知ってるけど言いたくない!

るー

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その6

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クリフォードの手はとても大きく、まるで杭で打ち付けられているようにエティの両腕は動かせなかった。全力で足掻いてもクリフォードは片手で軽く押さえているだけのようで眉ひとつ動かさない。

大きな身体が覆い被さった圧迫感と危機感から逃れようと、エティは必死に足をバタつかせたがシーツを蹴るだけで、そこから抜け出せる気配はなかった。

「……やだっ!離して!」
「フリだけだから協力しろ」

真上から降ってくる落ち着いた低い声にエティは思わずクリフォードを見上げた。息がかかるほど近い距離で視線が絡み、エティは怯んで身動きを止めた。

フリだからって何で押さえつける必要があるのよ!

そう言いたいのに喉が押し潰されたように声が出ない。黙って大人しくなったエティが協力体制に入ったと勘違いしたクリフォードは淡々と説明を始めた。

「お前がここでぶっ倒れた夜に来ていた女が、この屋敷に幽霊が出ると娼館《みせ》でいらん噂を立てたお陰で、もう誰も来なくなった。仕方ないからお前が代わりに喘げ」
「あ、あえ…!?……そんなの嫌に決まってんでしょ!!手首痛いから離して!」
「フリでいいって言ってるだろ?紫銀の女は俺が女とベッドにいるだけじゃなく、ヤってる時にしか来ないらしいから、お前が喘ぎ声を出さないと来ない」
「来ないならそれでいいじゃないの!問題解決!離してよっ!」

睨みながら腕を引っ張るがクリフォードは離すどころか掴む力を緩めてもくれない。エティは目の前にある形の良い高い鼻先に噛み付いてやろうかと目線で狙いを定めた。ここまでされたのなら正当防衛だ。しかしクリフォードは少し身を引いてエティから間をとった。口角を片側だけ上げて笑ったのを見ると、エティがしようとしていた事に気づいたようだ。小馬鹿にするように笑われエティの頭の中で何かがブチッと切れた。

「もう、嫌。何で私がそんな恥ずかしい事をしなきゃいけないの?紫銀の女を捕まえると言った言葉を撤回します。……離して下さい」

エティはそっぽを向いて冷たい口調ではっきりと言った。もう逃げようともせずに身体は脱力している。ここ何日かのクリフォードとのやりとりの不満が一気に押し寄せ、エティは究極に怒っていた。爆発するより冷静沈着に怒りを表すタイプだと自分で初めて知った。

先程までの威勢とは真逆のエティの様子にクリフォードはどうしたもんかと思考しているようだった。僅かに沈黙が生まれたのちクリフォードが思いついたように口を開いた。

「何か褒美をやるから最後まで付き合えよ。俺はさっさと正体を突き止めたいんだよ」

物で吊ろうって魂胆か。そんな誘いに乗るわけないでしょ、と言いかけてエティは気づいてしまった。

「……レオに、レオに乗せてくれるなら……協力する!」
「レオ?俺の馬の?どうしてそこにレオが出てくるんだ?」

不思議そうに尋ねてくるクリフォードにエティは再び視線を合わせると荒っぽく説明した。

「私がお世話してるのっ。今朝だって私が餌をあげたかったのに……」

***

「へえ、お前が面倒見てたのか」

クリフォードは物珍しい目でエティを眺めた。ハンクから女中の一人が進んで世話係になったとは報告を受けていたが、こんな子どものように小さな身体のエティだったと知ってクリフォードは驚いた。
最近のレオの毛艶の良さや常に機嫌がいいという変化はもしかしたらエティの世話の成果なのだろうか。「餌をあげたかった」その口調からエティはよっぽど馬が好きなのだと感じ取れた。
クリフォードはフッと笑みを作ると「わかった」と答えた。

「えっ、本当に!?」
「俺はいいがレオ自身が許可するかは知らないぞ。あいつは俺以外の人を乗せたことがないからな」

怒っていた顔とは打って変わって嬉しそうに喜ぶエティの表情に、クリフォードは知らず知らずのうちに目を奪われていた。クリフォードがよく見ている女性達とは違って、化粧っ気の全くない素顔のエティの笑顔は新鮮だった。

***

クリフォードは押さえつけていたエティの両腕をやっと解放した。しかし身体は覆い被さったままで互いの距離は変わらない。エティは押さえられていたせいで痺れた指先でまだ痛みの残る手首をさすった。

「交渉成立だな。さ、思う存分喘いでくれ」

エティは途端に顔を真っ赤に染めた。

「は、恥ずかしいから目を瞑ってて」
「恥ずかしがる事か?仕方ねぇな」

恥ずかしいに決まってるでしょ!

人前で、しかもこんな至近距離にクリフォードがいて、寝室の隣の部屋《リビング》にはハンクがいる。演技どころろかエティは今までそんな艶っぽい声を出した事がなかった。躊躇したがレオに乗りたいが為に気を取り直した。軽く咳払いをして以前聞いた化粧の濃い女性の声を思い出す。

「……あ、ああん……、そ、そこいいわあ……」
「っはははっ!!」

全くの棒読みにクリフォードが耐えかねて笑い声を上げた。自分が想像していたのと程遠い仕上がりにエティは耳まで赤くさせ顔を両手で覆った。もう恥ずかしいなんてもんじゃない。消えてなくなりたいくらいの羞恥だった。聞いた事があるからといってもそう簡単にはいかなかった。エティは圧倒的に経験値が足りなさすぎた。

クリフォードはくっくっと笑いながらエティの両脚を割って間に入った。

「お前下手すぎだろ。手伝ってやるよ」
「やっ……!!」

驚いて起き上がろうとしたエティの両腕をまた頭上で捕えると、クリフォードはあろうことか捲り上がったスカートの中に手を入れてきた。まだ赤みの残る顔に恥ずかしさで滲んでいた僅かな涙が、困惑の表情に変わる。

「い、いや……!」
「少し気持ちよくしてやるだけだ。本当にヤらないから安心して感じろ。怖いなら目でも閉じておけ」

ふわりと優しく言われたがクリフォードのバスローブから覗く胸板と、エティを見下ろすフェルモンたっぷりの綺麗な顔が胸を騒つかせた。

クリフォードの手は指先を軽く肌にあてるようにしてエティの腿を撫で始めた。膝から腿裏にかけて何度も往復する。その度にエティは逃げるように脚を動かすが触られる場所がずれるくらいで何の抵抗にもならなかった。クリフォードが撫で上げる度にぞわぞわと身体を襲う何かが怖くて、エティはぎゅっと瞳を閉じた。決して乱暴ではなく優しい手つきに恐怖は感じないが、騒ついている心がどんど膨らんでいく。脚を離れ上半身を探り出した大きな手は女中服の上から胸の丸みをなぞると胸先を軽く握った。

「……っ!」

エティの身体は思わずビクッと揺れた。目を閉じていたせいで身体が受ける刺激をモロに感じ取ってしまった。

や、やだ、私今……。

ゆっくり考える間も無く何度も同じ場所を攻められエティの息は徐々に浅くなってきていた。頃合いを見たのかクリフォードは女中服の前ボタンを外して手を滑り込ませると直に胸に触れてきた。

「やっ……!」

嘘でしょ!!とクリフォードを見ると口元を緩めて観察するようにエティを眺めていた。

「小さくてもちゃんと感じるんだな」

そう言うと胸先を指先でキュッと摘んだ。

「……っあっ!」

直に触っている事や小さいと言われた事など、抗議する言葉より先にエティの口からは霰もない声が漏れた。クリフォードが与える刺激で生まれるこの感覚が感じるという物なのだと、エティは身体を震わせながら理解した。それと共に身体から自然と力が抜け、自分を包む快楽に身を委ね始めた。エティはもう抵抗するという思考すら無くなるほどクリフォードに感じさせられていた。

「……はっ……あっ……」

増え始めたエティの甘い声にクリフォードは満足そうにエティを見下ろしていた。

「……お前の肌、柔らかくて気持ちいいな」

目を細めボソッと呟くとクリフォードはエティの胸元に顔を寄せた。指や手よりも柔らかい何かが鎖骨の辺りに触れ、ゆっくりと下へ滑っていく。くすぐったいような感覚にエティは眉根を寄せて小さく息を吐いた。やがて少し硬くなった先っぽに暖かい物が覆った。なんとも心地よい感覚にエティが自分を見下ろすとクリフォードが自分の胸を口に含んでいるのが視界に入った。身体と視界と両方から受ける刺激が合わさって、エティの身体の奥の方でじわじわと何かが疼いた。

「あ……んっ……」

いつの間にか自由になっていたエティの両腕は、僅かに残る恥じらいが働き、声を抑えるように口元にあてていた。露わになったままの脚を弄り出したクリフォードの手は、最初よりもねっとりした手つきでお尻の丸みまで触り、エティを更に追い立てていった。
やがて女中服を本格的に脱がされ始めたエティは我に返った。

「……やだっ!」
「最後まではしないから大人しく脱げ。このままだと服にシワがつく」

シワになってもこの後自室に戻るだけなので特に問題ないのに、クリフォードの真面目な顔つきにエティは妙に納得してしまった。クリフォードに押し倒されてから初めてだらけのことばかりでエティはもういっぱいいっぱいだった。抱きかかえられベッドに座らされるとクリフォードは慣れた手つきでエティから簡単に女中服を脱がせた。

下の下着だけつけている状態になるとエティはとてつもなく不安になって、露わになった肌を隠すように自身を抱きしめた。いくらレオに乗るためとはいえ、ここまでされるとは予想もできなかった。動揺して視線を彷徨わせていると向かい合わせで座っているクリフォードが乱れて解《ほど》けかけたエティの紫銀の髪を全て下ろし、指で梳き出した。

「な、何?」
「いや、髪も触り心地いいなと思って。それにこうされてると気持ちよくないか?」
「べっ、別に……」

嘘だ。かなり、めちゃくちゃ気持ちいい……!!


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