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しおりを挟む直前までポンポン言い合っていた空気とは打って変わって部屋の中は静まり返った。凛斗の射抜くような強い眼差しに、愁はしまったと顔をしかめた。
「今のは言葉の綾です」
「へぇ。で、俺はうっかり好意を寄せらるように振る舞って見えるわけだ」
「凛斗、本気で怒るよ」
「もう怒ってるじゃねーか」
今まで見た事ないくらい険しい顔つきの愁に、一瞬腹の底がヒヤリとする。凛斗が捻くれた言い方したせいで怒ったようだ。しかし愁の言い分が理解できない凛斗は折れるつもりは微塵もなかった。愁は組み敷いて乱暴に押さえつけた凛斗の手首から手を離すと、今度は指を絡めて手を重ねた。手を繋がれても凛斗は握り返さず、身体を脱力させたまますぐ真上にある愁を見つめた。
気持ちのズレを感じて、もどかしさが募る。お互いそんな表情だ。
相手の出方を伺うような沈黙を経て、愁が苛立ち混じりの声を出した。
「凛斗が賢治さんを好きになったり、凛斗の魅力に気付いた周りの人が凛斗に迫ったりとか考えたら…そんなの耐えられない……!」
「そんな事にはならねぇよ」
ただのヤキモチだった。
賢治は大学で一番仲がよくて気も合うが、それ以上の感情を持った事もないし、今後も絶対ないと言える。愁という前例があるので、他の男から迫られたりしないと断言できないが、そうなっても決して靡いたりしない。優しい言葉で凛斗の気持ちを教えてやればよかったかもしれないが、出てきたのは呆れたように冷たい言い草だった。
そんなあっさり気移りすると思われてたなんて腹が立った。しかし、最初はノーマルだからと愁を拒否したくせにキスされてコロッと落ちた立場としては、そう思われていても仕方ない。うっかり好きになったのはこっちの方だ。
「凛斗は自分がどれだけ魅力的かわかってない! 凛斗がどんどん可愛くなって目が離せないなんて、そんな想いをするのは僕だけがいい」
言い終わる頃には唇は重なり、すぐに啄ばみ、分厚い舌が強引に入り込んできた。
(キスは反則だろ……)
頭ではそう思っても、注がれる熱を喜び、強く握られた指を同じ強さで握り返す。余すことなく口内を探った舌がやっと出ていったかと思ったら、今度は強く吸われて舌を持っていかれた。甘噛みしながら舌先をこちょこちょと擽られ、自然と鼻から声が抜ける。
「凛斗……」
これから始まる行為を匂わせるような、熱の込もった呼びかけに、凛斗も期待した眼差しを向ける。
「賢治と距離置けとか、おまえが何で急にそう言い出したのかわかんねぇ。俺が付き合ってんのは愁、おまえだろ? 誰が誰を好きになっても、俺が愁を好きなのは明確で変わってないじゃんか」
キスされて、こんなになってる俺を見てわかんねぇの?
「もっと俺を見て、信用しろ」
「……凛斗っ」
切ない表情で強く唇を押し当てられた。さっきよりも激しく貪るようなキスにクラクラした。理性を捨てて本能から求められているみたいで、こんなのも悪くないと愁の首に手を回して引き寄せるようにしがみついた。
破かれるんじゃないかという勢いで服を剥ぎ取られ、あっという間に裸にされた。獣のようにギラギラとした瞳と抑えようとしない欲情が、いつもの穏やかな愁とは別人のように感じさせた。
「愁、ベッドがいい」
カーペットの上だと愁の重みがかかった時に少し痛い。甘えるように言うと愁は凛斗を抱えてベッドへ移動した。そしてついでにベッドの枕元に置いてあった小さな網カゴの中からゴムと容器を一つ取り出した。無造作に置かれたそれを手に取ってみると透明な液体のローションだった。
(専用のローションだ。ちゃんと用意してたんだな)
「痛くしたら殴るぞ」
「なるべく努力する。殴られてもやめられないかもしれないけど」
ふっと笑って互いに唇を寄せる。愁はローションを手のひらに取り出して手の熱で少し温めてから凛斗の股間へ塗った。もうすでに立ち上がっていた逸物はその刺激にピクピクと震えた。
「つめてぇ。何でソコにつけるんだよ」
「滑りがよくて気持ちよくない? ほら」
すぐに凛斗の温度に馴染んだローションは、愁の上下に擦る手でクチュクチュといやらしい音を立てた。絶妙な握る強さとヌルヌルした感覚で、すぐに先っぽからローションと同じ色の液体が溢れ出てきた。
「……ハッ、はあっ……」
凛斗の息が荒くなってもどかしそうに腰が揺れ出すと、愁はローションを足して後ろまで満遍なく濡らした。そして柔らかさを確認するように指先で後ろの穴を揉み、ローションを中に送り込むように指を差し込んだ。
今日は仰向けで両脚を大きく広げられ弄られている。上気して色づいた頬や潤んで誘うような瞳、気持ちいいと漏らす吐息と高く反り上がった欲望の象徴。そして愁の指をきゅうきゅう締め付ける後ろの穴、凛斗の全ての反応は丸見えだった。
「しゅうっ……両方一緒に触られるとヤバいっ……」
「まだイっちゃダメだよ。やっと指が二本入ったからね。中のいいところまだ触ってないのにもう気持ちいいの?」
「やっ! お願い、一度イかせて……っ」
「ダメ、我慢して」
先っぽをくるくる弄っていた手がペニスの付け根をギュッと強く握った。もう少しで達しそうだった快感が苦しいものに変わる。
「しゅう、愁……」
「凛斗、僕のが欲しい?」
涙目で頷く。もう準備はできてるはずだ。さっきから欲しいとヒクヒクして待っているのになかなかもらえない。今日の愁は言葉遣いも違うし、顔つきも鋭くてとても意地悪だ。醸し出す色気もハンパない。もしかしてこれがコイツの本来の姿なのかもしれない。
「早く……挿れて」
「僕以外の人をここに入れちゃダメだよ。約束できる?」
イきたくてもイけない苦しさに悶えながら小さく頷くと「ちゃんと答えて」と追い討ちをかけられた。
「約束するに決まってる……。泣きながら、初めてをおまえにあげただろっ、俺の全部おまえのモンだよっ」
愁は目を見開いて息を飲んだ。
「……すごい殺し文句」
一気に貫かれ、凛斗はその衝撃で仰け反った。痛みは微塵もなく、襲うのは内臓を押し上げるような強い圧迫感。凛斗は挿れられただけで達してしまった。駆け抜けた快感の余韻に浸ることなく抽送が始まり、敏感になった全身がビクビクと揺れる。一応遠慮して動いているのか、愁はゆっくりと円を描くように腰を動かした。
「あっ、愁っ。そこダメっ……」
「ダメ? ダメじゃなくて気持ちいいトコでしょ?」
前に指で弄られて啼かされたところだ。愁が動くたびに擦れて気持ちいい。凛斗も愁に合わせて腰が動いていた。
「どうしよう……っすごく、イイ」
その後激しく突かれ続けて、二度イかされたところで凛斗からストップをかけた。
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