告白作戦っ!

小松広和

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第36話 草壁君と紗椰ちゃん

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 私の渾身の告白とは裏腹に草壁君は余裕の表情で言った。
「ところで夏上さん遅いね」
私の言葉ってどのくらい通じたんだろう。今の勢いで気になることを聞いてみよう。

「ねえ、どうして私や野乃葉ちゃんは名前で呼んでくれるようになったのに、沙耶ちゃんは夏上さんなの?」
「そうだね。おかしいよね。でも沙耶ちゃんとは何か呼びにくくて」
「どうして?」
「今まで夏上さんと呼んでいたからかな?」
あれ? どういうこと? 2人は昔から知り合ってたの?

「そんな前から知り合いだったの?」
「いや、話をしたことはなかったんだ。僕が一方的に知っていたというか」
「どういうこと?」
「高校に入学した頃は夏上さんの方が成績が良かった。つまり夏上さんは僕の目標だったんだ。だから夏上さんを抜くために一生懸命勉強した時期があったから」
意外に深い話になってるような?

「その時は夏上さんと呼んでいたのね」
「そうなんだ。目標だった人だからなかなか名前で呼べなくて」
「なるほど。沙耶ちゃんて凄い人だったのね」
2人はライバルだったってことか。話をしたことがないのに夏上さんと呼んでいたってことは草壁君の中には紗椰ちゃんの存在があったってことだよね?

『ちょっと嬉しい話だよ』
沙耶ちゃんの声が聞こえてくる。いいな紗椰ちゃん。私は何となく嫉妬した。

「この話は夏上さんに言わないで欲しいな。何となく恥ずかしいから」
ははは、もう、聞いちゃってますけど・・・・。
「沙耶ちゃんのこと結構意識してるんだね。もしかして好きなの?」
「まさか」
「本当?」
「もちろん本当だよ。ほら夏上さんって気が強そうじゃない? もし付き合ったら喧嘩ばかりしてるよ」
『誰の気が強いって? そこにある水かけてやって!』
そんなことしたら私が終わっちゃうよ。

『ところで場所を移動するわよ。本当は野乃葉を動かすつもりだったけど、うまく操れないから逆にする』
逆ってどういうこと?
『柚衣が、喫茶店で話をしている野乃葉と中園君を草壁君に見せるの。声をかけられたらまずいのでウインドー越しに見せて』
なるほど、そういうこと。

 じゃあ、私が草壁君に『一緒に歩こう』って声を掛けるんだね。なんか勇気がいるような。でも大丈夫! こんな大胆なことが言えたんだもの、一緒に歩こうって誘うことなんか簡単なことだよ。頑張れ私!

「ねえ、草壁君」
「何?」
「ええっと、せっかくだからちょっと街を歩いてみない?」
言えた言えたよ!

「え? 夏上さんは?」
当然そう言われるよね? どう言えばいい? 
『メールで行き先を伝えるから大丈夫って言って』
紗椰ちゃんからの助け船。グットタイミングだよ。

「メールで行き先を伝えるから大丈夫だよ」
「特に用事がなければここにいた方がいいと思うけど」
それはそうだよね。ごもっともです。何か理由を考えなきゃ。ダメだ何も思いつかないよ。

『紗椰ちゃん、何て言えばいいの?』
私は小さな声で言った。
『う~ん。この辺にこれと言った場所はないしなあ』
もう、大事な時に役立たずなんだから!

『何とかしてよ』   
『だったら私の家でゆっくり話をしようって言えば』
「私の家でゆっくりお話をしましょう」
「え? そんな急に言われても・・・・。恋人でもない女の子の家に行くなんてできないよ」
ボカン!
「い、今のは冗談。冗談だってば」
私は大慌てで手を振って否定した。

『紗椰ちゃん!!!』
『まさか本当に言うとは思わなかったわ。それよりそんな大きい声を出したら草壁君にバレるよ』
そうだった。私はそっと草壁君を見た。きょとんとした顔で私を見ている。

「紗椰ちゃん遅いなあって」
「確かに遅いね」
「お願い。一緒に散歩しよう。私、草壁君と散歩できたらもう思い残すことないから」
死ぬ間際の願い事か!

「柚衣ちゃんて面白いね」
これは褒められてるんだよね?
「わかった。その辺を歩いてこようか」
「本当!」
やった! 何でも言ってみるもんだよね。

「でも、ちょっとした不安があって・・・・」
不安?  まさか2人だけで歩いてるのを紗椰ちゃんにバレたくないとか?  やっぱり草壁君は紗椰ちゃんのことが好きなのかな? だってずっと頭の中に入っていた人物だもんね。一番意識していた人物ってことだよね。

 私は恐る恐る聞いてみた。
「不安って何?」
「いや、実は僕の親衛隊もどきってのがあるらしいんだけど、もし彼女らに見つかったらまずいかなって」
何だ。そんなことか。よかったー。
「大丈夫。見つかるのならこの段階でアウトだよ」
「それもそうだね」
「じゃあ、行こう!」
私はかつてないくらい明るい声で言った。
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