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後編
後編
しおりを挟む【第一章:揺れる心と新たな誘惑】
あれから数日が経ち、3ミリの坊主頭で生活をしている瑞樹は、心のどこかで「これ以上はさすがにないだろう」と考えていた。しかし、その考えをあざ笑うかのように、俊幸からは連日LINEで「スキンヘッド見てみたい」「3ミリも可愛いけど、もっとツルツルのほうが興奮する」と煽るような言葉が届いている。
「スキンヘッド……」
その単語を聞くたびに、瑞樹は胸の奥がぞわぞわと騒ぐのを感じた。丸刈りの自分に慣れたとはいえ、そこからさらに髪を完全に剃り落とし、頭皮を露わにする行為は想像以上にハードルが高い。にもかかわらず、そんなことを考えると、なぜか身体が熱くなる。
「ほんとにやっちゃうの……?」
自分の中の躊躇を抑えきれず、布団の上でスマホを眺めながら一人つぶやく。すでに3ミリでも“普通”からかけ離れているのに、その先のスキンヘッドとなれば後戻りがますます難しくなる。
しかし、もうその禁断の領域に足を踏み入れる寸前だ。もしスキンヘッドになることで俊幸が喜んでくれるなら、それもまた彼の“愛”を得る手段だと信じようとしていた。
同時に「スキンヘッドの女性」という姿に、どこか見下されるのではないか、周囲から酷いことを言われるのではないかという恐怖もある。ロングヘアでぽっちゃり体型の女性が坊主頭になっただけでも視線を集めているのに、さらにツルツルになれば、ある意味“異様”と言われかねない。
「でも……それでも……」
思い浮かぶのは、刈り上げた直後のホテルでの情事だ。坊主頭を撫で回され、舐められ、激しく抱かれたあの快感。想像するだけで、身体が疼きだす。
翌朝、いつも通り起きると、スマホに俊幸からのメッセージが届いていた。
「もしスキンヘッドにしてくれたら、すごく可愛がってあげるよ」
その一言に、瑞樹の決心は大きく揺れ動いた。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第二章:背中を押す“褌”というキーワード】
ところが、それだけでは終わらなかった。
「それからさ、褌(ふんどし)も着けてみない? 日本の伝統的な下着っていうか、俺、ああいうの好きなんだよね」
電話越しの俊幸の言葉に、最初は「えっ?」と聞き返してしまった。褌なんて男性が祭りで締めるイメージしかない。まさか自分が着用する日が来るとは思わなかった。
「でも……なんで褌? あれって男の人が締めるんじゃないの?」
「女性用のもあるんだよ。意外と可愛いっていうか、セクシーっていうか。スキンヘッドで褌だなんて、最高だろ?」
「そ、そう……?」
想像がつかなすぎて、瑞樹は言葉に詰まった。だが、それ以上に「そんな非常識な格好、するわけないじゃん!」と断る気力が湧いてこない。彼の声はどこか嬉しそうで、刈り上げをしたとき以上にテンションが高いのが伝わってくる。
そしてなぜか、瑞樹はその“常軌を逸した格好”に興味を抱き始めてしまっていた。坊主頭と褌という“非日常”に飛び込めば、自分の中にある何かが解放されるのではないか。そんな根拠のない期待と、どうしようもない不安が胸を満たしていく。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第三章:あの床屋を再び訪れる決意】
結局、その夜に再び俊幸から「いつスキンヘッドにする?」とLINEが入り、瑞樹は重い腰を上げることにした。
「……わかった。じゃあ週末にする。前に行った床屋にまた行ってみる」
既読がつくと同時に「ありがとう! 超楽しみ!」という返事が届き、瑞樹は思わずスマホを握りしめた。
数日前に3ミリへと刈り上げたばかりの頭は、また少し伸びかけていたが、それを完全に剃り落とす——想像するだけで背中がゾクッとする。前のときのようにバリカンで短くするだけでなく、最終的には剃刀で地肌をツルツルにしてもらうことになるだろう。床に落ちる髪の毛は、すでに大量ではないにせよ、“最後の髪”を失うことへの恐怖と興奮が混ざり合う。
当日の朝、彼女は一応ウィッグを被り、キャップを深くかぶって部屋を出た。前に“3ミリ”のために訪れた床屋の前に立つと、回転灯がクルクルと回っているのが見える。
「あ……なんか、すごく緊張する」
一度来たはずの場所なのに、まるで初めて踏み込む秘密の部屋のように感じてしまう。だが、勢いのまま扉を開けると、中年の理容師が「あ、いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれた。
「前に来ていただいた方ですよね。確か3ミリにされた……」
理容師はすぐ思い出したようで「今日はどうされます?」と尋ねてくる。
「……もっと短くしてほしいんです。というか……スキンヘッドに」
「なるほど。剃刀(かみそり)を使って、地肌をきれいに出す感じでよろしいですか?」
「はい……お願いします」
自分の声が少し震えているのがわかった。理容師は初めこそ驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、「わかりました。では椅子のほうへどうぞ」と促す。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第四章:完全なる“ゼロミリ”へ――震える剃刀】
まずはシャンプー台で頭を洗ってもらう。坊主頭でも一応シャンプーは欠かせない。前回同様、短い髪に理容師の指が直接触れ、優しくマッサージされるような感触に思わず目を閉じる。
「ごしごし」という音とともに、頭皮に当たるお湯の温かさが心地よく、少しずつ力が抜けていく。
その後、再び椅子に座り直し、タオルで頭を拭かれる。すると、理容師は手慣れた動作でバリカンを手に取った。アタッチメントはついておらず、まさに“ゼロ”で剃る準備が整っているように見える。
「まだ少し伸びてきてますね。まずはバリカンで極力短くしてから、剃刀を使いましょう」
そう言ってスイッチを入れた瞬間、「ヴィーーン……」という低い駆動音が耳に響く。
3ミリからさらに短く、といってもすでに髪はごく僅かしかない。だが、バリカンの刃が頭に触れるたびに、細かい黒い粉のような毛がパラパラと落ち、ところどころ産毛のように伸びていた部分が根こそぎ刈られていく。
「ヴィー……ヴィーーン……」
耳元で鳴り響く振動に、瑞樹は背筋を震わせながら歯を食いしばる。まだ“刈る髪”が残っていたのか、という驚きと、これで本当に“ゼロ”へ近づいているという実感がじわじわ込み上げる。
やがてバリカンの工程が終わると、鏡に映る頭皮はほぼ地肌で、わずかな黒い点々が残っている程度になった。「もうこれだけでも十分スキンヘッドといえそう……」と思うが、理容師はさらにシェービングクリームを手に取っている。
「では、剃刀を使って仕上げましょう。少し冷たいですよ」
ぬるめのお湯で温めたタオルを頭頂部に巻きつけられ、しばらくして剃刀をあて始めると、ひんやりとした感触が直接頭皮をなでる。頬を剃ってもらう顔そりとも違い、頭部の丸みに沿って剃刀が滑る感覚は独特の恐怖と快感を併せ持っていた。
「スーッ……ジョリ……」
微かな音とともに、残っていた産毛が刃で削ぎ落とされていく。理容師は丁寧に、しかも的確に力の加減をしているようで、痛みはほぼない。とはいえ、頭皮の細かな突起や血管を思うと少しビクビクしてしまう。
「痛みや違和感があれば言ってくださいね」
「だ、大丈夫です……」
声が少し上ずってしまうのは仕方ない。理容師は手を止めず、滑るように刃を操り、端から端へと地肌を磨くように剃り進める。
数分後、頭を包んでいたタオルをもう一度温かいもので取り替えられ、剃ったあとのクリームをぬぐい取るように拭き取られる。すると、鏡の中にはまったく髪がなく、見事にツヤのある頭皮が一面を覆った自分の姿が映っていた。
目が離せない。確かに3ミリからここまで行けば、完全な“スキンヘッド”だ。生まれてこのかた経験したことのない、極限状態とも言える。この瞬間、瑞樹は自分が“何か”を超えてしまったような気がして、背筋が粟立つ感覚を覚える。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第五章:驚愕と官能、そして褌への序曲】
剃刀が終わってタオルで仕上げをしてもらったあと、理容師は「はい、お疲れさまでした」と優しく声をかけてくれた。
「本当につるつるですね。女性でここまでされる方は珍しいですが……とてもきれいだと思いますよ」
「そ、そうですか……ありがとうございます」
鏡に映る自分の姿を見て、瑞樹は動揺を隠せない。3ミリよりさらにインパクトが強い。頭に触れると、しっとりとした頭皮が手のひらに触れ、髪という感触は全くない。どこを触っても“肌”だ。
会計を済ませ店を出ると、少し強めの風が吹いた。普段なら髪を揺らすはずの風が、今はダイレクトに頭皮を撫で回す。思わず「ひゃっ」と声が漏れた。帽子かウィッグを持ってくればよかったかとも思うが、今はあえてこのままでもいいかもしれない、とどこか開き直る。
スマホを取り出し、すぐに俊幸に連絡を入れた。
「スキンヘッドになったよ……」
メッセージに写真を添付しようかと迷ったが、外の道端で撮るのは恥ずかしく、ひとまず言葉だけを送ると、「マジか! 見たい! 今すぐ会えない?」という興奮まじりの返信が返ってくる。
「……わかった。じゃあタクシーでそっち行く」
そのまま、すぐ近くのタクシー乗り場へ足を向けた。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第六章:俊幸の部屋で、褌のお披露目】
昼過ぎに俊幸の部屋に到着すると、彼は興奮を隠せない様子で出迎えた。
「おお……ガチのスキンヘッドじゃん! すごい、めちゃくちゃ似合う……」
そう言いながら瑞樹の頭をまじまじと眺め、手で撫で回す。まるで子どものように目を輝かせているのが、ちょっと呆れるくらいだ。
「なんか、すごいね……やっちゃったよ」
瑞樹は照れ隠しに笑いながら、頭を手で押さえる。外を歩いてくるだけで十分に恥ずかしかった。まさか部屋に入ってまで、彼の手でペタペタ触られると、改めて自分が信じられない姿になったことを痛感する。
「そんなに撫で回さないでよ……恥ずかしい」
「いや、めちゃくちゃカッコいいし、可愛いし……最高だよ」
自分の中では“可愛い”とは到底思えないのだが、彼が褒めてくれるならそれでいい。むしろ、恥ずかしさよりもどこか優越感にも似た感情がわいてきて、「これが私なんだ」と受け入れられる気がした。
部屋に通されると、机の上に小さな紙袋が置いてあるのが目に留まる。
「それ、褌。ネットで見つけて取り寄せたんだ」
「えっ……もう用意してたんだ……」
バッグから出して広げてみると、赤い生地の女性用褌が出てきた。一般的な白いさらしのようなタイプではなく、少し光沢がある生地で、Tバックにも近い形状をしている。
「想像より派手……」
瑞樹は思わず言葉を失う。これを自分が締めるのかと思うと、耳が熱くなる。もともと大胆な下着を好むタイプでもないし、ぽっちゃり体型の自分がこんなものを身につけたら滑稽なのでは……という不安が頭をもたげる。
「着てみてよ。せっかくスキンヘッドになったんだから、こっちもインパクトあったほうがいいだろ?」
彼の言葉に、ため息をつきながらも頷いてしまう。ここまで髪を失ったのだから、もはや褌のひとつやふたつ、どうにでもなれという気持ちだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第七章:着付けという名の官能】
「じゃあ脱いで。俺が手伝うから」
そう言って彼がずかずかと近づいてきた。瑞樹は少し躊躇いながら、上着やズボンを脱ぎ始める。今日もお腹まわりはたぷたぷしていて、下着姿はあまり見せたくない。でも、もう彼には何度も見られているわけで、今さら隠せない。
ブラまで外すと、ぽてっとした丸いお腹と大きな胸が露わになった。スキンヘッドとのギャップがあまりにも強烈で、自分で見ても“なんだこれ”と目をそらしたくなる。
「やっぱり、恥ずかしいよ……」
スキンヘッドに裸……その姿だけで十分刺激的なのに、今度は褌を締めるなんて、正気の沙汰ではない気がする。
「大丈夫。きっと可愛いから」
俊幸はにやにやしながら褌を手に取り、紐の通し方を確認しているようだ。ネットで手に入れたとはいえ、実際に女性が装着するところなど見たことがないだろう。
「ほら、片足ずつ通して……」
「う、うん……」
言われるがままに褌を腰回りに当て、股の部分を通して、後ろで紐を結ぼうとする。だが、慣れない布の扱いに手間取り、思わずもたついてしまう。腰ひもを締めれば締めるほど、お腹の肉がムニッと盛り上がり、「あぁ、太ってるのバレバレだな……」と自嘲する。
「ここをこうやって……あ、紐が食い込む……」
何とか前で布を折り、後ろで結び目を作ってはみるが、鏡を見るとまるで変なコスプレをしているように見える。お尻の割れ目が半分以上露出しており、フロント部分は小さな三角形の布が覆うのみ。
「うわ……これ、すごいね……」
自分でもドン引きするくらい攻めた下着姿で、しかも頭はスキンヘッド。ぽっちゃり体型の肉感を隠すどころか、むしろ強調してしまう。
「めちゃくちゃ興奮する……」
俊幸は抑えきれない様子で、瑞樹をじろじろと眺め回す。彼の視線が胸や下腹部、そして太ももに注がれるたびに、恥ずかしさと奇妙な高揚感が混ざり合う。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第八章:再びのシャワー、そして“髭剃り”の代わりに……】
「じゃあ、一緒にお風呂入ろう」
「えっ……でも、もうシャワーは床屋で……」
「いいじゃん。頭ももう一度洗いたいでしょ? それに、褌が濡れたらどうなるか見てみたいし」
彼の言動はどこまでも好奇心に満ちていた。仕方なく、瑞樹はそのまま褌をつけた状態でバスルームへ向かう。もちろんスキンヘッドになったばかりの頭が濡れるとどんな感触なのかは少し興味があるが、褌姿でシャワーを浴びるなんて想像を絶している。
ユニットバスの狭い空間で、まずは彼女が椅子に座り、彼がシャワーヘッドを取り上げる。
「いくよ……」
お湯が勢いよく頭を直撃し、瑞樹は思わず「ひゃっ」と声を上げる。今までは短いとはいえ髪があったから、直接頭皮に当たる衝撃は少しマイルドだった。しかし、今は完全なスキンヘッド。肌に直接シャワーが当たって、その感触は強烈だ。
「あはは、すごい! なんか、全然違うでしょ?」
「うん……なんか、直にお湯が来てる感じ」
この生々しい感触に、瑞樹は自分が本当に髪を失ったのだと改めて思い知らされる。勢いでやってしまったが、後悔はない。むしろ、身体の奥底から変な熱が立ち上っているような気すらする。
「髪の代わりに、眉毛とかはそのまま?」
「そりゃあ眉毛まで剃ったら顔認識されなくなるよ……」
冗談交じりに言い合いながら、彼は瑞樹の頭に少量のボディソープを垂らして手で泡立てる。もう髪がないので普通のシャンプーではなく、全身用のソープでじゅうぶんだ。ぬるぬると泡が頭皮を滑る感触は、いつも以上に官能的。
「どう? 気持ちいい?」
「うん……変な感じ。でも……悪くない」
こんな会話をしながら、全身を洗い終わると、次は褌にお湯をかけようと彼がシャワーを向ける。布が水を含むと、より肌に密着するようになり、ラインが一層くっきりと浮き出る。
「うわ……恥ずかしい」
ふと自分の下腹部を見下ろすと、生地が張り付いて肌の凹凸が丸わかりだ。スキンヘッドで、ぽっちゃり体型で、赤い褌。鏡に映る自分の姿に、言葉をなくしてしまう。それでも俊幸は「最高だな……」とうっとりした目で見つめている。
お湯を止めると、彼は急にニヤリと笑って「ちょっと待って」と言いだした。
「なに?」
「剃刀、ちょっと貸して」
「え? もう頭は剃ったんだよ?」
すると彼は「髭剃りじゃなくて……こことか」と意味深に下腹部を指す。要するに、“アンダーヘア”までも剃りたいのだろうか。
「まさか……無理だよ、それは……」
「大丈夫、ちょっと整えるだけでも可愛いと思うんだよね。褌が映えるし」
瑞樹はさすがに尻込みする。スキンヘッドだけでも相当な衝撃なのに、アンダーヘアまで剃ったら、もう自分が何者なのかわからなくなる。だが、彼の目は本気そのもので、拒絶することが怖くなってしまうのも事実。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第九章:さらなる恥辱と快感のはざま】
しかし、いつも通り“断れない”自分に気づいた。結局、「少しだけね……」と呟いて、再び椅子に座り直す。褌を半分ずらすようにして、うっすらと生えている部分を俊幸が剃刀で“整えて”いくのを感じる。
「痛かったら言ってね」
シャワーの下で半ば呆然としながら、彼に股間をさらけ出す。人に剃刀を向けられることなど初めてだ。それが想像以上の緊張感と背徳感をもたらし、頭皮を剃られたときよりもずっと恥ずかしい。
「……んっ……」
刃がわずかに肌をかすめるたびに、甘い刺激が電流のように走り、思わず腰が浮いてしまいそうになる。
「大丈夫? 痛くない?」
「痛くは……ない。でも……変な感じ……」
汗がにじみ、心臓の鼓動が激しくなる。下腹部の産毛が落ちていく感触とともに、熱い恥ずかしさがこみ上げてくる。
やがて、数分後には「はい、こんな感じ」と彼がシャワーの水で洗い流してくれた。恐る恐る褌を元に戻すと、以前よりも布の奥に余計な毛がはみ出ていないぶん、すっきりした印象になっている。
「わ……なんか、本当に“祭りのときの男の子”みたい……」
自嘲まじりに呟くと、彼は「いや、女の子がやるからこそいいんだよ」と嬉しそうな顔で返す。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第十章:タオルドライと官能の夜】
一通りのシャワーを終え、二人はバスルームから出る。鏡張りの壁に映るスキンヘッドの自分と、やはりスキンヘッドの頭を撫でながら微笑む彼の姿がどこか非現実的だ。
バスタオルで身体を拭きとったあと、瑞樹はふと自分の頭を再び触る。ツルツルとした指先の感触がまだ慣れない。
「ねぇ、ドライヤーとか要らないね……」
今までは髪を乾かす手間があったが、坊主になり3ミリになり、ついにスキンヘッドとなっては、もはやドライヤーなど無縁だ。タオルで一拭きすれば完了。
「最高に楽でしょ?」
「確かに……そうだけど……」
笑って受け流すしかない。
そのまま褌をつけたままベッドに腰を下ろすと、俊幸が隣に座ってくる。そして満足げに瑞樹の頭を撫で、手で握り込むようにして唇を近づけてきた。
「すごく、綺麗だよ……」
囁きながら彼はキスをしてきて、舌を絡ませてくる。直後にそのまま身体を重ねてきた。
「ちょ、ちょっと……まだちゃんと拭けてない……」
そう言いながらも、瑞樹は拒めない。髪がないぶん、首筋や後頭部に彼の唇が触れるたびに鋭い刺激が走るように感じるのだ。少しずつ息が荒くなっていき、心臓が鼓動を速める。
ふくよかな身体に褌を装着した自分の姿をまざまざと彼が目にしている。それなのに「可愛い」と言われると、不思議と嫌な気はしない。むしろ恥ずかしい格好であるほど、彼に求められているという実感が強まる。
「すげぇ色っぽい……」
彼の熱い吐息が耳元にかかり、瑞樹は首をすくめる。
そして、褌の帯を少しずつほどかれ、胸やお腹を揉まれながら、彼女は自らも俊幸の背中に手を回す。何度も抱かれたはずなのに、今日はいつも以上に強い官能を感じるのは、髪がないせいなのか、褌のせいなのか、それとも両方なのか。
結局、そのまま二人は濡れた身体を合わせるように絡み合い、唇と舌、指先と指先が互いを求め合う。ひとしきり官能の極みへと達したあと、瑞樹はゼエゼエと肩で息をしながら、彼の腕の中に横たわった。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第十一章:朝の喧騒と、スキンヘッドの日常】
翌朝、窓から差し込む日差しで目を覚ます。身体のあちこちが心地よいだるさに包まれ、それが昨夜の情事を思い出させる。横を見ると、俊幸はまだ眠っているようだ。
ふと、自分の頭を触る。やはり髪はない。当たり前だが、その事実に再び軽いショックを受ける。
「スキンヘッドってこんなにあっさり日常になるんだ……」
呟きながらベッドを抜け出し、洗面所に向かう。鏡に映る自分の丸い頭はまだどこか現実感がなくて、思わず指で撫で回す。手触りはつるりとしていて、どこにも髪が引っかかる感覚はない。
ふいに視線を下ろすと、洗面台には前に問題となった“女性用化粧ポーチ”はもう置いてない。デリヘル嬢が忘れていったものは、さすがに捨てたのだろう。
「……これから、私もこんな風に扱われるのかな」
ぼんやりそんなことを考えながらも、今は彼への執着と愛情がまだ強い。自分がこんな姿になったのは、すべて彼のため——そう言い聞かせて、鏡の向こうのスキンヘッドの女をじっと見つめる。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第十二章:褌を下着にする勇気はあるか?】
朝食を済ませ、着替えをしようとしていると、俊幸が不意に提案してきた。
「今日、そのまま褌で帰れば?」
「え……何言ってんの?」
普段ならブラジャーとショーツをつけている。しかし、彼は明らかに面白がっているようだ。
「スキンヘッドにしてるんだし、どうせなら下着も褌のままで外出してみたら、面白いじゃん」
「そんなの無理に決まってるでしょ……外歩いてるときに何かあったら恥ずかしいし」
服の中とはいえ、褌で外を歩くなどまるで変態じみている。だが、ここ最近の行動を振り返ると、自分はもうとっくに“常識”を超えているのかもしれない。
「じゃあ、ウィッグもなしね?」
「それは……もっと無理……」
髪が生えるまではウィッグを手放せないと思っていたが、彼に言われると心が揺れ動く。スキンヘッドに褌という姿で部屋の中をうろついているだけでも恥ずかしいのに、外に出るというのは、あまりにも敷居が高い。
「まぁ、ゆっくり考えれば? 俺はそのままでいてくれるのが嬉しいけど」
そう言われるとますます迷ってしまう。結局、ウィッグは被ることにしたが、下着については——その日は普通のショーツを身につける。さすがに褌で外に出るのはハードルが高すぎた。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第十三章:新学期、スキンヘッドでの大学生活】
そうこうしているうちに、瑞樹の大学生活が本格的に始まる。国家試験の受験資格を得るため、編入のような形で春から新しい学びの場に通うのだ。もちろんスキンヘッドのままでは衆目を集めることが目に見えているため、基本的にはウィッグを着用して登校している。
最初は慣れずに何度もズレたり蒸れたりして大変だったが、坊主頭どころかスキンヘッドならばウィッグの収まりはむしろ良いとも言える。地毛がないぶん、髪のボリュームを気にしなくていいのだ。
授業後に友人たちとカフェに行けば、みんなは「髪綺麗だよね~」と何の疑問もなく褒めてくる。それが逆に罪悪感を煽り、「実は髪の毛ないんだよ……」と心の中でつぶやくこともある。
しかし、自習室や図書館の人目の少ない場所では、頭の蒸れに耐えかねてこっそりウィッグを外すこともしばしば。誰もいないと思って外したら、偶然クラスメイトが後ろを通りかかり「……え?」と二度見されそうになったこともある。幸い気づかれずに済んだが、一歩間違えれば大惨事だ。
「髪、いつかは伸ばせるよね……」
でもスキンヘッドまでやってしまった自分の髪が元通りになるには相当な時間がかかる。しかも俊幸は「もっと続けてほしい」「伸ばすなんてもったいないよ」と言ってくる。自分の将来のためか、それとも彼の欲望のためか、どちらを優先すべきかわからなくなる日々が続く。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第十四章:再会と更なる要求――褌でのデート】
週末、また俊幸からデートの誘いがあった。今度は飲み屋街をぶらぶらして、少し遅くなったら彼の家へ泊まるという流れ。
「もうウィッグなしで来いよ」と言われるが、さすがにそれは無理だと断る。
「じゃあ、せめて下着は褌にしてきてくれない?」
「もう……しょうがないなぁ」
半ばあきれながらも、瑞樹は押しに弱い。あの赤い褌を仕方なく身につけ、上からはオーソドックスな服装を重ね着して出かけることにした。ただし、ウィッグは被る。街中をスキンヘッドで歩く勇気はまだ持てそうにないからだ。
居酒屋で飲み始めると、彼はことあるごとに「今、下は褌なんだよな……」と耳元で囁いてくる。外見は普通の女性で、内側は大胆な褌姿。しかも本当はスキンヘッド。そう考えると、自分でも変に興奮してしまう。
「……もう、変態みたい」
「いいじゃん、俺たちだけの秘密だよ」
そうして耳に息を吹きかけながら、彼は瑞樹の太ももを撫でる。人目があるから大っぴらにはできないが、そのスリルも相まって心臓が高鳴った。
結局、程よく酔いが回った頃に居酒屋を出て、二人はタクシーに乗る。彼の家に着くまでの間も、「今、ウィッグと褌なんだよね……」と頭を撫でられ、下着を触られ、恥ずかしさに震える。タクシーの運転手がミラー越しにこっちを見ないかとヒヤヒヤしっぱなしだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
【第十五章:夜の終わりと、揺れる未来】
家に着くや否や、俊幸は「あ~もう我慢できない」と言わんばかりに瑞樹を抱き寄せる。玄関でウィッグを外され、つるりとした頭が露出する。それだけで彼は一気に昂ぶるようだ。
「やっぱり最高……スキンヘッドに褌って、なかなか見られないよ」
その言葉を聞きながら、瑞樹は自分の非日常ぶりを痛感する。数か月前まではロングヘアのただのぽっちゃり女子だったのに、今やスキンヘッドで褌姿。それでも、彼にこれほど求められるなら、それも悪くない——そう自分に言い聞かせる。
眠るまでの数時間、彼と何度も激しく体を重ねる。彼は褌を解いたり締め直したりしながら、スキンヘッドの頭を愛でる。瑞樹も彼の激しさに応えるように、何度も声を上げ、頬を染めていく。自分がどうかしてしまいそうなほどの快感に酔いながら、背中をのけぞらせ、スキンヘッドに伝わる彼の熱を全身で感じ取った。
やがて深夜、疲れ果ててベッドに沈む頃には、瑞樹は汗だくになっていた。背中や太ももがじっとりとした汗を纏い、息も荒い。しかし、頬にはうっすらと笑みが浮かんでいる。彼女にとって、これほど“必要とされている”と実感できる時間はほかにないのだ。
しかし、一方でほんのわずかな不安が胸をかすめる。“私はこれからどうなるんだろう?”という疑問。スキンヘッドをキープして、褌姿まで求められる関係は、果たして本当に“愛”と呼べるのか。別の女性を呼んでいたことがわかったあの日の記憶が、頭の片隅にまだ残っている。
「でも、今は……このまま……」
彼の穏やかな寝顔を見つめると、複雑な感情とともに、また一段と深く眠りの中へ落ちていった。
―――――――――――――――――――――――――――――
【終章:それでも私が選んだ道】
スキンヘッドになり、褌を身につけることで、一層“非日常”の世界へ足を踏み入れた瑞樹。身体的にも精神的にもこれまでとは違う領域へ踏み込んでしまった。その姿は、かつてのロングヘアの自分からは想像もつかないほど大胆で、挑発的だ。
それでも、彼女はこうして新たな自己を模索している。“彼のため”だけが理由とは言い切れない。自分の知らない一面を見つけ、解放していく快感に、どこか病みつきになっている部分もある。バリカンや剃刀で髪を落とされるあの瞬間、褌一枚の露出度の高さに震えるあの瞬間が、自分の中の官能を揺さぶり続けているのだ。
とはいえ、大学ではウィッグを被り、普通の下着をつけ、表面上は“普通の女子学生”を装っている。夜になれば、スキンヘッドを晒し、褌を締めて彼に抱かれる。その二重生活はいつまで続くのか、いつ破綻するのか。
けれど、今の瑞樹はそれを深く考えようとはしない。むしろ、そのスリルがたまらなく刺激的で、止められなくなりつつある。
彼がまた新たな要求をしてきたら、彼女はそれに応じるのだろうか。それは“刈り上げ”の次元をはるかに超えた、さらなる官能の領域かもしれない。
それでも、彼女は髪を落とし、肌を晒し、頬を染めて笑うのだろう。
スキンヘッドに褌という姿で、愛されたいのか、それとも自分の欲望を満たしたいのか——その答えは、まだ彼女自身にもわからない。ただ、散っていく髪の毛が示してきたように、瑞樹はもう戻れない場所へと進んでいる。
そしてまた、新しい朝が来るたびに彼女は頭を撫で、微かな産毛を剃るのか伸ばすのか選択し続ける。
その選択が彼女の未来をどう変えていくのか。ロングヘアだった頃の自分には想像もできない景色が、きっとこの先には広がっている。
―――――――――――――――――――――――――――――
<あとがき>
本作は前回の物語の続きとして、さらに一線を越えた“スキンヘッド”への挑戦、そして“褌”という大胆な装いを加えることで、より強烈な非日常感・官能性を追求しました。
主人公・瑞樹は、愛されたいがために常識を超えた行動を選択する一方、それをただの苦痛として捉えているわけでもありません。髪を失うショックと、そこに伴う快楽。褌という羞恥と解放。普通の恋愛とはかけ離れた形であっても、そこには彼女の“自我の揺らぎ”が確かに存在しています。
髪を刈る音「ヴィーン」「ヴィーーン」「ヴィー…」、シャンプーのシーンや剃刀の感触、そして床に落ちていく髪の描写などを通して、読者にもその“ぞわぞわ”する官能と衝撃が伝われば幸いです。
スキンヘッドと褌の組み合わせという極端な描写は、本来であれば日常とかけ離れており、ショッキングに映るかもしれません。ですが、その背後には主人公の内面が複雑に絡み合い、彼女自身の欲望やアイデンティティを揺さぶっているのです。
この先、彼女がどのように変化し、あるいは元の生活へと回帰するのか。それとも、もっと深い場所へ潜り込んでしまうのか。物語の行方は定かではありません。ただ、“髪”が彼女を強く縛り、また解放するカギであり続けることは間違いないでしょう。
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