転生した王妃は親バカでした

ぶるもあきら

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パーティーで出会う人々

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踊りましたよ。

ええ、前世ダンスなんて必要としない世界にいたアラフォーのおばさんでもバネッサの記憶が体に染みついておりました。

我儘で努力も嫌い、学問もダメ運動神経だってあの体格じゃ良いわけないバネッサでも愛しいレオナルド様と踊る事を夢見てダンスだけは必死に学んでいたみたいですよ。
夢が叶って良かったですわね。


「そのドレス似合ってるけど、素肌を見せるのは失敗したな…」

とか、

「なぜ最近は名前じゃなくて陛下と呼ぶんだ?」

とかとか、陛下もダンス中に訳のわからん事を言い出すし、周りは周りで


「レオナルド陛下がダンスを踊られるなんて!!」

とか、

「あれは本当にバネッサ王妃なのか?」

とかとか、ヒソヒソ話になって無いのよ!
全部聞こえてるからね!

おかげで私のHPはごっそり削られました…

ダンスが終わって席に戻れば今度は行列を成して貴族の皆さんが挨拶にやってくる。

陛下や私の変化に興味津々に近づいて来ては擦り寄る者、遠回しに嫌味を言って牽制する者、もうすでにHPはゼロよ…


「バネッサ~!!」


そこにお父様とお母様。
更に今日はプラント侯爵家の嫡男としてギースお兄様の順番が回ってきた。

お父様は、こんなに痩せて肉が足らないのかとか。
お母様は逆に綺麗になったバネッサをこれでもかと褒める。
物凄く騒がしいけど、物凄く愛情は感じるわね。

最後にお兄様が


「お疲れ…」


と、私の肩にポンっと触れた。

ん?
なぜかお兄様から労われてる?

陛下は陛下で私の肩に触れたお兄様になんか怒ってるし、変な人達だ。




「レオナルド陛下、バネッサ王妃にご挨拶申し上げます。」


その後ろに続いていたのが…
トーマス=ディテール伯爵


「表を上げよトーマス侯、久しいな。」


この方はディテール伯爵家に婿入りした、モーリスの旦那様であり、亡くなられた前国王陛下の幼馴染で親友でもあった方。

レオナルド陛下も、もちろん幼少の頃から面識があって忙しい国王の父親に変わって可愛がってもらっていた。
見ると陛下の顔も心なしか嬉しそうだ。


そんな2人を見て、私は逆に顔を顰めていた。
さっき思い出した(赤い山)の事を考えていたからだった。

このイベント、そもそもは聖属性を発現した聖女が実力を磨くために用意したイベントだった。

これにより聖女は完全に聖魔法を使いこなせる様になるが、その犠牲は多大な物だった。

その被害者の1人が
トーマス=ディテール伯爵。
この人である。

この(赤い山)を回避しなければ彼は命を落とす事になる。

それに従って、モーリスもオスカーの乳母をやっている余裕が無くなった。
当主として伯爵家を守らなくてはならないからだ。
そしてこの王宮を去ってしまう。

監視役がいなくなったバネッサは喜んでより一層やりたい放題になる。

それにより一気に負担が増えたマリーヌもここで心身ともに病んでしまうのだ。


つまり負の連鎖からの連鎖、聖女以外は良い事が1つも無いのがこの(赤い山)なのだ。


ダメよ。
この優しそうなトーマス侯も、オスカーの大切な乳母モーリスも、私の専属侍女マリーヌもみんな救わないと…


その時、私は原作の中の一文を思い出した。


「トーマスは本当に元国王陛下が大好きだったのね…何も同じ日に旅立たなくてもいいのに…」


トーマスの遺品に泣きながら話しかけるモーリス。
それを見てずっと泣けなかったレオナルド陛下も初めて涙を流すのだ…


そうだ…
(赤い山)が起こるのは前国王陛下の崩御された日と同じ日だわ。


その日がいつだったか正直今は全く思い出せないけど、後で聞いて絶対に回避してみせる!

と、拳を握りしめて改めて誓ったのだった。


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