告白作戦っ!

小松広和

文字の大きさ
48 / 60

第48話 私史上最高の朗報

しおりを挟む
「柚衣、昨日は大変な目に遭ったそうじゃないか?」
 昼休みに琉生が私に話しかけてきた。
きっと草壁君に聞いたのね?
「大変な目ってもんじゃなかったよ。思いっきり少年漫画の世界だったんだから。草壁君が助けに来てくれたからよかったけど」
 私は一気に話した。

「まあ柚衣なら少々殴られても大丈夫そうだけどな」
 何ちゅうことを言うんじゃい!
 ふと私の脳裏に草壁君の『もし中園君が居なかったら本心て言えるかもね』という言葉が蘇る。
「ねえ、トリカブトと青酸カリってどちらがよく効くと思う?」
 琉生はやや仰け反りながら、
「何でいきなりそんなこと聞くんだ?」
 と言った。

 そこへ沙耶ちゃんが考えられないほどハッピーな情報を持ってきた。
「暫くは安全のために草壁君が家まで送ってくれるって」
「嘘?」
「本当だって。たった今本人から聞いたもん」
 それって、毎日草壁君と帰れるってこと? 草壁君と楽しくお話ししながら帰れるってこと?
 これ以上の朗報はないよ。沙耶ちゃんありがとう!

「帰りが不安なら俺が一緒に帰ってやっるよ」
「琉生じゃ無理だよ」
「どういうことだ?」
「スケバンに剣道にボクシングだよ」
「何の話だ?」
 とにかく琉生に余計なことをされるとせっかくの朗報がおじゃんになる。
「ねえ、毒殺と刺殺ってどちらが確実に殺せると思う?」
「さっきから何なんだよ、その質問?」
 琉生は逃げるように私の前から去って行った。
 勘がいいわね?

 そして待ちに待った放課後。
 草壁君が私の教室まで迎えに来てくれた。
 だって、私を襲った張本人がいる草壁君の教室には行けないからね。
「柚衣ちゃん、待たせたかな?」
「ううん、今帰りの会が終わったところ」
 本当は10分くらい待ったけど。
 よく恋人が待ち合わせで『ごめん待った?』という言葉に対して、『今来たところ』というシーンがあるけど、まさか自分が言うことのいなろうとは。
 まさに感動だよ。これは草壁君と待ち合わせなんだ!

「何で指を組んで上を向いてるの?」
 ダメだ。思わず神に感謝してしまった。
「何でもないわ」
「じゃあ、行こうか」
「はい」
 私は草壁君について歩いた。

 どの道を帰るのかな? できたら駅前を通りたいよね?
 それで『お茶でもして行こうか?』なんて誘われたりして。
 う~ん、最高!

 私たちは下駄箱を出るとグランドを横切って部室棟へ。あれ?
「ごめん。僕はキャプテンだから部活を休むわけにはいかないんだ。かといって柚衣ちゃんを教室で待たせるのは危険だろ? だから悪いけど野球部のグランドで待っててくれないか?」
「いいけど。邪魔にならない?」
「ベンチに座っていれば大丈夫だよ」

 そして私はベンチにちょこんと座って草壁君の練習を見学することになった。
 まあ、これはこれでいいか。
 草壁君の格好いい姿が近くで見られるし。
「よかったね柚衣。特等席で草壁君を見れて」
「沙耶ちゃん! どうしてここに?」
「一緒に帰るためだよ」
「沙耶ちゃんも一緒に帰るの?」
「当然」
 な~んだ草壁君と二人きりじゃないのか?
「草壁君と~たくさん~お話しできるね~?」
 野乃葉ちゃんもか。

「ボールを最後まで見るんだ。グラブで捕れるかどうかじゃなくてグラブのどの位置で捕るかが大切なんだ」
 草壁君て格好いいよ。
「次はバッティング練習だ。準備して」
「はい」
 さすがキャプテンて感じだよね。

 私がうっとりと眺めていると、草壁君がベンチに戻ってきた。
「退屈じゃなかった?」
「全然退屈じゃないよ。むしろ私には新鮮な光景っていうか」
「それはよかった。そうだ柚衣ちゃんも打ってみる?」
「そんな私には無理だよ」
 慌てて断った。バットを握ったこともないんだもん。打てるわけないよね?

「あたし打ちたい!」
 やっぱり。沙耶ちゃんはこう言うと思ったよ。
「じゃあ、こっちのネットに向かって打って。僕が投げるから」
 私たちは沙耶ちゃんを先頭に草壁君が指さしたネットに向かった。
 緑色のネットに大きな丸い穴が空いている。この丸に打つのだろう。

 沙耶ちゃんは嬉しそうに構える。
「いい構えだな。じゃあ行くよ」
 草壁君がそっとボールを投げた。
 カキーン! 物凄くいい音を立てて沙耶ちゃんの打球がネットに吸い込まれていく。
「嘘だろ?」
 草壁君が驚いている。
 それは女の子が急にすごい打球を打ったら驚くよね?
「今、初めて打ったんだろ?」
「勿論よ。でも私にはこの程度お茶の子さいさいよ」
「凄いね」

 沙耶ちゃんは次から次へと鋭い打球を打ち込んでいく。
 その度に草壁君が驚いている。何か嫌なんだけど。
 これがきっかけで草壁君が沙耶ちゃんのことを好きになったら大変じゃない?
 打ち終えた沙耶ちゃんを草壁君が褒めたたえている。
「凄いよ夏上さん。野球部員でもあんな打球は飛ばせないよ」
「打てて当たり前だよ」
 いたたまれなくなった私はつい口をはさんだ。
「どういうこと?」
「沙耶ちゃんは小学校の時少年野球をやってて4番を打ってたんだよ。中学校でも野球部に入ってたし」
「えへ」
 沙耶ちゃんが苦笑いしている。
「そうだったのか。どおりで打球が違うと思ったんだ」
 ばらしちゃった。これって嫉妬だよね?
 いやな女って思われちゃったかも?
 私はそっと草壁君を見た。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...