1 / 8
第1章
しおりを挟む
第一章 春、新しい自分へ
桜がほころび始めた四月の朝。
中学校の門をくぐった結衣は、胸の奥がそわそわと落ち着かなかった。
新しい制服、新しい仲間、新しい生活。そして――本当の意味での「挑戦」が始まるのだという緊張感。
「ふぅ……やっぱり、長いな」
風に揺れる自分の肩までの黒髪を指で弄びながら、結衣は思った。小学校の頃からずっと伸ばしてきた髪。母に編み込んでもらったり、友達に「きれいだね」と言われたりするたびに、嬉しかった。けれども、これから自分が打ち込もうとしているのは、そんな優雅さとは無縁の場所だ。
――陸上部。
入学式前から体験に行き、先輩たちの練習を目の当たりにしたとき、胸の奥が熱く燃えた。トラックを駆け抜ける速さ。汗の匂い。歓声。あの場所に自分も立ちたい。
でも、走り込むたび、結衣は髪が顔に張り付くのに煩わしさを覚えた。ゴムで結んでも、跳ね上がる毛先が目に入る。
「このままじゃ、勝てない」
そう感じてしまったのだ。
その夜、結衣は母に言った。
「……髪、切りたい。短く、スポーツ刈りに」
驚いた顔をした母は、しばらく黙って結衣を見つめていた。
「本気なの?」
「うん。陸上に集中したいから」
母は小さく笑い、「あなたらしいわね」と頷いた。
桜がほころび始めた四月の朝。
中学校の門をくぐった結衣は、胸の奥がそわそわと落ち着かなかった。
新しい制服、新しい仲間、新しい生活。そして――本当の意味での「挑戦」が始まるのだという緊張感。
「ふぅ……やっぱり、長いな」
風に揺れる自分の肩までの黒髪を指で弄びながら、結衣は思った。小学校の頃からずっと伸ばしてきた髪。母に編み込んでもらったり、友達に「きれいだね」と言われたりするたびに、嬉しかった。けれども、これから自分が打ち込もうとしているのは、そんな優雅さとは無縁の場所だ。
――陸上部。
入学式前から体験に行き、先輩たちの練習を目の当たりにしたとき、胸の奥が熱く燃えた。トラックを駆け抜ける速さ。汗の匂い。歓声。あの場所に自分も立ちたい。
でも、走り込むたび、結衣は髪が顔に張り付くのに煩わしさを覚えた。ゴムで結んでも、跳ね上がる毛先が目に入る。
「このままじゃ、勝てない」
そう感じてしまったのだ。
その夜、結衣は母に言った。
「……髪、切りたい。短く、スポーツ刈りに」
驚いた顔をした母は、しばらく黙って結衣を見つめていた。
「本気なの?」
「うん。陸上に集中したいから」
母は小さく笑い、「あなたらしいわね」と頷いた。
1
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる