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サイドストーリー:仲間たちの断髪
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1. セレーネ・ロッシュ ―氷の金髪
セレーネは公爵家の娘として育ち、髪は一族の誇りだった。
腰まで伸びる金糸のような髪を、従者が毎朝二時間かけて梳き上げる。
その髪こそ、家の象徴であり、王都の社交界での地位を示す印。
だが、蒼銀魔法学園の規則は容赦なかった。
入学式の断髪の儀で、肩上に切り揃えられた瞬間、彼女は胸の奥で怒りと屈辱を燃やした。
「……これは一時のこと。すぐに元に戻す」
けれども日々の訓練で、髪が視界を邪魔し、汗を吸い、魔力の制御を乱すことを思い知る。
やがてアトリの店を訪れた。
「私に“似合う短髪”を」
アトリは頷き、布を巻く。
鋏の音が続く。ザク、ザク――耳が出る。シャリ、シャリ――首筋が現れる。
金糸が床に積もり、光を反射する。
鏡に映ったのは、髪ではなく、強い眼差しだった。
セレーネは小さく呟く。
「……誇りは髪にあるのではないのね」
以後、彼女の刃のような魔法は、家名ではなく自身の意思を映すものとなった。
⸻
2. マヤ・ルクス ―港の風
マヤの髪は生まれつき癖が強く、港町では「小さな嵐」とからかわれていた。
本人は気にせず笑い飛ばしていたが、学園に入ると、そのボサボサの髪が魔法陣の視界を曇らせた。
「なら、いっそ短くしちまえばいい!」
彼女は自ら青梳庵の椅子に飛び込み、布を巻かれるや否やバリカンを指さす。
「これで、坊主に!」
アトリは片眉を上げたが、止めはしない。
ウィィン――低い唸り。
ジョリジョリジョリ……。
黒く波打つ髪が、刈られるごとに白布の上でくるくると丸まり、やがてざらりとした頭皮が現れる。
「うおおっ、涼しい! 風が直に通る!」
マヤは鏡に映る自分を見て、歯を見せて笑った。
その笑顔は周囲の仲間を驚かせ、同時に勇気を与えた。
「髪なんかに縛られてたまるか! 私は“自由な風”の魔術師だ!」
彼女の魔法は、嵐のように奔放で、同時に誰よりも仲間を包む力となった。
⸻
終章 ―三人の輪郭
エリスの黒。セレーネの金。マヤの黒。
三人それぞれの髪が床に落ち、布の上で混じることはなかった。
だが、鏡の中の彼女たちの瞳は、同じ輝きを宿していた。
髪を切ることは、それぞれにとって「捨てる」ことではなく、「選ぶ」こと。
その選択が重なり合った時、彼女たちは真の仲間となったのだった。
セレーネは公爵家の娘として育ち、髪は一族の誇りだった。
腰まで伸びる金糸のような髪を、従者が毎朝二時間かけて梳き上げる。
その髪こそ、家の象徴であり、王都の社交界での地位を示す印。
だが、蒼銀魔法学園の規則は容赦なかった。
入学式の断髪の儀で、肩上に切り揃えられた瞬間、彼女は胸の奥で怒りと屈辱を燃やした。
「……これは一時のこと。すぐに元に戻す」
けれども日々の訓練で、髪が視界を邪魔し、汗を吸い、魔力の制御を乱すことを思い知る。
やがてアトリの店を訪れた。
「私に“似合う短髪”を」
アトリは頷き、布を巻く。
鋏の音が続く。ザク、ザク――耳が出る。シャリ、シャリ――首筋が現れる。
金糸が床に積もり、光を反射する。
鏡に映ったのは、髪ではなく、強い眼差しだった。
セレーネは小さく呟く。
「……誇りは髪にあるのではないのね」
以後、彼女の刃のような魔法は、家名ではなく自身の意思を映すものとなった。
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2. マヤ・ルクス ―港の風
マヤの髪は生まれつき癖が強く、港町では「小さな嵐」とからかわれていた。
本人は気にせず笑い飛ばしていたが、学園に入ると、そのボサボサの髪が魔法陣の視界を曇らせた。
「なら、いっそ短くしちまえばいい!」
彼女は自ら青梳庵の椅子に飛び込み、布を巻かれるや否やバリカンを指さす。
「これで、坊主に!」
アトリは片眉を上げたが、止めはしない。
ウィィン――低い唸り。
ジョリジョリジョリ……。
黒く波打つ髪が、刈られるごとに白布の上でくるくると丸まり、やがてざらりとした頭皮が現れる。
「うおおっ、涼しい! 風が直に通る!」
マヤは鏡に映る自分を見て、歯を見せて笑った。
その笑顔は周囲の仲間を驚かせ、同時に勇気を与えた。
「髪なんかに縛られてたまるか! 私は“自由な風”の魔術師だ!」
彼女の魔法は、嵐のように奔放で、同時に誰よりも仲間を包む力となった。
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終章 ―三人の輪郭
エリスの黒。セレーネの金。マヤの黒。
三人それぞれの髪が床に落ち、布の上で混じることはなかった。
だが、鏡の中の彼女たちの瞳は、同じ輝きを宿していた。
髪を切ることは、それぞれにとって「捨てる」ことではなく、「選ぶ」こと。
その選択が重なり合った時、彼女たちは真の仲間となったのだった。
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