sideBの憂鬱

るー

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『時間をかけて慣れればいい』


 苦手な事を克服するにはどうすればいいかと、賢治に訊ねた時に返ってきた答えだ。


 回数を重ねて徐々に慣らしていく方法と、たっぷり時間をかけて慣らして一度で済ませる方法の二択。どちらにしても、今の愁なら嫌な顔せず凛斗に合わせて進めてくれる……はず。


 前回の暴走を微塵も感じさせないほど丁寧な触れ方に、あの時の愁はよほど余裕がなかったのだと知らされる。1本から2本に増えた愁の長い指が、クチュクチュと音を立ててゆっくりと入り口を行き来するたびに、ぞわぞわと今まで感じた事ない感覚が体内を駆け巡る。そのくすぐったいような痺れに似た感覚が、内側からジワリと肌の表面に浸透していくのを感じて、両手でシーツをギュッと握りしめた。


「……っふ、ぅ…」

「最初より柔らかくなってきた。入り口もだけど、中も……」

「ッあ!!」


 愁の指が内側のある場所をなぞった瞬間、凛斗の全身がビクッと大きく揺れた。思わずこぼれ出た甘くて高い声に、愁どころか、出した本人も目を見開いて驚いた。


「もしかして今のところ……ああ、あった。ここ、気持ちよかったですか?」

「ああっ!! ……やっ、そこっ……!!」


 変になる、と言葉を続けられずにクッションに顔を埋めた。剥き出しの神経に触られたみたいな強い刺激に脚はガクガクと震え、眩暈を起こしたように目の前がチカチカした。


「ちょっと強かったですか? これくらいならどうです?」


 先程よりもゆっくりと指が動いて、凛斗のいい場所を優しく撫でた。


「は……っ、ンッ」

「凛斗、感じてるね。かわいい」

「やっ、…しゅう」

「実はもう3本目も入っちゃってます。その様子だと痛みはないようですね」

「え、うそ……」


 その部分が見える訳ないのについ振り向いてしまった。上気して無駄に色気を増した愁と目が合う。

 言われてみれば1、2本の時よりも窮屈そうに出入りしている感じだ。いつの間に……と感心するしかない。指を増やされた時もだが、今も入り口を広げられている痛みなんて全くない。痛みがあったとしても、その奥でそれを上回るくらいの快楽を作り出されてしまっては気づけるはずもなかった。


「あっ、そこばっかりいじんなっ……」

「だってこのコリコリしたところ、ほら、こうすると凛斗の中、僕の指をキュウキュウ締め付けていますよ。真っ赤になってトロけるようなかわいい顔してるし、気持ちいいってことですよね?」

「うっ……ンッ、やめろっ、イキそうになるだろ! もう大丈夫だからソレ挿れろよ!」


 すっかり弱い場所を把握されてしまい、素直に反応している自分の身体が何となく歯がゆい。二人とも真っ裸で、どの程度興奮しているのかお互いモロバレだ。凛斗はいいところを刺激されたせいで完全に勃ち上がって、少しでも直接触れられたら達してしまいそうだ。

 一方、愁も逞しい腹筋の下方で、はちきれそうなほど反り上がった愁自身がお預けを食らった犬がヨダレを垂らすみたいに、先っぽから透明な液体が溢れている。早く挿れたいだろうにに凛斗のために我慢していたに違いない。


「もう少し慣らしてからにした方が……」

「冗談抜きでイキそうなんだよ。……頼む」


 愁が可愛いと連呼する表情を武器にして見上げる。ゴクリと音が聞こえそうなほど唾を飲み込んだ愁は軽く頷くと黙って挿れる準備をした。慣らされていた体勢と同じ姿のまま愁が入ってくるのを待つと、指よりも熱いものが後ろに触れ、いよいよだという思いで目を閉じる。


「本気で無理だと感じたら我慢しないでください」

「……ん、わかった。……クッ」

「凛斗、息止めないでゆっくり吐いて」


 体重をかけるようにして入り込んできた存在は想像以上に硬くて熱かった。覚悟を決めていたものの、押し広げられるような痛みに襲われ強く目を瞑った。息を止めないようにすると、受けている感覚が全て声に現れて、痛がっているのが愁に伝わってしまいそうだった。口元をクッションに押し当て震える声を必死に隠した。


「うわ、凛斗の中……あったかくて気持ちいい。半分ほど入りましたけど大丈夫ですか?」


 いちいち説明くれなくていいからさっさと続けてくれと思いながらコクコクと頷く。ゆっくり進めてくれてるのは、凛斗が痛くないようにという愁の優しさなのだろうが、残念ながら痛いものは痛い。凛斗を気遣う愁の声を励みになんとか堪えた。やがてその痛みより圧迫感で苦しくなった頃、尻に暖かい肌がぴったりくっついた。


(ぜんぶ……入ったのか?)


 結局ずっと力んだままだった。これでは挿れる側も大変だっただろう。ひとまず安心してフゥと息を吐き振り返ると、緊張した面持ちだった愁がギョッと驚いた。


「えっ、凛斗!? な、なんで泣いてるんですか!? 痛いですか!?」

「あっ! せっかく入ったのに抜くな!」


 身体を離そうとした愁の脚を掴んで引き留めると愁は一瞬躊躇ったが、また腰をぴったりくっつけてきた。


「無理してるんでしょう?まったくあなたって人は……」


 そして文句を言いながら手を伸ばして、凛斗の頬についている涙を拭った。否定も肯定もしなかったが無理をしたのはしっかりバレてしまった。実際かなり無理した。こんな痛みは初めてで一瞬気が遠くなりかけたくらいだったが、愁と繋がったと思ったら痛みを上回る嬉しさがあったので我慢できた。自分でも驚きだ。


「そんな心配しなくていいよ。悪いけど馴染むまでじっとしててくれるか?」

「もちろんです。して欲しい事あったら何でも言ってください」


 いつもの穏やかな笑顔で甘やかされる。暖かい手が頬を撫で、乱れた髪を梳いた。強引に迫ってキスするくせに、こんな時とめどなく優しい。


 ジッとしていると凛斗の中にいる愁がもどかしそうにピクピクしているのが伝わってくる。最初入って来た時よりもサイズは変わってないと思う。色っぽさが抜け落ちた場面だったのによく萎えないものだ。凛斗のモノは痛みのせいかすっかり芯をなくしていた。しかし愁と視線を合わせているだけで、胸が高鳴り体温は上がってくる。


「……なんか急にキュッてなりましたけど……」

「あ、……うん」


 愁のモノを締め付けたのが自分でもわかった。愁の顔見てたら勝手になっちゃっただけで、自分の意思でやったわけではない。というか、やろうと思ってもできない。


「愁、もう動いても大丈夫……だと思う」

「えっと、嬉しいですけど今度は僕が大丈夫じゃなさそうです。凛斗の中気持ちよくてすぐイっちゃいそう」


 愁の息が乱れていたのは気のせいじゃなかった。動かないでと頼んだ後、愁は無理のない態勢でジッとしてくれたが、時折熱い息を小さく漏らしていた。

 入れただけで動いてないのに気持ちいいんだ。俺の中で気持ちよくなってくれてるんだ。そう考えると身体の奥が妙に疼いて、また愁を締め付ける。


「く……っ。じゃあ、ゆっくり動きますよ」


 そう言って、入って来た時と同じくらい優しくゆっくり始まった。圧迫感は残るもののもう痛みはほとんどなく、ゾワゾワとしたなんとも言えない感覚が生まれていた。何よりも愁が奥に来るたびに肌が密着して、それがとても心地よかった。愁は凛斗の様子を伺いながら抽送のスピードを速めていった。


「はっ、ンッ、ンッ…」


 愁が送り込んでくる熱に、凛斗は自然と艶のある声が漏れてしまう。たっぷり塗り込んだハンドクリームのせいでクチュクチュと厭らしい音が部屋に響いて、お互い気分が高まっているのがわかった。


「ごめんっ、もうイキそう……!」


 より一層強く腰を打ち付けた愁は凛斗の腰をグッと引き寄せ、より深く奥へ自身を押し込むと歯を食いしばりながら達した。


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