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第三章 魔王退治

第四十五話 どちらを高める?

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 結果はどうあれ魔剣士になることができた。
「麗華、剣士になったんだから剣を買いに行こうぜ」
サラが嬉しそうに言った。
「魔剣士なんだから魔力を高める方が先よ」
対抗するようにアイラも言った。
「どうする? 麗華ちゃん」
勇者様は意地悪く微笑んでいる。

「ええっと」
どう答えたらいいのかな? 魔力を高めるって何をするんだろう? 特訓か何かかな? 何させられるかわからないから無難な方にしようっと。
「先に剣を買いたいです」
「そうだよな。行こう行こう」
サラは勝ち誇った顔でアイラを見た。

 ここの武器屋はかなり大きい。あれだけ大きな聖堂があってジョブチェンジをする人も多いわけだから当然のことか。
「どんな剣がいいのかな?」
「やっぱり攻撃力の高い物にしようぜ。これなんかいいんじゃない?」
「はい」
私はサラが選んだ大きな剣を手にした。

「重い・・・・」
あれ? この剣赤く光ってる。
「ああ、ダメだ」
「どうしたんですか?」
「武器や防具を手にして赤く光った時は装備できないと言うことなんだ」
「装備できない?」
「この武器を装備するにはレベルが低すぎるってことかな?」
そうか。私レベル1だもんね。

「じゃあ、次はこれ」
サラは次から次へと剣を渡してきたが、どれも赤く光っている。持てる剣なんて無いじゃん。
「あ! この剣は光りませんよ!」
私が適当に持った剣はなぜか光らなかった。
「これはだめだ。竹光だよ」
「竹光って何ですか? 強そうな刀に見えますけど」
「竹で作った偽物の刀さ。こんな物で攻撃したら一瞬で折れてしまうよ」
「どうしてそんな物が売ってるんですか? 江戸時代、刀を買えない武士がこれを持ってたらしいぜ」
「それで日本刀にみたいな格好なんですね」
軽くて良かったんですけど。

「お! これは光らないぜ」
「でも、重いです。持つのがやっと・・・・」
ガタン。手から滑り落ちてしまった。
「麗華は腕力がねえな」
私の落とした刀を軽く持ち上げてサラが言った。

「よし、先に腕力を鍛えようぜ」
ええーーー! 『鍛える』っていかにも危険なワードだよー。
店を出ると近くの森に連れて行かれた私は重い鉄の棒を渡された。
「これでどうしろと?」
思わずため口で聞く私。

「まずは素振りだね。最初だし軽く行こうか。取り敢えず500回振って」
「全然軽くないんですけど・・・・」
10回振ってギブアップしてしまった。
「よし1分休んだら続きだ」

 このままでは筋肉マッチョな腕になってしまうわ。何とかしなきゃ。
「私、先に魔法を魔力を高めようかな?」
「そうでしょそうでしょ」
アイラがそれ見たことかと言わんばかりにサラを押しのけて私の前に立った。

 魔法なら物理攻撃じゃないしハードな訓練じゃないはずよ。
「はい、この訓練用の杖を持って」
え? 重い?
「杖を振るスピードで魔法の威力が変わってくるの。早く杖が触れるようにこれを取り敢えず500回振ってね」
結局腕力を鍛えるんかーい!

 この夜、私は筋肉マッチョになった夢を見てうなされるのであった。
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