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第2章 謎の転校生
第9話 俺には許嫁がいたらしい
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胡桃は何事もなかったかのように突然話題を変える。
「そういえば、あなたのクラスに転校生が来るそうよ」
今まで怒っていたのに、この切り替えの早さは何なんだ。
「ものすごく可愛い女の子なんだって。良かったわね」
「興味ねえな」
「本心はどうだか」
俺のことを何でもわかっているくせにこの言葉は何だ? 俺が女に興味がないことくらいわかっているだろう。
その時、胡桃の足下に何かが落ちているのを発見した。
「あっお気に入りのストラップの紐が切れちゃったわ」
「不吉だな」
「そんなの迷信よ。真歴って未来人とか信じてるくせに迷信は信じるの?」
胡桃はそう言い残すと自分のクラスへと歩いて行った。よくはわからないが機嫌が悪そうだ。
俺の教室は少しざわついている。担任の先生が可愛い女の子を連れて教室に入ってきたからだ。胡桃の情報は確かだったようだ。まあ、いくら可愛くても俺には無関係なのだが。それにしても胡桃はどこからこんな情報を聞きつけてくるんだ? 恐らく美紀にでも聞いたのだろう。美紀は情報通な気がする。きっと典型的な近所のおばさんになるに違いない。
担任の先生がにこやかに転校生を紹介する。
「みなさん、新しいお友達を紹介します。転校生の今田萌さんです。仲良くしてあげてくださいね」
何となく小学校っぽい紹介の仕方だが、転校生も小学生っぽい雰囲気の女の子であるからこれでいいのかも知れない。背は低く童顔で可愛いイメージの子だ。ランドセルを背負えばきっと小学生料金でバスに乗れるだろう。
「それでは今田さん。自己紹介をお願いします」
萌は教卓の前に立つと俺の方を見た。まあ、偶然だろうが。
「転校してきました今田萌と言います。萌がこの学校に来たのはここに運命の人がいるからです」
教室がまたざわつき始める。もしかして痛い性格の子なのか?
「彼は昔から萌の許嫁で、とある事情で萌の前から立ち去りました。でも、萌の彼を思う気持ちは今も変わりません。だから萌は早くその人と幸せになれたらなって思っています。こんな萌ですがよろしくお願いしま~す」
女子の『わぁ~』という声が教室に溢れる。それと同時に男子の『ちぇっ』という声が聞こえてきた。
そして自己紹介はいつの間にか質問タイムへと突入している。
「その人って同級生ですか?」
「はい、そうです」
「その人とはもう話をしたんですか?」
「いえ、まだ話していません。でもその人は目の前にいます」
「え~~~」
クラスのほぼ全員の女子が声を上げた。
「それってこのクラスの人ってことですか?」
「はい、そうです」
「え~! 誰ですか~?」
何人もの女子が口々に言った。
「宮本真歴君です」
は? 今なんて言った?
クラス全員が一斉に俺の方を見た。な、何てことを言い出すんだ! また厄介なことになるんじゃないだろうな?
『え~、ウソ~』という女子の声と『何でこいつなんだ』という男子の声が教室中に響き渡る。斜め後ろの筋肉もりもりの男子などは『なぜそんなに死に急ぐ』と言いながら指をボキボキと鳴らして俺を見ている。
「先生、萌の席って宮本君の横が空いてますから、あそこですよね?」
「ええ、まあ」
「やったー♡」
萌はスキップでもしそうなくらい弾んでこちらにやってくる。そして俺の横に座ると、
「よろしくね。宮本君」
と可愛い笑顔で言った。
「何でそんな嘘を付くんだ?」
俺は萌にそっと尋ねた。
「あら、嘘じゃないよ。忘れちゃったの? 萌、悲しいな」
何が萌だ。俺は自分のことを自分の名前で呼ぶ女は苦手だ。それにしても男子の視線が痛い。これは下手をすればこのクラスから指名手配犯を出しかねないぞ。早くみんなの誤解を解かなければなるまい。それにしてもこいつどういうつもりなんだ? 俺は真剣に萌など知らないのだが。恐らく今日が初対面だ。
萌のいい加減な作り話はあっという間に学校中に広まった。女に興味のない俺にとってはこんな噂など一向に気にならなのだが、中にはそうでない奴もいるようだ。
「ちょっと、これってどういうこと?」
服の襟を両手で掴み胡桃が叫ぶ。
「俺も知らねえよ」
「いつの間に許嫁なんて作ってたのよ!」
「だから何も知らねえって言ってるだろう」
胡桃は今にも殴りかかりそうな剣幕で叫ぶ。部室の窓硝子が割れそうな勢いだ。
「知らないんだったら、何で転校生があんなこと言うやけ!?」
「お前は生まれた直後から俺のこと知ってるんだから、これが嘘だって分かるだろう?」
「それはそうだけど・・・・」
「なら、何で怒ってるんだ?」
「火のないところに煙は立たずよ」
「俺の話聞いてるか?」
「だったら、その転校生、何でそんなこと言うの? 一体何が目的なの?」
「さっぱりわからねえよ」
胡桃は俺の襟から手を放した。とりあえず命だけは助かったようだ。それにしても、このところ分からないことが多すぎる。未来人のことで頭がいっぱいだというのに、次は謎の転校生の出現だ。一体全体どうなっているんだ?
俺は萌のことは本当に知らない。なのに萌は許嫁だと言い出す。やはりここは萌に直接聞いてみるしかないようだ。しかし、周りに人がいない状況で会うとしたらどうすればいいだろうか? とりあえず隣にいる胡桃に相談してみよう。
「二人きりで会うですって~!」
手には千枚通しが握られている。ここは場所が悪い。この部室には俺が使う工具が山ほどある。とりあえず萌とは会わないことにしておこう。
てか何で俺が萌に会うとこいつが怒るんだ? 別に付き合ってるわけじゃないんだから怒ることはなかろう。とは言っても命は一つしかない。命あっての物種と言うし、萌とは距離を置いた方が良さそうだ。胡桃の手に握られた千枚通しを眺めながら俺は妙な悟りを開くのであった。
「そういえば、あなたのクラスに転校生が来るそうよ」
今まで怒っていたのに、この切り替えの早さは何なんだ。
「ものすごく可愛い女の子なんだって。良かったわね」
「興味ねえな」
「本心はどうだか」
俺のことを何でもわかっているくせにこの言葉は何だ? 俺が女に興味がないことくらいわかっているだろう。
その時、胡桃の足下に何かが落ちているのを発見した。
「あっお気に入りのストラップの紐が切れちゃったわ」
「不吉だな」
「そんなの迷信よ。真歴って未来人とか信じてるくせに迷信は信じるの?」
胡桃はそう言い残すと自分のクラスへと歩いて行った。よくはわからないが機嫌が悪そうだ。
俺の教室は少しざわついている。担任の先生が可愛い女の子を連れて教室に入ってきたからだ。胡桃の情報は確かだったようだ。まあ、いくら可愛くても俺には無関係なのだが。それにしても胡桃はどこからこんな情報を聞きつけてくるんだ? 恐らく美紀にでも聞いたのだろう。美紀は情報通な気がする。きっと典型的な近所のおばさんになるに違いない。
担任の先生がにこやかに転校生を紹介する。
「みなさん、新しいお友達を紹介します。転校生の今田萌さんです。仲良くしてあげてくださいね」
何となく小学校っぽい紹介の仕方だが、転校生も小学生っぽい雰囲気の女の子であるからこれでいいのかも知れない。背は低く童顔で可愛いイメージの子だ。ランドセルを背負えばきっと小学生料金でバスに乗れるだろう。
「それでは今田さん。自己紹介をお願いします」
萌は教卓の前に立つと俺の方を見た。まあ、偶然だろうが。
「転校してきました今田萌と言います。萌がこの学校に来たのはここに運命の人がいるからです」
教室がまたざわつき始める。もしかして痛い性格の子なのか?
「彼は昔から萌の許嫁で、とある事情で萌の前から立ち去りました。でも、萌の彼を思う気持ちは今も変わりません。だから萌は早くその人と幸せになれたらなって思っています。こんな萌ですがよろしくお願いしま~す」
女子の『わぁ~』という声が教室に溢れる。それと同時に男子の『ちぇっ』という声が聞こえてきた。
そして自己紹介はいつの間にか質問タイムへと突入している。
「その人って同級生ですか?」
「はい、そうです」
「その人とはもう話をしたんですか?」
「いえ、まだ話していません。でもその人は目の前にいます」
「え~~~」
クラスのほぼ全員の女子が声を上げた。
「それってこのクラスの人ってことですか?」
「はい、そうです」
「え~! 誰ですか~?」
何人もの女子が口々に言った。
「宮本真歴君です」
は? 今なんて言った?
クラス全員が一斉に俺の方を見た。な、何てことを言い出すんだ! また厄介なことになるんじゃないだろうな?
『え~、ウソ~』という女子の声と『何でこいつなんだ』という男子の声が教室中に響き渡る。斜め後ろの筋肉もりもりの男子などは『なぜそんなに死に急ぐ』と言いながら指をボキボキと鳴らして俺を見ている。
「先生、萌の席って宮本君の横が空いてますから、あそこですよね?」
「ええ、まあ」
「やったー♡」
萌はスキップでもしそうなくらい弾んでこちらにやってくる。そして俺の横に座ると、
「よろしくね。宮本君」
と可愛い笑顔で言った。
「何でそんな嘘を付くんだ?」
俺は萌にそっと尋ねた。
「あら、嘘じゃないよ。忘れちゃったの? 萌、悲しいな」
何が萌だ。俺は自分のことを自分の名前で呼ぶ女は苦手だ。それにしても男子の視線が痛い。これは下手をすればこのクラスから指名手配犯を出しかねないぞ。早くみんなの誤解を解かなければなるまい。それにしてもこいつどういうつもりなんだ? 俺は真剣に萌など知らないのだが。恐らく今日が初対面だ。
萌のいい加減な作り話はあっという間に学校中に広まった。女に興味のない俺にとってはこんな噂など一向に気にならなのだが、中にはそうでない奴もいるようだ。
「ちょっと、これってどういうこと?」
服の襟を両手で掴み胡桃が叫ぶ。
「俺も知らねえよ」
「いつの間に許嫁なんて作ってたのよ!」
「だから何も知らねえって言ってるだろう」
胡桃は今にも殴りかかりそうな剣幕で叫ぶ。部室の窓硝子が割れそうな勢いだ。
「知らないんだったら、何で転校生があんなこと言うやけ!?」
「お前は生まれた直後から俺のこと知ってるんだから、これが嘘だって分かるだろう?」
「それはそうだけど・・・・」
「なら、何で怒ってるんだ?」
「火のないところに煙は立たずよ」
「俺の話聞いてるか?」
「だったら、その転校生、何でそんなこと言うの? 一体何が目的なの?」
「さっぱりわからねえよ」
胡桃は俺の襟から手を放した。とりあえず命だけは助かったようだ。それにしても、このところ分からないことが多すぎる。未来人のことで頭がいっぱいだというのに、次は謎の転校生の出現だ。一体全体どうなっているんだ?
俺は萌のことは本当に知らない。なのに萌は許嫁だと言い出す。やはりここは萌に直接聞いてみるしかないようだ。しかし、周りに人がいない状況で会うとしたらどうすればいいだろうか? とりあえず隣にいる胡桃に相談してみよう。
「二人きりで会うですって~!」
手には千枚通しが握られている。ここは場所が悪い。この部室には俺が使う工具が山ほどある。とりあえず萌とは会わないことにしておこう。
てか何で俺が萌に会うとこいつが怒るんだ? 別に付き合ってるわけじゃないんだから怒ることはなかろう。とは言っても命は一つしかない。命あっての物種と言うし、萌とは距離を置いた方が良さそうだ。胡桃の手に握られた千枚通しを眺めながら俺は妙な悟りを開くのであった。
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