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谷崎春希と魔法使い
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「そのキャラ、わたしも好き」
綾子にはじめて声をかけられたのは、中学二年生のとき、クラス替えがあってから間もない頃だった。
下校時に帰る方向が同じの背が高いクラスメイトが、校門をでたところで声をかけてきた。
わたしが離れて道の端を歩いていると、反対の歩道にいた彼女が道路を横断してずんずんと近づいてきた。
「どこで買ったの?」
わたしのリュックについているサンリオのキャラクターのキーホルーダーを指さしたのだった。
「新宿のサンリオショップで買ったんだ」
わたしは自分でも驚くほど自然にほぼ初対面の彼女に返事をしていた。
小学校の頃からわたしは女子の集団が苦手だった。
人とうまく会話ができない。
話をあわせることができない。
相手が同級生でも緊張して、なにを話していいかわからなくなる。
それが、その日の学校の帰り道、どういうわけかリラックスして綾子と会話ができた。
(この子ともっと話をしたい)
会話というかほとんどわたしが一方的に、興奮して声をうわずらせて話をしていた。
道を歩きながらわたしは勢いにまかせて、サンリオのキャラクターが好きなこと、父親の影響で90年代の古い映画が好きなことを話した。
綾子は退屈をした様子をみせないで、相づちを打ちながら話をきいてくれた。
(へんなやつだと思われたな……)
家の近くで彼女と別れた後、わたしはしゃべりすぎたことに恥ずかしくなった。
わたしは綾子と話をしていることに舞いあがっていた。
同じクラスになった初日から綾子はわたしの目をひいていた。
彼女にも親しい友人がいないようだった。
それでも教室の移動時、休み時間、ひとりでいても堂々としてみえた。
(かっこいいな、あの子)
教室で目立たないようにこそこそとしていたわたしは、綾子の姿に軽い憧れを抱いていた。
「昨日、春希がいって映画、観た。面白かったけど、グロいね」
翌朝、教室に入ってきた綾子は、わたしが昨日話した香港のアクション映画をサブスクで観たといって、くったくなく声をかけてくれた。
前から友人であったように。
「あのグロさがいいんだよ」
他の同級生の女子には引かれて変人扱いされることも綾子にはなぜかいえた。
綾子は中学生になって、はじめてできたわたしの友達になった。
放課後、休みの日にわたしたちはお互いの家に行き来するようになった。
綾子とはサンリオピューリオランドにいった。
映画館にいった。
誕生日にプレゼントを交換しあった。
なんてことないことに思えるかもしれないけど、小学校の頃から親しい友人がいなかったわたしにはおおきな喜びだった。
中学校の三年になってもわたしたちは同じクラスで、卒業して、高校生になってもしばらくの間は、わたしたちの関係はかわらなかった。
仲山と別れて、家に着くと、シロに対して効果があるかわからないけれど、用心のために玄関のドアの鍵を二つ閉めた。
配給の食べ物をうけとった小学校から自宅に着くまでの間、兄からの返信はなかった。
配給の食べ物が入ったエコバッグを食卓においてから、自分の部屋のベッドにすわって兄からの返信を待った。
自転車を急いで漕いだ後で、肌が汗ばんでいたけれど、窓はあけなかった。
(シロが窓から入ってくるかもしれない……)
ベッドの正面にある本棚のハリーポッターの小説が目にはいった。
綾子から借りたままであることを思いだして、悲しくなった。
(お父さんとお兄ちゃん、大丈夫かな……)
それから、自警団の活動をしている父と兄が心配になった。
(シロがこの町にいるかもしれない。シロにでくわしてなければいいけど……)
兄から返信があったのは一時間後、正午を回ったときだった。
わたしは着信音にびくりとしながら、兄のメッセージを確認して、電話をかけた。
伝える内容が多くて、直接、話をしたほうがいいと思った。
「どうした?」
電話の向こうから男の人たちの話し声がきこえる。
自警団の人たちが近くにいるのかもしれない。
綾子がシロに殺されたかもしれないこと、綾子を生きかえらせる方法を試すためにシロに殺された人間を蘇らせる人に会いたい、と動悸で息苦しくなりながら話した。
「綾子って、うちにきてたコだろ……」
兄の声は動揺して、ショックを受けているようだった。
兄は綾子が家に遊びにきたときに顔をあわせている。
家に綾子以外の女の子がきたことはなかったから、彼女の顔を覚えていたのだろう。
「それで、連絡、とれるかな。その人に」
「その人のこと知ってる自警団のやつが近くにいる。きいてみる」
自警団の見廻り中は電話で話しづらいのか、兄は早口で小声で話をする。
「お願い」
「連絡先、わかったら春希に教える」
「お父さんは?」
「親父も近くにいる」
「シロが近くまできてること、自警団のひとたち、知ってるの?」
「はじめてきいた」
「気をつけてね」
「すぐ家に帰る。春希、家の外の様子がおかしかったら、母さんと屋根裏に隠れてろ」
兄は緊張した声でいって、電話をきった。
それから、五分もしないうちにメッセージが送られてきた。
綾子を生きかえらせることができるかもしれない人物の連絡先が添付してある。
わたしは動揺する気持ちを落ち着かせようと、ベッドにあるサンリオのキャラのぬいぐるみを小さな子供みたいに抱え、思いつくままメールの文を書いた。
(時間をむだにできない)
シロは殺した人間を犬に食べさせるといわれている。
ぐずぐずしているとシロが綾子を犬に食べさせてしまうと思った。
兄の知人から教えてもらいこのメッセージを送っていること、友人がシロに殺されたこと、その友人を生きかえらせたいと書いてメッセージを送った。
送信するとたちまち不安がこみあげてくる。
(相手が詐欺師か、カルト集団だったらどうしよう……)
シロが現れて混乱がはじまってから強盗、空き巣、強姦のような犯罪が増えているといわれていた。
近所でも窓ガラスが割られ、空き巣に入られた家があった。
ベットから腰をあげ、すわり直したりして、そわそわしているうちにスマホに着信があった。
(もう、きた……)
わたしは心の準備ができていないまま相手のメッセージを確認した。
綾子にはじめて声をかけられたのは、中学二年生のとき、クラス替えがあってから間もない頃だった。
下校時に帰る方向が同じの背が高いクラスメイトが、校門をでたところで声をかけてきた。
わたしが離れて道の端を歩いていると、反対の歩道にいた彼女が道路を横断してずんずんと近づいてきた。
「どこで買ったの?」
わたしのリュックについているサンリオのキャラクターのキーホルーダーを指さしたのだった。
「新宿のサンリオショップで買ったんだ」
わたしは自分でも驚くほど自然にほぼ初対面の彼女に返事をしていた。
小学校の頃からわたしは女子の集団が苦手だった。
人とうまく会話ができない。
話をあわせることができない。
相手が同級生でも緊張して、なにを話していいかわからなくなる。
それが、その日の学校の帰り道、どういうわけかリラックスして綾子と会話ができた。
(この子ともっと話をしたい)
会話というかほとんどわたしが一方的に、興奮して声をうわずらせて話をしていた。
道を歩きながらわたしは勢いにまかせて、サンリオのキャラクターが好きなこと、父親の影響で90年代の古い映画が好きなことを話した。
綾子は退屈をした様子をみせないで、相づちを打ちながら話をきいてくれた。
(へんなやつだと思われたな……)
家の近くで彼女と別れた後、わたしはしゃべりすぎたことに恥ずかしくなった。
わたしは綾子と話をしていることに舞いあがっていた。
同じクラスになった初日から綾子はわたしの目をひいていた。
彼女にも親しい友人がいないようだった。
それでも教室の移動時、休み時間、ひとりでいても堂々としてみえた。
(かっこいいな、あの子)
教室で目立たないようにこそこそとしていたわたしは、綾子の姿に軽い憧れを抱いていた。
「昨日、春希がいって映画、観た。面白かったけど、グロいね」
翌朝、教室に入ってきた綾子は、わたしが昨日話した香港のアクション映画をサブスクで観たといって、くったくなく声をかけてくれた。
前から友人であったように。
「あのグロさがいいんだよ」
他の同級生の女子には引かれて変人扱いされることも綾子にはなぜかいえた。
綾子は中学生になって、はじめてできたわたしの友達になった。
放課後、休みの日にわたしたちはお互いの家に行き来するようになった。
綾子とはサンリオピューリオランドにいった。
映画館にいった。
誕生日にプレゼントを交換しあった。
なんてことないことに思えるかもしれないけど、小学校の頃から親しい友人がいなかったわたしにはおおきな喜びだった。
中学校の三年になってもわたしたちは同じクラスで、卒業して、高校生になってもしばらくの間は、わたしたちの関係はかわらなかった。
仲山と別れて、家に着くと、シロに対して効果があるかわからないけれど、用心のために玄関のドアの鍵を二つ閉めた。
配給の食べ物をうけとった小学校から自宅に着くまでの間、兄からの返信はなかった。
配給の食べ物が入ったエコバッグを食卓においてから、自分の部屋のベッドにすわって兄からの返信を待った。
自転車を急いで漕いだ後で、肌が汗ばんでいたけれど、窓はあけなかった。
(シロが窓から入ってくるかもしれない……)
ベッドの正面にある本棚のハリーポッターの小説が目にはいった。
綾子から借りたままであることを思いだして、悲しくなった。
(お父さんとお兄ちゃん、大丈夫かな……)
それから、自警団の活動をしている父と兄が心配になった。
(シロがこの町にいるかもしれない。シロにでくわしてなければいいけど……)
兄から返信があったのは一時間後、正午を回ったときだった。
わたしは着信音にびくりとしながら、兄のメッセージを確認して、電話をかけた。
伝える内容が多くて、直接、話をしたほうがいいと思った。
「どうした?」
電話の向こうから男の人たちの話し声がきこえる。
自警団の人たちが近くにいるのかもしれない。
綾子がシロに殺されたかもしれないこと、綾子を生きかえらせる方法を試すためにシロに殺された人間を蘇らせる人に会いたい、と動悸で息苦しくなりながら話した。
「綾子って、うちにきてたコだろ……」
兄の声は動揺して、ショックを受けているようだった。
兄は綾子が家に遊びにきたときに顔をあわせている。
家に綾子以外の女の子がきたことはなかったから、彼女の顔を覚えていたのだろう。
「それで、連絡、とれるかな。その人に」
「その人のこと知ってる自警団のやつが近くにいる。きいてみる」
自警団の見廻り中は電話で話しづらいのか、兄は早口で小声で話をする。
「お願い」
「連絡先、わかったら春希に教える」
「お父さんは?」
「親父も近くにいる」
「シロが近くまできてること、自警団のひとたち、知ってるの?」
「はじめてきいた」
「気をつけてね」
「すぐ家に帰る。春希、家の外の様子がおかしかったら、母さんと屋根裏に隠れてろ」
兄は緊張した声でいって、電話をきった。
それから、五分もしないうちにメッセージが送られてきた。
綾子を生きかえらせることができるかもしれない人物の連絡先が添付してある。
わたしは動揺する気持ちを落ち着かせようと、ベッドにあるサンリオのキャラのぬいぐるみを小さな子供みたいに抱え、思いつくままメールの文を書いた。
(時間をむだにできない)
シロは殺した人間を犬に食べさせるといわれている。
ぐずぐずしているとシロが綾子を犬に食べさせてしまうと思った。
兄の知人から教えてもらいこのメッセージを送っていること、友人がシロに殺されたこと、その友人を生きかえらせたいと書いてメッセージを送った。
送信するとたちまち不安がこみあげてくる。
(相手が詐欺師か、カルト集団だったらどうしよう……)
シロが現れて混乱がはじまってから強盗、空き巣、強姦のような犯罪が増えているといわれていた。
近所でも窓ガラスが割られ、空き巣に入られた家があった。
ベットから腰をあげ、すわり直したりして、そわそわしているうちにスマホに着信があった。
(もう、きた……)
わたしは心の準備ができていないまま相手のメッセージを確認した。
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