転生した王妃は親バカでした

ぶるもあきら

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君はだれ?(ギースside)

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最近仕事の進みが早い。
今までに無いぐらい捗るのだ。
これはあれだ…
余計な仕事が無くなったからだろう。

仕事がひと区切りついた所でお茶でも飲もうかと使用人に頼むとレオナルドがやってきた。


「ギース…ちょっといいか?」


また暗い表情…どうせバネッサ絡みか。


「母上がそろそろお披露目しろと言うのだが…」


ああ…
もうそんな時期か。

我が国の王宮の決まりでお披露目が終わるまで産まれた赤子には乳母と父親、母親しか会う事は出来ない。

これは昔、使用人に紛れて後継者を暗殺する人物がいた事による防衛策なのだが、この規則によりレオナルドの母親である前王妃も孫にまだ会えていないのがもどかしいのだろう。

多分うちの両親も待ってるんだろうな…


「もうお披露目の時期だし、仕方ないんじゃないか?」


最近は妙におとなしいが、バネッサも喜ぶだろう。
派手なパーティーで目立つ事もレオナルドも大好きなのだから。


「バネッサに聞いてきてくれないか?」


は?俺が??

何故かと聞くと、この1ヶ月のモーリスからの報告書を見せてくれた。

え?
バネッサがオスカー王子の世話?
自ら授乳?オムツもお風呂も?
幸せそうに笑ってるって??


「怪しいだろ?」


と、レオナルドは言う。

つまりお披露目パーティーを伝えるついでにバネッサの様子を見てきて欲しいらしい。

俺は渋々ながらモーリスを呼んで、一緒にバネッサの部屋まで向かったのだった。

ちょうど昼食時に行くと言うモーリスに食後の方が良いのでは?と尋ねると


「お食事中以外はお側にオスカー王子がおられますから。」


と言う…
ああ、お披露目前だから俺にも会わせられないって事か、と納得する。

なんの躊躇いも無くノックも無しに部屋に入っていくモーリス。
そう言えば報告書にノック音でオスカー王子が起きるから禁止にしたと書いてあったな…
と思い出しながらモーリスの後ろに続いた。

そしてそこには、テーブルの上にある質素な食事と、新しい料理長とにこやかに話す黒髪の女性?
は?
バネッサ?

落ち着いた色味の簡素なドレスを着て、ヒールの無いペッタンコの靴を履き、何より俺の知ってるバネッサの半分位の厚み、殆ど化粧もしてない事もあって顔付きまで別人だった。


「え?バネッサか??」


思わず口から出た言葉はそれだった。


「あら、ギースお兄様」


俺の存在にやっと気づいたのか、少し警戒している様だが、一緒に昼食をと誘ってきた。
思わず頷いてしまったが、それからは驚きの食事だった。

まず量が少ない、そして好物の油ギトギトの肉が無い。
野菜のスープを飲み、得体の知れないサラダを食べた。
そして食後のお菓子は無くミルクを飲んでリンゴをかじっている。

そう言えばこれも報告書にあったな。
紅茶やコーヒーはかふぇいん?とやらがあるから一切飲まないと…


「さて、お兄様いったい何の話しがありますの?」


バネッサに誘導されてようやく本題のお披露目パーティーの事を思い出した。
あまりの衝撃にすっかり頭から抜けていたのだ。

いつものバネッサならパーティーの開催を伝えれば、喜んで見境なく新しいドレスやら宝石やらを注文して、当日レオナルドにエスコートされる事を楽しみにするはずなのだが…


「却下いたします。」


この返事には俺だけじゃなく、モーリスやマリーヌも驚いていたぞ。


「良いですか?オスカーはまだ抵抗力も弱く、自分で温度調整も上手にできないのです。そんな赤子をたくさんの人の前に出すなどありえません。せめて首が座る頃、3ヶ月くらい後で無ければ無理でごさいます。」


な、なんか難しいをたくさん言ってるが勉強嫌いのバネッサとは思えない言葉。

以前よりほっそりとした体に美しい黒髪、意志の強そうな黒い瞳。

妹とは思えず、思わず見惚れてしまった…

いやこれは俺の知ってる妹では決してない。


君はいったい誰なんだ…?




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