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2女王、迷子に遭遇する
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「パパ!」
「ああ! サリタ! 良かった!」
子リスのような可愛らしい少女と、頼りない父親が再会を喜んで抱きあっている。
「よかったな、おっさん」
延々泣きごと言うマルコに付き合って疲れたヨニも一緒に喜んだ。
「ここに連れてこられた時はどうしようかと思いましたが、ありがとうございました」
ここはクッカサーリの職人がみな所属している生産組合の会所である。はじめ、会所に連れてこられたマルコは混乱していたが、こここそが自警団の本部なのだ。
クッカサーリは軍隊を持っていない。生産活動をしない職業軍人を養っていられるほど豊かなわけではないというのが理由の一つ。さらに、国の成り立ちとして軍を持つことが難しいというのも大きい。その昔、迫害された聖神教徒たちが山の上の小さな土地に拠って立った時、既にラズワルディアは大国でクッカサーリを潰すことなど造作もなかった。それを、武器を持たず、信仰のみを掲げることで国の独立がなされた経緯がある。
自警のために各地区から人員を募って自警団を作っているが、本部や支部の建物は全て商店などの兼用だ。
「入国する時に衛兵に説明されたと思うんだけどな。困ったことがあったら杖を持った犬の紋章の看板があるところが自警団だから、そこに行けって」
「もうしわけない。聞いたような気はしますが……思いつかなくて……」
「なんか、また迷子になりそうだな……あんたの方が」
「面目ない」
「お嬢ちゃん、もう父さんとはぐれないように気をつけろよ」
ヨニが頭を撫でようとしたら、サリタはさっとマルコの後ろに隠れた。
「すいません、サリタは人見知りで」
「ああ、いや、女の子だもんな、悪かったな。じゃあな」
手を振って、親子と別れる。
時間がかかったので、主はとっくに王宮に帰っているだろう。ヨニが何気なく会所の出口へ向かって歩いていると、一人の男が近づいてきた。
「ヨニ殿、彼らに怪しいところはなかったと、陛下にお伝え下さい」
生産組合の長ネストリ・ホルト、クッカサーリの十六人の議員の一人でもあり、自警団の団長でもある。
「そっか。おっさん、わざわざありがとな」
「今日はたまさか朝からここに詰めてただけで。別に陛下に良いところを見せようなんて思ってませんぞ」
「あー、ちゃんと伝えとくな。うん」
ティルダが一軒の工房に迷子探しを頼んだだけで、あっという間にクッカサーリ中の職人がこぞって迷子を捜すのも、この女王大好き組合長あってのことと。
「陛下が気にするかもしれませんので調書の写しをどうぞ」
「ほんとに、よく伝えておくからな。おっさんが頑張ってるって」
いやいやと、まんざらでもなさそうな自警団長をヨニは微笑ましく思った。
●
「陛下、特に怪しいところはなかったってさ」
王宮に先に戻っていたティルダに、自警団で預かった調書を渡す。その足元にはフラーが控えている。立派に職務を果たしていたようだ。のそりと起き上がると、んじゃ交代な、という顔で外へ出ていく。
「そう……あ。やっぱりマルフィルコリナの方だったのね」
調書に目を通しながらティルダが言った。
「マルコといえばマルフィルコリナってくらい、ありがちな名前だもんな」
マルフィルコリナはルグリス公国の東に位置する国だ。ラズワルディアに比べれば小さいが、当然クッカサーリよりは大きい。のんびりした気風で、聖神を奉じており参詣者も多い。
「まだ、ルグリス公国からの道は雪が多いでしょうに……。熱心な信者なのかしら」
ラズワルディアの中にあるクッカサーリへやってくるには、当然ラズワルディアの国境を越えなくてはいけない。マルフィルコリナからはルグリス公国を経由してラズワルディアへ入らなければならないが、冬があけきらぬこの時期ルグリス公国からの道は通行が厳しいはずだ。
「個人の小間物商ねえ。あの気弱そうな感じでやってけるのかしら……。それとも、やっていけないから無理をして行商に来たのかしら」
調書には細かい記載があり、マルコが何度か仕入れに入国したことがあることも書かれている。
たかが迷子でここまでとも思うが、適当にすます訳にはいかない理由がクッカサーリにはある。子供や病気の老人を捨てにくる人間がしばしばいるのだ。育てられない子供を教会の加護のある土地にという、親心があるのかないのか分からない理由でクッカサーリに捨てていく。大抵は出国時に国境で発覚することになるが、言い訳トップはやはり『迷子になって見つからなかった』なのだ。
「今年は雪解けが早かったのかしら。国境の人員を増やすの、早めにしといた方がいいかしらね」
「とりあえず、麓に人をやれよ。確認しなきゃわかんないだろ」
「それはそうね」
クッカサーリに入国するには、ラズワルディアのクレーグラという麓の街が入り口になる。そこから通じる一本の山道だけが、クッカサーリへ至る唯一の道だ。他所の国の交通事情は麓まで降りたほうが入ってくる。
ティルダが書状を書きつけるためにペンを取った手をぴたりと止めたのを見て、ヨニは嫌な予感がした。
「いえ――私が直接聞きに行こうかしら。朝の散策がてら」
「おい、クレーグラまでか?」
「違うわ。国境の審査所までよ。さすがの私だって、そう簡単に隣国には行けないわよ」
「趣味で街をふらふら散歩しているような国王がよく云う……。報告を上げて貰えばいいだろ? 陛下がわざわざ行かなくたって」
「ヨニ、私はあくまで散歩がしたいのよ」
「国境まで行くならさすがに馬を使うだろうが。散歩じゃないだろ。仕事熱心はいい加減にするって誕生日会で言わなかったっけか?」
誕生日会という単語に、ティルダは眉間に青筋を浮かべた。あくまで笑顔は崩していないが。
「――そのことは口にするんじゃないって言ったでしょうが!」
「怒られるの俺なんだぞ」
「あくまで趣味の散策なんだから、なんだったらあなたは付き合わなくったっていいわよ。散歩くらい好きにさせなさいよ」
「そんなわけにいくかよ。あのな陛下――」
本当は、趣味だなんて言っても仕事なんだと分かってるんだからな、と言いかけてヨニは口を閉じた。
春になって聖フォルガナの祝日を迎えれば、外歩きなんてしていられなくなる。
散歩という名目でも、外へ行くことが息抜きになるなら、そのくらい甘やかしてやっていいのかもしれない。
「……まあいいか。わかったよ。ほんとは仕事の息抜きに仕事をするのは止めてほしいんだけどな」
後半は小声で呟いたので、ティルダには聴こえなかっただろう。
どうせ、主が言ってきかないのは誰よりも承知している。
●
「陛下、何かご用でしょうか?」
国境の入国審査所はほどほどに混んでいた。
他国と違って、クッカサーリに入国するのは中々面倒が多い。まず既定のサイズ以上の武器は持ち込めない。それは、たとえ大国の王侯貴族やその護衛も例外ではない。
なにせクッカサーリは小国なため、武器を持った一団に侵入されたら、あっという間に制圧されてしまう。聖神教の総司教を害そうという人間も、今までに居なかった訳ではない。
そのため、荷物のチェックは身分に関わらず、かなりしつこくやっている。隠して持ち込み、クッカサーリ内で帯剣しているのが発覚したら即国外退去処分だ。
ラズワルディアにとってもクッカサーリを抱え込むことは利益であるため、この法はむしろラズワルディアの法といっても差し支えない。大国ラズワルディアの法を安易に破ろうという人間はいないので、入国審査には旅人は従う。
「とくに問題があったから来たってわけじゃないのよ。ルグリスからの人出はどうかしらと思って。雪はもう解けたかしら?」
「いえ、とくにそんな話は聞きませんな。例年通り、もうしばらくかかるでしょう」
人の良さそうな入国審査官だが、鋭い観察眼にはティルダも絶大な信頼を寄せている。
「そう。じゃあ何か変わったことは?」
ここ最近の出入国の記録に目を通しながら尋ねた。冬場はやはり貴族などの富裕層の入国は少ない。
「特に変わったことはありませんね。この時期に来るのは大半が熱心な参詣者ばかりですから、みな静かですし」
「あとはいつもの商人たち?」
「ええ。そうでございますね」
ティルダは、ぱらぱらと入国記録台帳をめくっていく。
観光客には面倒がられることが多いが、身分証の提示はしっかりされているので、記録は明瞭だ。特に気になる記述はない。
旅券を持たぬ者もいるが、聖神教徒であれば教会の出生証明書でも事足りるので最近は入国拒否にまで至る者はいなかったようだ。
何も持たない無い者は、時間がかかるがこの入国審査所で仮の身分証を作成し携帯を義務付ける。不審な人物がクッカサーリに入る余地はない。
「うん、気になるものはなさそうね」
でも、なにかあったら報告を上げてちょうだいと言えば、はいと切れのいい答えが返ってきた。
まっとうに働く国民を見るのは実に快い。
いい気分でティルダは入国審査所を後にした。
入国審査所から王宮に戻る道すがら、並べて馬を歩かせていると隣のヨニが奇声を上げた。
「あん?」
「なによ、変なこえあげて」
「いや、そこ」
なにごとかとヨニの指す方を見れば、道端の木陰で固まっている少女がいる。まるで、かくれんぼで見つかってしまった瞬間のような姿の少女が。少女はヨニを見やって徐々に顔を曇らせていく。
「ヨニ、知り合いなの?」
「あの子だよ、陛下。昨日の迷子、サリタちゃん」
(なるほど)
確かにマルコが言っていた通り、リスのように可愛い。年よりも小柄なせいもあるかもしれない。
「お嬢ちゃん、お父さんは?」
馬上からティルダが尋ねると、サリタは困ったように後じさった。周囲を窺ってもマルコの姿は見えない。隠れること
「また迷子になったのかよ?」
「……」
ヨニの質問にサリタは答えず、だっと駆けだした。
「おい!?」
「珍しく子供に嫌われているわね。……まさか何か、したのじゃないでしょうね、ヨニ」
「そんなわけないだろうが! というか、追わないのかよ」
「私が行くわ。ヨニはマルコさんの方を探してきて!」
「え、陛下!?」
「ああ! サリタ! 良かった!」
子リスのような可愛らしい少女と、頼りない父親が再会を喜んで抱きあっている。
「よかったな、おっさん」
延々泣きごと言うマルコに付き合って疲れたヨニも一緒に喜んだ。
「ここに連れてこられた時はどうしようかと思いましたが、ありがとうございました」
ここはクッカサーリの職人がみな所属している生産組合の会所である。はじめ、会所に連れてこられたマルコは混乱していたが、こここそが自警団の本部なのだ。
クッカサーリは軍隊を持っていない。生産活動をしない職業軍人を養っていられるほど豊かなわけではないというのが理由の一つ。さらに、国の成り立ちとして軍を持つことが難しいというのも大きい。その昔、迫害された聖神教徒たちが山の上の小さな土地に拠って立った時、既にラズワルディアは大国でクッカサーリを潰すことなど造作もなかった。それを、武器を持たず、信仰のみを掲げることで国の独立がなされた経緯がある。
自警のために各地区から人員を募って自警団を作っているが、本部や支部の建物は全て商店などの兼用だ。
「入国する時に衛兵に説明されたと思うんだけどな。困ったことがあったら杖を持った犬の紋章の看板があるところが自警団だから、そこに行けって」
「もうしわけない。聞いたような気はしますが……思いつかなくて……」
「なんか、また迷子になりそうだな……あんたの方が」
「面目ない」
「お嬢ちゃん、もう父さんとはぐれないように気をつけろよ」
ヨニが頭を撫でようとしたら、サリタはさっとマルコの後ろに隠れた。
「すいません、サリタは人見知りで」
「ああ、いや、女の子だもんな、悪かったな。じゃあな」
手を振って、親子と別れる。
時間がかかったので、主はとっくに王宮に帰っているだろう。ヨニが何気なく会所の出口へ向かって歩いていると、一人の男が近づいてきた。
「ヨニ殿、彼らに怪しいところはなかったと、陛下にお伝え下さい」
生産組合の長ネストリ・ホルト、クッカサーリの十六人の議員の一人でもあり、自警団の団長でもある。
「そっか。おっさん、わざわざありがとな」
「今日はたまさか朝からここに詰めてただけで。別に陛下に良いところを見せようなんて思ってませんぞ」
「あー、ちゃんと伝えとくな。うん」
ティルダが一軒の工房に迷子探しを頼んだだけで、あっという間にクッカサーリ中の職人がこぞって迷子を捜すのも、この女王大好き組合長あってのことと。
「陛下が気にするかもしれませんので調書の写しをどうぞ」
「ほんとに、よく伝えておくからな。おっさんが頑張ってるって」
いやいやと、まんざらでもなさそうな自警団長をヨニは微笑ましく思った。
●
「陛下、特に怪しいところはなかったってさ」
王宮に先に戻っていたティルダに、自警団で預かった調書を渡す。その足元にはフラーが控えている。立派に職務を果たしていたようだ。のそりと起き上がると、んじゃ交代な、という顔で外へ出ていく。
「そう……あ。やっぱりマルフィルコリナの方だったのね」
調書に目を通しながらティルダが言った。
「マルコといえばマルフィルコリナってくらい、ありがちな名前だもんな」
マルフィルコリナはルグリス公国の東に位置する国だ。ラズワルディアに比べれば小さいが、当然クッカサーリよりは大きい。のんびりした気風で、聖神を奉じており参詣者も多い。
「まだ、ルグリス公国からの道は雪が多いでしょうに……。熱心な信者なのかしら」
ラズワルディアの中にあるクッカサーリへやってくるには、当然ラズワルディアの国境を越えなくてはいけない。マルフィルコリナからはルグリス公国を経由してラズワルディアへ入らなければならないが、冬があけきらぬこの時期ルグリス公国からの道は通行が厳しいはずだ。
「個人の小間物商ねえ。あの気弱そうな感じでやってけるのかしら……。それとも、やっていけないから無理をして行商に来たのかしら」
調書には細かい記載があり、マルコが何度か仕入れに入国したことがあることも書かれている。
たかが迷子でここまでとも思うが、適当にすます訳にはいかない理由がクッカサーリにはある。子供や病気の老人を捨てにくる人間がしばしばいるのだ。育てられない子供を教会の加護のある土地にという、親心があるのかないのか分からない理由でクッカサーリに捨てていく。大抵は出国時に国境で発覚することになるが、言い訳トップはやはり『迷子になって見つからなかった』なのだ。
「今年は雪解けが早かったのかしら。国境の人員を増やすの、早めにしといた方がいいかしらね」
「とりあえず、麓に人をやれよ。確認しなきゃわかんないだろ」
「それはそうね」
クッカサーリに入国するには、ラズワルディアのクレーグラという麓の街が入り口になる。そこから通じる一本の山道だけが、クッカサーリへ至る唯一の道だ。他所の国の交通事情は麓まで降りたほうが入ってくる。
ティルダが書状を書きつけるためにペンを取った手をぴたりと止めたのを見て、ヨニは嫌な予感がした。
「いえ――私が直接聞きに行こうかしら。朝の散策がてら」
「おい、クレーグラまでか?」
「違うわ。国境の審査所までよ。さすがの私だって、そう簡単に隣国には行けないわよ」
「趣味で街をふらふら散歩しているような国王がよく云う……。報告を上げて貰えばいいだろ? 陛下がわざわざ行かなくたって」
「ヨニ、私はあくまで散歩がしたいのよ」
「国境まで行くならさすがに馬を使うだろうが。散歩じゃないだろ。仕事熱心はいい加減にするって誕生日会で言わなかったっけか?」
誕生日会という単語に、ティルダは眉間に青筋を浮かべた。あくまで笑顔は崩していないが。
「――そのことは口にするんじゃないって言ったでしょうが!」
「怒られるの俺なんだぞ」
「あくまで趣味の散策なんだから、なんだったらあなたは付き合わなくったっていいわよ。散歩くらい好きにさせなさいよ」
「そんなわけにいくかよ。あのな陛下――」
本当は、趣味だなんて言っても仕事なんだと分かってるんだからな、と言いかけてヨニは口を閉じた。
春になって聖フォルガナの祝日を迎えれば、外歩きなんてしていられなくなる。
散歩という名目でも、外へ行くことが息抜きになるなら、そのくらい甘やかしてやっていいのかもしれない。
「……まあいいか。わかったよ。ほんとは仕事の息抜きに仕事をするのは止めてほしいんだけどな」
後半は小声で呟いたので、ティルダには聴こえなかっただろう。
どうせ、主が言ってきかないのは誰よりも承知している。
●
「陛下、何かご用でしょうか?」
国境の入国審査所はほどほどに混んでいた。
他国と違って、クッカサーリに入国するのは中々面倒が多い。まず既定のサイズ以上の武器は持ち込めない。それは、たとえ大国の王侯貴族やその護衛も例外ではない。
なにせクッカサーリは小国なため、武器を持った一団に侵入されたら、あっという間に制圧されてしまう。聖神教の総司教を害そうという人間も、今までに居なかった訳ではない。
そのため、荷物のチェックは身分に関わらず、かなりしつこくやっている。隠して持ち込み、クッカサーリ内で帯剣しているのが発覚したら即国外退去処分だ。
ラズワルディアにとってもクッカサーリを抱え込むことは利益であるため、この法はむしろラズワルディアの法といっても差し支えない。大国ラズワルディアの法を安易に破ろうという人間はいないので、入国審査には旅人は従う。
「とくに問題があったから来たってわけじゃないのよ。ルグリスからの人出はどうかしらと思って。雪はもう解けたかしら?」
「いえ、とくにそんな話は聞きませんな。例年通り、もうしばらくかかるでしょう」
人の良さそうな入国審査官だが、鋭い観察眼にはティルダも絶大な信頼を寄せている。
「そう。じゃあ何か変わったことは?」
ここ最近の出入国の記録に目を通しながら尋ねた。冬場はやはり貴族などの富裕層の入国は少ない。
「特に変わったことはありませんね。この時期に来るのは大半が熱心な参詣者ばかりですから、みな静かですし」
「あとはいつもの商人たち?」
「ええ。そうでございますね」
ティルダは、ぱらぱらと入国記録台帳をめくっていく。
観光客には面倒がられることが多いが、身分証の提示はしっかりされているので、記録は明瞭だ。特に気になる記述はない。
旅券を持たぬ者もいるが、聖神教徒であれば教会の出生証明書でも事足りるので最近は入国拒否にまで至る者はいなかったようだ。
何も持たない無い者は、時間がかかるがこの入国審査所で仮の身分証を作成し携帯を義務付ける。不審な人物がクッカサーリに入る余地はない。
「うん、気になるものはなさそうね」
でも、なにかあったら報告を上げてちょうだいと言えば、はいと切れのいい答えが返ってきた。
まっとうに働く国民を見るのは実に快い。
いい気分でティルダは入国審査所を後にした。
入国審査所から王宮に戻る道すがら、並べて馬を歩かせていると隣のヨニが奇声を上げた。
「あん?」
「なによ、変なこえあげて」
「いや、そこ」
なにごとかとヨニの指す方を見れば、道端の木陰で固まっている少女がいる。まるで、かくれんぼで見つかってしまった瞬間のような姿の少女が。少女はヨニを見やって徐々に顔を曇らせていく。
「ヨニ、知り合いなの?」
「あの子だよ、陛下。昨日の迷子、サリタちゃん」
(なるほど)
確かにマルコが言っていた通り、リスのように可愛い。年よりも小柄なせいもあるかもしれない。
「お嬢ちゃん、お父さんは?」
馬上からティルダが尋ねると、サリタは困ったように後じさった。周囲を窺ってもマルコの姿は見えない。隠れること
「また迷子になったのかよ?」
「……」
ヨニの質問にサリタは答えず、だっと駆けだした。
「おい!?」
「珍しく子供に嫌われているわね。……まさか何か、したのじゃないでしょうね、ヨニ」
「そんなわけないだろうが! というか、追わないのかよ」
「私が行くわ。ヨニはマルコさんの方を探してきて!」
「え、陛下!?」
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