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漫遊編
蓬莱の國 廿
しおりを挟む四神獣が歩きながら本姿に戻ると、兵達が逃げるのも忘れ呆然とする
「いや…いやいや…四神獣だと…」
「な、何故聖獣が…」
「ありえない…」
兵と道士達が青褪める間に
玄武が兵達の足下を底無し沼にして沈め
青龍が地面から蔦を這わせ、蔦に巻かれた兵が干からび
鳳凰が小さな火の玉を飛ばし、兵が燃え上がり
白虎が風で兵を動けなくして、爪で斬り裂いていく
「聖獣が人を殺すだと…」
「そんな…嘘だ…」
「四神獣は人を守護すべき存在じゃなかったのか…」
阿鼻叫喚の渦の中、兵達はみるみる数を減らし100人程度までになった
『あれ?減らし過ぎたか?』
『あら?それぞれ100人じゃ多かったわえ』
『大丈夫だよ、鬱憤溜まってたんでしょ?』
ルーンが笑う
『さてと…聴きたい事があるんだけどさ、先に言っておくけど嘘吐いたら死ぬほど苦しいけど死ねない様にしてあげるね』
と、にっこり笑って阿多と道士達に向かって言うと
全員が無言でコクコク頷く
『では先ず、この村へ何しに来たのかな?』
道士の1人を指差す
「は…」
道士が行人を見ると首を微かに振っている
「村人たちを賊から保護する為です…」
ルーンの金の目がチカッと光る
『ふーん、じゃあ何で食料根こそぎ奪って村長斬ったの?』
「い、いや、それは…」
『言ったよね?嘘吐くなって…ポェ姐、死なない様に燃やして』
『あい判った』
と道士に黄色い火を飛ばすと、道士の身体が一瞬で燃え上がり
「ギャアアァァァ、熱いアツイあつい…」
と転げまわる
しかし、どんなに地面で転げまわっても火は消えず
「…ヒュー…カハッ…ヒュー…」
口から炎が入り気管が焼けたのか声も出なくなり、身体は焼けただれ踠き苦しむが道士は死ねない
全身真っ黒になり人とは言えない姿でも のたうち回る道士を見た兵達は心底震え上がる
『じゃあ次の人、教えてくれるね?』
と違う道士を指差す
「は、は、はい…私達は蓬莱山から下りてきた者共を捕縛し出雲の都へ連行する様に命を受けました!」
踠く兵を横目に必死に答える
『ん?それだけ?じゃあ、なんで村人たちに手を出したの?』
「我々道士が受けた命はそれだけで、村人へは判りません。兵達には別の命が下されているのかと…」
と阿多を見る
『なるほどね、じゃあ…村人たちにした事はお前に話して貰おうか?』
と、脂汗を掻きながら左手を抑えている阿多を指差し目の前まで行く
「グッ…うっ…お、お前達は村人の何なんだ!」
『はぁ…まだ余計な事を話す余裕があるのかぁ』
ルーンの右手が阿多の左腕を抑えていた右手を掴むと右手首から先をもぎ取った
「ヒアアァァァァ…」
阿多が絶叫し、膝を付き両手を見て泣き出す
「な、何故こんな事を…」
『何故だって?世の中舐めてるからじゃない?』
行人が青褪めながらも
「お前達は人を守護するんじゃないのか!それとも聖獣は倭に与したのか!」
『ん?僕達が人を守護するって何の事かな?それに倭は僕達を丁重に扱ってくれて取引出来たからね、それには応えようとは思うよ?』
『うむ、何故我等神獣が人如きを守護せねばならぬ?』
『あぁそうだな、そんなメンドクセーのは勘弁だな』
『妾達が護らなければ生きてゆけぬのならば、生きている価値もないのう』
『ふぉっほっほっほ、人など我等が餌にもならぬというにのお』
「し、しかし…大昔に現れた龍達が言ったと伝わっているぞ!」
『ふーん、その龍は何処に居るのかな?君達の都?』
「う…その昔、封印を破って東へ飛んで行ったと伝わっている…』
『封印?』
「そうだ、当時、蓬莱に並ぶ者無しと言われた陰陽師と道士によって封印されたが、他の龍達が現れて破られたと伝承にある」
『ふーん、なるほどねぇ』
もう道士には興味ないといった風に阿多を見て
『で?村人達を襲った理由は?』
「う…ぐ…」
『言っとくけど、次は足捥ぐよ?』
「ぐ…元々この村は蓬莱山に近いから足掛かりに便利だっただけだ…しかし、倭の都とも交流していて邪魔だったから…」
『は?そんな理由?』
四神獣もポッと口を開け呆れる
『はぁ、なんと言うか…もう、出雲は要らないよね?』
と、振り向くと村人達と鬼達が戻ってきたところだった
村長が斬られた腕を抑えながら
「ルーン様にお任せ致します」
と顔を顰めて言うと
「我等も、そんな輩の都とは付き合いとうは御座いません」
と榊も顔を顰める
『ははは、そうだろうね』
今度は兵達に向き直り
『君達、もう都に帰してあげるよ。その代わりに武具は置いていってね』
『あ、あと、10日ぐらいしたら都に行くから首長に言っておいて』
「な、何をしに都へ?」
『うん?まぁ、滅ぼしに?』
「そ、そんな…」
『まぁ、君達が言う天罰だね』
ふふふ…とルーンが笑い、四神獣もニコニコ顔だが目は笑っていなかった
『あ、君はダメだね。帰れないよ』
阿多を指差した瞬間、ルーンの爪が伸び鳩尾を突き刺し背から出る
「ガハッ!」
血を吐きながらルーンの爪を掴もうとするも手がない
ルーンは、そのまま阿多を持ち上げ近くの建物に突き刺し張り付けた
『君の処遇は村人に任せる』
と言いながら爪をポキリと折った
『さて、他の人達は早く逃げないと村人達と鬼達から殺されちゃうよ?』
道士と兵達は慌てて武具を脱ぎ捨て西へ遁走していく
それを見ながら
『誰か村長の腕を見つけてきてくれない?』
と誰とはなしに頼むと
「あ、たぶんあそこに落ちているかと」
と茨木が村の中央へ走っていき数分もせずに腕を持って戻ってきた
ルーンが腕を受け取ると村長の傍に行き
腕を切れ目に充てて傷を撫でた
と同時に傷が消え、腕は元通りにくっついた
ついでに左脇腹の傷も撫でて傷を跡形も無く消す
村長は目を丸くして
「い、痛みも無くなった…」
呟いた瞬間、土下座していた
『腕があって良かった、一から造ると歪む事があるんだよね』
「あ、ああ、ありがとうございます、ありがとうございます!」
と這いつくばる
『あー、怪我したのは僕達のせいでもあるから気にしないで』
『あと、アレはどうする?』
と、横に張り付けた阿多を親指で指した
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1月2日になっちゃいましたが
皆様、あけましておめでとうございます
本年も宜しくお願い申し上げます
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