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第1部 奈美編
♬ 12 価値観と相性〜愛してると言われたい
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喧嘩するほど仲がいいだとか、喧嘩するカップルの方が長続きするとか、言われているようだが、京は自分の育った家庭環境が、あまり芳しいものではなかったので、恋人同士の喧嘩や夫婦喧嘩は、あたりまえだと思っていた。
しかし、世間様はそうではないらしい。
たしかに子どもがまだいない夫婦では、いくつになっても若いカップルみたいに手を繋いで散歩したり、ほんとうに仲睦まじいという印象を京は持っているが、喧嘩などしたことがない、そんな奇跡みたいなカップルや夫婦もいるのだ。
京には、そういう相手は未だ現われていないと奈美と付き合う前には考えていた。元カノとは何か前世からの因縁で出会わずにはいられなかったが、同様に前世からの因縁で絶対に結ばれることがない、みたいな感じで事あるごとに喧嘩していた。
とても恋人同士とは思えない、憎しみ合っているカップルだった。愛し合う目的で、愛し愛され癒し癒されるのが、愛し合うカップルだが、憎しみ合うカップルもいる。
京はそういう環境で育ってきたから、自分の恋愛観なり結婚観はかなり偏っていて、元カノとの場合もレアなケースだとはまったく思っていないが、実際には京の恋愛観はだいぶ偏っているようだ。
前の前の元カノとは、やはり障害を乗り越えられずに音信不通となってしまったのだが、ずっと好きなままだった。別れざるを得なかった理由があったからだが、そのお陰で京は、もぬけの殻のようになってしまった。
そして、次に出会ったのが元カノというわけだから、京は相当女運がないのかもしれない。
ほかの恋人たちがどんな理由から喧嘩をはじめてしまうのかは知らないけれど、むろん喧嘩して険悪な雰囲気になりたいやつなんてひとりもいやしない。
恋人同士の喧嘩は、やはり不可抗力的にはじまってしまうのだ。その理由は、相手のことを愛するあまり、あまりにも束縛し過ぎてしまうとか、浮気だとか、嫉妬し過ぎてしまうとか、負けず嫌いで絶対に非を認めない、自分の意見を押し通す等々、カップルの数だけ喧嘩の理由はあるだろうけれど、価値観の違いと相性が悪いケースは、致命的な結果、つまりやがては別れることになる。
たとえいくらヴィジュアルがいいから、好きな顔だからといったところで、価値観があまりにもかけ離れていたり、いわゆる相性が悪いと長続きはしないし、それでも別れないでいるとなると憎しみ合うために交際している、或いは憎しみ合うために結婚しているようなものだ。
京と奈美の場合も些細なことから口喧嘩的なケースになることもあるが、それ以上に発展することはない。奈美との場合は、喧嘩みたいな雰囲気が長続きしないのだ。
だから、その点に関しては、元カノとはまったく違うので、京もこれはホンモノの恋人なのかなと思っていたのだが、元カノとはまた別な意味で巨大な壁が立ち塞がっていたというわけなのだ。
帯に短し襷に長しというやつなのだろうか、恋人とめぐりあい、この人こそ運命の人と誰もが信じて輝ける薔薇色の未来を想い描くだろうが、そうは問屋が卸さない。
恋人とめぐりあうだけでも大変なことだと思うのだけれど、さらに価値観も同じ、相性もいい相手にめぐりあうのは、大袈裟でなく、奇跡に近いのでないだろうか。
幼い頃、両親の喧嘩で暴力を振るう父から逃れ母が裸足で家から飛び出したという強烈な思い出がある京には、そう思えてならないのだった。
両親が仲睦まじい家庭に育った方には、とても信じられないことだろうが、京にしたら四六時中、仲が悪く事あるごとに喧嘩しているのが家庭の思い出だった。
むろんの事、両親は離婚したのでその家庭の思い出は、ごく短い期間のことでしかないのだが、京の人格形成に影響を及ぼしていることは確かなことだろう。
奈美の場合は、そのおっとりした性格からすると、麗しい家庭環境によって、すくすくとまっすぐに育ったお嬢様という感じだった。
そんな奈美とは喧嘩らしい喧嘩をしたことはなかったが、付き合いはじめた最初の頃に、京が我慢できずに奈美を責めてしまったことがあった。
それは、言い争いといった類いのものではなく、奈美があまりにも毅然としていて、京に甘えるような仕種を見せたことがなかったので、「俺たち付き合ってんだろ? ならもっと俺に甘えてくれよ」そういって、京は一方的にひとりで怒ったのだ。
その京の発言で、ふたりが気まずくなるようなことはなく、奈美も自分の心の垣根を取り払えたのかもしれない。自分でもわかっているのだが今一歩踏み出せないということはよくある。
京は、その時咄嗟に「もっと甘えてくれよ」と言ってしまったのではなく、京は京なりに結構悩んだ末での発言だった。気まずくなったり、ウザがられたりしたらどうしようというのがあった。
でも、悩んで発したその一言でふたりの心は、ぐっと近づくことができのだから、言葉とはほんとうに大事だなとそのあと京は、思ったのだ。
相手をいとも容易く傷つけるのも言葉だし、誤解を解くのも言葉だし、一言はかなり大きい。
殊に女性は、毎日でも「愛してる」と恋人から言われたい生き物だろう。
しかし、世間様はそうではないらしい。
たしかに子どもがまだいない夫婦では、いくつになっても若いカップルみたいに手を繋いで散歩したり、ほんとうに仲睦まじいという印象を京は持っているが、喧嘩などしたことがない、そんな奇跡みたいなカップルや夫婦もいるのだ。
京には、そういう相手は未だ現われていないと奈美と付き合う前には考えていた。元カノとは何か前世からの因縁で出会わずにはいられなかったが、同様に前世からの因縁で絶対に結ばれることがない、みたいな感じで事あるごとに喧嘩していた。
とても恋人同士とは思えない、憎しみ合っているカップルだった。愛し合う目的で、愛し愛され癒し癒されるのが、愛し合うカップルだが、憎しみ合うカップルもいる。
京はそういう環境で育ってきたから、自分の恋愛観なり結婚観はかなり偏っていて、元カノとの場合もレアなケースだとはまったく思っていないが、実際には京の恋愛観はだいぶ偏っているようだ。
前の前の元カノとは、やはり障害を乗り越えられずに音信不通となってしまったのだが、ずっと好きなままだった。別れざるを得なかった理由があったからだが、そのお陰で京は、もぬけの殻のようになってしまった。
そして、次に出会ったのが元カノというわけだから、京は相当女運がないのかもしれない。
ほかの恋人たちがどんな理由から喧嘩をはじめてしまうのかは知らないけれど、むろん喧嘩して険悪な雰囲気になりたいやつなんてひとりもいやしない。
恋人同士の喧嘩は、やはり不可抗力的にはじまってしまうのだ。その理由は、相手のことを愛するあまり、あまりにも束縛し過ぎてしまうとか、浮気だとか、嫉妬し過ぎてしまうとか、負けず嫌いで絶対に非を認めない、自分の意見を押し通す等々、カップルの数だけ喧嘩の理由はあるだろうけれど、価値観の違いと相性が悪いケースは、致命的な結果、つまりやがては別れることになる。
たとえいくらヴィジュアルがいいから、好きな顔だからといったところで、価値観があまりにもかけ離れていたり、いわゆる相性が悪いと長続きはしないし、それでも別れないでいるとなると憎しみ合うために交際している、或いは憎しみ合うために結婚しているようなものだ。
京と奈美の場合も些細なことから口喧嘩的なケースになることもあるが、それ以上に発展することはない。奈美との場合は、喧嘩みたいな雰囲気が長続きしないのだ。
だから、その点に関しては、元カノとはまったく違うので、京もこれはホンモノの恋人なのかなと思っていたのだが、元カノとはまた別な意味で巨大な壁が立ち塞がっていたというわけなのだ。
帯に短し襷に長しというやつなのだろうか、恋人とめぐりあい、この人こそ運命の人と誰もが信じて輝ける薔薇色の未来を想い描くだろうが、そうは問屋が卸さない。
恋人とめぐりあうだけでも大変なことだと思うのだけれど、さらに価値観も同じ、相性もいい相手にめぐりあうのは、大袈裟でなく、奇跡に近いのでないだろうか。
幼い頃、両親の喧嘩で暴力を振るう父から逃れ母が裸足で家から飛び出したという強烈な思い出がある京には、そう思えてならないのだった。
両親が仲睦まじい家庭に育った方には、とても信じられないことだろうが、京にしたら四六時中、仲が悪く事あるごとに喧嘩しているのが家庭の思い出だった。
むろんの事、両親は離婚したのでその家庭の思い出は、ごく短い期間のことでしかないのだが、京の人格形成に影響を及ぼしていることは確かなことだろう。
奈美の場合は、そのおっとりした性格からすると、麗しい家庭環境によって、すくすくとまっすぐに育ったお嬢様という感じだった。
そんな奈美とは喧嘩らしい喧嘩をしたことはなかったが、付き合いはじめた最初の頃に、京が我慢できずに奈美を責めてしまったことがあった。
それは、言い争いといった類いのものではなく、奈美があまりにも毅然としていて、京に甘えるような仕種を見せたことがなかったので、「俺たち付き合ってんだろ? ならもっと俺に甘えてくれよ」そういって、京は一方的にひとりで怒ったのだ。
その京の発言で、ふたりが気まずくなるようなことはなく、奈美も自分の心の垣根を取り払えたのかもしれない。自分でもわかっているのだが今一歩踏み出せないということはよくある。
京は、その時咄嗟に「もっと甘えてくれよ」と言ってしまったのではなく、京は京なりに結構悩んだ末での発言だった。気まずくなったり、ウザがられたりしたらどうしようというのがあった。
でも、悩んで発したその一言でふたりの心は、ぐっと近づくことができのだから、言葉とはほんとうに大事だなとそのあと京は、思ったのだ。
相手をいとも容易く傷つけるのも言葉だし、誤解を解くのも言葉だし、一言はかなり大きい。
殊に女性は、毎日でも「愛してる」と恋人から言われたい生き物だろう。
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