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第1部 アイドル編
♬ 8 愛の逃避行
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自分のことがわからないのに、人のことなど更にわかるはずもないが、京は依田ちゃんが、たぶんいまミリアと共に生きているのではないかと考えていた。手に手を取り合っての駆け落ちというやつだ。
あの真面目な依田ちゃんが裏ではあの如月ミリアとまさかの展開になっていたとは、世の中何が起こるかわからない。
それは、どこまでも京や周りのヲタクの想像に過ぎないのだが、依田ちゃんの推しメンと推しメンである如月ミリアが時を同じくして現場やら自宅マンションから消えてしまうという事態は、そのことを意味しているとしか思えないのだった。
或いは、何かヤバい事件に巻き込まれたというケースも考えられないことではないが、ヲタクとしては、ワンチャンてホンマにあるかもしれないと思わせてくれるエピソードなので、どうしたってそっちの予想の方が勝っていくのだった。
ただしかし、どうみてもふたりは美女と野獣だが、ミリアはいったい依田ちゃんのどこに惚れたのだろう。それはモナリザの微笑みのように、永遠の謎だった。
まあ、好きになってしまえばあばたもえくぼということなのだろうか。男と女のことなんて所詮京にはわからないし、それは京に限ったことではなく、誰にもわからないのではないか。
依田ちゃんは、タッパもあるが体重もかなりあり、間違ってもスタイルがいいとは言い難くビジュアルは残念だった。
しかし、こうして地下とはいえ現役のアイドルと噂になってみると、個性的なイケメン風だったかもしれないと思えてくるのだから不思議だった。
にわかに京もワンチャンあるかもしれない、などと期待に胸を高鳴らせたが、もし仮にそんな青天の霹靂みたいな事が現実に起こったとして、果たして自分は本当に相手を幸せにできるだろうかと自問自答してみた。
むろん、京の想定する相手というのは、太陽のような存在の南条クロエだと言いたいところだが、今にも消え入ってしまいそうなカゲロウのような早乙女ゆりあにも京はどうしても惹かれてしまうというのはどうなんだろう。
実際、儚さに惹かれてしまうというのは、音楽や詩や絵画といったいわゆる芸術の世界では当然な事であり、たまらない魅力となるのかもしれないが、儚さ危うさに惹かれ耽溺するのは、実生活の中では歓迎されざる危うい情動だ。
しかし、情動を理性で止められるわけもなかった。というか、京はある時を境にして圧し殺していた自分の感情を解放した。
というとなにやらカッコいいが、京の根底には自分はどうでもいいという考えが常にあって、計算ずくで先のことを考えると苦しくなるだけなので、野放図に為すがままに任せたに過ぎない。
考えてみると、現場でのヲタク同士での殴り合いの喧嘩であるとか、その後で起きたフェイク動画事件であるとか、狙われていたのは個人ではなく、目的はアカシア自体を潰そうということなのかもしれない。
それにしても自殺願望が強いゆりあが、なんとかそこから脱却し心機一転アイドルとして頑張っている矢先に、またぞろネガティブな感情に囚われてしまったというのは、とても悔しいことだった。
やっと暗いトンネルの中から抜け出して死にたいという気持ちをなんとか克服したはずなのに、いとも容易く暗黒の闇へと再び引きずり込まれてしまったのだ。
病院に入院する際には、お見舞いに来る者に対して、SNSと同様にブロック等制限する範囲を尋ねられるが、ゆりあは最初からずっと面会謝絶だった。
だから、京はミニブーケを直接ゆりあに手渡したことは一度もなかった。元気な顔を見たいだけで何を話したらいいのかすらわからないが、容体が重篤であるから面会謝絶ではないことを看護師さんから聞いていたのが救いだった。
しかし、ゆりあにしてみれば、アイドルになるために上京し、過去など振り返る暇もなかっただろうし、自分の中では黒歴史などなかったことにしていただろうから、むしろ京の存在は疎ましかったかもしれない。
つまり、京を見るたびに黒歴史を思い出してしまうのではないかと、そんなことまで京は考えていた。
なので、クスリの代謝が無事終わり意識の混濁等もなくなって容体も安定しても、黒歴史を直接思い出させるような自分の顔を見せることは、実はかなりヤバイことなかもしれないと京は病院の広々としたロビーでそう思った。
京は、以前悪性の風邪でかなり高熱が続いた際の事を思い出した。3日ほどで熱はなんとか下がり、後は衰弱が少し残っている程度まで回復したので、調子づいてTVを見始めてしまったのだが、それが鬼が出てくる人形劇で、まあ、大人が見れば他愛のない話なのだろうけれど、その時の京の病み上がりという状況からすると、空恐ろしい物語となって京を戦慄させたのだった。
まあ、それはともかく幸い希死念慮はないという判断で、ゆりあは、クスリの代謝に少し時間がかかってしまったようだけれど、精神科への転院はなかったようだった。
あの真面目な依田ちゃんが裏ではあの如月ミリアとまさかの展開になっていたとは、世の中何が起こるかわからない。
それは、どこまでも京や周りのヲタクの想像に過ぎないのだが、依田ちゃんの推しメンと推しメンである如月ミリアが時を同じくして現場やら自宅マンションから消えてしまうという事態は、そのことを意味しているとしか思えないのだった。
或いは、何かヤバい事件に巻き込まれたというケースも考えられないことではないが、ヲタクとしては、ワンチャンてホンマにあるかもしれないと思わせてくれるエピソードなので、どうしたってそっちの予想の方が勝っていくのだった。
ただしかし、どうみてもふたりは美女と野獣だが、ミリアはいったい依田ちゃんのどこに惚れたのだろう。それはモナリザの微笑みのように、永遠の謎だった。
まあ、好きになってしまえばあばたもえくぼということなのだろうか。男と女のことなんて所詮京にはわからないし、それは京に限ったことではなく、誰にもわからないのではないか。
依田ちゃんは、タッパもあるが体重もかなりあり、間違ってもスタイルがいいとは言い難くビジュアルは残念だった。
しかし、こうして地下とはいえ現役のアイドルと噂になってみると、個性的なイケメン風だったかもしれないと思えてくるのだから不思議だった。
にわかに京もワンチャンあるかもしれない、などと期待に胸を高鳴らせたが、もし仮にそんな青天の霹靂みたいな事が現実に起こったとして、果たして自分は本当に相手を幸せにできるだろうかと自問自答してみた。
むろん、京の想定する相手というのは、太陽のような存在の南条クロエだと言いたいところだが、今にも消え入ってしまいそうなカゲロウのような早乙女ゆりあにも京はどうしても惹かれてしまうというのはどうなんだろう。
実際、儚さに惹かれてしまうというのは、音楽や詩や絵画といったいわゆる芸術の世界では当然な事であり、たまらない魅力となるのかもしれないが、儚さ危うさに惹かれ耽溺するのは、実生活の中では歓迎されざる危うい情動だ。
しかし、情動を理性で止められるわけもなかった。というか、京はある時を境にして圧し殺していた自分の感情を解放した。
というとなにやらカッコいいが、京の根底には自分はどうでもいいという考えが常にあって、計算ずくで先のことを考えると苦しくなるだけなので、野放図に為すがままに任せたに過ぎない。
考えてみると、現場でのヲタク同士での殴り合いの喧嘩であるとか、その後で起きたフェイク動画事件であるとか、狙われていたのは個人ではなく、目的はアカシア自体を潰そうということなのかもしれない。
それにしても自殺願望が強いゆりあが、なんとかそこから脱却し心機一転アイドルとして頑張っている矢先に、またぞろネガティブな感情に囚われてしまったというのは、とても悔しいことだった。
やっと暗いトンネルの中から抜け出して死にたいという気持ちをなんとか克服したはずなのに、いとも容易く暗黒の闇へと再び引きずり込まれてしまったのだ。
病院に入院する際には、お見舞いに来る者に対して、SNSと同様にブロック等制限する範囲を尋ねられるが、ゆりあは最初からずっと面会謝絶だった。
だから、京はミニブーケを直接ゆりあに手渡したことは一度もなかった。元気な顔を見たいだけで何を話したらいいのかすらわからないが、容体が重篤であるから面会謝絶ではないことを看護師さんから聞いていたのが救いだった。
しかし、ゆりあにしてみれば、アイドルになるために上京し、過去など振り返る暇もなかっただろうし、自分の中では黒歴史などなかったことにしていただろうから、むしろ京の存在は疎ましかったかもしれない。
つまり、京を見るたびに黒歴史を思い出してしまうのではないかと、そんなことまで京は考えていた。
なので、クスリの代謝が無事終わり意識の混濁等もなくなって容体も安定しても、黒歴史を直接思い出させるような自分の顔を見せることは、実はかなりヤバイことなかもしれないと京は病院の広々としたロビーでそう思った。
京は、以前悪性の風邪でかなり高熱が続いた際の事を思い出した。3日ほどで熱はなんとか下がり、後は衰弱が少し残っている程度まで回復したので、調子づいてTVを見始めてしまったのだが、それが鬼が出てくる人形劇で、まあ、大人が見れば他愛のない話なのだろうけれど、その時の京の病み上がりという状況からすると、空恐ろしい物語となって京を戦慄させたのだった。
まあ、それはともかく幸い希死念慮はないという判断で、ゆりあは、クスリの代謝に少し時間がかかってしまったようだけれど、精神科への転院はなかったようだった。
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