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第1部 奈美編
♬13 結婚の話 〜価値観の相違
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赤い糸で結ばれている相手とは、浅からぬ縁があり、何度も何度も生まれ変わってこの世に生を受けるたびに、何らかの形で巡り会っているのだと京は思っている。
その相手が奈美であるのか否か。いまはその相手は奈美であってほしいと京は思っているけれど、これからどうなるのかはまだまだ先のことはわからない。
というのも、浅からぬ縁がありたとえ結婚まで漕ぎ着けたとしても、その後で別れが待っているかもしれない。成田離婚なんてフレーズを聞いたこともある。それは誰にもわからないのだ。
つまり、結婚するところまでは縁があるけれども、一生添い遂げる縁ではない、そういうケースもいくらでもあるわけで、やはり結婚は好きなだけでは成り立たないらしい。
カップルのどちらも幼稚で、自分の方が頭がいいだとか、偉いとかあるいは、相手の考えに一切耳を貸さず自分の意見を強引に押し通すといったカップルでは、長続きはしない。
確かに中には亭主関白の方がいいという女性もいるだろうけれど、亭主関白というのは、ほんとうに重大な決断を迫られるといったシーンでリーダーシップを発揮しその度に大局的な決断を下せるか否かという問題であり、なんでもかんでも自分の意見が正しいのだから言う通りにしろというのは愚の骨頂だと京は思う。
京が『結婚 価値観』で検索をかけてみたところ
『お互いの異なる価値観を知った上で、結婚生活の中で異なる価値観を擦り合わせ、新しいふたりの価値観を作っていく、それが結婚というもの』
こんな風な文言が出ていたのだが、京としては容易に首肯できかねる内容で、驚きを禁じ得なかった。確かに価値観がまったく同じというカップルは稀少な絶滅危惧種みたいなものだろうが、そもそも擦り合わせが可能なものは、あまり問題ではない。
女癖が悪いやつでも、結婚したら家庭人として女遊びがいいのか悪いのか考えるだろうし、独り暮らしの時みたいに好きなバイクや車、あるいは楽器等趣味に湯水のごとく好きなだけ使うとか、お金の浪費はしないようにするのは当然のことで、それは常識レベルの話であって、結婚のために擦り合わせが必要というのは、はじめから擦り合わせができる程度の価値観の差異のことをいう。
風呂に入るのは週に一度でいいとか、洗濯めんどいから下着は裏返しをループしていくとかいう女性を京はTVで見たことがあったが、これらの価値観を擦り合わせていくのは、まだ容易だと京には思われるのだった。
深刻な問題なのは、生活習慣的なものではなく、もっと根本的な乖離なのだった。擦り合わせが可能なものは、近いから擦り合わせできるのであって、乖離したかけ離れた価値観を擦り合わせることなど不可能だからだ。
まあ、それほどに乖離した二人ならば、惹かれ合うこともないようにも思うが、見た目や日常会話で判断できるようなものではなく、仲が良くても絶対にこれだけは譲れないという部分があるはずで、それが例えば互いに歩み寄ることができないような生きるための指針としている思想であるとか、イデオロギーであるならば悲劇は目に見えている。
そういった自分の核というかコアとなっている部分は、きのうきょう身につけた付け焼き刃的なものではなく、ほんとうに自分の中に取り込んでしまって自分のモノになっているので、それらを隠すまでもなく表には現われてはこない。
つまり、既にその人自身が咀嚼し身についてしまっているとなると、見てくれではまったくわからなくなるのだ。
◇
ま。それはともかく、これから新しい出会いがあるかもしれないし、既に出会っているのかもしれない京の赤い糸の相手はやはり奈美なのだろうか。
京は、ずっと以前にやった合コンの際に教えてもらった花散る男女を奈美の名前を書いてやってみたかったのだが、肝心の花散る男女のやり方を忘れてしまったのだ。
アレを教えてくれた父親が軍人なんですと言っていた美人さんは、どうしているだろうかと京はふと彼女の顔を思い出そうとしてみた。
しかし、朧げですら彼女は現われてはこない。その輪郭さえ見えなかった。髪が長かったとしか記憶していない。その髪も黒髪だったのか、明るい髪色だったのか記憶にない。もしあの時、新宿駅で彼女と別れずに彼女の自宅の最寄り駅まで見送ったとして、あの子と付き合うことになっていたなら、やはり京は防衛大学へ進学し、キャリア組になるための教育と訓練を受けろ、さもなくばうちの娘は嫁にやれん! そんな風にサーベルの切っ先を喉元に突きつけられて、恫喝されていたのではないかと思ったり、思わなかったり。
いずれにせよ、彼女たちを嫁にもらうためには長く険しい茨の道を歩いていかなければならないらしい。ふたりとも強い父親の存在が鍵になっている。彼女たちの価値観自体、父親ありきで成り立っている。考えてみたら強い父親の影に怯えながら結婚生活を送るというのが京の許された唯一の生きる道なのか。
いや。まだ、独り者で通すという選択もなきにしもあらずであり、たしかに猫3匹と暮らすのもありかなと京は思うのだった。
その相手が奈美であるのか否か。いまはその相手は奈美であってほしいと京は思っているけれど、これからどうなるのかはまだまだ先のことはわからない。
というのも、浅からぬ縁がありたとえ結婚まで漕ぎ着けたとしても、その後で別れが待っているかもしれない。成田離婚なんてフレーズを聞いたこともある。それは誰にもわからないのだ。
つまり、結婚するところまでは縁があるけれども、一生添い遂げる縁ではない、そういうケースもいくらでもあるわけで、やはり結婚は好きなだけでは成り立たないらしい。
カップルのどちらも幼稚で、自分の方が頭がいいだとか、偉いとかあるいは、相手の考えに一切耳を貸さず自分の意見を強引に押し通すといったカップルでは、長続きはしない。
確かに中には亭主関白の方がいいという女性もいるだろうけれど、亭主関白というのは、ほんとうに重大な決断を迫られるといったシーンでリーダーシップを発揮しその度に大局的な決断を下せるか否かという問題であり、なんでもかんでも自分の意見が正しいのだから言う通りにしろというのは愚の骨頂だと京は思う。
京が『結婚 価値観』で検索をかけてみたところ
『お互いの異なる価値観を知った上で、結婚生活の中で異なる価値観を擦り合わせ、新しいふたりの価値観を作っていく、それが結婚というもの』
こんな風な文言が出ていたのだが、京としては容易に首肯できかねる内容で、驚きを禁じ得なかった。確かに価値観がまったく同じというカップルは稀少な絶滅危惧種みたいなものだろうが、そもそも擦り合わせが可能なものは、あまり問題ではない。
女癖が悪いやつでも、結婚したら家庭人として女遊びがいいのか悪いのか考えるだろうし、独り暮らしの時みたいに好きなバイクや車、あるいは楽器等趣味に湯水のごとく好きなだけ使うとか、お金の浪費はしないようにするのは当然のことで、それは常識レベルの話であって、結婚のために擦り合わせが必要というのは、はじめから擦り合わせができる程度の価値観の差異のことをいう。
風呂に入るのは週に一度でいいとか、洗濯めんどいから下着は裏返しをループしていくとかいう女性を京はTVで見たことがあったが、これらの価値観を擦り合わせていくのは、まだ容易だと京には思われるのだった。
深刻な問題なのは、生活習慣的なものではなく、もっと根本的な乖離なのだった。擦り合わせが可能なものは、近いから擦り合わせできるのであって、乖離したかけ離れた価値観を擦り合わせることなど不可能だからだ。
まあ、それほどに乖離した二人ならば、惹かれ合うこともないようにも思うが、見た目や日常会話で判断できるようなものではなく、仲が良くても絶対にこれだけは譲れないという部分があるはずで、それが例えば互いに歩み寄ることができないような生きるための指針としている思想であるとか、イデオロギーであるならば悲劇は目に見えている。
そういった自分の核というかコアとなっている部分は、きのうきょう身につけた付け焼き刃的なものではなく、ほんとうに自分の中に取り込んでしまって自分のモノになっているので、それらを隠すまでもなく表には現われてはこない。
つまり、既にその人自身が咀嚼し身についてしまっているとなると、見てくれではまったくわからなくなるのだ。
◇
ま。それはともかく、これから新しい出会いがあるかもしれないし、既に出会っているのかもしれない京の赤い糸の相手はやはり奈美なのだろうか。
京は、ずっと以前にやった合コンの際に教えてもらった花散る男女を奈美の名前を書いてやってみたかったのだが、肝心の花散る男女のやり方を忘れてしまったのだ。
アレを教えてくれた父親が軍人なんですと言っていた美人さんは、どうしているだろうかと京はふと彼女の顔を思い出そうとしてみた。
しかし、朧げですら彼女は現われてはこない。その輪郭さえ見えなかった。髪が長かったとしか記憶していない。その髪も黒髪だったのか、明るい髪色だったのか記憶にない。もしあの時、新宿駅で彼女と別れずに彼女の自宅の最寄り駅まで見送ったとして、あの子と付き合うことになっていたなら、やはり京は防衛大学へ進学し、キャリア組になるための教育と訓練を受けろ、さもなくばうちの娘は嫁にやれん! そんな風にサーベルの切っ先を喉元に突きつけられて、恫喝されていたのではないかと思ったり、思わなかったり。
いずれにせよ、彼女たちを嫁にもらうためには長く険しい茨の道を歩いていかなければならないらしい。ふたりとも強い父親の存在が鍵になっている。彼女たちの価値観自体、父親ありきで成り立っている。考えてみたら強い父親の影に怯えながら結婚生活を送るというのが京の許された唯一の生きる道なのか。
いや。まだ、独り者で通すという選択もなきにしもあらずであり、たしかに猫3匹と暮らすのもありかなと京は思うのだった。
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