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第6章 推測

田上の思惑

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昨日は大学を休んだ田上だったが、今日はしっかりと学校に出てきていた。

授業を受ける為では無い。本当は自分がもらうはずだった蒼い華が残っていないか探しに行く為である。

田上は紅い華の蜜を飲んだ自分の浅はかさを激しく後悔していた。翔子に対する恋心は想像以上に辛くて切ないものだった。

確かに今の自分には愛する人がいる。しかし簡単に翔子には振られてしまい、まるで自分の半身をもがれたかの様な痛みだった。あれからずっと考える事と言えば翔子のことばかりである。


普通の人間ならここで再度アタックするか、忘れるために何かをするなどの工夫を凝らすだろう。

しかし恋愛経験ゼロ、人を好きになったことすら無い田上にはこういう場合の自分の対処法が分からなかった……

昨日、田上は自宅で考えていた。燃えるような恋がしたいなんて自分はなんて愚かなことを考えたんだ。

こんなにつらいだなんて……その時、ふと田上は悪魔の言葉を思い出したのだ。

蒼い華は解毒剤だと悪魔は言っていた。

蒼い華の蜜を飲めば、この苦しみから逃れられるのではないだろうか?俺がもらうはずだった蒼い華が残ってないだろうか?

残念ながら田上は知らない。蒼い華の一つは自分の親友が持ち去り、もう一つは自分の今の想い人が持ち帰ったということを…

田上の中での推理はこうだ。

自分は最初、蒼い華をもらうはずだった。それなのに紅い華を持って帰ってしまった。おそらく紅い華を悪魔からもらう約束をした者がいたはずだ!

悪魔もあげる相手が決まっているようなことを言っていた。しかし、その誰かは指定の場所に行っても紅い華は無かった。

紅い華を必要とする人間が、それが無いからといって蒼い華を持ち帰ったりするだろうか?

いや持ち帰らない!!

田上は自分のことを棚に上げてこんなことを考えていた。

そう、蒼い華はたぶん残っているはずだ!!

田上は一生懸命蒼い華のあった辺りを探したがどうしてもそれは見つからなかった……

「何故だ?」

いったい誰が持って帰ったのだろう?

田上が部室の裏庭へ来てから華を探している間、隠れてその行動を見守っている者がいた。もちろん室町である。

明らかに田上は華の存在を知っている。田上の行動を見ていた室町は、そう確信した。

しかしなぜ知っているのかまでは分からない。自分と同じように悪魔に教えられたのだろうか?

室町は思う。田上は華を探していた。

紅い華の蜜を翔子に飲ませるため?いや、それは無い!!

室町は知っている。田上はそんな卑怯なことを考える男では無い。

では何故悪魔の華を探しているのだ?

少ない材料を寄せ集めて室町は一つの結論を出した。

田上は紅い華の蜜を誰かに飲まされた!

そして田上は自分が紅い華の蜜を飲まされた事に気付いた。それで解毒剤となる蒼い華を探している。

しかし、いったい誰が田上に紅い華の蜜を飲ませたのだろう?

状況からいって翔子の可能性が高いが、翔子のことをよく知っている室町としては翔子がそんなことをする子だとは思えなかった。

「ではいったい誰が?」
 
室町の推理はかなり的を射ていた。

しかし健全な彼には、さすがに田上が自分から積極的に紅い華の蜜を飲んだとは考えつきようも無かった……

一方、翔子の室町に対する想いは日に日に大きくなっていた。

「今日は室町先輩は何をしているんだろう?」

「好きな音楽は何だろう?」

「好きな食べ物は?」

翔子はなんだか楽しくなってきてしまった。薬の効果は絶大で、あんなに田上を想っていたのが嘘のようである。

ちなみに、室町が今日は何をしているのだろう?という質問に答えるなら、田上と翔子の事で本人達以上に悩んでいる。というところだろうか。

そんな室町の悩みをよそに、翔子が一途な想いを募らせていると、なんと室町の方から「今日の夜に会わないか?」とお誘いがあった。

翔子としては幸せの絶頂である!!
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