13 / 39
漫遊編
蓬莱の國 拾参
しおりを挟む「すぐにも蓬莱山へ参りましょう!」
弥乃麻呂が鼻息荒く今にも駆け出しそうに逸る
『まあまあ、旅支度もあるでしょう?』
『それに、持って来た玉乃枝と千代三草はどうするんですか?』
「あ、そうでした…え~っと、先ずは蔵に保管して…代金は…」
と、算盤を出して弾き始める
「弥乃麻呂さん、宜しいですか?」
「あ、はい」
「ここに出してある産物は私共で買い取りたいと思いますが如何ですか?」
「はぁ、それは日御子様が買い取り使われると言う事でしょうか?」
「そうですね、それもありますが貴人や領主達には私から売ったほうが貴方の危険も少なくなるでしょう」
「………成る程、確かにそうですね。まだ若輩な私がこの品々を持っていたら間違いなく殺されて奪われますね」
すると、古志加が口を挟む
「あれ?って事は俺の村もヤバイ?」
『いや、シズの村は大丈夫。ちゃんと考えてるから心配ないよ』
と安心させる
「それに、弥乃麻呂さんには蓬莱山での話が上手く纏まれば都で座役に着いてもらいたいと思っています」
「は……はあっ!?いやいやそんな…」
「蓬莱山との取り引きは倭にとってそれだけの利がありますから当然です。それに蓬莱山の産物は全て倭として買い取るつもりです」
「全て…ですか…」
「ええ、そうです、全てです。どうせ、露店で並べても誰も買えないでしょう?」
ほほほほ、と笑う
「それもそうですね、ですが簡単に動けなくなるのは…」
頭を抱え考え込む
『まあまあ、今そんなに考え込んでも仕方ないでしょう?先ずは蓬莱山と話しを纏めないと』
『それに、そう言う話しは後でしてくれないかな?冗長で少し面倒臭いよ?街は此処だけじゃ無いし、商人も沢山居るんだろうし』
ルーンの気配が揺らぎ、室内の人間を圧倒する
「は、はい!申し訳ありません!方々を御招きして少し浮かれていたみたいです」
「は!申し訳ありません!」
室内の人間が冷や汗掻きながら平伏する
恐る恐る日御子が
「この品々は銭で買い取っても宜しいのですか?」
『あぁそれは構わない、寧ろ蓬莱で通用する銭じゃ無いとダメだね』
「承知致しました、誰か奥の塗籠から大粒金と小粒金と銭を持ってきてください」
持って来させた大粒金と小粒金をルーン達に見せながら
「蓬莱銭が1万で小粒金1つになります。小粒金10個で大粒金1つです、その上に大金がありますが…それはまぁ国同士の政でしか使わない飾りみたいな物です」
それからは弥乃麻呂が引き継ぐ
「ですが庶民は釣りが無いので小粒金を持つ事は殆どありません、何しろ大人1人が1年で食べる米1石で8000銭程ですので普段遣い出来る物ではありません…しかし、私が見繕っても、この品々は大粒金で10は下らない価値が有るかと思いますが如何でしょう?」
『うん、じゃあ初めてだし大粒金10で良いよ。でも、銭や小粒金に分けてくれる?』
銭を持ってきた侍従が
「畏まりました!では、小分けして用意致します」
『うん、ありがとう』
『用意出来たね、じゃあツァブ爺仕舞っといてくれる?弥乃麻呂さんは10日分ぐらいの旅支度してきてね』
「畏まりました、直ぐに戻って参ります」
ツァブが金袋をヒョイヒョイと持っては消していくのを横目に見ながら、弥乃麻呂はそそくさと帰っていった
「恐れながら、宜しいでしょうか?」
『うん、良いよ、なに?』
「こちらの臺與も見聞に蓬莱山へお連れ戴けないでしょうか?」
『それは構わないけど、大人の脚に着いてこれるのかな?』
臺與が
「大丈夫で御座います!道術で足を強くしますし、旅帷子も陰陽術で風を纏わせておきます。ですから私も連れていって下さりませ」
と、平伏した
『うん判ったわかった、じゃあ用意してきて』
「はい!ありがとうございます!」
と、臺與が準備に立ち去ろうとすると
「お待ちなさい、護衛として誰か2人程連れていきなさい。人選は臺與に任せます」
「はい、畏まりました」
暫くして西門から出たルーン達を、旅支度を整えた臺與と護衛2人が門傍で出迎える
護衛には、先程も居た大柄な荒久真と
さっきは居なかった背が高く精悍な顔をした男が居た
「太加麻呂と申します、臺與様の護衛として荒久真と同道致します。方々に於かれましては宜しくお願い致します」
『うん、宜しくね。では行こうか、弥乃麻呂さんには途中で会うでしょう』
と、西大通りを歩きだし
西門では日御子と侍従侍女達が深々とお辞儀しながら見送った
暫く歩き、西の市辺りまで来たルーン達
『そういえば、都に入って何も食べてないね。何か買って食べながら行こうか?』
「それは楽しそうですね!私は余り外へ出ないので経験した事がありません!御相伴に預かっても良いですか!?」
臺與が凄い勢いで食い付いてくる
『御相伴って…そんな大した事かい?』
と、ルーンが苦笑すると
「臺與様は次代の日御子と言う立場も有り、陰陽寮と大学寮と御所の往復ぐらいで同じ年頃の童達と遊ぶ事が御座いませぬもので、はしゃいで居られるのかと…」
太加麻呂が説明する
『ふ~ん、成る程ねぇ。じゃあ露店で何か買って行こうか』
そんな話しをして露店に入って行こうとしていた所に、弥乃麻呂が人の胸ぐらいの背丈の馬を1頭牽いてきた
「馬を借りるのに時間が掛かりました、遅れて済みません」
『ほう、馬が居ますか?』
「はい、10数年前に大陸から渡来しまして、まだまだ希少なもので馬主が貸し渋りまして…向かう先の事は濁して参りましたが借り賃をだいぶ取られました」
と、苦笑する
『へぇ、でも、まだ少ないんじゃしょうがないね』
と、馬の頭を撫でると馬がルーンの胸に鼻先を擦り付けてくる
『相変わらず生き物に好かれるのが早いねぇ』
『そうかな?普通でしょ?』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
更新が遅れました
左眼が痛くて10分以上連続してスマホが見れません…
と、言うより光る物を見ると眼の奥がギューっと痛くなる…
1
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる