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第1部 アイドル編
♬ 9 アイドルオタク
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相変わらずミリアは見つかっていないらしい。アカシアは、新しいメンバーがひとり加わり、五人の新体制となったようだ。
京は、早乙女ゆりあの事件以来、アカシアの現場には行っていない。もうひとりの推しである南条クロエは在籍してはいるが、風船が萎んでしまうみたいに、アカシアへの興味は嘘のように消えてしまった。
だが、京は今夜もYouTubeに上がっている早乙女ゆりあも如月ミリアもまだいたアカシアのMVやライブ映像を繰り返し繰り返し再生しては飽かずに観ていた。
結局、京がドルヲタをやり始めたのはパンデミックの年であり、そしてそれが明けない内に現場に行かなくなった。いや、もしかしたらパンデミックは向後何年経っても完全に明けることはないのかもしれない。新たな戦争という感染症が世界を席巻しはじめている。
ドルヲタという生き方を知らずにいた京は、オタクのタクは、『宅』だけではなく、夢を託す、想いを託す、未来を託すの『託』から来ているのではないかと思った。
一般にオタクというと揶揄する感じであり、あまりいいニュアンスで用いられていないように思うが、誰もがオタクの資質を備えていると京は思う。
アイドルオタク、アニメオタク、ゲームオタクは言うに及ばず、全てのあらゆるジャンルで何らかの事物に夢中になって、或いは熱狂し没頭しているのが、ヒトという生き物であって、好きな事、好きな人や物がないとヒトは絶対に生きてはいけない。
それはつまり、愛することが人間の基本となるようにヒトが作られているからにほかならない。
もう今となっては、依田ちゃんと如月ミリアが結ばれていてほしいと、京は思っている。
何かの事件とかに巻き込まれてしまったのではなく、アカシア界隈で囁かれているようにヲタクと現役アイドルとの愛の逃避行なのだと思いたい。
そして、そのヲタクとは、依田ちゃんであってほしい。依田ちゃんが、ミリアにゾッコンだったのは、言わずと知れたことだから、ミリア失踪と同時に現場にも顔を出さなくなって、音信不通のままになっている依田ちゃんが、逃避行の相手ではないかと噂されているわけで、その通りであってほしい。
京ももう依田ちゃんにラインしなくなった。依田ちゃんにしても、今のところはいろいろとつつかれるのはいやだろうなと京は思った。もう少し時間を置けば話してくれるタイミングがやがてくるかもしれない。
ショービズのプロのアイドルとしては、失格なのかもしれないのだけれども、事件に巻き込まれるなどというヤバい顛末よりかは、愛の逃避行の方がよっぽどいい。
まるで昭和の話みたいな、そのまんま演歌のような想像しか京には出来ないが、各地を転々としながら巡業する旅芸人の一座やサーカス団の一員となる、或いは、長距離トラックのドライバーになって日本の物流を支えるとか演歌歌手のマネージャーになるとかして、依田ちゃんがミリアと手に手を取って駆け落ちしていく様を想像しながら、京は、ミリアと依田ちゃんのふたりが幸せになってほしいと願わずにはいられなかった。
ちなみに、今現在アメリカではトラックのドライバーがまったく足りずに年収1,300万で雇用してくれるらしいから、そんなにュースを知り、アメリカにでも飛んだのだろうか。
しかし、この時期に海外へ渡航するのはかなり勇気がいるし、グリーンカードを持っているわけもないのだからアメリカで働けるわけもなかった。
やはり、ふたりの愛の逃避行は浪花節的な義理と人情、御涙頂戴のストーリーでなくてはならない。
今はどうか知らないが、京は以前に全国を回って公演する人形劇や児童演劇専門の劇団員募集の記事を何回も見かけたことがある。
そしてその度に自分が、人形を操っている場面や舞台に立って、台詞は棒読みだけれど必死に誰かを演じている自分を思い浮かべ、そんな人生もあるんだなぁと思うのだった。
たぶん、依田ちゃんは関西弁だったしふたりは関西方面に逃げていったのではないかなと京は思うのだが、ふたりが法に触れるような大それた事をしでかしたわけでもない。
ドルヲタあるあるで、 ある日突然何の前触れもなく理由もわからないまま推しが卒業してしまう、脱退してしまう、或いは忽然と姿を消してしまうなんて日常茶飯事だし、確かにそれはショックには違いないけれど、また別の推しを見つけ出せばいいわけなので、むしろアイドルとヲタクが繋がったという事実に、自分にもワンチャンあるかもと思うくらいなものだろう。
ひとりひとり、楽しみ方は異なり後方の壁際で腕を組み何かぶつぶつ呟きながら評論家先生やプロデューサーみたいなしたり顔して楽しむやつもいれば、完全在宅主義で現場には一切出てこない人もいる。
楽しみ方は、千差万別で人の数だけ楽しみ方がある。誰に強制されるわけでもなく、みんな楽しいからやっているのだ。
京は依田ちゃんと如月ミリアの危うい綱渡りのような恋の行方が心配でもあったが、そんなふたりが羨ましくて仕方なかった。
それは、ミリアがアイドルであり誰しもが振り向くような美貌の持ち主だったからではない。
ほんとうに好きな人と出会い困難を乗り越え手に手を取って駆け落ちする。
京は奈美との事を思った。自分たちの恋は許されざる恋であり、駆け落ちすることすら出来はしないのだ。
相変わらずミリアは見つかっていないらしい。アカシアは、新しいメンバーがひとり加わり、五人の新体制となったようだ。
京は、早乙女ゆりあの事件以来、アカシアの現場には行っていない。もうひとりの推しである南条クロエは在籍してはいるが、風船が萎んでしまうみたいに、アカシアへの興味は嘘のように消えてしまった。
だが、京は今夜もYouTubeに上がっている早乙女ゆりあも如月ミリアもまだいたアカシアのMVやライブ映像を繰り返し繰り返し再生しては飽かずに観ていた。
結局、京がドルヲタをやり始めたのはパンデミックの年であり、そしてそれが明けない内に現場に行かなくなった。いや、もしかしたらパンデミックは向後何年経っても完全に明けることはないのかもしれない。新たな戦争という感染症が世界を席巻しはじめている。
ドルヲタという生き方を知らずにいた京は、オタクのタクは、『宅』だけではなく、夢を託す、想いを託す、未来を託すの『託』から来ているのではないかと思った。
一般にオタクというと揶揄する感じであり、あまりいいニュアンスで用いられていないように思うが、誰もがオタクの資質を備えていると京は思う。
アイドルオタク、アニメオタク、ゲームオタクは言うに及ばず、全てのあらゆるジャンルで何らかの事物に夢中になって、或いは熱狂し没頭しているのが、ヒトという生き物であって、好きな事、好きな人や物がないとヒトは絶対に生きてはいけない。
それはつまり、愛することが人間の基本となるようにヒトが作られているからにほかならない。
もう今となっては、依田ちゃんと如月ミリアが結ばれていてほしいと、京は思っている。
何かの事件とかに巻き込まれてしまったのではなく、アカシア界隈で囁かれているようにヲタクと現役アイドルとの愛の逃避行なのだと思いたい。
そして、そのヲタクとは、依田ちゃんであってほしい。依田ちゃんが、ミリアにゾッコンだったのは、言わずと知れたことだから、ミリア失踪と同時に現場にも顔を出さなくなって、音信不通のままになっている依田ちゃんが、逃避行の相手ではないかと噂されているわけで、その通りであってほしい。
京ももう依田ちゃんにラインしなくなった。依田ちゃんにしても、今のところはいろいろとつつかれるのはいやだろうなと京は思った。もう少し時間を置けば話してくれるタイミングがやがてくるかもしれない。
ショービズのプロのアイドルとしては、失格なのかもしれないのだけれども、事件に巻き込まれるなどというヤバい顛末よりかは、愛の逃避行の方がよっぽどいい。
まるで昭和の話みたいな、そのまんま演歌のような想像しか京には出来ないが、各地を転々としながら巡業する旅芸人の一座やサーカス団の一員となる、或いは、長距離トラックのドライバーになって日本の物流を支えるとか演歌歌手のマネージャーになるとかして、依田ちゃんがミリアと手に手を取って駆け落ちしていく様を想像しながら、京は、ミリアと依田ちゃんのふたりが幸せになってほしいと願わずにはいられなかった。
ちなみに、今現在アメリカではトラックのドライバーがまったく足りずに年収1,300万で雇用してくれるらしいから、そんなにュースを知り、アメリカにでも飛んだのだろうか。
しかし、この時期に海外へ渡航するのはかなり勇気がいるし、グリーンカードを持っているわけもないのだからアメリカで働けるわけもなかった。
やはり、ふたりの愛の逃避行は浪花節的な義理と人情、御涙頂戴のストーリーでなくてはならない。
今はどうか知らないが、京は以前に全国を回って公演する人形劇や児童演劇専門の劇団員募集の記事を何回も見かけたことがある。
そしてその度に自分が、人形を操っている場面や舞台に立って、台詞は棒読みだけれど必死に誰かを演じている自分を思い浮かべ、そんな人生もあるんだなぁと思うのだった。
たぶん、依田ちゃんは関西弁だったしふたりは関西方面に逃げていったのではないかなと京は思うのだが、ふたりが法に触れるような大それた事をしでかしたわけでもない。
ドルヲタあるあるで、 ある日突然何の前触れもなく理由もわからないまま推しが卒業してしまう、脱退してしまう、或いは忽然と姿を消してしまうなんて日常茶飯事だし、確かにそれはショックには違いないけれど、また別の推しを見つけ出せばいいわけなので、むしろアイドルとヲタクが繋がったという事実に、自分にもワンチャンあるかもと思うくらいなものだろう。
ひとりひとり、楽しみ方は異なり後方の壁際で腕を組み何かぶつぶつ呟きながら評論家先生やプロデューサーみたいなしたり顔して楽しむやつもいれば、完全在宅主義で現場には一切出てこない人もいる。
楽しみ方は、千差万別で人の数だけ楽しみ方がある。誰に強制されるわけでもなく、みんな楽しいからやっているのだ。
京は依田ちゃんと如月ミリアの危うい綱渡りのような恋の行方が心配でもあったが、そんなふたりが羨ましくて仕方なかった。
それは、ミリアがアイドルであり誰しもが振り向くような美貌の持ち主だったからではない。
ほんとうに好きな人と出会い困難を乗り越え手に手を取って駆け落ちする。
京は奈美との事を思った。自分たちの恋は許されざる恋であり、駆け落ちすることすら出来はしないのだ。
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