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その22
しおりを挟むクリフォードがウチにいる風景なんて、なんか変……。
キョロキョロ家中を見回すクリフォードをリビングに座らせ、エティはお茶を用意した。向かい合わせに腰を下ろしたエティはそこに座った事をすぐに後悔した。正面では必然的に視線が合ってしまう。
「両親にその姿はどう説明するんだ。俺のせいだし、俺が説明しようか?」
冗談じゃない、一体何て説明するつもりなんだ!?無理矢理純潔を奪われた事とか親には知られたくない!
エティは慌てて首を横に振った。
「大丈夫!最後に会ったのが2年近く前だから、普通に成長したと思うでしょ」
「そうか、そうだな……」
クリフォードは目線を落として返事をした。どうやら、自分のせいで身体が変化してしまったエティに少しでも何かしたいと思っているようだ。
違うよ、と教えるには身体の変化の説明ができない。クリフォードには申し訳ないがこのまま勘違いを通させてもらう事に決めた。
「……さっきの、白い馬はエティの馬か?」
「シロの事?そうよ。今は母が乗ってるけど」
シロ?と名前を聞いてクリフォードは笑い出した。安直な名前は誰が聞いても同じ反応だ。
「私じゃないわよ。母がつけたのよ。シロの前では笑わないでよ。気にしてるから」
「わ、わかった」
笑い終わったクリフォードはお茶を啜りながら戸惑いがちに訊ねてきた。
「気のせいかな、エティの後ろにうさぎが何匹か見えるが……」
「母のお友達よ」
「そ、そうか」
「エティ、窓から鳥がたくさん入ってきたが……いいのか?」
「母のお友達よ。たぶん母が帰って来たんだわ。見てくるからここで待ってて」
「あ、ああ」
動揺しまくっているクリフォードを残して、エティが表に出るとやはり母の姿がそこにあった。
「あら!もう着いてたのね」
明るく笑う顔はエティと同じ白い肌に深い翡翠色の瞳、それに銀の長い髪。顔立ちはエティと似ているが、髪色や瞳の色など少しづつ違った。
「綺麗になっちゃって!さすが私の娘ね」
「母さん……。色々聞きたい事が山積みなんだけど」
「後にしない?お客様連れて来たんでしょ?」
おもてなしの用意をしようと買い物に出ていたのだろう。エティの母は荷物をたくさん抱えていた。それを半分持つと思いの外ずっしり重みがあった。
「よく一人で運んだね」
「言ってなかったっけ?私は重さを感じないのよ」
「え?そうなの?いいなぁ」
「エティの力は私に似てるから、もしかして後でそうなるかもね」
「そういった便利な部分は是非欲しいわ」
エティ母はキッチンに荷物を下ろすとささっと身なりを整えた。
「さて、エティの恋人を紹介してもらおうかしら」
「何言ってるの?クリフォードはそんなんじゃないわよ。勝手についてきただけだもん」
「でも、エティの殻を破った人でしょ?」
「殻って……、もしかして魔力が生まれるきっかけが、あの行為だっていうのを知ってたの?」
「そうよ。因みにエティに魔力が宿った時に、どれだけ離れていてもわかるようにしてあったわ」
「なんて恥ずかしい真似を……」
ブツブツ言うエティを置いて、エティ母は楽しそうにリビングへ向かった。
そして勢いよく開けた扉を、母はすぐに閉じた。
「エティ、あの人カッコいいんだけど、呪いがついてるわよ」
「……知ってる。でも本人は知らないから知らん顔してくれる?」
「どうして黙ってるの?恋人でしょう?」
「恋人じゃないってば。だから呪いも私に関係ないの」
「でも彼、ここまでエティを送ってくれたんでしょう?」
クリフォードはただ気軽についてきただけと思っていたけど、昨夜の発言を聞いてやはりそうなのかとエティも思い始めた。
「……うん。宿も食事も、服も面倒見てもらった。だから、今晩ここに泊めてもいい?」
「もちろんよ。さ、彼、うさぎ達に囲まれて固まってたわよ。助けてあげたら?」
エティ母は再び勢いよく扉を開けると明るく挨拶をした。
「初めまして、エティの母のリリアンよ」
「ご不在時に訪問してしまい申し訳ありませんでした。クリフォード・ジェームズです」
クリフォードは膝の上に乗っていたうさぎを慌てて下ろすと、リリアンの手を取り手の甲にキスを落とした。
そんな紳士的な姿を初めて見たエティは、さすが絵になるなぁと妙に感心してしまった。
エティがお茶を淹れなおし、今度はクリフォードの正面にリリアンが座った。エティはリリアンの横かクリフォードの横、どちらに座ろうか迷っているとクリフォードが席を立ってエティの手を引いた。ちょこんとクリフォードの横に座るとリリアンが冷やかすようにニヤニヤした顔でエティに視線を送った。
「クリフォードさんは歳はいくつ?」
「26です」
「えっ、そうなの?」
横で驚くエティに、クリフォードはそういえば言ってなかったな、と笑った。
「いくつに見えてたんだ?」
「てっきり30くらいかと…」
「さすがにそれは酷くないか?」
2人のやり取りを見てリリアンは笑みをこぼした。
「クリフォードさん、エティを送ってくれてありがとう。たいしたもてなしはできないけど今夜はゆっくりしていってね」
リリアンはそう言うとリビングから出て行った。リリアンについてうさぎと小鳥達はみんな去って行った。それを呆気にとられたように見送ったクリフォードは横に座るエティに訊ねた。
「今夜って?」
「ウチに泊まっていくでしょ?それとも本当はどこかに用事があった?」
エティはきちんとクリフォードの顔を見て質問した。返事の内容によっては言わなければいけない言葉がある。
「用事は、……半分終わった」
残りの半分はエティを連れて帰る事だと、言われなくても理解できた。
「フォード、ここまでありがとう。帰りもお願いします」
エティの真っ直ぐな言葉にクリフォードは驚き、青い瞳を瞠いた。
「キスは我慢する。抱き締めてもいいか?」
仕方ないな、とエティが苦笑いするとすぐにクリフォードの腕がエティを包んだ。よく考えたら正面からまともに抱き締められるのは初めてじゃないだろうか。
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