報われない恋

03 澤村友紀の場合。

　僕の傍にはいつも、幼馴染の隆ちゃんがいた。
　隆ちゃんはかっこよくて小さい時から憧れだった。


　隆ちゃんはかっこよくて、すぐに彼女が出来て
　いつも僕のずっと前を歩いている存在だった。


　そんな隆ちゃんは、鈍臭くて男の娘とか言われるような僕を見い捨てずにいつもそばにいてくれた。
　僕の顔のことで、いじめにあいそうになっていたら、いつも助けてくれた。


　隆ちゃんは憧れで、いつか隆ちゃんのようになりたいと思っていた。そして、たかちゃんは僕の自慢の友達だった。



　そんな僕にも春が来た。

　僕が好きになったのは、秋山神奈ちゃん。
　入学して何度目かの席替えで隣だった女の子。その子はこんな鈍臭い僕を見守ってくれて、隆ちゃんのような存在だった。
　だから、僕がその子に恋に落ちるのは簡単なことだった。

　その子の事が好きなことに気が付いてからは、僕のことも思ってほしいとか思うようになった。
　だけど僕は女の人に好かれるすべとか知らなくて、それでも彼女になってほしいと思って、僕は隆ちゃんに相談した。隆ちゃんならいろいろと知っていて、教えてくれると思って。


　隆ちゃんは僕の話を最後まで聞いてくれて、ちゃんと相談にのってくれた。


　たかちゃんのアドバイス通りにやっていたら、その子が僕を見るようになっていた。

　それからしばらくして、その子が彼女になってくれた。僕のヘタレっぷりでその子に告白する事がなかなか出来なくて、彼女になるまで時間がかかった。隆ちゃんも僕のヘタレっぷりには引いてたけど、それでも最後まで相談にのってくれていた。

　僕の女性経験がないがために、キスするタイミングとか、その……行為をするタイミングとか雰囲気までもたかちゃんに教わった。

　隆ちゃんのアドバイス通り、キスするタイミングは僕なりにわかって、僕からすることが出来た。キスすることに慣れてきたけど、それ以上のことをする勇気は僕になくてここでもヘタレっぷりが発揮してた。その事も隆ちゃんに相談にのってもらっていた。自分でもしつこいと思うくらい聞いていた自覚はある。だけど、僕の性格を知っているたかちゃんは見捨てないでくれた。

　それでも、なかなか出来ずにいた僕にしびれを切らした彼女から襲われるような感じで、僕と彼女は一線を越えた。

　だけど、僕は浮かれていてまだ気が付いてなかったんだ。あんなに傍にいてくれたたかちゃんとの距離が開いていることに…。
　だんだんと隆ちゃんがそばにいてくれないことに…。


　彼女と付き合って、慣れてきたころには平日はデート、週末は一人暮らしの僕の部屋で過ごすという生活を送っていた。


　最初の頃は彼女が出来て嬉しかったんだ。
　だけどどこか物足りないと感じがしたんだ。


　彼女とデートしているときにその物足りなさに気が付いた。

　僕の目には、隆ちゃんとその隣に知らない人が一緒にいるところを見かけた。
　何度か女の人を連れているのは見たことがあるけど、今回は……


　隆ちゃんの隣にいるオトコノコハ、ダレ？
　僕のシラナイ人。僕のシラナイたかちゃんノ笑顔。
　隆ちゃんの隣は僕のモノジャナカッタノ？


　それで気が付いた、どこが物足りないか

　あれだけいつも一緒にいた隆ちゃんが傍にいないこと。

　そこが気がかりで、それが彼女にも伝わったのか、僕らのデートは月日が経過するにつれて減っていった。それでも、週末の僕の部屋で過ごすことはまだ続いていた。

　そして、彼女が僕以外の男と逢っていることも知ってる。それを承知の上で僕らはまだ付き合ってる。

　心の中に隆ちゃんがいるけど、まだ僕は彼女も好きなんだ
　そして、隆ちゃんのあの笑顔をあの男の子だけ……


　だけどね、僕は欲張りなんだ。隆ちゃんの隣は返してほしいな？