それは春の光の中で

リゲイン

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その瞬間、初夏の光が生徒会室を照らして

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季節は移ろい桜は葉桜に、緑が萌ゆり、緑が濃くなってきました。

私は勢いのまま生徒会の部屋の前にいました。誰よりも最初にこの学園で出会った人たちのいる部屋です。あの時のあのお二人の優しい佇まい。とても魅力的で、私もそうなりたい。その気持ちがずっと心に残ってました。私以外の子は来ませんでしたが、今は何の不安もありません。

「し・・・失礼します」
緊張しながらドアをノックする
「どうぞ」
私の知るお二人の声ではありませんでした。恐る恐るドアを開けます。編み込みとめがねが印象的な女性でした。
「何か御用ですか?会長と副会長はあいにく出ています」
優しく。おっとりとした話し方。このかとも生徒会の方でしょうか
「入会希望できました。一年の東乃はるです。生徒会に入りたくて来ました」
「あら、それはうれしいわ。感謝します。私は2年の加納 美和。生徒会の書記を務めています。」
淡々と自己紹介されていきます。
「入会届ですね。私が承ります。」そういうと加納さんは入会届を受け取りました」
「あら、寮生なんですね。学区外入学ですか?ようこそ青藍へ」
「ありがとうございます。私初めてここに絵とずれたとき迷子でうろうろロしてしまって会長さんと副会長さんに助けていただいたんです。それでお二人があまりにも素敵で、私もそうなりたいなって思って来ました」
「そう・・・気持ちはうれしいですけど、この生徒会なかなか大変ですよ。」
「はい!!皆さんのお役に立ちてい気持ちは変わりません。皆さんのお役に立てられる一員になりたいです!!」
私の迷いない姿勢をきちんと伝えしました。
「そう、でもそんな心意気のある方をお迎えできるのをうれしいです。ただ最終判断は会長に任せます。どうしますか?会長たちが戻るまでまちますか?」
「はい、待ちます!」
「元気なのはいいことです。じゃあこちらへ」
加納先輩は微笑みながら丁寧に部屋の中央にあるテーブルへいざないました。

しばらく沈黙が続きました。日もしっかり傾いて西の窓から柔らかな日が差し込んでいます。
「私は書記ですが、会長や副会長の補佐もしています。最初は何をしていいのかわからないことばかりでしたよ。でもそれは皆そうで、自分の特性に合った何かしらのやりがいは得られますよ」
加納先輩はいくつかの書類に目を通しつつ話しかけてきました。
「中学の時は何かやってたんですか?」
「私は・・・特に部活やこういった活動は・・・あまり積極的ではなくて・・・」
少し痛いところを突かれ内心は焦っていました
「そうですか?人一倍やる気に満ちた目をしていたものですから。」
「・・・えと・・・・その、親元を離れて寮生活のあるここを選んだから、何か少し自分を変えてみたくって・・・あとであった会長さんと副海中さんが素敵で、私も変わるなら『ああなりたい』って」
少し中学時代の事を思い出しました。私にとっては黒く染まった時の事・・・
「どうかされました?」
一瞬の顔の曇りも逃さない加納先輩
「あ、いえ、大丈夫です」
「そう、でもここの活動は大変だからため込んでしまうと長くいい仕事できませんよ。正式に入会されたわけじゃないから深入りしませんけど、もし何かあったときは皆にきちんと相談してくださいね。それができないと楽しく続けられませんから」
「・・・ありがとうごさいます」
「それにしても、会長たち遅いですね。またあそこでゆっくりしているのかしら」
心当たりのあるところ・・・あの庭の事かな、そう思いました。

「あの・・・生徒会って何人ぐらいいるんですか?」
ひとつきになることをたずねました。
「そうね、ここは会長の押上 紫先輩。副会長の霧島 青先輩。3年生はこの二人。書記は私ともう一人、丸井 翔子って人が務めてます。そして庶務係の森田 砂羽さんがいます。役付きはこの5人ね」
「丸井先輩と森田先輩は今日は?」
「えーと・・・職員室へ書類を提出に行ってるわ。まぁ、今日はそのまま直帰するわね」
「そうですか・・・あの私のほかに一年生はここに来ましたか?」
「あら、一クラスしかないのよ。今のところ東乃さん。あなた以外には来てないわ」

初夏のまだ乾いた風が吹き込んできます。
「そうそう、霧島先輩も寮生ですよ。もう何度か顔は合わせているのじゃないかしら?」
確かに寮への道案内まだ知らぬ小道を駆使して寮へ案内してくれたし、私の同室の真由さんの事も知っていました。
「霧島副会長はボーイッシュで生徒たちの間でも人気なんですよ。隠れファンクラブなんてのもあるとかないとか」
一目でさわやかな人。私もそんなイメージを持っていました
「押上会長はその優雅な雰囲気でそれで人気がありますよ。対照的な二人ですが息はぴったりでこの学園を支えるにふさわしいお二人です」
加納先輩は書類と格闘しながらもこの生徒会の事をやさしくレクチャーしてくれます。

しばらくして

「かのちゃん!ごめんごめん!遅くなった!」
最初に来たのは霧島先輩でした。長身でショートの髪型が相変わらずよく似合います・
「おや?君は・・・確か一年の・・・」
真ん中のテーブルの椅子に手をかけつつ私を見つめます
「あの、昨日はありがとうございました。一年の東乃です」
「あぁ、道に迷ってそれでオリエンテーションで生徒会に立候補した君だね。本当に生徒会に入りたいんだ。」
「はい!」
「ふーん・・・あの時も言ったけど大変なところだよ?大丈夫そうかい?」
「はい!!頑張って皆さんのお役に立ちたいです!!」
私の意気込みをまっすぐに伝えました
「そか・・・じゃあ私たちもその気持ちを信じてみてもいいかな?ね、会長」
いつの間にか押上会長が生徒会室にいました。
「あら、ちゃんと生徒会室に来れるなんて、すごいわ。きちんとオリエンテーションで覚えたのね」
「あ・・・あの・・・会長さん・・・」
「はい。あなたの気持ち確かに受け取りました。しばらくは雑務がメインになりますけど大丈夫かしら?」
優しい口調で私に問いかける。
「どんなことも早く覚えて皆さんの役に立てるように頑張ります!!」
「いいお返事。ではしばらくは仮という形でやってもらうけどよろしいかしら?」
微笑みながら加納先輩から書類を受け取り自分の机に座ります。

「ね、それでいいわよね。青?」
「紫が言うならいいよ。君の見る目に余り狂いはないからね」

特に拒否されることもなくこうして私は仮ですが生徒会の一員になる資格を得ることになりました。
「そうだね、東乃さん。ますは・・・」
青先輩がこちらを見ながら問いかけます
「まずは寮まで帰れるかな?私はもう少し残務があるし、君もいつまでも付き添いがないと帰れないのも困るしね」
「あ・・・えと・・・今日はもう寮に帰っても・・・」
「君は寮生だろ?また顔合わせや荷解きも住んでないんじゃないかな?まずはそれらを片付けるのが大事だよ。」
確かにその通りなんです。返す言葉もありません・・・
「ではまた明日以降ここにいらしてくれるかしら、慣れるまでいろんなこと経験してもらうけど無理せず頑張りましょうね」
押上会長はにこやかに私に告げた。うん。まずは自分の身の回りを整頓しなくては・・・

生徒会室を後にして・・・
ここはどこだろう・・・来た道を帰ればいいだけなのに私という人はまた迷子になったのです。
しばらくうろうろしていたらようやく見知った場所に出ました



昨日押上会長と霧島副会長と出会った「庭」でした。西日がかろうじて当たる緑あふれた場所。

「どーしてここに来ちゃうのかなぁ・・・」
私は半ば自分にあきれてしまいました。でも、ここからなら霧島先輩に連れて行った道で行けば・・・
「自信ないけど・・・行くしかないよね」
私はうろ覚えの記憶をフルに思い返して、どうにかこうにか寮にたどり着きました。

心臓がバクバク言いながら自室の部屋をノックします
「はい」
中から真由さんの声がしました
「真由さん、ただいま戻りました」
扉が開き中から真由さんが出てきました
「ずいぶん遅いお帰りですね。早く帰らないと皆が心配します。気を付けてください」
表情を変えず私に忠告をくれました。うん。本当に気を付けないと

「ごめんなさい。生徒会室に行ったらまた迷って・・・」
「本当に言ったんですね。大丈夫なんですか・そんな感じではうまく務まらないと思いますよ」
辛辣です。でもごもっともです・・・
「これから寮生たちの顔合わせがあります。早く準備してください」

どうにかこうにか帰った私は荷を整理する暇もなく寮の顔合わせに赴く羽目になりました・・・前途は多難です
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