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プロローグ
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夏の匂いは、汗と土と、そして芝生の青さが混ざり合ったものだ。
高校二年の春斗は、グラウンドに腰を下ろし、夕焼けに染まる空をぼんやりと眺めていた。練習を終えたばかりの身体は心地よい疲労に包まれていたが、胸の奥にはざわついた思いが残っていた。
――悠真のことだ。
エースで四番の悠真は、誰よりも才能に溢れ、誰よりも努力を惜しまない存在だった。チームにとっての希望であり、同時に春斗にとっては、焦がれるようなライバルであり、友であり……言葉にするのが難しい相手だった。
「春斗!」
振り向くと、汗で髪を額に貼り付けた悠真が走り寄ってきた。ユニフォームの胸元をはだけ、息を弾ませながらも、その瞳は真っ直ぐだった。
「明日の練習試合、俺たちで絶対に勝とうな」
「ああ……」
そう返しながら、春斗は胸の鼓動を抑えられずにいた。
握りしめた拳が、触れ合う。
一瞬、夕陽が彼らを包み込み、影が重なった。
――ただの友情だ、と言い聞かせていた。
けれど、悠真の瞳をまっすぐ見つめるたびに、抑え込んでいた感情が形を持って溢れ出しそうになる。
そのときだった。
視線の端に、部室棟の前に立つ一人の姿が映った。
クラスメイトであり、野球部のマネージャーを務める真希だ。
長い黒髪をひとつに束ね、汗を拭うタオルを持って佇む彼女は、どこか決意を秘めた顔をしていた。
「……あの髪も、明日で終わりにする」
小さな声だったが、確かに春斗の耳に届いた。
風に揺れる髪。
その一瞬の呟きが、この夏のすべてを変えていく――。
高校二年の春斗は、グラウンドに腰を下ろし、夕焼けに染まる空をぼんやりと眺めていた。練習を終えたばかりの身体は心地よい疲労に包まれていたが、胸の奥にはざわついた思いが残っていた。
――悠真のことだ。
エースで四番の悠真は、誰よりも才能に溢れ、誰よりも努力を惜しまない存在だった。チームにとっての希望であり、同時に春斗にとっては、焦がれるようなライバルであり、友であり……言葉にするのが難しい相手だった。
「春斗!」
振り向くと、汗で髪を額に貼り付けた悠真が走り寄ってきた。ユニフォームの胸元をはだけ、息を弾ませながらも、その瞳は真っ直ぐだった。
「明日の練習試合、俺たちで絶対に勝とうな」
「ああ……」
そう返しながら、春斗は胸の鼓動を抑えられずにいた。
握りしめた拳が、触れ合う。
一瞬、夕陽が彼らを包み込み、影が重なった。
――ただの友情だ、と言い聞かせていた。
けれど、悠真の瞳をまっすぐ見つめるたびに、抑え込んでいた感情が形を持って溢れ出しそうになる。
そのときだった。
視線の端に、部室棟の前に立つ一人の姿が映った。
クラスメイトであり、野球部のマネージャーを務める真希だ。
長い黒髪をひとつに束ね、汗を拭うタオルを持って佇む彼女は、どこか決意を秘めた顔をしていた。
「……あの髪も、明日で終わりにする」
小さな声だったが、確かに春斗の耳に届いた。
風に揺れる髪。
その一瞬の呟きが、この夏のすべてを変えていく――。
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