剃り落とされた愛欲 〜スキンヘッドと褌がつなぐ歪な絆〜

S.H.L

文字の大きさ
1 / 2
前編

前編

しおりを挟む

【序章:迷いと決意】

 春の訪れを感じさせる穏やかな午後。24歳の瑞樹(みずき)は、新たに大学へ入学し、国家試験の受験資格を得るための生活をスタートさせようとしていた。もともとフリーターとして居酒屋のバイトやイベントコンパニオンなどを転々としながら生計を立てていたが、「やはり将来のためには資格が必要だ」と痛感したのが数か月前。今では入学準備に忙しく、勉強道具や参考書が部屋のテーブルを埋め尽くしている。

 彼女は、自分でも“ぽっちゃり体型”と自覚するふくよかな体つきをしていた。昔から太りやすい体質で、しかも炭水化物が好きで、お菓子も好き。ときには「それは“ぽっちゃり”を通り越しているんじゃ?」と思うほど丸みを帯びたお腹や太ももを恥ずかしく感じることもある。しかし、性格はサバサバとしており、男性に対しては尽くしてしまうMっ気のある一面を隠してはいない。

 アニメ好きということもあり、家ではアニメグッズやフィギュアを眺める時間も多い。そんな趣味のせいで恋愛が遠のいていた時期もあったが、ある日SNSで同い年の男性・俊幸(としゆき)と出会ってから、日常が少しずつ変化していった。

 俊幸は、瑞樹が目指す資格をすでに取得しており、大手事務所で働いている専門家だという。SNSで資格勉強のコミュニティに参加していた瑞樹の投稿を見つけ、「同じ資格を目指すなら、分からないところを教えるよ」と優しく声をかけてきたのが最初のきっかけだった。実際には“国家資格を持っている男がモテる”という確信と、同じ目標を持つ女性を釣ろうという下心があったようだが、それを瑞樹が察するはずもない。大学時代の話や地元の話題で盛り上がり、何度かデートを重ねるうちに、瑞樹は次第に俊幸に惹かれていった。

 実際のところ、俊幸が瑞樹に惹かれているわけではなかった。なにしろ彼は“髪フェチ”で、女性が髪を短くしていく過程を眺めたり、刈り上げを触るのが好きだという性癖を持っていた。SNSで出会った女性たちにも「ツーブロックにしてみない?」「もっと短く切ってみようよ」と提案し、自前のバリカンで刈り上げベリーショートに仕立てたり、床屋に行かせて欲を満たしたりすることを繰り返していた。ぽっちゃり体型の瑞樹はまったく彼の好みではなかったが、最初のデートでロングヘアにしている瑞樹を見て、「いつかあのロングヘアを刈り上げさせてくれるかもしれない」と期待を抱き、会う回数を重ねていたのだ。

 数回デートを重ねたある日、彼は「脈がないなら、そろそろ関係を終わらせてしまおうか」と思いつつも、その前に一度“刈り上げ”をやらせてもらおうと、LINEで自分の髪フェチについて打ち明けた。そして「次のデートのとき、サイドをツーブロックにして欲しい」と提案した。普通なら引かれてもおかしくない告白だったが、瑞樹は「どうして欲しいの?」と恐る恐る聞きつつも、彼に強く惹かれていたがゆえに断れなかった。反対に、「ホテルにも行こうよ」という彼の誘いに期待すら感じてしまう。こうして二人は、初めてホテルで過ごす日を迎えることになったのである。

―――――――――――――――――――――――――――

【第一章:ホテルの誘惑と刈り上げへの一歩】

 その晩、ホテルの一室に入るなり、俊幸は手慣れた様子でバスルームの湯船にお湯を張り始めた。そして「さあ、刈り上げしようか?」とやさしく声をかける。
「え? もうするの? 着替えとかお風呂とか……」
 戸惑う瑞樹だったが、背後から抱き寄せられ、服をたくし上げられた瞬間に、「拒む」という選択肢が頭から消え去ってしまう。ぽっちゃりとしたお腹を見られるのは恥ずかしいが、俊幸の存在を近くに感じると、胸が高鳴って拒絶できない。

「ずいぶん久しぶりだな……男性に身体を見せるなんて」
 恥じらいながら小声でつぶやき、思い出すのは大学二年生のときに別れた、10歳上の彼氏のこと。あのころはまだ自分も若くて、相手の男性を“おじさん”と感じることもあった。しかし、それ以来はロクな出会いもなく、今ようやく同い年の男性と親しくなれたと思っていたのだ。

 ホテルのバスルームは、一面が鏡張りになっていて、映る自分の体に赤面してしまう。たっぷりと脂肪を蓄えたお腹や腰回り。恥ずかしい気持ちを抱えたまま、小さな椅子に腰掛けさせられる。
「じゃあ、どのくらい刈り上げる?」
「わからないけど……最初は少しだけにしてほしい」
 本音を言えば、ツーブロックでもう少し強めに刈り上げられるのは怖かった。しかし、長い髪で覆い隠すことは可能だろうし、「この程度なら、まだ許容できるかも」と自分を納得させる。

 幸いにもこのときの俊幸は、彼女のビビり気味の様子を汲んでか、本当に“少しだけ”の刈り上げにとどめてくれた。耳の上数センチ程度の広さで、髪を耳にかけたときにかろうじて刈り上げ部分が見えるくらい。瑞樹はその優しさに胸を撫でおろし、逆に「こんなふうに気をつかってくれるんだ……」という好印象を持つようになった。

 そのあと二人で湯船に浸かり、色々な話をしているうちに時間はあっという間に過ぎていく。体を洗い合うような官能的な展開はなく、ただ刈り上げを少し体験しただけでホテルの時間は終わってしまった。

―――――――――――――――――――――――――――

【第二章:少しずつ広がる“ツーブロック”の境界線】

 それから数週間が経ち、瑞樹は新生活の準備をしながら、少しずつ刈り上げを“広げて”いく日々を送っていた。最初こそ勇気が必要だったが、一度刈り上げを入れてしまえば「どうせ髪を耳にかけなければバレない」と開き直れるのも事実。さらに、俊幸に「写真送って」「ここをもう少し刈り上げてみたら?」と可愛く言われるたび、嬉しくなってしまう自分がいた。

 最初はもみあげの上だけだったツーブロック部分が、こめかみ、耳の上、耳の後ろへと順調に広がる。いつしか襟足までつながり、うなじのあたりまで刈り上げるようになった。美容院や1,000円カットでひと月に一度、あるいは二週間に一度のペースで、刈り上げ部分をメンテナンスするように。普通にロングヘアとして下ろしているときはまったくわからないが、髪をかき上げると広い範囲でバッサリと短くなっている。鏡で確認するたびに「いつかもっと大胆に短くしてみようか」と考える自分が、少し怖くもあった。

 そのころから、俊幸は「刈り上げだけじゃなく、ショートカットも似合うと思うな」「髪、もう少し上も短くしてみたら?」と提案してくるようになる。ラインでのやりとりも、日常の雑談より「次はどんな髪型にする?」という話題が中心だ。最初は戸惑いながらも、「彼にもっと好かれたい」という想いが勝って、刈り上げを徐々に上部へと拡張していった。

 しかし、関係が深まるにつれ「一線を越える」ことはなかった。ホテルに行っても、俊幸はすぐに寝てしまうか、あるいは仕事の疲れを理由に体を求めてこない。そんな彼の態度に、瑞樹は焦りを感じる反面、「忙しいのだろう」と自分を納得させる。ベッドで寝息を立てる彼の横顔を見つめながら、「いつか私をしっかり抱いてくれるよね」と期待していた。

―――――――――――――――――――――――――――

【第三章:ショートカットへの決断、そして衝撃の坊主】

 いつしかサイドや襟足の刈り上げは、かなり広い範囲となっていた。もうロングヘアというよりは、サイドや後ろは完全に短く刈り上げた“ロングツーブロック”と呼べる形。髪を下ろしてしまえばロング風にも見えるが、風が吹くと耳の上やうなじの際が露わになるようなスタイルだ。そんなある日、「家に泊まりに来ないか?」と俊幸から初めての誘いがくる。
 正直、ここ数か月ほど「彼にちゃんと抱いてもらいたい」と思い続けていた瑞樹にとって、これは待ちに待ったチャンスだった。

「いいよ、行きたいっ!」
 即答すると、俊幸は「じゃあ、そのときにもっと思いきり短くしてきてほしい」と言う。
「もっとって……どのくらい?」
「うーん、ショートカットにして、サイドをもう少し広めに刈り上げるとか。あと、後ろももう少しスッキリしてくれると嬉しいな」
 まるで子どもがおもちゃをねだるような口調でそう言われると、嫌と言えない。結局、瑞樹は「うん……わかった。精一杯短くしてみるね」と承諾する。そして翌日、美容院で背中まで伸びた髪をバッサリ切り落とし、思いきってショートカットに挑戦した。
 肩にもつかない長さまで切られた髪が床に落ちる姿は、見ていて不思議な高揚感と少しの寂しさをもたらす。美容師に「本当にこんなに切っちゃって大丈夫ですか?」と確認されながらも、「はい、お願いします」と答える瑞樹。襟足の刈り上げ幅も広げ、まだかろうじてトップにボリュームを残したベリーショート寄りのスタイルに仕上がった。

 切り終えた後、瑞樹はすぐにその写真を撮り、俊幸に送る。「凄い! もっと見せて」「もういっそ坊主にしちゃえば?」という声が返ってきて、彼の興奮を感じながら少し胸を弾ませる。どこか嬉しさもあった。彼に近づいている、愛される自分になれている……そう感じていたのだ。

 そして迎えた当日、瑞樹は「さらに彼を喜ばせたい」という強い気持ちに突き動かされる。ショートカットにしてからわずか数日しか経っていないのに、なんと“坊主”にする決断をするのだ。それも9ミリという長さ。1,000円カットに駆け込み、「上も全部、バリカンで9ミリに揃えてください」とお願いした。美容師は驚いた様子だったが、瑞樹の真剣さを感じとったのか、無言で了承してバリカンを手に取った。

 「ヴィーン……」と響くバリカンのモーター音。過去にサイドや襟足を刈り上げてもらったことはあっても、頭頂部から一気に刈られるのは初めてだ。鏡に映る自分の姿にドキドキしながら、髪がまるで雪のようにハラハラと落ちていく。トップから前髪、サイドへと順番に毛が消えていくと、頭皮が次第にあらわになっていくのがわかる。胸が苦しくなるほどの緊張と、一種の快感とも言える高揚感がない交ぜになった不思議な感覚だった。

 最終的に仕上がったのは、9ミリの丸坊主。地肌はうっすら見える程度だが、それでも“ショート”の域を大きく超えた衝撃的なヘアスタイルだ。これで彼の元へ行けば、きっと喜んでくれるに違いない。そんな思いを胸に抱きながら、慌ただしく電車に乗って彼の家を目指した。

―――――――――――――――――――――――――――

【第四章:俊幸の部屋、暴かれた真実】

「こんばんは~」
 駅で合流し、その足で近所の弁当屋へ向かいテイクアウトを買ってから、俊幸の家に入る。瑞樹は心臓の鼓動を抑えられない。今夜こそはきっと抱いてもらえる……そう信じていた。

 ところが家に着くなり、瑞樹は急いでトイレへ直行した。緊張でお腹が冷えてしまったらしい。そのトイレを開けてさらに驚く。洗面台の近くに、明らかに女性物とわかる化粧ポーチが置いてあるのだ。
「え……何、これ。誰の……?」
 嫌な予感が胸をよぎる。あまりに衝撃的で、そのまま俊幸のもとへ駆け戻る。
「ねえ、このポーチは誰の? もしかして、他に彼女がいるの……? それとも私のほかにも女性を連れ込んでるの……?」

 瑞樹の問いかけに、俊幸はしばし言葉を失う。実は、前日にデリヘル嬢を呼んでおり、その女性が置き忘れていったものだったのだ。もともと俊幸は“刈り上げ”フェチで、坊主やショートカットの女性と遊ぶことが多い。瑞樹の容姿が好みでないのもあり、彼女を抱く気にはなれなかったが、欲求を満たすために別の女性を呼んでいた。
 もちろんそれを正直に打ち明けるわけにはいかない。「あ、あれは……いや、その……」と困り果て、考えた末に“彼女”ではなく“デリヘル”だった事実を薄めに伝え、なんとか場を誤魔化そうとする。

「ごめん……実は、仕事のストレスとか、いろいろあって……プロを呼んだことがあったんだ。でも、それは本気じゃないんだ。君のことは好きだけど、正直自分に自信がなくて……」
 言葉を探しながら口にする嘘のような本音のような弁明。瑞樹はショックを受けながらも「じゃあ、彼女がいるわけではないのね……?」と確認し、涙目になりながらもしがみつく。彼女にとって、大好きな俊幸に裏切られたという感情と、“それでも嫌われたくない”という依存にも似た思いが交錯していた。

 そんなとき、瑞樹は思わず自分の頭に手を当て、「せっかくこんなに髪を切ってきたのに……」と呟く。これまでの頑張りが否定されたようで、言い表せないほどの虚しさを感じる。頭はすでに9ミリの坊主。しかし、俊幸にとっては「まだ足りない」というのが正直なところ。

「その程度じゃ……」と思いかけた瞬間、彼は更なる衝撃を目にする。なんと瑞樹は、手のひらに隠していたウィッグを取り外し、実はもう“9ミリ”よりもっと短い状態にしていたのだ。事前に家を出る前、どうしても「もうワンランク短くしなきゃ」と衝動に駆られて、バリカンを自分で当ててしまっていたのだ。
「……え? 坊主にしてきたの?」
「うん……9ミリを更に自分で少し刈って……ほとんど地肌が見えてるよ」
 言いながら、瑞樹は指先で自分の丸坊主を撫でる。確かに9ミリは残っておらず、サイドや後ろはほぼ6ミリかそれ以下で、頭頂部もごく短い。もはや髪型というより“丸刈り”そのものだ。

 その衝撃的な姿に、さすがに俊幸も一瞬は言葉を失ったが、次に出てきた言葉は「すごいね、可愛いよ……」というものだった。
「本当?……私、似合ってる?」
 涙目の瑞樹が顔を上げると、彼は「もちろん」と言いながら、坊主頭を撫でてくれる。けれど、その表情にはどこか冷めた雰囲気も漂っているのが、瑞樹にはわからなかった。

―――――――――――――――――――――――――――

【第五章:更なる刈り上げと初めての情事】

「じゃあさ、せっかくだしもうちょっと短くしようか。俺がやってあげる」
 俊幸はそう言うが、瑞樹は驚いて眉をひそめる。
「もう坊主なんだよ……これ以上って、どうしろっていうの?」
「うちにバリカンあるから、6ミリにしよう。ほら、さっき見たらまだちょっとムラがあるし……」
 そう言い訳をしながらバスルームへ瑞樹を連れて行くと、おもむろにバリカンのアタッチメントを6ミリにセットする。心のどこかで嫌がる気持ちを抱きつつも、ここで抵抗すればますます嫌われてしまうのではないか……そんな不安が先立ち、瑞樹は渋々と椅子に座る。

 「ヴィーーン……」というバリカンの低い駆動音が、狭いユニットバスに鳴り響く。すでに短い髪の上をガリガリとバリカンが進むたび、細かい毛がピョンピョンと落ちていく。大きな塊が落ちるわけではないが、細かい砂粒のような毛が飛び散り、鏡に映る自分の頭は更に“野球部の丸刈り”に近づいている。
 俊幸は容赦なく、様々な角度から瑞樹の頭を抑え込み、「もう少し奥まで……」「うん、こっちにも……」と念入りに刈っていく。10分も経たないうちに、9ミリから6ミリへの“リメイク坊主”は完成した。シャワーで散った毛を洗い流して鏡を見ると、確かに地肌の透け感は増している。軽く触るとザラッとした感触が心地よいような、切ないような、不思議な気持ちになる。

「6ミリは短いね……でも、坊主になったら大差ないか」
 そう呟くと、俊幸は「9ミリと6ミリじゃ結構違うんだよ」とサラリと言う。彼にとっては“まだまだ長い”のかもしれない。どこか満足していない空気を感じつつも、今の自分にできる限界を越えた姿であることは確かだ。瑞樹は苦笑いしながら「ま、いっか……」と小さくつぶやいた。

 そしてバスタオルで身体を拭き、リビングへ移動するころには、ついに“今夜は抱いてもらえる”という期待感で胸がいっぱいになっていた。坊主頭の自分を見て、俊幸は興奮している……それが嫌でも伝わってくる。

「こっち、おいで」
 低い声で促され、瑞樹はリビングのソファに腰かける。俊幸はすぐに彼女のバスタオルを剥ぎ取り、丸裸の体をまじまじと見つめた。ぽっちゃりどころか、かなり肉感的な太ももやお腹が露わになり、恥ずかしさで思わず腕でお腹を隠そうとする。しかし、その分坊主頭がさらに強調されて、「こんな体型の女が坊主……」というコントラストが奇妙な艶っぽさを醸し出す。

「電気、消したい……恥ずかしいよ」
「だめだめ。せっかく坊主にして可愛くなったんだから、ちゃんと見たい」
 彼はそう言って灯りをつけたまま、瑞樹の大きな身体を抱き寄せる。そして、彼女の坊主頭を撫で回しながら、耳元や首筋に熱い吐息をかける。
「んっ……あ……」
 瑞樹は恥ずかしさと快感が入り混じった声を漏らし、いつしか自分も俊幸の背中に腕を回してしがみつく。ふくよかな胸やお腹に埋もれるように、俊幸は巧みに体を預け、腰を動かし始める。いつしか二人は激しく体を重ね、一線を越えた。

―――――――――――――――――――――――――――

【第六章:朝の身支度とウィッグ、そして次なる要求】

 翌朝。初めて情事を交わした後、瑞樹は満たされた気持ちで目を覚ます。軽い疲労感を感じながらも、ずっと願っていた“抱かれる”という願望が叶い、身体がどこか火照っているように思えた。
 同時に、“自分はもっと彼に必要とされたい”という欲求が湧き上がってくる。丸坊主にしたことを後悔しながらも、“これで彼に受け入れられるなら”という一種の安心感を得たのだ。

「さあ、準備しないと……」
 彼の部屋を後にする前に、瑞樹はウィッグを取り出してかぶり始める。今はまだ坊主頭で外を歩くには勇気が足りない。
「ウィッグなしでもいいんじゃない?」
 少し意地悪っぽい微笑みを浮かべながら、俊幸が声をかける。
「無理だよ~、恥ずかしいもん」
 そのやりとりに、俊幸は興味半分、からかい半分という様子で、ウィッグを軽く引っ張り、外しそうな仕草を見せる。
「ほら、やめて! 外でそんなことされたら困る……」
「じゃあちゃんとつかまえててよ? 坊主がバレちゃうぞ~」

 ふざけ合いながら家を出て、駅へ向かう道中、通学中の高校生のグループが近づいてくる。彼はまた「この女、実は坊主なんだよなー?」などと小声でからかうように言い、瑞樹をヒヤッとさせる。彼女は頭を押さえながら「やめてってば!」と必死になっていたが、どこか楽しそうでもあった。

 それからしばらくして、二人は別れ、各自仕事や学校の用事へと向かう。すると、その日のうちから俊幸からの連絡が急増し始めた。
「ちゃんと坊主で過ごしてる?」
「今はウィッグだよ~。さすがに恥ずかしいし」
「じゃあ学校の自習室では? 外してるの?」
「うん、友達に見られないように隅っこで外したりしてる。蒸れて暑いし……」
「そっか。今度、仲良い人にはカミングアウトしてみたら? きっと驚くぞ~」
「うーん、考えてはみる。もう少し慣れてからかな」

 こんな風に何気ないやりとりを続けながら、次の要求めいたことも送られてくる。
「次は3ミリでお願いします」
「は……? 3ミリって、もうほとんどスキンヘッドじゃん……」
「大丈夫大丈夫。絶対似合うから。床屋さんでお願いしてきてよ」
「いや、ちょっと様子見て考える……」

 しかし内心、瑞樹は“次こそ3ミリにしようか。そうしたらもっと抱いてもらえるかもしれない”と迷いながらもワクワクしている自分に気づいていた。

―――――――――――――――――――――――――――

【第七章:床屋(理髪店)への足取り】

 そしてある土曜日の朝、瑞樹は意を決して家を出た。ウィッグをかぶるか迷ったが、結局はキャップを被ってごまかすことに。向かう先は行きつけの1,000円カット……ではなく、オーソドックスな昔ながらの“床屋”だった。大きな赤青の回転灯がクルクル回っている、あの店構えだ。

「シャンプーまでしっかりやってもらいたいし……どうせなら床屋さんの雰囲気も味わってみよう」
 そう考えたのだ。緊張で胸がドキドキする。女性が床屋へ行くのは珍しいと思われるかもしれないし、実際にこんなに短くする女性客は少ないだろう。だが「3ミリに挑戦するかもしれない」と思うと、プロの理容師に任せてみたかった。

 床屋のドアを開けると、中年の男性理容師が「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。店内には先客はいないようだ。
「えっと、カットとシャンプー、あと……顔そりもお願いできますか? 髭剃りの部分も体験してみたいんです……」
 女性客が珍しいのか、理容師は少し驚いた様子。しかしすぐににこやかな笑みで「もちろん大丈夫ですよ」と答えてくれた。

 椅子に腰を下ろし、キャップを脱ぐと、現れたのは6ミリほどの丸坊主。理容師の目が一瞬丸くなる。
「あ、すでに相当短いですね……もっと短くされるんですか?」
 瑞樹は少し恥ずかしそうに頷く。
「はい。3ミリにしようかどうか迷ってて。あと、シャンプーと顔そりもお願いしたくて……」

 理容師は慣れた手つきで椅子の角度を調整し、まずはシャンプー台へ案内してくれる。女性向けの美容室と違い、床屋のシャンプー台は後ろ向きではなく、前屈みになる形が多い。
「失礼しますね。かゆいところはございませんか?」
「だ、大丈夫です……」
 まだ坊主頭になって数日だというのに、理容室で洗ってもらうという行為には不思議な緊張と期待がある。男性理容師の力強い指遣いが頭皮をゴシゴシと揉みほぐし、泡立ったシャンプー剤が坊主頭を覆っていく。
 短い髪の毛だからこそ、指が直接頭皮を刺激する感触が強く伝わり、思わず声が出そうになる。普段は体験しないほどの頭皮マッサージが続き、まるで心まで洗い流されるようだった。

「じゃあ、一度流しますね」
 シャワーの生温いお湯が頭全体を包み込むと、ささやかな快感が背筋をぞくりと震わせる。坊主になってから首筋や頭皮への水流が直に当たる感覚が、やけに官能的に感じるのだ。心地よさに身を任せながら、シャンプー工程があっという間に終わってしまう。

―――――――――――――――――――――――――――

【第八章:3ミリへの挑戦、そして散る髪】

 再び椅子に戻され、タオルで丁寧に水気を拭き取られる。頭皮がほんのり火照っているように感じる。理容師がバリカンのアタッチメントを確認し、「では、3ミリに挑戦されますか?」と改めて問う。
「…はい。お願いします」
 わずかな沈黙。自分でも信じられないほどの決断を下している。でも、ここまで来た以上は後戻りはできない。緊張で唇が渇き、思わず舌先で湿らせながら椅子の背もたれに身体を沈める。

 「ヴィーーン……」先ほどよりも高めの音を立てながら、バリカンが再び稼働する。すでに6ミリだったとはいえ、3ミリへの短縮は大きい。鏡に映る自分の頭にバリカンが近づいた瞬間、思わず目をつぶりそうになるが、勇気を出して視線をそらさず見届ける。
 「ヴィーーン、ヴィーーン……」根本から髪を断ち切るような振動が伝わり、さらに短い毛がハラハラと落ちていく。もともと短い髪ではあるが、それでも微妙に長さのあった部分が、容赦なく削られていくのがわかる。

 先ほどシャンプーをしたばかりとはいえ、床にはうっすらと黒い粒が散っていく。自分が女性であるという証明ともいえる“髪”が、ここまで短くなってしまう……そんな恐怖と背徳感、それに似た高揚が入り混じる。
 理容師は慣れた手つきで、時々櫛を使いながら頭の丸みに沿って丁寧に刈り上げていく。前、サイド、後ろと順番にバリカンを当てるたびに、「ヴィーーン……ヴィーーン……」と微妙に響き方が変わるのが何とも言えない。

「はい、こちらも失礼しますね」
 後頭部のうなじ近くを刈られるときには、さらにくすぐったいような、そわそわするような感覚に襲われる。首筋を伝う微かな振動が肌を刺激し、思わず椅子のアームレストを握りこんでしまう。
 理容師はその様子をちらりと見たが、何も言わずに黙々と作業を続ける。

 やがてバリカンの作業が終わり、軽く手で触って確かめるように頭頂部をなぞる。3ミリの髪はほとんど“剛毛”というほどではなく、ざらざらとした柔らかいブラシのようだ。6ミリのとき以上に地肌の色が透けて見えるため、まごうことなき“坊主”であると再認識させられる。
 それでも、不思議と「思ったより悪くないかも」と思っている自分がいた。こんなに短くしたのに、身体は少し熱を帯び、心は軽やかで、それどころか“彼がどう思うだろう”という期待で満ちている。

―――――――――――――――――――――――――――

【第九章:髭剃り――官能的な肌のふれあい】

 バリカンの工程を終えると、理容師は「次はお顔そりですね。椅子を倒しますのでリラックスしてください」と声をかけてくる。普通なら男性客がヒゲを剃るために受ける施術だが、女性が頼むことも少なくはないらしい。産毛を綺麗に剃ってもらうのは、美容効果もあるとのことだ。

 椅子をゆっくりと倒され、仰向けになったところへホットタオルが顔全体を覆う。「あ、あったかい……」と思わずため息が漏れる。湯気を含んだタオルが肌に心地よく、ほんのりと鼻先まで温めてくれる。
 そのまま数分ほど放置されてから、理容師がタオルを外し、石鹸の泡を刷毛で作りながら顔に塗布していく。
「敏感肌でなければ大丈夫だと思いますが、もし痛みなどあればおっしゃってくださいね」
「はい……大丈夫です」
 その優しい声に安心感を覚えつつ、こそばゆいような感触に頬が赤らむ。鏡は見えないが、自分の坊主頭と、顔だけが石鹸まみれになった状態を想像し、少しおかしくなる。

 やがて、理容師が剃刀を手に取り、頬から顎、そして鼻下へと産毛を丁寧に剃っていく。刃の当たるひんやりとした金属の感触が繊細で、剃られるたびにヒリヒリとした心地よい刺激を伴う。ときどき「ジョリ……」という音が微かに聞こえるのも、なんとも言えない官能を感じさせた。
 いつしか瑞樹は“自分がとても無防備な状態で、他人に肌を預けている”という事実に興奮を覚えていることに気づく。美容室とは違う、この理容室ならではの密着感や独特の緊張感。頭は坊主、顔は剃刀に委ねられ、完全に相手の手のひらの上だ。

 やがて剃刀の作業が終わり、タオルでふき取られた後、化粧水とクリームのようなものを塗られて施術は完了となる。産毛がなくなり、肌がつるんとした感触を覚えながら椅子を起こしてもらうと、鏡に映るのは心なしか一段明るく見える顔と、地肌の透けた丸坊主の頭。
 どこか男性的とも言えるし、同時に無垢な少女のようでもある。不思議な存在感を放っていた。

―――――――――――――――――――――――――――

【第十章:ショックと歓喜、そして未来へ】

 支払いを済ませ、床屋を出る。外の光の下で改めて感じる3ミリの頭皮への風の感触は、刺激的なほど心地よい。「これが私なんだ……」という感慨と、“やりすぎたかも……”という不安が胸の中で混ざり合う。けれどもう後戻りはできないし、してしまったら今の自分が否定されてしまうように感じた。

 電車に乗ると、明らかに視線を感じる。キャップを被る選択肢もあったが、まっすぐ家に帰るだけだし、ここは敢えて“素の姿”をさらけ出してみようと決心した。ざわつく車内の空気に負けないように下を向かずに座席に腰掛け、スマホを取り出して俊幸にメッセージを送る。

「3ミリにしちゃった」
 写真を数枚添付すると、すぐに「マジか! すごいね! 早く会いたいな」と返事が来る。
 そこには興奮した様子の短文が並び、彼が喜んでいるのが手に取るようにわかる。やはりこれでよかったと、安心すると同時に胸が高鳴った。次会うときは、きっとまた激しく抱いてくれる……そんな期待がふくらむ。

 ただ、ここで終わりではない。髪を切るたびに感じるあの“ショック”と“興奮”は、今後も瑞樹の中で続いていくのかもしれない。一度ここまで短くしてしまえば、もうどんなスタイルにも変えられるし、逆に今さらロングヘアに戻すのは難しい。手間と時間がかかるし、何より「また短くしてよ」とせがむ彼の声が耳に残っている。

 それでも、こうやって彼との関係を深めていくのだと、瑞樹は信じていた。自分の体型や髪型にコンプレックスを抱えながらも、彼の求める姿に近づくことで愛を手に入れられるなら、それでいいと思った。どこか歪んだ愛の形かもしれないが、今の彼女にとってはそれがすべてだ。

―――――――――――――――――――――――――――

【終章:新たなスタートと髪のゆくえ】

 数日後、瑞樹は大学の入学式に出席するためにウィッグを被って大学へ向かう。春の日差しが柔らかく校門を照らしている。
 勉強のために足を踏み入れる新天地。ただひとつ、他の新入生とは違って、彼女の頭の下には3ミリの短さしかない坊主が隠されている。
 きっと校内でもいずれはバレるだろう。それでもいい、と思う自分がいる。秘密を抱えた自分も含めて、これからの学生生活、そして資格取得に向けて必死に頑張るつもりだった。

 彼女はふと手鏡を取り出し、ウィッグのずれを軽く直しながら、頭をそっと撫でる。あの床屋で感じたシャンプーと顔剃りの感触が頭をよぎり、思わず頬が熱くなる。彼の欲望に応えるだけでなく、自分自身も“髪を切る行為”そのものに何か特別な感情を抱いてしまっているのではないか、と思ったのだ。

「髪は、また伸ばすのかな……それとも……」
 心の中で問いかけながら、彼女は校舎の中へと足を踏み入れた。少し昂ぶる鼓動を抑えながら、新しい生活に胸を弾ませる。
 やがて忍び寄るであろう次なる誘惑――「もっと短くしてよ」「今度は2ミリにしよう」といった彼の言葉。そうした未来を想像するだけで、なぜか胸がドキドキしてしまうのだ。

 結局、彼女はまだまだ自分の意思よりも、彼の言葉に振り回される日々を選んでしまうのかもしれない。それでも、その一瞬一瞬の“刈り上げ”や“坊主”の体験が、彼女の官能を揺さぶり、彼の欲望を満たし、二人を繋ぎ止める大切な糸になっている。
 頭髪が散っていく感覚――「ヴィーン」「ヴィーーン」「ヴィー…」というバリカンの音は、これからも瑞樹の心を震わせ、衝撃と快感を与え続けるだろう。

 そしていつの日か、本当に“スキンヘッド”と呼べるほどの潔い姿になるのか。あるいは刈り上げに飽きてしまうのか。それはまだ、誰にもわからない。
 ただひとつ確かなのは、瑞樹にとって“髪”は、もう単なるオシャレのためだけの存在ではないということ。自分の存在意義や、愛を求める気持ち、そのすべてを映し出す“鏡”となってしまったのだ。

 そう――これは、まだ始まったばかりの物語。瑞樹と俊幸の歪な恋は、この先どこへ辿り着くのか。丸刈りの感触とともに、彼女はまた一歩、新たな人生のステージへと進んでいく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した

無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。  静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

処理中です...