sideBの憂鬱

るー

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 愁がお風呂の準備をして部屋に戻ってきた。
「もう入れますよ」と言った声がとても不満そうだ。凛斗はベッドから這い出て、愁に脱がされてとっ散らかっていた自分の服の中から、下着とジーンズだけ身につけた。上半身はこの後風呂ですぐ脱ぐからいいだろうと裸のままだ。


「いつまで拗ねてるんだよ。別にするのが嫌だって言った訳じゃないだろ。シャンプーして欲しいから、気ぃ失う前に終わらせただけじゃん」

「拗ねてませんよ」


 じゃあそのしかめっ面は何だ。
 愁だってちゃんと二回もイったのに、何がそんなに気に入らないんだ。

 面と向かってそう言ってもよかったが、これ以上拗ねられても困る。凛斗は元のようにがっちり服を着込んだ愁の広い背中に抱きついた。胸板だけじゃなく背中も筋肉で硬い。いつもの愁ならすぐに振り返って抱き締め返すだろうに、戸惑うように身体を揺らした。


「洗ってくれないのか?」

「洗いますよ」


 テンションの低い声で答える愁の手を繋いで、浴室まで引っ張って行った。



「愁のシャンプー久しぶり!」


 練習していた時と違って二人同じ方向を向いて座り、後ろから愁が凛斗の髪をシャカシャカしている。愁はずっと黙ったままで未だ気分は上昇してないようだが、シャンプーする手つきは以前と同じで優しい。

 念願叶った凛斗は振り返って愁に向かってヘヘッとはにかんだ。


「ありがと。すっげぇ気持ちよかった」


 凛斗は愁の手を取ると、自分の口元から頬を隠すようにして顔にあてるとキスをした。


「俺、愁の手 好き……」


 目を閉じてうっとりとした表情で手のひらに頬を擦りつける凛斗に、愁は弱々しく息を吐いた。


「だから……かわいすぎだって」


 照れて呟く姿にようやくいつもの愁が垣間見え、素直にホッとした。


「愁って気を抜くと言葉遣いが変わるんだな。あと時々Sっ気出るし、それに意外と嫉妬深い」

「うっ……」

「やっぱり無理して敬語使ってんだろ。構わないから俺の前では普通にしてろよ」

「僕が嫌なんですよ。前にも言ったでしょう? ちょっとでも乱暴な言葉を使うと怖がられるって。それに僕の場合言葉遣いが変わると人格も変わるようなので凛斗を乱暴に扱いそうで嫌です。そんなことで凛斗に嫌われたくないんです」


(いまさら言葉遣いを変えたくらいじゃあ嫌いになんかならないけどな)


 確かに丁寧な言葉遣いの時は優しそうなオーラを発しているが、悠長さが抜けると言葉とともに表情から丸みがなくなって攻撃的な鋭さを感じる。


「俺はそっちも好きだけど」


 浴槽に入り、たっぷり張られた湯を意味もなく手でチャプチャプ揺らしながらさり気なく言った。凛斗に続いて浴槽に入ろうと足を突っ込んだ愁は「えっ」と中途半端な姿勢で固まった。凛斗の目線の高さに愁の腰があり、隠されていないそれをついつい見てしまう。


「凛斗は乱暴な方が好きなんですか?」

「『も』って言っただろ! 乱暴ったって別に暴力振るわれるじゃなく、強引で意地悪なだけじゃん。俺を構う手の優しさは同じだし、ちょっとくらいそんな面があったっていいんじゃね?」

「凛斗……。嬉しいです。じゃあこれから二人きりの時はもう少し自分を出していきますね」


 二人で入っても十分ゆとりがある広さの浴槽は縦長で幅も広く思う存分くつろげる。愁だけでなく兄達や父親も背が高いため、風呂は標準より広い所を選んだらしい。狭い風呂は狭いなりに良さがあるだろうが、開放感の強い広い風呂には敵わないと思う。

 凛斗は向かい合わせで愁の膝の上に乗せられ、イチャイチャ攻撃を受けていた。


「いたっ、乳首噛むなよっ」

「だってキスマークつけちゃダメって言うから、歯型ならいいかなって」

「歯型もダメに決まってるだろ……ンッ!」


 胸の突起を指で散々摘まれた後、舌先でチロチロと弄られ口内に含まれチュッと吸われた。ベッドでは触れられなかったそこを集中的に攻められ触られてもいないのに、下半身は熱を溜め込んですっかり形を変えていた。ビクビクと身体が反応するたびにお風呂の湯が大きく波打ち浴槽から溢れている。もう凛斗の身体の方が温度が高いくらいだ。


「ゴムないけど挿れていい? 中には出さないから」

「……ん。いいよ」


 凛斗にちょっかい出して止まらなくなった愁は、途中でベッドに移動しようか迷ってたようだがここですると決めたようだ。その判断は正解だ。決断がもう少し遅かったら凛斗から要求していた。

 凛斗は愁の肩に手を置いて膝立ちになり愁が挿れやすいように腰を上げた。手探りで充てがわれた愁の先端がグッと押し当てられた。お風呂の直前まで散々出入りされていたのもあって凛斗は苦もなく愁を迎え入れた。


「……は、ふ」


 激しく出し入れする代わりに、擦り付けるように腰を押し上げられて奥の方からグズグズにされる。夢見心地と言えるほど緩やかな快楽が全身に浸透して、だらしがなく声が漏れた。愁は腰の動きを少しづつ変えながら凛斗の反応を楽しんでいるかのようだった。弱い所を突きながら蕩けるようなキスをする。

 快楽の種類をこれでもかと味わわせられ脳が焼けそうになった時、急に愁の動きがピタリと止まった。


「……? なに?」

「シッ、そのまま喋らないで」


 凛斗の耳元で小さくそう言うと、愁は凛斗の後頭部に手を添え自分の方へ引き寄せた。愁の首元に顔が埋まり、洗ったばかりのシャンプーの香りを強く感じた瞬間……


「ぅおーい、愁いるかぁ?」


 ガチャと大きな音と共に男の声が脱衣所に響いた。背後で起こった出来事に凛斗はビクッと大きく肩を震わせた。


(えっ!? 誰か来た!?)


 まさかの事態に青ざめる凛斗を宥めるように、愁は頭に置いた手をポンポンして、さも何事もないように返事をした。


「いるけど、用があるなら後にしてくんない?」

「おまえ今度の土日さぁ……」


 更にガチャと音がして、背中越しに声の主が顔を覗かせた気配がした。しばらく沈黙が続き、男は気怠そうに言葉を発した。


「ンだよ。ホテルじゃねぇんだからこんなトコですんなよ」

「用件は後にするか回れ右してから言って」

「へいへい、いいトコ邪魔して悪かったよ。これでいいか?」

「……いいよ。で?」


 回れ右というまさかの選択。
 凛斗は愁にしがみついたまま、マネキンのように固まって二人のやり取りを聞くしかなかった。


「次の土日空いてねぇ? バイトが欲しいんだけど」

「いつもの?」

「そうそう。日曜だけでもいいけどさ」

「わかった。両方出るよ」

「よし! んじゃ頼むな。しっかしおまえ……」

「こっち見たらバイトは無効にするよ」

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