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第一章 私は絶滅危惧種

第四話 明るい兆し

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 スライムの攻撃、スカッ。麗華の攻撃、0.3のダメージを与えた。スライムの攻撃、スカッ。麗華の攻撃、0.2のダメージを与えた。スライムの攻撃、スカッ。麗華の攻撃、0.3のダメージを与えた。スライムの攻撃、1のダメージを受けた。麗華の攻撃、0.5のダメージを与えた・・・・・・そして35ターン目。麗華はスライムを倒した。
「やったー! 初めて自力で勝ったわ!」

「レベル5になったから素手でも楽勝かと思ったけど、こんなに時間がかかるとは思わなかったよ。力が弱すぎるんだね」
「もう!」
私はやや殺意を覚えたが、ここでポチを殺したら路頭に迷ってしまうわ。ここは我慢我慢。
「やはり武器は必要だね」
「お金ないのにどうするのよ」
「仕方ない奥の手を使うか」
「何かいい方法があるの?」
「ついておいで」

 私は不信感を持ちながらもポチの後についていくと、何かがたくさん置いてある場所でポチが止まった。そして一生懸命何かを物色している。
「ここに武器があるかもしれない。君も捜すのを手伝ってよ」
「ここはどこなの?」
「不燃ゴミ置き場さ。時々武器を捨てていく人がいるんだよ」
「惨めよ! あまりに惨めだわ!」

「あったよ。これなんか武器に丁度いいんじゃないか?」
「何この棒?」
「麺打ち棒だよ。うどんを作る時に使う道具だ」
「何が悲しくて調理器具でモンスターと戦わなければいけないのよ!」
「文句が多いんだね。中にはお鍋の蓋を盾にする人もいるのに。あっ! いい物があったよ」
「何この大きなの?」
「ドラだよ。よく中国の人が叩いてるだろ? これなんか盾にしたらかなり強力な防具になると思うよ」
「こんな大きな物重くて持てないよ!」
 
 私が頭を抱えて座り込んでいると再びお腹が鳴り出した。考えてみれば変なキノコを少しかじっただけだもんね。もう限界だよ。

 ポチは私をじーっと見つめ決心したように言った。
「よし、食事に行こう」
「え? 本当?」
「この先に僕の知っている店があるんだ。そこで食べよう」
「うん。食べる!」

 店は大きくもなく小さくもなくといった感じ。中に入ると大衆食堂というイメージがぴったりの作りで、気のよさそうなおばさんが明るく挨拶してくれた。
「何にするんだい?」
「ええっと・・・・」
見たこともない料理ばかりだよ。さっぱりわかんない。ポチに聞こうと思ったがなぜか机の下に隠れて出てこない。

「あっ! 知ってる料理を見つけた! このチキンの唐揚げをください」
「これだね。他にはいいかい?」
「はい、これだけでいいです」
おばさんはにっこりと笑ってメニューを下げていった。私、鶏肉って大好き! 牛肉や豚肉に比べて安くて美味しいんだよね。家でもよく料理したなあ。お父さんが『美味しいよ』って言ってくれて・・・・。

「はい、お待ち。たくさんお食べ」
「ありがとうございます。とてもおいしそ・・・・」
料理を見た私は思わず絶句した。どう見ても鶏肉ではない何かが素揚げされている。両手がある時点で鳥じゃないのは確かよね。
「何これ?」
「この世界で鶏の唐揚げと言ったらそれが出てくるのさ」
「これ何が揚げてあるの?」
「ハ虫類さ。君たちの世界で言えばトカゲが一番近いかな?」
「ええー!」

 周りの人達が一斉に私を見た。
「トカゲなんて食べられないよ」
「まあ、いいから一口食べてみなよ。とても美味しいから」
「絶対に嫌よ!」
グー。
「端っこの方少しだけ食べてみようかな?」
パク。
「美味しいかも・・・・」
「そうだろ」
うー、空腹って恐ろしい。まさかトカゲを食べて美味しいと思うなんて。私の人生、何かが狂いだしてるよ。

「結局全部食べたね」
私は顔を赤くして下を向いた。空腹が悪いのよ。
「じゃあ、今から僕の言う通りにしてくれ」
「わかったわ」
「そうっと席を立って、出口に向かって全力で走るんだ!」
「それって食い逃げでしょ!」

 私の大きな声でおばさんがやって来た。
「どうしたんだい?」
「あっ、ごめんなさい。私お金がないんです」
「あ~あ、言っちゃったよ」
「皿洗いでも何でもしますから、許してください」

 おばさんは何も言わず机の下を覗き込んだ。
「やっぱりポチだね。また、新しい子を連れて来たのかい?」
「おばさん、ポチを知ってるの?」
「ああ、よく知ってるよ。こいつは誰彼なしに連れてきては魔王と戦わせては失敗してるんだよ」
「誰彼なしに?」
「そうさ。『君には特別な力を感じる』とか言ってね。今まで何人の人が死んでいったか」
「ポチ!」
私は渾身の力を込めて怒鳴った。おそらく私史上最高の大声だったと思う。                                
「でもなぜそんなことをするのですか?」
「魔王には莫大な賞金がかかってるんだよ。もし倒せたら一気に大金持ちさ」
そうだったのね。私を騙すなんて許せない。あれ? 私は無理矢理連れてこられたんだから騙されたんじゃないのか。

「さっき、お金がないって言ってたね。いきなり行き詰まったのかい?」
「はい」
「じゃあ、暫くここにいるといいよ。二階に空いてる部屋もあるし」
「本当ですか?」
「遠慮はいらないよ。ここを手伝ったり、クエストをしたりしてお金を貯めるんだね。冒険はそれからさ」
「ありがとうございます!」
こうして絶望のどん底だった私の生活は一気に明るい未来へと向かうのであった。
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