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しおりを挟む愁にシャンプー、トリートメントをしてもらった凛斗は先に風呂から上がった。着てきた服をまた身につけると愁の部屋で愁が戻ってくるのを待った。部屋はエアコンが効いていてとても涼しい。悪いかなとは思いつつ、部屋の中をあちこち眺めていると愁が戻ってきた。愁も髪を洗ったらしく髪は湿っている。
「お待たせしました。お茶か水どちらがいいですか?」
「じゃあ水で」
ペットボトルを受け取り、凛斗はそれをすぐ開けて飲んだ。ぬるま湯といえど長時間浸かれば喉は渇く。愁はドライヤー片手にベッドの側に座った。
「凛斗」
おいで、と言わんばかりにカーペットをポンポンと叩く。前にブローされた時と全く同じだ。先ほどのシャンプーも極上だったが、あの時のブローもとても気持ち良かった。凛斗はちょっとワクワクしながらちょこんと愁の前に座った。しかし凛斗はすぐに間抜けな声を上げた。
「わあっ!」
「あ、すみません。近い方がやりやすいので……」
腰を掴まれ背後にくいっと引かれて、お尻が愁の腿に挟まれている体勢になった。
「さすがにこんな近いとやりにくくないか?おまえベッドに座ったら?」
「大丈夫ですよ。僕はベッドに凭れてるし、さっきも言ったようにこの方がやりやすいんです」
「ならいいけど……」
微妙に気になる距離感だったが、愁の練習のためには少しくらい我慢しようと凛斗はそのまま大人しくその場に収まった。タオルで髪の水分を拭かれ、すぐにトロンとなる。ブローが始まり愁の指先が髪を梳くとまた身体の力が抜けるような心地よさが襲う。ご主人様に撫でられて喜ぶ犬の気持ちがなんだかわかる気がする。頭とか髪を触られるのってこんな気持ち良かったんだな。
ブローが二度目という事もあり、凛斗はリラックスして早い段階からウトウトし始めてしまった。頭がかっくんかっくん揺れて、愁は作業しづらいだろうなと思いつつも微睡みは消え去らなかった。
「……ん、ん?」
ぼーっとしながら視界に入ってきた見慣れない景色を眺める。どこだっけ?どっかで見たな。視線を動かすと、さっき暇つぶしに眺めた愁の部屋だとわかった。しまった。結局髪を乾かしてもらいながら寝ちゃったのか。体を動かそうとしてハッとする。なんだか背中が温かくて柔らかい……。俺、どこで寝てる?恐る恐る視線を下に移すと、とんでもない状況が目に入った。
凛斗は髪を乾かしてもらっていた体勢からそのまま背後に凭れ込んで愁の懐にいた。
「うわっ……ごめん!」
「おはよう凛斗。もう起きちゃったんだ?もっと寝ててもいいですよ」
「いやいや、眠気なんかとっくに吹っ飛んでるって」
慌てて愁の上から降りようとしたが腰に回っていた片腕にその動きを止められた。首を捻って振り向くとすぐ近くに形のいい唇が見えて、あまりの顔の近さに息を飲んで前を向いた。男のくせに荒れていない綺麗な唇だ。
「俺どれくらい寝てた?」
「15分くらいですよ。」
後頭部辺りから聞こえる愁の声は楽しそうだった。凛斗は、子供みたいに寝てしまったのを笑われたと思い顔を赤らめた。
「わ、悪りぃ……重かっただろ。床に転がしてくれれば良かったのに」
そう言いながら体を離そうと身じろぎしたが、逆に抱きしめられるように両腕に包まれた。身じろぎしたせいで、背中から抱えられる形だったのが正面から抱きしめられている状態になり、凛斗は頭を混乱させた。
「え、な、なに?」
「凛斗から僕と同じ匂いがする。まるで僕にマーキングされたみたいですね」
「マ、マーキング?」
前髪辺りに顔を寄せられて愁の息がかかった。全身くまなく密着した体勢で囁かれ、身体が痺れたように動けなくなる。一体何が起こっている?激しい動揺で思考があれこれ巡ってまとまらない。凛斗が目を白黒させていると愁がそっと顔を覗き込んできた。その表情はいつもの優しさに加え愛しいものを見るような甘さを含んでいた。なんでそんな顔してるんだと思った瞬間、愁は信じられない言葉を言った。
「凛斗、キスしていいですか?」
「はあっ?!何言ってんだよ!おまえ紗希の彼氏だろ!?」
「そうですね、一応」
こいつ男にも手を出すやつなのか。裏切られたようなショックを受け、愁の腕から逃げようと必死にもがくが、残念な事に全く歯が立たない。愁の引き締まった筋肉はお飾りじゃなかった。いとも簡単にカーペットの上に組み敷かれて身動きが取れない。力尽くではあるが決して乱暴ではない、中途半端な優しさに腹が立った。
「……やめろ。俺をからかうな」
「からかってなんかいません。本気ですよ。最初見た時から惹かれた」
「っ……む、う!!」
愁の大きな手で顔を固定されてキスをされた。引き結んだ凛斗の唇をこじ開ける様にして愁の舌が進入してきた。熱く蠢く物体に口内を弄られ、背中を何かが駆け抜けるような感覚を覚え手足が震えた。凛斗が驚いて大人しくなったのをいい事に、愁はより深く唇を重ねると歯列をなぞり上顎を舐め上げた。
こんな濃厚なキスした事ない。昔付き合っていた彼女とは軽く舌を絡ませる程度のディープキスだった。愁からの激しいキスは凛斗には未知の世界だった。
(キスってこんな気持ちよかったっけ……?)
初めてリードされるキスに抵抗もできずに刺激を受け続けていると、体の指導権を全て奪われてしまったように力が抜けていった。
「……っふ、……ン…」
ジワジワと広がっていく痺れはやがて熱を生み、凛斗の色白の肌は仄かに色づき始めた。愁から与えられる心地よさは格別で、それを求めるかのように自分からも愁に合わせて舌を絡ませていた。しばらくして愁の手がゆっくりと凛斗の中心に向かって服の上を滑っていった。
「嘘、だろ……そんなトコ触んな」
うわずった声で力なく訴えるが、愁の手を払いのけられない。もうどこか諦めているかのように目を瞑り顔を逸らして湿った息を逃した。
「凛斗、大っきくなってる。気持ちいいですか……?」
「は……あっ」
素直に反応してしまっている膨らみを撫で上げられ大きく声が漏れた。カチャと音がしてベルトが外され、くつろげられたジーンズの隙間から差し込まれた手に直に触れられた。湿った先っぽを指先でクルクルと塗り広げられ腰が浮く。凛斗のモノが硬さを増し、服の中が窮屈になると愁はジーンズをずらして屹立を外気に晒した。心もとなさから体を反転させ局部を隠すが、あっけなく愁の手に包まれた。
「やめっ……やっ…」
「凛斗……色っぽいですね」
はぁ、と凛斗に負けないくらい熱い息をこぼす愁の瞳は、凛斗の表情を少しも見逃さないと言わんばかりに固定されていた。凛斗を煽るかのように耳元で囁き頬にキスを落とす。
愁はクチュと音を立て竿を手に馴染むように握り直すと、そろりと上下に擦り始めた。男に触られて淫らな気持ちになるなんてこんなの間違ってると、頭のどこかで否定しながらも体は高揚していく。自分でする時とは違う刺激が襲い、あまりの気持ちよさに眉をひそめた。
凛斗の反応を確認しながら触っていた愁は、凛斗が眉を寄せたのを見て、与える刺激が強すぎたのかと握る手を緩めた。急に遠のいた快楽を求めるように、凛斗の屹立はピクピクと震え、同時に物欲しげな顔を愁に向けてしまった。愁と目が合い、恥ずかしさで心臓が壊れそうなほと激しく脈打った。愁は嬉しそうに口元を緩めると甘やかすような口調になった。
「どれくらいの強さが気持ちいい?」
「……ンな事聞くなっ…!勝手にやればいいだろ」
「これは?」
「っ……ん」
少しぎこちなく再開された手の動きを、全神経で感じ取り快感に屈服する。薄眼を開けると必ず愁と目が合い、手だけじゃなく目でも犯されている気分になった。どこからどう見ても気持ちいいとよがってしまっている自分に、羞恥心が湧いては愁の手で五感が官能に上書きされていく。
「……は、なせ。…ヤバい」
「イきそう?いいよ。凛斗が気持ちよくなるところ見せて」
「………っ!!」
パンパンに張り詰めた屹立を強めに擦られ、声を殺しながら熱を放出した。駆け抜けていった快楽の余韻が抜けきらないうちに愁が唇を重ねてきた。最初の強引さは微塵も感じさせないほど優しく啄まれたが、凛斗は脱力したままいっさい応えなかった。達した事で麻痺していた理性がまともに戻り、自分の置かれた状況を把握して抜け殻の気分になった。
「声もっと聞きたかったな。凛斗、かわいかった」
愁は凛斗の閉じた瞼に満足そうにキスをした後、髪を拭いたタオルで汚れた部分を綺麗にした。抱きしめようと体を寄せてきた愁を突き飛ばし、凛斗はフラフラと愁の部屋を出た。
「凛斗?どこに行くんですか?」
「……帰る」
「え、ちょっと待って。もしかして怒ってるんですか?」
「当たり前だろ!?あんな……あんな事されて怒らないわけないだろ!?」
「もしかして気持ちよくなかった?次は気をつけますから……」
「次なんかあってたまるかよ!!離せっ!」
「凛斗……」
「最低だ。二度と顔見せんな!」
掴まれた腕を振り払い、そのまま振り返らずに愁の家を後にした。帰り道、凛斗の捨て台詞を聞いた時の愁の悲しそうな表情が頭をチラついて苛立ちを募らせた。
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