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谷崎春希と魔法使い
①
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小学校の校庭で配給の食べ物をうけとってから自転車に乗って、校門をでたところで仲山誠也を見かけた。
(綾子……)
たちまち綾子のことが頭に浮かんだ。
仲山は車がめったに通らなくなった車道の真ん中を歩いている。
(……どうしよう)
校門の前で自転車を停めたままためらっていると、仲山との距離が離れていく。
仲山は突き当りの角をまがろうとする。
(仲山にきこう、綾子のこと……)
わたしは決めて、ペダルを漕ぎだした。
(綾子のことをもう知れなくなるかもしれない)
柔らかい陽射しが射す校庭から、配給を受けとりにきた親に連れられた小さな男の子が、駆けまわる足音がしている。
休校になっている小学校の校舎には誰もいなくて、外から見えるどの教室も灯りがついていない。
町内のひとたちは退避をしているのか、日に日に配給の列に並ぶ人の数が少なくなっていた。
三ヶ月前、シロが日本に現れて人々を殺しはじめたときから混乱がはじまった。
スーパー、コンビニの食品、日用品が買い占められた。
物資の不足により町内で配給がはじまると、いつもうんざりするような長蛇の列ができていた。
それが、今日はわたの前には十数人しか並んでいなかった。
わたしは家族の一週間分の食料である乾パン、カロリーメイトをうけとっていた。
家族四人で食べたら数日でなくなってしまう量だ。
(綾子はどうしてる? 元気? いや、こんな状況で元気な人はいない……)
わたしは仲山にきくことを焦って考えながら彼を追った。
「あの」
前を歩く仲山に声をかけた。
わたしの声が小さくて、仲山は立ち止まらない。
「あの!」
自転車を漕いだまま仲山の横に並んで、声をかけた。
緊張していて思ったよりおおきな声がでる。
「ん?」
足をとめた仲山はいぶかしそうにわたしを見る。
彼の横に自転車を停めると、きこうとしていたことが頭からとんで、言葉につまった。
「なんですか?」
仲山ははじめて会った人のようにわたしにきく。
(あれ、ひとちがい……)
彼の顔を見るのは去年の神社の夏祭り以来だった。
細く鋭い目つきはかわっていないけれど、背が伸びている。
中学生の頃は坊主に近い短髪だった。
今は額に前髪がかかっている。
サッカー部だった仲山はいつも顔と腕が日に焼けている印象だったけれど、今は顔と首の日焼けが薄くなっている。
シロが現れてからサッカーどころではないのだろう。
(……いや、わたしのこと、覚えてないんだろう)
中学校の三年のとき同じクラスだった仲山とは、ほとんど会話をしたことがなかった。いや、一言も。
仲山はクラスの活発な男子グループの中心にいて、わたしは教室の隅にいた。
サマーニットにゆったりとしたズボンを穿いた仲山は不審そうにわたしを見ている。
「……わたしは谷崎。武蔵台二中であなたと同じクラスだった、三年のとき」
わたしはしどろもどろになりながらいった。
「わたしは綾子の友達……友達だった」
友達だった、といいなおして胸が痛んだ。
「ああ、谷崎……」
仲山は警戒をといたようにいった。
(綾子からわたしのことをきいてたのかな)
仲山がわたしを覚えていて気がすこし楽になった。
「綾子、どうしてる?」
ようやく知りたかったことがきけた。
一ヶ月前、小学校の校庭で配給の列に並ぶ綾子を遠くからみかけた。
半年ぶりにみた綾子はショートカットだった髪を肩まで伸ばしていた。
わたしは思いがけず綾子を見たことに動揺して、こそこそ逃げるように校庭をでて、時間を空けてから食べ物の配給をうけとった。
その日から彼女のことが気がかりになっていた。
「綾子に会ってないの?」
わたしは黙っている仲山にきいた。
仲山はアスファルトの地面に目をおとす。
どこか様子がおかしい。
「仲山くん、綾子と付き合ってるんでしょう」
「……死んだ」
「え?」
「綾子は死んだ」
仲山は顔をあげて、感情のない平坦な声でいった。
わたしはきき間違いだと思った。
「綾子は死んだ」
仲山はもう一度はっきりといった。
「どうして?」
背中に寒気が走って、口の中が乾いて、つよい鼓動がしだす。
「……シロに殺されたんだと思う」
「思うって?」
「……綾子、マンションの部屋で死んでたんだ。眠ってるみたいな顔、してた。シロに毒をかけられたんだと思う」
仲山が唇を噛む。
シロに殺された人の映像がネットに出まわっていた。
わたしはそれを一度、観たことがある。
どこかの町の大きな通りだった。
遠くから撮った映像だった。
シロに殺された人たちが、横断歩道の真ん中に積まれて山となっていた。
シロたちは誰かの飼い犬だった首輪をつけた数匹の大型犬に死んだ人の肉を食べさせていた。
(悪夢だ……)
わたしは吐き気がしてすぐに映像を消した。
「いつのこと?」
「……さっき、一時間くらいまえ」
仲山の唇がふるえている。
「……今日、綾子を連れて家族で名古山まで退避するつもりだったんだ。親父の友達が栄にいて、あっちはまだシロがいないから。それで、綾子を部屋まで迎えにいったんだ。そうしたら、綾子が部屋で倒れてた」
いつかシロが町にやってきて、わたしと家族が殺されるのではないかと恐怖をしていた。
(なんで、綾子が……)
まさか、綾子が殺されるとは思っていなかった。
いつも明るかった彼女と死が結びつかない。
わたしは自転車のサドルにまたがったまま立ちつくしていた。
けれど、不思議なことに綾子がシロに殺されたときいても、頭の片隅は醒めていた。
(シロに殺された人間を生きかえらせる人がいる)
兄がいっていたことが頭によぎっていた。
「シロは市内まできてる。谷崎もできるなら退避したほうがいい」
仲山はそういって、わたしに背中をむけて歩きだす。
「待って」
わたしは自転車にまたがったまま仲山を追った。
「仲山くん、知ってる?」
仲山が立ち止まり、ふりかえる。
「シロに殺された人間を生きかえらせる人がいるって」
「……ネットのデマだろ」
顔をしかめた仲山の声には怒りがこもっている。
仲山は恋人の綾子が死んでいるところを目にしている。
(……当然だよね。死んだ人間が蘇る。そんなインチキくさい話に怒るのは)
ネットのSNS、動画ではシロに殺された人間を救う人たちが現れていた。
シロの毒を解毒する薬を開発した研究者。
手をかざして気功でシロの毒を消す宗教家。
シロの毒に対して免疫効果がある料理を作る料理家。
みんなうさん臭っかたけれど、それぞれ一定の支持を集めているようだった。
「わたし、その人に会ってみる」
わたしは仲山の表情にかまわず、とっさにいった。
「その人に会って試してみる。綾子を生きかえらせられるか。インチキかもしれないけど、試してみたい。もしかしたら、シロの毒を解毒する方法を知っていたりするかもしれない」
「……どうやって、会うの?」
仲山は関心なさそうにいった。
「わたしじゃなくて、お兄ちゃんならその人とコンタクト、とれるかもしれないんだ」
わたしは自転車からおりた。
「お兄ちゃん、自警団に入っていて、自警団の仲間にその人と会った人がいるんだって」
数日前、夕食のとき、自宅の食卓で兄からきいた話を仲山に伝えた。
「その仲間の人は妹がシロに殺されたんだって。でも、その人に妹を生きかえらせてもらったんだって。お兄ちゃんの仲間は、その場にいてその人の連絡先、教えてもらったって。もし、また誰かがシロに殺されたときのために。だから、お兄ちゃんからその人の連絡先、教えてもらえるかもしれない」
兄は自警団の仲間の話を信じているようで、食事に手をつけず、確信をこめて淡々と語っていた。
(うわさ話に尾ひれがついたんだろう)
わたしはそのときはそう思っていた。
シロに殺された女の人が蘇ったことより、とうとう二つ隣の市までシロがやってきたことに恐怖し、胃が痛んだ。
パスタにレトルトのミートソースをのせた簡単な食事を食べる気がなくなった。
オカルトめいた話を疑わない兄のメンタルも心配になった。
高校生の頃、ラグビーをしていた兄は体格がよかった。
けれど、自警団に入ってからみるみる痩せていった。
「わたし、その人にコンタクト、とってみる」
あのときは、半信半疑だったけれど、今は綾子を生きかえらせる方法があるなら、だまされてもいいから試してみたかった。
(いやだ、このまま綾子に会えなくなるのは……)
「へえ……」
仲山は口をぽかんとあけている。
(……仲山はわたしをイタいやつだと思ってる。都市伝説めいた話を真に受けているやつだって……)
「仲山くん、いつ名古屋にいくの?」
「夕方に出発する。ひとり、近くに住んでる親戚がいてね、その人が家に来てから出る」
ズボンのポケットからスマホをとりだして、仲山がいった。
「な、谷崎の連絡先、教えてくれないか?」
「え?」
「もし、綾子を生きかえらせる人に会えるようなら教えてほしい。おれもその人がどんな人か知りたい」
「あ、うん」
自転車のスタンドを立てて、わたしは肩に提げたポシェットからスマホをだした。
同年代の男子と連絡先を交換をするのは、はじめてだと思いながら仲山に電話番号を教えた。
「綾子のことでなにかあったら教える」
仲山がわたしの携帯にワン切りする。
「頼むよ」
仲山は期待してなさそうにいって、スマホをポケットにしまう。
「谷崎も気をつけて」
仲山はわたしに気遣うようにいって、早足で去っていった。
仲山の姿が見えなくなってから、わたしは自転車の側に立ったまま兄にLINEを送った。
それから、どこからかシロが現れないかとびくびくしながら自転車を走らせ、急いで家に帰った。
(綾子……)
たちまち綾子のことが頭に浮かんだ。
仲山は車がめったに通らなくなった車道の真ん中を歩いている。
(……どうしよう)
校門の前で自転車を停めたままためらっていると、仲山との距離が離れていく。
仲山は突き当りの角をまがろうとする。
(仲山にきこう、綾子のこと……)
わたしは決めて、ペダルを漕ぎだした。
(綾子のことをもう知れなくなるかもしれない)
柔らかい陽射しが射す校庭から、配給を受けとりにきた親に連れられた小さな男の子が、駆けまわる足音がしている。
休校になっている小学校の校舎には誰もいなくて、外から見えるどの教室も灯りがついていない。
町内のひとたちは退避をしているのか、日に日に配給の列に並ぶ人の数が少なくなっていた。
三ヶ月前、シロが日本に現れて人々を殺しはじめたときから混乱がはじまった。
スーパー、コンビニの食品、日用品が買い占められた。
物資の不足により町内で配給がはじまると、いつもうんざりするような長蛇の列ができていた。
それが、今日はわたの前には十数人しか並んでいなかった。
わたしは家族の一週間分の食料である乾パン、カロリーメイトをうけとっていた。
家族四人で食べたら数日でなくなってしまう量だ。
(綾子はどうしてる? 元気? いや、こんな状況で元気な人はいない……)
わたしは仲山にきくことを焦って考えながら彼を追った。
「あの」
前を歩く仲山に声をかけた。
わたしの声が小さくて、仲山は立ち止まらない。
「あの!」
自転車を漕いだまま仲山の横に並んで、声をかけた。
緊張していて思ったよりおおきな声がでる。
「ん?」
足をとめた仲山はいぶかしそうにわたしを見る。
彼の横に自転車を停めると、きこうとしていたことが頭からとんで、言葉につまった。
「なんですか?」
仲山ははじめて会った人のようにわたしにきく。
(あれ、ひとちがい……)
彼の顔を見るのは去年の神社の夏祭り以来だった。
細く鋭い目つきはかわっていないけれど、背が伸びている。
中学生の頃は坊主に近い短髪だった。
今は額に前髪がかかっている。
サッカー部だった仲山はいつも顔と腕が日に焼けている印象だったけれど、今は顔と首の日焼けが薄くなっている。
シロが現れてからサッカーどころではないのだろう。
(……いや、わたしのこと、覚えてないんだろう)
中学校の三年のとき同じクラスだった仲山とは、ほとんど会話をしたことがなかった。いや、一言も。
仲山はクラスの活発な男子グループの中心にいて、わたしは教室の隅にいた。
サマーニットにゆったりとしたズボンを穿いた仲山は不審そうにわたしを見ている。
「……わたしは谷崎。武蔵台二中であなたと同じクラスだった、三年のとき」
わたしはしどろもどろになりながらいった。
「わたしは綾子の友達……友達だった」
友達だった、といいなおして胸が痛んだ。
「ああ、谷崎……」
仲山は警戒をといたようにいった。
(綾子からわたしのことをきいてたのかな)
仲山がわたしを覚えていて気がすこし楽になった。
「綾子、どうしてる?」
ようやく知りたかったことがきけた。
一ヶ月前、小学校の校庭で配給の列に並ぶ綾子を遠くからみかけた。
半年ぶりにみた綾子はショートカットだった髪を肩まで伸ばしていた。
わたしは思いがけず綾子を見たことに動揺して、こそこそ逃げるように校庭をでて、時間を空けてから食べ物の配給をうけとった。
その日から彼女のことが気がかりになっていた。
「綾子に会ってないの?」
わたしは黙っている仲山にきいた。
仲山はアスファルトの地面に目をおとす。
どこか様子がおかしい。
「仲山くん、綾子と付き合ってるんでしょう」
「……死んだ」
「え?」
「綾子は死んだ」
仲山は顔をあげて、感情のない平坦な声でいった。
わたしはきき間違いだと思った。
「綾子は死んだ」
仲山はもう一度はっきりといった。
「どうして?」
背中に寒気が走って、口の中が乾いて、つよい鼓動がしだす。
「……シロに殺されたんだと思う」
「思うって?」
「……綾子、マンションの部屋で死んでたんだ。眠ってるみたいな顔、してた。シロに毒をかけられたんだと思う」
仲山が唇を噛む。
シロに殺された人の映像がネットに出まわっていた。
わたしはそれを一度、観たことがある。
どこかの町の大きな通りだった。
遠くから撮った映像だった。
シロに殺された人たちが、横断歩道の真ん中に積まれて山となっていた。
シロたちは誰かの飼い犬だった首輪をつけた数匹の大型犬に死んだ人の肉を食べさせていた。
(悪夢だ……)
わたしは吐き気がしてすぐに映像を消した。
「いつのこと?」
「……さっき、一時間くらいまえ」
仲山の唇がふるえている。
「……今日、綾子を連れて家族で名古山まで退避するつもりだったんだ。親父の友達が栄にいて、あっちはまだシロがいないから。それで、綾子を部屋まで迎えにいったんだ。そうしたら、綾子が部屋で倒れてた」
いつかシロが町にやってきて、わたしと家族が殺されるのではないかと恐怖をしていた。
(なんで、綾子が……)
まさか、綾子が殺されるとは思っていなかった。
いつも明るかった彼女と死が結びつかない。
わたしは自転車のサドルにまたがったまま立ちつくしていた。
けれど、不思議なことに綾子がシロに殺されたときいても、頭の片隅は醒めていた。
(シロに殺された人間を生きかえらせる人がいる)
兄がいっていたことが頭によぎっていた。
「シロは市内まできてる。谷崎もできるなら退避したほうがいい」
仲山はそういって、わたしに背中をむけて歩きだす。
「待って」
わたしは自転車にまたがったまま仲山を追った。
「仲山くん、知ってる?」
仲山が立ち止まり、ふりかえる。
「シロに殺された人間を生きかえらせる人がいるって」
「……ネットのデマだろ」
顔をしかめた仲山の声には怒りがこもっている。
仲山は恋人の綾子が死んでいるところを目にしている。
(……当然だよね。死んだ人間が蘇る。そんなインチキくさい話に怒るのは)
ネットのSNS、動画ではシロに殺された人間を救う人たちが現れていた。
シロの毒を解毒する薬を開発した研究者。
手をかざして気功でシロの毒を消す宗教家。
シロの毒に対して免疫効果がある料理を作る料理家。
みんなうさん臭っかたけれど、それぞれ一定の支持を集めているようだった。
「わたし、その人に会ってみる」
わたしは仲山の表情にかまわず、とっさにいった。
「その人に会って試してみる。綾子を生きかえらせられるか。インチキかもしれないけど、試してみたい。もしかしたら、シロの毒を解毒する方法を知っていたりするかもしれない」
「……どうやって、会うの?」
仲山は関心なさそうにいった。
「わたしじゃなくて、お兄ちゃんならその人とコンタクト、とれるかもしれないんだ」
わたしは自転車からおりた。
「お兄ちゃん、自警団に入っていて、自警団の仲間にその人と会った人がいるんだって」
数日前、夕食のとき、自宅の食卓で兄からきいた話を仲山に伝えた。
「その仲間の人は妹がシロに殺されたんだって。でも、その人に妹を生きかえらせてもらったんだって。お兄ちゃんの仲間は、その場にいてその人の連絡先、教えてもらったって。もし、また誰かがシロに殺されたときのために。だから、お兄ちゃんからその人の連絡先、教えてもらえるかもしれない」
兄は自警団の仲間の話を信じているようで、食事に手をつけず、確信をこめて淡々と語っていた。
(うわさ話に尾ひれがついたんだろう)
わたしはそのときはそう思っていた。
シロに殺された女の人が蘇ったことより、とうとう二つ隣の市までシロがやってきたことに恐怖し、胃が痛んだ。
パスタにレトルトのミートソースをのせた簡単な食事を食べる気がなくなった。
オカルトめいた話を疑わない兄のメンタルも心配になった。
高校生の頃、ラグビーをしていた兄は体格がよかった。
けれど、自警団に入ってからみるみる痩せていった。
「わたし、その人にコンタクト、とってみる」
あのときは、半信半疑だったけれど、今は綾子を生きかえらせる方法があるなら、だまされてもいいから試してみたかった。
(いやだ、このまま綾子に会えなくなるのは……)
「へえ……」
仲山は口をぽかんとあけている。
(……仲山はわたしをイタいやつだと思ってる。都市伝説めいた話を真に受けているやつだって……)
「仲山くん、いつ名古屋にいくの?」
「夕方に出発する。ひとり、近くに住んでる親戚がいてね、その人が家に来てから出る」
ズボンのポケットからスマホをとりだして、仲山がいった。
「な、谷崎の連絡先、教えてくれないか?」
「え?」
「もし、綾子を生きかえらせる人に会えるようなら教えてほしい。おれもその人がどんな人か知りたい」
「あ、うん」
自転車のスタンドを立てて、わたしは肩に提げたポシェットからスマホをだした。
同年代の男子と連絡先を交換をするのは、はじめてだと思いながら仲山に電話番号を教えた。
「綾子のことでなにかあったら教える」
仲山がわたしの携帯にワン切りする。
「頼むよ」
仲山は期待してなさそうにいって、スマホをポケットにしまう。
「谷崎も気をつけて」
仲山はわたしに気遣うようにいって、早足で去っていった。
仲山の姿が見えなくなってから、わたしは自転車の側に立ったまま兄にLINEを送った。
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