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鉢合わせまして
しおりを挟む皇帝に直接金品の要求をした私に、周りは静まり返る。
あれ?やらかした?やらかしてるよね私…
そんな気まずい雰囲気をぶった斬ってくれたのは高らかに笑う皇帝その人だった。
「ははは、正直で良い。うちの息子は振られたわけだな」
そう言いながら目尻を拭う。
そんな、泣くほど笑わなくても…
そんなこんなで謁見もあっさり?終わり私達3人は城をお暇する事になった。
「アン、あれはさすがにビビったぞ」
城の門から一歩外に出た途端に口に出すエリック。
仕方ないじゃないの、何も考えてなかったんだから!
「まあ、皇帝も笑ってたし良かったんじゃないか?」
冷めた目で私を見ながら言うウェル。
そうよ!その通りっ
「アンが皇族入りなんて考えられないだろ?」
続けて言うウェルに大きく頷くエリック
ん?なんだ?ちょっとディスられている感じ?
それからは今後の話しになって、私はトラビス領に行くと伝えると
「お、それいいな!」
「僕達も一緒に行ってもいいかい?」
なぜか2人ともトラビス領に行きたいと言う。
なんで?
勇者パーティーに参加した時からだとすると久しぶりに実家に帰れるのに?
完全に疑いの眼差しを2人に向けるとようやく重い口を開いた。
どうやら2人には山のように婚約希望の釣書が届いているらしい。
勇者パーティーに参加していただけでも目立っていたのに、今回の疫病を無事に治めた事でより価値が上がったのだとウェルは言った。
「うちはそもそも平民上がりの下級貴族なんだよ、ちょっと上の貴族に言われたら断る術が無いんだ。」
ゲンナリ顔のウェルに
「マジでしつこいくらいに親から手紙がくるんだよ…」
これまたゲンナリ顔のエリック
なるほど、下級貴族で実力がある三男と四男。
見た目も悪くないしそりゃ上の貴族様は婿養子に欲しがるのも理解できる。
ほらあれだ!
エロ貴族…エラーズ男爵と同じね。
「お高く止まった令嬢と婚約するくらいならアンの方が何倍もマシさ…」
と言うエリックに同意するウェル。
なんだ?私が良いと言われてるのに微妙に嬉しくないぞ?
そんなわけで実家にはまだ帰りたくない2人に
トラビス領への同行を安請け合いした私はまた3人で仲良く移動するのだった。
そのトラビス領にまさか勇者と聖女が寄り道しているとも知らずに…
帝都からそう離れていないトラビス領には馬車に揺られてその日の内に到着出来た。
まずはクロードお兄様のところに行ってしばらくの滞在をお願いしないと…
あ、あと2人の事もお願いしないとね。
そんな事を考えながらトラビス邸に向かい、門番さんに声を掛ける。
「今、お客様が見えてますがアンお嬢様でしたら大丈夫でしょう」
門番さんから連絡を受けて駆けつけてくれた執事さんに連れられて邸内に入る。
お客様?
え?大丈夫かしら?
そう思うのも、この領地内で1番偉い人は当然クロードお兄様で、そのお兄様のお客様ならきっと偉い人なんだろうと予想したからだった。
そんな私の心配を他所にスタスタとクロードお兄様のいる応接間へ案内する執事…
ああ!質問する前にもうノックしてるよ!
「なんだと?アンが帰ったのか?」
素早くかけ寄り、クロードお兄様に耳打ちする執事にそう言うと、ドア付近まで駆け寄ってくるクロードお兄様。
あーもういいか…
心配しても手遅れじゃん。
「アン、丁度良かった!紹介するよ!」
手を引かれ応接間の中まで入ると、既に中にいるお客様とやらに紹介される。
「この度、魔王を討伐して下さった勇者様と聖女様だよ」
んあっ!!
人間驚き過ぎるとすぐに言葉が出ないよね。
トラビス邸の応接間で優雅にお茶を飲んでるロディオと隣に座る女性が聖女かな?
とにかく意外な人物との遭遇に私とロディオも目をパチクリさせて見つめ合うだけだった。
そんな中で、
「あら?ウェルとエリックじゃなくて?」
花柄のカップを手にしたまま、私の背後について来ていた兄弟に声をかける聖女がいたのだった…
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