オタクですがなにか?

夏目 涼

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第5話

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やっと学校に着いた。

転入手続きなどがあるモリスを職員室へ連れて行き、私は足早に教室へ向かった。

私は教室に入るとやっと気を緩めることができた。
モリスと一緒に歩いているとすれ違う人みんな振り向いていくからだ。そして、隣の私をみて「なんでこいつが?」みたいな顔をする。
余計なお世話だと思うがやっぱり傷付く。

しかし、転入手続きってなにするんだろ。この世界の住所とか名前とかわかるんだろうか。訳分からん異世界翻訳のおかげで、言葉が喋れて聞き取れても書けるとは限らないしなぁ。っても、私もこっちのモリスの情報知らないから手伝えることないんだけど・・・。




自分の席に座ると前の席の由紀子が後ろを振り向いて話しかけてきた。

「ねえ、知ってる?今日、3年生に転校生くるらしいよ。こんな時期に珍しいよね」

とりあえず知らないふりしとこうかな。
同じ家に住むことになったとか知られたりすると面倒そうだし。

「へー。そうなんだ」
「もう噂になってるよ。しかも、すっごくイケメンなんだって!超楽しみなんだけど!」

そうなのよ!超イケメンなのよ!メガネでは隠せないあの魅力!この学校の男子全員、ジャガイモに見えるわよ。

私は優越感に浸ったが、はっと気がつく。

この世界にモリスが来たのはいいけど、変な虫がつくんじゃ・・・。あんなにイケメンだし優しいし、モテないわけがない。
ダメよ。イケメンなのに純粋で真面目な厳しいけど優しいモリスでいないと・・・。

私は急に不安になってきた。

私の夢はモリスに会いたいだった。確かに夢は叶ったけど・・・。他の人と仲良くしているのは見たくない・・・。

ふつふつと嫉妬心が出てくる。

「千代ちゃん?どうかした?」
「え・・・ううん。なんでもないよ」

私は引きつった笑顔で答える。
その時、ガラリと教室のドアが開いて担任が教室に入ってきた。
その後ろをモリスが一緒に入ってきた。

まさか同じクラスだとは・・・。
嬉しいけど・・・なんか複雑。

さっき芽生えた嫉妬心で心がざわつく。


「今日は転校生を紹介する。斎藤 護澄くんだ。自己紹介して」
「斎藤 護澄です。親の都合でこの時期の転校になりました。短い間ですがよろしくお願いします」

落ち着いた自己紹介。とても突然別世界にきた人だとは思えない。
私は、前に立つモリスをうっとりと見つめる。
本当にこの世界にいるんだと改めて実感する。

由紀子がクルリと後ろを向いて私に向かってガッツポーズをする。
一緒のクラスになって嬉しいのとモリスの顔がお気に召したのだろう。

「みんな仲良くしてやってくれ。じゃ、あの1番後ろの空席に座ってくれ」
「え・・・は、はい・・・」

モリスは少し困ったような顔をしている。

「斎藤?どうかしたのか?」

なかなか席に向かわないモリスを先生も心配する。


どうかしたのかな。
あ、そういえば漫画のおまけでメガネかけててもあまり視力が良くないから毎回前の席にしてもらってるってマド学豆知識に書いてあったような。その設定がこの世界にも適応されてるのなら1番後ろの席だと見えないのかも。


「あ!先生。もしかしたら1番後ろの席だと見えないのかもしれないです」
「え?そうなのか?」
「実はそうなんです・・・メガネかけてても後ろの席だと見えにくくて・・・」
「そうだったのか。それは悪かったな。しかし山田、よくわかったな」
「いや、そうかな~って思っただけです」

私はてきとうに誤魔化す。
ま、先生は私の家にモリスが居候してるの知ってるけどみんなの前では言わないだろうし。

「じゃ、斎藤の面倒は山田が見てあげてくれ。そうだな・・・山田と席も近いところにした方がいいな。・・・秋元!席1番後ろに行ってくれ。そこに斎藤が座ってくれ」
「え?!私の席??私の隣の人でも良くないですかぁ?」
「お前の隣の田中も目が悪い。お前は目はいいだろ」
「目はってなんですか!」

先生の視線が由紀子に鋭く刺さる。

「秋元・・・早くしないと授業が遅れるぞ」
「・・・はぁーい」

由紀子はしょんぼりしながら自分の荷物を持って後ろの席に移る。入れ替わりにモリスが前の席に座った。












休み時間になるとモリスの周りには人だかりが出来た。
みんな興味津々なんだろう。
モリスは1人が好きなのにこんなに人だかりになって大丈夫なんだろうか。

少し不安だったがあの輪の中に入る勇気もないので、私はモリスのことを話したくて陽菜のクラスに向かった。
陽菜の教室を覗くとクラスメイトと楽しそうに話す姿が見えた。

「陽菜!」
「千代!どうしたの?」

普段、自分のクラスじゃないところに行くなんて緊張するけど今回はそんなこと言ってられない!モリスがこの世界に来たことを陽菜に話さなくてはっ!!!!!

陽菜は話していたクラスメイトに断りを入れて、廊下で待っている私の元に来てくれた。

「あ、陽菜・・・ごめんね。ちょっと話したいことがあって・・・」
「どうしたの?」
「実は・・・私のクラスに転校生がきて・・・」
「あ、すごいイケメンって噂だよね。今から見に行ってみようかって友達とも話してたところなの」
「それがね・・・聞いて!モリスなの」
「え?・・・モリス?」
「そうなの!マド学のモリス本人なの!頭おかしいと思うかもしれないけど!」
「本当?!本人だと思うくらいモリスに激似なの?モリス推しの千代が言うならそうなんだろうね!ますます見たい!すぐ行こう!」

興奮した陽菜が私の背中を押して私の教室に向かう。

やっぱり本物のモリスだとは信じてもらえないか・・・。そりゃそうだよね。漫画のキャラだもの。でもマド学の話をモリス本人としたら信じてくれるかな。












「うーん・・・見えない・・・」

廊下の窓から教室の中を見るが、人の輪が出来てて肝心のモリスの姿が見えない。
陽菜は隣でガッカリしている。

「リアルモリス見たかったのに」



昨日あんな話をしたのは夢だったのかと思うくらい陽菜とは何事も無かったかのように話をしている。私が気にしすぎなのかな。






「うるさい!!」



急に教室に怒鳴り声が響いた。
教室内が静まり返り、1人の人物に注目が集まる。

裕樹だった。

「教室でしゃべったりするのは自由だけど周りのことも少しは考えてくれないか。勉強に集中できない」

裕樹が怒鳴ることなんてないからみんな呆気にとられていた。
まぁ、確かにいつもの休み時間よりみんなのテンションが上がっていて声も大きくなっていたのは否定できない。

「僕も転校してきたばかりで少し勉強したいから質問とか話は今度にしてくれないかな」

モリスが周りにいた人たちに言うと、ワラワラと解散していった。
そして、やっとモリスの姿が見えた。

「ほら。あそこに座ってるの」
「ん~???」

陽菜が目を凝らして見る。
黒い髪に黒い瞳、黒縁メガネに筋がスッと通った鼻。目の下にホクロ。
陽菜はモリスの姿を見て言葉を失っている。

「・・・どう?」
「・・・・・・やばい。本当にモリスじゃん。モリス本人!」
「そうでしょ?話したらもっと驚くよ」
「ほんと?是非話してみたい」
「じゃ、今度ね」


興奮している陽菜と別れて人混みが無くなった席に戻った。










うー。モリスに話しかけたいけど後ろの席ってなんか話しかけづらいな。

そう思いながら次の授業の教科書を引き出しから出す。


「千代」
「ぅえ?!な、何?」

急に前から”千代”と呼ばれて声が裏返る。

モリスが千代って呼んだ?!
あ、私の苗字言ってないからもしかしたら下の名前しか知らないのか。

「さっきはありがとう。席のこと気づいてくれて」
「あ、う、うん。どういたしまして」
「ところで勉強のこと教えて欲しいんだけど」
「え!勉強?!」
「こっちの世界の勉強がわかるのか知りたいんだが・・・」
「えーっと・・・私、勉強そんなに得意じゃなくて。・・・・裕樹。ちょっといい??」

私は隣で勉強している裕樹に助けを求める。
さっきのことがあったからなのか、いつも以上に不機嫌な顔でこちらを見る。

「んだよ」
「あのさ、各教科どこまで授業進んでるかモリス・・・くんに教えあげてほしいんだけど」
「え・・・なんで俺が」
「私が教えたら違うこと教えそうでさ・・・お願い!」

裕樹は私の顔を見てからモリスの顔を見る。

「ま、そうだろな」

・・・だめよ千代。モリスのため。我慢して。私じゃ、ちゃんと教えられないでしょ。あ~、こんなことならちゃんと勉強しておくんだった!

「じゃ、お願いね!」

そう言って私は自分の教科書に目を通す。

少しでも次の授業の予習しとこ。当てられて答えられなかったら嫌だし。モリスに変なとこ見せられないわ。

「おい」
「なに?」
「頼むからにはお前も聞けよ」
「え?!なんでよ」
「俺に丸投げするな」
「・・・わかったよ」

私は、予習を諦めて裕樹の方に机を近づけた。
モリスも後ろを向いて私の机に近づいて教科書とノートを出す。

「よろしく・・・えっと」
「吉田 裕樹。まずは次の授業の化学から説明しておく」
「お願いします」


私はため息をつきながら、隣のやる気満々のモリスを見て一緒に勉強できるならいいかと気合を入れて裕樹の説明を聞いた。


















本当にこの人は違う世界から来たの?
実は元々こっちの世界の人で全部記憶があって、私のことからかってるんじゃないの?

そう疑いたくなるくらい、裕樹の説明を一回で理解していくモリス。
私は一度授業受けてるはずなのに半分理解するので精一杯だった。

「君すごいな。ここまだ前の学校で習ってなかったんだろう?」
「教え方がうまいからだよ」
「君には教えがいがあるよ」
「また分からないことがあったら教えてくれるか?」
「あぁ。いいよ」

なぜか2人に友情が芽生えている。勉強で繋がってる友情だろうけど・・・似たもの同士だから惹かれるものがあるのかな。

「しかし、お前は一回授業受けたはずなのになぜ分からないんだ」
「・・・うっ」
「そんなんだから授業中に寝たりするんだ」
「ちょっ!それは言わないでよ」

裕樹の口を覆う。
モリスはその様子を黙ってみている。

「えっと・・・僕はお邪魔だったのかな?」
「違うよ!何言ってんのよ」

私は慌てて裕樹の口を覆った手を離す。

モリスに誤解されるのはどうしても避けたい。

モリスは私と裕樹を交互に見る。

「もう終わったからいいだろ」

裕樹はさっさと自分の勉強に戻る。
私も裕樹の机にくっつけてた自分の机を元の位置に戻した。

「ほんと色々助かったよ。放課後に学校の案内もいいか?」
「う、うん!もちろん」


モリスがこの世界に来て、私の世界が華やかになる。


モリスが前の席にいるって思うと勉強も頑張れる気がする。
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