黄龍漫遊記

コロ

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漫遊編

蓬莱の國 拾陸

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3日目の朝、何事も無く朝餉あさげを済ませ
出立の準備をしていると
遠く西から誰が走ってくる気配を、ルーンと四神獣と臺與とよがハッキリと認識し
太加麻呂たかまろが?な顔をして、夜のとばりが上がり切れない遠くの西を仰ぎ見る

ルーン達は、その場に西を見て突っ立ち
臺與は太加麻呂の後ろに隠れる様子を
他の気付いてない面々は不思議そうな顔で見ている
10分ほど待つと、ゴウッと風を押し退け両の額から後ろに水牛の様な波打つ角を生やした鬼が現れた

突然現れた鬼にルーン達以外は恐慌し慌てて剣を抜き放つと
ルーンが左手を水平に伸ばし制止し
『やあ伊吹いぶき、どうかした?』
「はっ!危急の知らせを持って参りました!」
と、伊吹と呼ばれた鬼が片膝付き頭を下げた
眉根を寄せたルーンが
『シズの村に何か有った?』
「シズ?」
『あぁ、見張ってもらった村の名前だよ』
「なるほど、そのシズの村に西から兵が1000程来て占拠しました」
「え?なにっ?ルーンさん!村は!大丈夫なんですか!?」
古志加こじかは慌てるが、ルーンは
『ふ~ん、やっぱり来るかぁ…見張ってもらって正解だったかな?』
呑気ノンキ
「私は兵が来て直ぐに走ったので、その後の事は判りませんが、早急に何かをしようとは見えませんでした、ですが私でも此処まで夜通し2日は駆けましたので…」
『うんうん、状況が良くなる事は無いよね?でも、村人の命は最優先に守る様に言ってあったよね?如何どうかな?』
「それは大丈夫かと思われます、危うくなれば茨木いばらき世紀よきが蓬莱山に走りおささかきに知らせ50程の仲間が駆け付ける手筈にはなっています」
『人相手なら50も居れば大丈夫かな?』
「は、よほどの事がなければ」
『でもまぁ、少し急ごうか?僕達だけなら一瞬で行けるけど他にも居るし、伊吹も疲れたろうし』
「は、そこまで動けぬという具合ではありませんが、万全とは言えません」
『うんうん、そうだろうね』

『え~と、誰にしようか…』
わらわが良かろうて、地を走る白虎では只人ただびとはキツかろう?』
『あれ?ポェねぇ、良く判ったね?』
『ふふふ、神使とはそういう存在ものだわえ』
と、ポェニクスが一瞬眩ゆい光に包まれ体長10mはある鳳凰が顕現する

「「「「「ふわあぁぁぁぁ…」」」」」
古志加以外、人の面々は口を開けその神々しい姿に間抜けな感嘆の声をあげる

『さぁ皆、妾が背に乗ると良い』
片翼かたよくを下ろす
「「「「「お、畏れ多い!」」」」」
「聖獣鳳凰様に乗るなど滅相もない!」
と、流石に伊吹と古志加も両の手を前に出し首を振る
それを横目に見ながらルーンは馬を曳き、三神獣はさっさと乗り
『さぁ何してんの?気にしないで早く乗って』
と促すと
「すいません…すいません…」
誰に謝っているのか羽を汚さない様な風で抜き足差し足へっぴり腰で10人が乗り込む
しかし、臺與は未だ
「只人の私達が鳳凰様に…」
と、ブツブツ呟いている
『妾であれば、ゆっくり翔んでも1日あれば村まで行くであろ』
両翼を大きく広げるとフワリと浮き上がり一声フォーンと鳴くと西へ翔んだ




村も夜が明けたが、食糧は奪われ、兵に占拠されていては村人にする事が無かった
村の子供達は母親や祖父母に「お腹空いた」と泣き付いている

「村長!村の人間を全員集めろ」
阿多あだが一睡もしてない村長に命じる
「な、何をなさるので…」
「暇だからな、使えるのと使えないのを別けておく」
別の兵が
「隠しても無駄だぞ?外へは兵が見張っている」
ヘラヘラしながら言った




「なんかキナ臭くなってきたな、急いで蓬莱山まで駆けてくる」
「ああ急いでくれ、俺1人じゃ厳しい」
「判った、俺のあしでも半刻あれば戻ってこれる」
世紀が駆け出した




「集まりました、女子供も居るので余り無体な事は…」
震える女子供を男衆が守る様に囲み兵達を睨む
「なんだ?100人も居ないじゃないか?これじゃあ暇潰しにもならんなぁ」
と剣を抜く
「何をなさる!?」
「いや、なに、使えないのを間引こうと思ってな」
と、阿多が村長に剣を右下から薙ぐ様に振り上げる
村長が咄嗟に左手で胴を庇い右へ動くも、左手は肘から切断され左胴も斬り裂かれた
「ウウゥゥ…な……ハァハァ……なにを……」
「ふん、身体の内までは斬れなんだか、これでは死なんなぁ」

「村長!?大丈夫か!?」
男衆筆頭の古万こまが慌てて傷を押さえる
「血は…ハァハァ…道術で…止めた…ハァハァ…みな道術…ハァハァ…で、守れ…」

「ほ~う、道術が使えるのか?たかだかひなの村人の分際で?これは危ない村だなぁ」
阿多がニヤニヤ笑うと、後ろから道士が声をかける
「我々も手伝いますかな?」
「いやいや、それにはおよびませんよ。大事な道士様に無駄な力を使わせては後で叱られます」
「はっはっは、そうですか、では見物させて頂きますかな」



「どうだ?」
と、鬼の長、さかきが鬼の男女50人あまりを引き連れて来た
おさ!ちっと遅かった、1人村長らしき者が斬られた!」
「なに!?殺されたのか!?」
「いや、死んじゃいないみたいだが……あれは危ない様に見える」
「イカン、イカン、それはダメだ!ルーン様が御怒りになる!直ぐに救援するぞ!」

「皆!取り敢えず村人達を助ける為に突っ込むぞ!力の出し惜しみはするな!突っ込むぞ!」

「おお!!!!」
鬼達は憤怒の表情で村へと駆け出した


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とうとう、村人に犠牲が…

今更ですが
シズ=神水

まぁ読者の皆様は解ってたと思いますが
本文中で説明する隙間を見つけられませんでした…

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