冒したと誤解した記憶の消失については、特殊な薬物が原因だ。仮死状態に陥る薬を飲み物に混ぜて、本人に飲ませるだけの単純なものでしかない。
厄介なのは、まぶたが落ちて眠くなる睡眠薬は記憶に残るが、仮死状態に入る薬物は違う。急に意識が遮断されるように倒れ、記憶が飛んでしまうのが特徴だった。
そんな方法を取っている時点で、子作りができる状態ではない。結局、レオン殿下の心を縛るための口実作りに過ぎなかったのだ。
念のためグレースにも確認したが、「あんな不愛想な男を抱くわけがないわ。私は男の顔をグチャグチャに歪ませるのが好きなの。男の命を弄ぶ感覚が堪らないのよね」と言われた。
完全に危ない人なのは間違いない。こんな人が聖女と呼ばれていたことに、国の闇を強く感じる。
余計なことはレオン殿下に知らせる必要ないので、グレースのことはあまり書いていないが。
「そうか。やはり何もなかったんだな」
「気づいてたの?」
「途中から変だと思っていたんだが、確証は持てなかった。シャルロットに髪を切らせてしまった罪悪感もあって、手紙で伝えることにしたんだ」
なるほどね。お母様との思い出の髪だと伝えていたし、色々と考えてくれていたのね。
でも、私は髪を切ったことを後悔していない。むしろ、親友のソフィアですら気づかなかったのに、レオン殿下が一目で気づいてくれて嬉しかった。
それに、罪悪感を持たれるよりは、褒めてもらいたいのが乙女心である。
「髪の長い女性の方が好みだった?」
二人きりの時にだけ見せる笑顔を作ると、私の意図を汲み取ってくれたのだろう、レオン殿下は微笑み返してくれた。
「いや、髪の長さなど関係なく、シャルロットを愛している。とても似合っているよ」
「じゃあ、気にする必要はないわ。私ももう慣れたから」
髪が長いと毎日のケアも大変だし、暫定とはいえ、婚約者に戻れたのはありがたい。また髪を伸ばす楽しみもあるので、私は本当に気にしていなかった。
今一番気になるのは、明らかに掃除をサボって様子を見てくるソフィアである。
「ボ、ボクのことは気にせず、どどど、どうぞ続けて」
どうしてソフィアが興奮しているのだろうか。いくら親友とはいえ、もう二度と女の子らしいところは見せないと誓おう。
「ソフィには任せられないから、私も掃除するわ。早く終わらせましょう」
結局、私が話しかけている限りはソフィアが掃除しないので、一緒に掃除することになった。
窓を拭いたり、部屋を掃いたり、ベッドメイクをしたり。私がいない間はお母様に見守ってもらおうと思い、花瓶にはガーベラの花も添える。
少し重い女になっている気がするが……レオン殿下が好きな花でもあるので、気にしないでおこう。
部屋の掃除が終わると、何事もなかったかのようにレオン殿下の部屋を離れる。
「また時間を見つけてくるわ」
「失礼しました」
ローズレイ家の屋敷に向かおうと、レオン殿下の部屋を後にする……と、見せかけて――。
先に部屋を出たソフィアが廊下を歩き始めたことを確認した後、こっそりと後ずさりをした私は、バタンッとドアを閉めて部屋に残った。
私もレオン殿下も仕事が忙しいし、しばらくは二人きりになれる機会が少なくなる。だから、少しだけ……。
レオン殿下も似たような思いがあったのか、書類からを離して見つめ合った。
「いつもより表情がぎこちないわ。何か隠してない?」
「……大丈夫だ」
「嘘つき。今は落ち着いていても、まだ媚薬の効果が残っているんでしょう? 簡単に耐えられるものではないと聞いているわ」
グレースが使っていたのは、無味無臭の香水タイプの薬物だった。発情させたい人の髪の毛を入れて媚薬を作る古代の秘薬らしい。
同様の形で国王様にも毒を盛っていたので、すでに国王様の容態は安定している。会話ができるくらいには回復しているため、レオン殿下だけが媚薬の影響を引きずっているような状態だった。
「どうしても我慢できなかったら、体を求めてくれても構わないわ。子供を産む覚悟はできているし、愛する気持ちが変わるわけでもないから」
私に心配をかけたくないと思い、レオン殿下が黙っていることくらいは容易に想像がつく。でも、仕事のストレスで暴走し、誰かに欲情することだけは避けてほしい。
王妃の資格があるとかないとかではなく、私は強く嫉妬する生き物であり、独占欲が強いのだ。もう二度と手放したくないと思うほど、強く愛してしまっている。
レオン殿下がすぐに顔を赤く染めるので、困らせてしまったかもしれないが。
「初めてがそれは嫌だろ。ちゃんと愛し合えるときまで待っていてくれ」
「もしもの時の話よ。何も問題が起こらなかったら、いつまでも待っているわ」
そんなことを言いつつも、私はレオン殿下の元まで近づいていく。
ソフィアにそそのかされたし、ひと月以上もお預けされてしまっては、媚薬がなくても人は欲情する。我慢するには、限度というものがあるだろう。
「媚薬の症状が出ても耐えられるおまじないをかけてあげるから、少し目を瞑って」
恥ずかしそうに目を逸らしたレオン殿下は、ゆっくりと目を閉じた。
普通のおまじないでは効きそうにないので、少しばかり燃え上がるような……いや、強めのおまじないをかけておこう。
私だけしか見られなくなるような、とても強いおまじないを。
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※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
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