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南条隆文と武道家
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住宅街を抜けて国道沿いの歩道にでて、左に進むと反対側の歩道にファミレスがある。
わたしは広い道路を横切って、銃で撃たれた肩からの出血のせいでふらつきながらその店にむかった。
わたしが勤めている塾へ自転車で通勤するときに通りかかるファミレスだった。
店は日本にシロが出現してから数日後には営業を停止していた。
今も窓の外から見える店内は電気がついてなくて薄暗い。
店のドアは閉まっていた。
(うまくいけ)
わたしは撃たれていないほうの手でドアのノブをつよく握り、歯をくいしばって、矢印が描いてあるほうに勢いよく回した。
腕に筋肉の繊維が切れたような痛みが走ると同時に、鉄のドアノブが壊れる音がする。
(よし)
わたしは痛みで顔をしかめながら、鍵が壊れたドアを開けて、暗い店内に入った。
雨に濡れた身体と服から落ちる水滴で床を濡らしながら、トイレに直行した。
覚悟はしていたけれど、電気をつけて洗面台の鏡で自分の顔を見てぎょっとした。
見慣れた自分の顔ではなくなっている。
顔と首の皮膚の半分が不自然なほど白くなっている。
元の肌も身体の痛みと出血のせいか青白い。
(むりだ。美晴さんにあわせる顔がない)
鏡で自分の顔を見たままダジャレのような言葉が浮かび、自虐的に笑った。
笑いながらこの姿では美晴さんにうけいれられる可能性はないと悟った。
変わってしまった自分の顔を見ているのがつらくて、トイレをでると、出血のせいか、ショックのせいか、足元がふらついて、力なくへたりこむように床にすわりこんだ。
美晴さんに電話をして、シロに寄生されたと伝えて別れを告げようかと考えた。
最後に彼女の声をききたかった。
そう思っていると、弱々しく飛びながらわたしの身体に入りこんだ白い蜂のような生物に怒りがわきあがってきた。
シロの正体であるという小さな生物が入り込んだ自分の手の甲をにらみつけた。
そのとき、靴脱ぎ場に倒れていたシロに寄生され男性の姿が思い浮かんだ。
あのとき、咳き込んだあの人の口から白い蜂のような生物がでてきた。
そして、あの人の肌は人間の肌に戻った。
今、わたしの身体にも蜂のようなあの生物がいる。
(あの人みたいに身体からあの生物をだせないか)
考えがよぎって、わたしは無理やり咳き込んだ。
けれど、身体に変化はない。
何度も咳き込んでもだめだった。
(寄生された人間が死んでからでないと、あの生物は出てこないのか……)
次に指を口に突っ込み、えずいてみた。
すると、小さななにかが胃のあたりで動く感触があった。
(あれ)
手応えを感じて、目に涙を浮かべて、苦しみの声をあげながら、何度も試した。
すると、小さなものが胃から喉元までせりあがってくる感触がある。
そして、えずき、咳き込みつづけているうちに口から小さいなにかが出てきた。
(やった……)
シロの正体である蜂のような生物だった。
床の上をかすかに動いている。
もう飛ぶ力も残っていないようだった。
わたしは怒りをこめ踏みつぶそうとしたけれど、やめてそいつからすぐに離れた。
また、わたしの身体に入りこまれるかもしれない。
注意深く見ていると、そいつは足で立つ力もなくなり、床に胴体を横たえるように動かなくなって死骸となった。
それから、わたしはそいつからTシャツの袖から伸びている自分の腕におそるおそる目を移した。
店の中は暗かったけれど、腕の肌から白い部分がきれいになくなっているのが確認できた。
(よし、よし)
トイレに入り直して、鏡で顔を見る。
顔も元に戻っている。
病人のように血色は悪いけれど人間の肌になっている。
目も充血はしているけれど、青さは消えている。
(部屋に帰れる)
たちまち希望が蘇って、ファミレスをでた。
気持ちはいくらか軽くなっていたけれど、身体はちがった。
肩からの出血のせいで、足がふらついて、まっすぐ歩けない。
雨に打たれて濡れた服が身体に貼りついてるせいで、寒さでふるえた。
目もかすんでくる。
マンションの部屋までこのままゆっくり歩いて五分ほどの距離だったけれど、貧血で路上に倒れてしまうのではないかと不安になった。
歩道沿いの建物の壁に手をつきながら歩いていると、ファミレスの数軒隣にある小さなビルが目にとまった。
道路に面した二階の窓の下に整形外科の看板がある。
何回も通った道だったけれど、今までは目に入っていなかった看板だった。
(あそこにいこう)
出血を止める包帯があればいいと思い、そのまま道を進んだ。
ビルの外の階段から二階にあがった。
(やっぱり、医者はいないか……)
自動ドアは閉まっていて、自動ドアのガラスの向こうの院内は暗い。
ファミレスに入ったときのようにドアを壊す前に、自動ドアの横にあるインタフォンを押すと、中からやってくる人がいた。
わたしは広い道路を横切って、銃で撃たれた肩からの出血のせいでふらつきながらその店にむかった。
わたしが勤めている塾へ自転車で通勤するときに通りかかるファミレスだった。
店は日本にシロが出現してから数日後には営業を停止していた。
今も窓の外から見える店内は電気がついてなくて薄暗い。
店のドアは閉まっていた。
(うまくいけ)
わたしは撃たれていないほうの手でドアのノブをつよく握り、歯をくいしばって、矢印が描いてあるほうに勢いよく回した。
腕に筋肉の繊維が切れたような痛みが走ると同時に、鉄のドアノブが壊れる音がする。
(よし)
わたしは痛みで顔をしかめながら、鍵が壊れたドアを開けて、暗い店内に入った。
雨に濡れた身体と服から落ちる水滴で床を濡らしながら、トイレに直行した。
覚悟はしていたけれど、電気をつけて洗面台の鏡で自分の顔を見てぎょっとした。
見慣れた自分の顔ではなくなっている。
顔と首の皮膚の半分が不自然なほど白くなっている。
元の肌も身体の痛みと出血のせいか青白い。
(むりだ。美晴さんにあわせる顔がない)
鏡で自分の顔を見たままダジャレのような言葉が浮かび、自虐的に笑った。
笑いながらこの姿では美晴さんにうけいれられる可能性はないと悟った。
変わってしまった自分の顔を見ているのがつらくて、トイレをでると、出血のせいか、ショックのせいか、足元がふらついて、力なくへたりこむように床にすわりこんだ。
美晴さんに電話をして、シロに寄生されたと伝えて別れを告げようかと考えた。
最後に彼女の声をききたかった。
そう思っていると、弱々しく飛びながらわたしの身体に入りこんだ白い蜂のような生物に怒りがわきあがってきた。
シロの正体であるという小さな生物が入り込んだ自分の手の甲をにらみつけた。
そのとき、靴脱ぎ場に倒れていたシロに寄生され男性の姿が思い浮かんだ。
あのとき、咳き込んだあの人の口から白い蜂のような生物がでてきた。
そして、あの人の肌は人間の肌に戻った。
今、わたしの身体にも蜂のようなあの生物がいる。
(あの人みたいに身体からあの生物をだせないか)
考えがよぎって、わたしは無理やり咳き込んだ。
けれど、身体に変化はない。
何度も咳き込んでもだめだった。
(寄生された人間が死んでからでないと、あの生物は出てこないのか……)
次に指を口に突っ込み、えずいてみた。
すると、小さななにかが胃のあたりで動く感触があった。
(あれ)
手応えを感じて、目に涙を浮かべて、苦しみの声をあげながら、何度も試した。
すると、小さなものが胃から喉元までせりあがってくる感触がある。
そして、えずき、咳き込みつづけているうちに口から小さいなにかが出てきた。
(やった……)
シロの正体である蜂のような生物だった。
床の上をかすかに動いている。
もう飛ぶ力も残っていないようだった。
わたしは怒りをこめ踏みつぶそうとしたけれど、やめてそいつからすぐに離れた。
また、わたしの身体に入りこまれるかもしれない。
注意深く見ていると、そいつは足で立つ力もなくなり、床に胴体を横たえるように動かなくなって死骸となった。
それから、わたしはそいつからTシャツの袖から伸びている自分の腕におそるおそる目を移した。
店の中は暗かったけれど、腕の肌から白い部分がきれいになくなっているのが確認できた。
(よし、よし)
トイレに入り直して、鏡で顔を見る。
顔も元に戻っている。
病人のように血色は悪いけれど人間の肌になっている。
目も充血はしているけれど、青さは消えている。
(部屋に帰れる)
たちまち希望が蘇って、ファミレスをでた。
気持ちはいくらか軽くなっていたけれど、身体はちがった。
肩からの出血のせいで、足がふらついて、まっすぐ歩けない。
雨に打たれて濡れた服が身体に貼りついてるせいで、寒さでふるえた。
目もかすんでくる。
マンションの部屋までこのままゆっくり歩いて五分ほどの距離だったけれど、貧血で路上に倒れてしまうのではないかと不安になった。
歩道沿いの建物の壁に手をつきながら歩いていると、ファミレスの数軒隣にある小さなビルが目にとまった。
道路に面した二階の窓の下に整形外科の看板がある。
何回も通った道だったけれど、今までは目に入っていなかった看板だった。
(あそこにいこう)
出血を止める包帯があればいいと思い、そのまま道を進んだ。
ビルの外の階段から二階にあがった。
(やっぱり、医者はいないか……)
自動ドアは閉まっていて、自動ドアのガラスの向こうの院内は暗い。
ファミレスに入ったときのようにドアを壊す前に、自動ドアの横にあるインタフォンを押すと、中からやってくる人がいた。
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