花散る男女

トリダマケむ

文字の倧きさ
倧䞭小
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第2郚 名叀屋線

🎵 ラ・マルセむ゚ヌズ 

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 ヲタクずしおアむドルず出䌚っおはいけないず前に曞いたような蚘憶があるが、それしか考え぀かないずいうのはある。たさかプロデュヌサヌやら曲を提䟛するミュヌゞシャンずしおの出䌚いの日がくるわけもないのだから。








   ã„や、埅およ、ずレむは思った。ひず぀手はあった。自分でアむドルグルヌプを䜜っおしたえばいいのだ。









   ãã—お、その倧切な商品に手を出しおしたう敏腕スケベプロデュヌサヌずいう、お決たりのコヌスがあった。










   ã‚žã‚§ãƒƒãƒˆã‚³ãƒŒã‚¹ã‚¿ãƒŒã®ã‚ˆã†ã«çŒ›ã‚¹ãƒ”ヌドで突っ走るふたりの恋を誰も止められない。やがお劊嚠が発芚し、絵に描いたような転萜劇がはじたる。転萜するほど成功もしおいないだろうが。









   ã ãŒã€ã‚„っおやれないこずもないず思った。それはずもかくやはり、ラ・マルセむ゚ヌズも盞圓な人気があるようで、圓日刞はなかった。










   ãŠãªã‚ã‘で、るりちゃんずいう子の出埅ちをするこずにした。どうせ暇なのだ。









   ã™ã‚‹ãšã€çŸ¥ã£ãŸé¡”が芋えた。䞀緒のバスに乗っおいた金髪の女の子みたいな髪をした男子ずその圌女だ。











   å‡ºåŸ…ちする列の䞭に圌らがいるずはほんずうに意倖だった。いったい誰のファンなのか   ãªãœãŒãã®æ™‚、レむの頭の䞭でクセナキスが鳎りはじめた。











   ã—かし、出埅ちするや぀らがこんなにいるなんお、もう地䞋アむドルずかの域を完璧に超えおいるずしかレむには思えなかった。











   ã™ã‚‹ãšã€ãƒ©ãƒ»ãƒžãƒ«ã‚»ã‚€ã‚šãƒŒã‚ºãªã®ã‹å¯Ÿãƒãƒ³ã®ãƒãƒŒãƒ ã®ãƒ¡ãƒ³ãƒãƒŒãªã®ã‹ã‚ˆãã‚ã‹ã‚‰ãªã„が䜕人か出お来たずころで、ヲタクの小競り合いが起こり芋おいるず、そこから䞀人が飛び出しおきお、メンバヌに䜓圓たりしおいき、あっずいう間にあたりは隒然ずなった。












 レむは、ぶ぀かりオゞずいう生き物の存圚を知っおはいたが、芋たのははじめおだった。













   å€’れたメンバヌがいたこずを確認したが、あずはもう揉みくちゃになっおわけがわからなくなった。誰が抌したずいうこずではないが、みんな将棋倒しに倒れおいった。












   ãƒ¬ã‚€ã¯ã€ã“れず同じような堎面に出くわしたこずがあったこずを、たざたざず思い出したし、もっず最悪な殺傷沙汰ずなった事件をも思い起こしおしたった。













   ãã—お、今たさにレむの県前に珟前する出来事もそれだけでは終わらなかった。















   äž€å€©ã«ã‚ã‹ã«æŽ»ãæ›‡ã‚Šãšã„う衚珟があるが、たさにそんな感じでただ陜は高いのにあたりは䞀気に暗くなり、土砂降りの雚が降り出した。










   ã¿ã‚“な逃げ惑うようにしお、散り散りになり雚宿りできる堎所に移動したが、その䞭には『みよちゃん』や『ラ・マルセむ゚ヌズ』や、もうひず぀の察バンのメンバヌも混ざっおいたのだった。










   ãã—お、そこからがいよいよ地獄の始たりだった。











   ãƒã‚±ãƒ„をひっくり返したような土砂降りは、䞀向に衰えるこずなく叩き぀けるように降り続いおいたが、雚足がさらに匷たるかに思えたその埌、䞀気に雚は䞊がり嘘のように叢雲も消えお、青空が顔をのぞかせたその盎埌なんの前觊れもなく、それはやっおきた。










   ç›Žäž‹åž‹ãšã„うや぀だろうか、ドカンず䞀発䞋に萜ちたず思ったら、立っおいられないほどのハンパない暪揺れがきた。














🦀

   
   ã™ã‚‹ãšã€äž–界はすでに厩壊しはじめおいた。











   ãƒ¬ã‚€ã¯ã€ã©ã“かわけのわからない異䞖界に飛ばされたらしい。確かに芋知った自分が以前䜏んでいた近所に䌌おはいた。だが、それは単に䌌おいるに過ぎない。











 倧通りはぐんにゃりず曲がり、蛇行を繰り返しながら西の空の圌方ぞず䌞びおいる。たるでアスファルトの郚分だけ巚人の手によっお地面から匕き剥がされたようだった。倧きく波打っお曲がったアスファルトは、トンネルをいく぀も䜜り出し、そこから向いのひしゃげたビルが芋えおいた。











 レむは剥き出しの黒い地面を螏んでトンネルをくぐりぬけ、よく憶えおいる銬喰坂ばくろうざかずいう曲がりくねった急坂ぞず急いだ。だが、もうそのずきにはわかっおいた。元の䞖界には二床ずもう戻れないかもしれないず  。











   ãã‚Œã¯ã€ãšã‚‚かくおかしな事だが、レむはこの状況よりも、出埅ちしおいたラ・マルセむ゚ヌズのるりちゃんの事が心配で仕方ないのだった。










   ãŸã•か、暎挢に襲われたのはるりちゃんではないずは思っおいるが、䞀目だけでも顔を芋たいず思い、出埅ちしおいたわけだから、やけに埌ろ髪を匕かれるような気がした。












   ã“の異䞖界だか䞊行䞖界から抜けだせたら、必ずラ・マルセむ゚ヌズの珟堎に行こうずレむは心に決めた。











   ãã†æ±ºå¿ƒã—おしたうず、なにやら萜ち着いた穏やかな気分になったようだった。













   ãŸã ã€ãªãœã‹ã‚‹ã‚Šã¡ã‚ƒã‚“ずいう女性を自分は既に知っおいるのではないのかずふず思った。














   ç©ºã‚’芋䞊げるず、埮速床撮圱された映像のように凄い速床で雲が流れ、倪陜が䞭倩に達したかず思うず瞬く間に沈んで倜ずなり月が昇っお  ずいうそのサむクルの速床はみるみる増しおゆき、やがお昌ず倜を瞬きするように繰り返す、たったくもっおおめでたい䞖界の発狂した日ずいう感じがした。












 たしか八癟屋を過ぎたあたりから、だらだら坂がはじたるはずだった。












   ãšã„うのも、レむが飛ばされたこの堎所は、なぜかレむが以前䜏んでいた東京の䞭目黒の蟺りに酷䌌しおいたからだ。












   ã©ã®é€šã‚Šã‚‚やっぱり尺取虫の背のように波打った状態で固たっおいる。曎に始末の悪いこずには、こんにゃくのように柔らかいのだった。実際、道路はレむが足を螏み出す床にぶるぶるず震動した。














 遠くから爆匟が投䞋されたかのような重々しい音が響いおくる。少し間をおいおから地面が揺れ動き、通りの䞡偎の建物は地面のなかぞ沈み蟌んでいく。













 すぐ八癟屋の看板らしきものが目に入った。建物自䜓は殆ど土のなかにめり蟌んで埋もれ、そこから『八癟』ずたで読める看板が、斜めに突き出おいる。












 ミサむルが枋谷の街にでも撃ち蟌たれおいるのか、たたあの重い地鳎りのような音が錓膜を震わせるず、看板はゆっくりず地面に呑みこたれおゆく。













 その光景を目尻に捉えながらレむはスニカヌの靎底を道路に擊るようにしお進んでいく。道はすぐ先で二股に分かれ、䞀方は䞭目黒駅方面ぞず䌞びおゆき、もう䞀方は䞭目黒䞁目ぞず぀づく急坂、通称銬喰坂ずなっおいるはずだった。













   ã—かし、その急坂が応然ず消えおいた。驚いたレむは駆け出しおこんにゃく道路に足をずられ、たえのめりに倒れこんだ。そしお、我が目を疑った。急な䞊り坂であるはずの銬喰坂が、なんず逆に谷底ぞの急な䞋り坂ずなっおいる。どうやら䞭目黒䞁目党䜓が陥没しおいるようだった。














   ã™ã‚Šé‰¢çŠ¶ã«é™¥æ²¡ã—ãŸè°·åº•ã¯ã€ã¯ã£ãã‚ŠèŠ‹åˆ†ã‘ãŒã€ã‹ã¬ã»ã©é¥ã‹äž‹ã«éœžã‚“ã§ã„ã‚‹ã€‚ãƒ¬ã‚€ã¯ãã®å…‰æ™¯ã‚’è…¹é€™ã„ã®ãŸãŸèŠ—ãã“ã‚“ã§ã€ãžã£ãšã—ãŸã€‚














   ãã®ãƒ¬ã‚€ã®é¡”を谷底からの生枩かい颚がなぶっおゆく。地獄にたっすぐ䌞びおゆくかのような銬喰坂は、無気味な静けさを湛えながら今たさにレむの䟵入を埅ち受けお、たるでそれ自䜓が生き物のように鈍く冷たい光芒を攟っおいた。











   ãƒ¬ã‚€ã¯ã€ã‚³ãƒ–のように隆起したアスファルトに腰掛けお溜め息を぀いた。













   ã‚ã‘のわからないこの状況に軜く途方に暮れおいるのではなかった。自分のしょうもない女奜きで、DDの性分が情けなかった。












   ãƒ¬ã‚€ã¯ç”ŸãŸã‚ŒãŠã“のかたモテ期が来たためしはないのだから、女にだらしなく、二股䞉股は圓たり前のいけ奜かない奎なんお䞀床くらい誰かに蚀われおみたいものだったが、モテないからDDなのだず思いたくはなかった。














   ãƒŸã‚ºã‚­ã«é–¢ã—お補足するず、幌なじみであっおいちおう付き合っおいる぀もりでいたのは、レむだけで、有り䜓に蚀うず、可愛い幌なじみに悪い虫が぀かないように垞に目を光らせおいたオブザヌバヌずいうのが、レむの圹どころだったのかもしれない。













   ãã‚Œã«ã—おも、気が倚いのはいかがなものかずレむは自分でも、そう思ったりするのだが、そのお陰で生きおいられるようなものなのだから、仕方がない。














   ç‰©è²©ã®æ™‚にチラチラず芋ただけなので、断定は出来ないが、みよちゃんのミりも危ないのではないかずレむは感じおいた。目が虚ろなゞュネのように心ここに圚らずずいうずころたではいっおいないが、ダバい感じはしたのだった。















   ãƒ¬ã‚€ã¯ã€ãã®ã“ずもあっお、ラ・マルセむ゚ヌズのるりちゃんが心配なのだった。














   ã€ãŸã‚Šã€ã‚¢ã‚€ãƒ‰ãƒ«ç‹©ã‚Šã¯å§‹ãŸã£ãŠã„るのだ。アむドルを先ずワダにしおそのヲタクたちも腑抜けにし、自圚に操る぀もりではないか。














   ãƒ¬ã‚€ã¯èº«ã‚’起こし、ゆくっりずした足取りで銬喰坂をおりはじめる。しかし、なにかが倉だった。劙に足が重い。䞋り坂なのだから、ころばぬように螏ん匵りはしおもただ足を繰り出すだけでいい筈なのに、逆に坂を䞊っおいるかのような感芚に戞惑っおいた。












   è¶³èš±ã«ã“ろがっおいる石をひず぀拟い䞊げ、谷底めがけお投げ䞋ろしおみた。だが、小石は谷底に向け加速床的にスピヌドを増しながら萜䞋しおはいかず、ブレヌキがかかったようにスピヌドが緩んだかず思うず䞀瞬䞭空に停止した埌、なんず逆にこちらに飛び戻っお来たのだった。













 レむには、足蚱に再びころがった小石をもう䞀床投げ䞋ろしおみる勇気はなかった。













   ã©ã†ã‚„らずんでもないこずになりそうだった。それでもレむはこの蚳のわからない䞖界を支配しおいる力に抗いながら再び坂を䞋りはじめたが、ひず足ごずに増しおゆくその力を身䜓に感じ぀぀、倖郚からの䟵入の拒絶を意味しおいるかのようなこの力を䞍快ずは思わないばかりか、地の底ぞず降りおゆくには海底めざしお朜氎しおゆくダむバヌのように氎圧が増しおゆくのがあたりたえだず考えおいた。













 たさしくここは降りおゆくにしたがっお埐埐に光りは薄らいでゆき、物音ひず぀さえ聞こえおはこない海の底のようだった。あたりはたったく倉りばえのしない景色が぀づいおゆく。












   èŠ‹æž¡ã™é™ã‚Šãƒ“ãƒ«ã®å€’å£Šã—ãŸè·¡ãªã®ã‹ã€ç“Šç€«ã®å±±ãŒæ•£åœšã™ã‚‹ã°ã‹ã‚Šã§äººæ°—ã¯ãŸã£ãŸããªã„ã€‚













   äž‹ã‚Šå‹Ÿé…ãŒåŸåŸã«ç·©ã‚„かになっおゆくず遥か前方に瞊長の巚倧な岩岩が芋えはじめた。その灰色の岩の根元は霧にすっぜりず芆われ、頭の郚分だけが芋えおいるのだった。たず荘厳な眺めずいっおいい。













 レむはその眺望に気をずられ、暫し歩くこずを忘れるほどだった。が、やはり倉だった。さっきたでは芋えおいなかった岩が䞍意に地䞭からにょっきりず姿を珟わしたのだろうか。 












   äžŠã‹ã‚‰èŠ‹äž‹ã‚ã—ãŸãšãã«ã¯ãªãœãŸãŸèŠ‹ãˆãªã‹ã£ãŸã®ã‹ã€‚ã‚ã‚‹ã„ã¯èœƒæ°—æ¥Œã£ãŠã‚„ã€ãªã®ã ã‚ã†ã‹ã€‚ãã‚“ãªè€ƒãˆã«æ‰ã‚ã‚ŒãªãŒã‚‰é€²ã‚“ã§ã‚†ãã†ã¡ã«ãšã‚“ã§ã‚‚ãªã„å Žæ‰€ã«å‡ºãŠã—ãŸã£ãŸã€‚














   ã‚¢ã‚¹ãƒ•ァルトに導かれるたた歩いお来たが、ここに至っおレむは途方に暮れおしたった。県前の地面がぱっくりず割れ、切り立った断厖絶壁のように向こう岞ずこちらをたっぷた぀に切り裂いお行く手を阻んでいたからだ。













 矜が生えおでもいないず向こう岞にはずおも行けそうにない。それでも倧きく迂回すれば亀裂のないずころぞず出られるのではないのかず思ったが、巊右どちら偎を芋おも芋える範囲以内では溝は果おしなく぀づいおいる。













   ã ãŒã€å³åŽã«èµ°ã‚‹æºã¯ã€å€§ããæ›²ç·šã‚’描いお瓊瀫の山の向こう偎に消えおいた。そこでレむは右に進むこずにした。瓊瀫の山の向こう偎で溝が終わっおいるこずを祈りながら。












 ミサむルの盎撃を食らったのか、はたたた地震による倒壊なのか山をなす瓊瀫の塊は、だいぶ倧きなビルであったであろうこずを窺わせた。   













   ç •け散ったコンクリヌトが堆く積もり、その䞊にトッピングずしお錆びた鉄線やらワむダヌ、ぐんにゃりず折れ曲がった鉄筋などがぶちたけられおいた。











   ãƒ¬ã‚€ã¯ãã“を倧きく廻り蟌んでいったが、瓊瀫の山は延延ず぀づいおおり、仕方なく瓊瀫のなかぞず足を螏み入れ少しでも高みぞず登っおみたものの、地圢自䜓が萜ち窪んでいるためか溝党䜓を芋枡すこずは叶わなかった。











 ただただ芋えるものは陞続ず山を成す瓊瀫たた瓊瀫の玛うかたなき文明の墓堎、『廃墟』そのものだった。













   ã“の支離滅裂な倉化にレむの脳は思考停止を䜙儀なくされた。













   ãšã„うか、䜕も考えたくはなかった。善因善果。悪因悪果。歎然ずした因果関係はあるのかもしれないが、悲しいかな、レむにはなにもわからない。














   çªãè©°ã‚ãŠè€ƒãˆãŠã„ったら途方もないこずになりそうで、正気を保぀ためには思考停止がいちばんだった。















   ãã—お、レむは、快感を生む蚘憶ず音楜に身を委ねる。知らぬ間にみよちゃんの曲が頭の䞭でルヌプしおいた。














    ã¯ã˜ã‚ãŠãƒ›ãƒ³ãƒ¢ãƒŽã®ãƒŸã‚Šã‚’間近で芋た感激をレむは、決しお忘れないだろうず思った。












   ãƒŸã‚Šã®æœ¬æ¥ã®ã‚­ãƒ£ãƒ©ã‚’レむは知らないから、ちょっず元気がなさそうに芋えたのは、ただのはにかみで心が䟵食されかけおいるなどず考えるのは、杞憂に過ぎないのかもしれない。














   ãƒ¬ã‚€ã¯å†ã³åœ°é¢ã«é™ã‚Šç«‹ã¡æ­©ãã¯ã˜ã‚ã‚‹ã€‚














 巊に高くなったり䜎くなったり瓊瀫の山々が぀づいおゆく。右手にはただただ広挠ずした砂の䞖界が地の果おたで぀づくかのように広がっおいる。












   é¥ã‹åœŒæ–¹ã«æžŠã‚’巻きながら倩にたで䌞びおいる癜っぜい柱が、本、本、本互いに近付いたり離れたりしながら地平線に向かっお進んでゆくのが芋えた。













   ã“こにあるこれらの瓊瀫もあの竜巻が運んで来たのだずレむは思った。瓊瀫はひずずころに留たるこずなく氞遠にこの砂挠を旅し぀づけるのだ。











 長く緩やかなスロヌプを䞊りきるず、颚王が織り成す雄倧な砂の芞術が姿を珟わした。その䟵しがたい矎しさにレむは圧倒されその堎に立ち尜くした。











   
 ふず目を巊に転ずるず瓊瀫の山の切れ目からぱっくりず暗黒の口を開けた溝の切れ端が芋えおいた。












 そしお曎に芋晎らしの良い所ぞずでるず、その倧地の裂け目は狭たるこずなく地平線の圌方ぞず䌞びおいるのがはっきりず芋えたのだった。











 レむの印象に匷く残っおいる銬喰坂を求めおこんなずころたで来おしたったが、レむはもうどうでもいいずさえ思った。












   å†ã³ç ‚挠に向き盎り、颚王ず察峙する。綟なす砂のタペストリヌが県前に浮かび䞊がる。二条の静かに走るさざなみは、埐埐にクレッシェンドしおゆき倧きくうねる奔流ずなりながら抜いたり抜かれたりを繰り返し駆け巡り、ある時を境にぱっず袂を分っお倧きく孀を描き぀぀䞀気に遠くぞず離れおゆく。













   ãã†ã—お互いに小刻みにリズムを刻みながら気玛れにスタッカヌトを入れたり、䞍意にシンコペヌションを加えたり勝手気たたに螊りたくり、倧胆に身をくねらせながら仲間を増やしおゆき癜い波頭を震わせお怒激の劂く抌し寄せ、䞭倮で再びぶ぀かり合い飛沫を䞊げお砕け散る。












 そんなめくるめく砂の音笊を远っおゆくうちにレむの芖界の端をさっず䜕かが掠め過ぎた。












   ãƒ¬ã‚€ã¯äž¡æ‰‹ã‚’䜿っおカメラを構えおいるような仕皮をする。片目を瞑っおファむンダヌを芗きこみながら、ゆっくりずパンしおゆく。












   ......䜕もない。もう䞀床曎にゆっくり倩郚ず地郚に泚意しながら逆に振っおみる。


















    èŠ‹ã€ã‘ãŸïŒã€€















   ãã„぀はフレヌムの巊䞊から珟われた。䞭心に据え、ピントを合わせる。よくこんなものに気付いたものだず思った。










   




   è¿‘そうにも芋えるが、幟局にも折り重なった砂の山のずっず奥の方でちょこんず頭だけのぞかせ、䜕かそこだけ䞍自然な光りが取り巻いおいるように芋える。














   ãƒ¬ã‚€ã¯æ°—が急いたが、走っおしたうずもう二床ず芋぀からないような気がした。たっすぐにそれを芋据えながら颚王の織り成す雄倧なシンフォニヌをひず぀ひず぀切り厩しおいった。















 それは、忘れ去られた卒塔婆のように斜めに砂の襞に突き刺さっおいた。あるいは斜めに砂の襞から突き出しおいた。腐りかけたただの角材のようにも芋えた。






 





   æ›Žã«è¿‘づいおみるず殆ど消えかかっおはいたが䜕かの文字が曞き付けおあったらしい。














   ãƒ¬ã‚€ã¯å°éŠ–ã‚’å‚Ÿã’ã‚‹ã€‚ã©ã“ã‹ã§èŠ‹ãŸã“ãšãŒã‚ã‚‹ã‚ˆã†ãªâ€Šâ€Šã€‚













   ã™ã‚‹ãšã€äžæ„ã«æ‡ã‹ã—いずいう想いが雷のように胞を貫いた。デゞャ・ノがざわざわず突き䞊げおくる。















   もうもうず舞い䞊がる砂煙の向こうに枋谷の街がちかちかず瞬いおいる。足蚱には確かな感觊のアスファルト。














   ãã‚ŒãŒæ€¥å‹Ÿé…ã§äž‹ãžãšãŸã£ã™ãäŒžã³ãŠã„る。ここは銬喰坂に倖ならなかった。
















   ãƒ¬ã‚€ã¯äž€æ­©äž€æ­©éŠ¬å–°å‚ã‚’èžã¿ã—ã‚ãªãŒã‚‰ã€æ€¥å‚ã‚’ãŠã‚ŠãŠã‚†ãã€‚ã ãŒå®Ÿéš›ã¯ãŸã ç ‚ã«è¶³ã‚’ãšã‚‰ã‚Œã€ã“ã‚ã’ãŸã ã‘ã ã£ãŸã€‚














   èµ·ãäžŠãŒã‚Šã€å†ã³è§’柱に面ず向かうず確かに銬喰坂の名ず、その由来の曞き付けられた柱である気がした。














   ç«œå·»ã§ã“こたで運ばれおきたのだろうか。それずも銬喰坂自䜓が意志をもっお移動しおいるのだろうか。そうだずしたなら銬喰坂に再び巡り合えるのは砂挠のなかから䞀粒の砂金を芋぀けだすようなものだ。













 レむはこの『さたよえる銬喰坂』ずいうむメヌゞが気にいったが、あるいはこの䞖界党䜓が銬喰坂そのものなのかもしれないず考えもするのだった。次いで䞊っおも䞊っおも終わりのない銬喰坂を思い浮かべた。    















   ãã‚Œã¯ã€å‚の䞊から次から次ぞずベルトコンベアのようにアスファルトが繰り出されおくる。レむが歩調を早めるず繰り出されるアスファルトも速床を増し、いっかな前に進めない。












  
   ã‚るいは、䞊りしかない銬喰坂。
















   ãƒ¬ã‚€ãŒå‚を䞊りはじめるずずもに䞖界が反転しはじめ、坂を䞊り切る頃䞖界の反転は終了し結局坂の裏偎にレむは立っおいるこずになる。














   æŒ¯ã‚Šè¿”るレむの県前には再び䞊り坂が埅ち受けるばかりである。぀たり、レむが坂を䞊り出すや呚りの景色がこちら偎に倒れこんでくるように迫っおくる。














   å‚のはじめを点、終わりを点ずするず確かにレむは点から点ぞず移動するのだが、呚りの䞖界が反転しおしたうため、結局は点から点裏偎ぞず移動しただけずなる。
















   ãã—おレむは再び坂の裏偎を䞊りはじめるずいうわけだが、同じ䞀本の線でありながら、点を起点にする堎合ず点を起点する堎合ずで䞊り䞋りの別が生じおくる坂ずいうものが、今のレむにずっおはずおも面癜く思えた。















   å‚なのだからあたりたえの話しではあるのだけれど、この坂を単にノヌト䞊に匕っ匵った䞀本の線、点ず点を結ぶ䞀本の線ず考えるず、は䞊り坂であったのには䞋り坂ずなるずいうこずは、点ず点を結んだ䞀本の線は、ふた぀の異なる内容、あるいは条件を内包しおいるわけだ。













 同じものであるにもかかわらず、たったく異なるもの。鏡に映った自分の姿をレむは思い浮かべおみる。














   ãã‚Œã¯è‡ªåˆ†ã«é•いないが巊右が異なっおいる。自分に酷䌌しおはいるけれど、それはたったく異なる存圚なのだ。













   ãƒ¬ã‚€ã¯é¡ã®å‰ã«ç«‹ã¡ã€ïœïœ‚ずいう線を匕いおみる。その鏡に映るずいう線は、ずいう線が鏡に映ったものであり、鏡のなかの䞖界は自分たちの認識倖である想像を絶する䞖界なのであっお、たったくの裏の䞖界であるず思う。












   ãŸãšãˆã°ã€ã‚«ã‚¹ãƒˆãƒ­ã®ã‚ˆã†ãªé«­ã‚’生やした人物ずレむが面ず向かい合っお話をしおいる。













   ãã®ãšãã€ãƒ¬ã‚€ã«ãšã£ãŠã®å³åŽã¯ã€é«­ã®äººç‰©ã«ãšã£ãŠã¯å·ŠåŽãšãªã‚‹ã€‚なぜこのようなこずが起こるのか。同じひず぀の時間ず空間を共有しおいながら、右ず巊の差異が生じる。













 再びレむは鏡の前で点から点ぞずゆっくり曲線を描いおゆくず、鏡のなかでも曲線が同時にゆっくり䌞びおゆき最終的に曲線が点ぞず至るず鏡ずこちら偎ずで半円同士が亀わっおひず぀の円を圢䜜った。













 これは぀たり、この䞖界が異なる二぀のもので構成されおいるからではないか。そしおそれらたったく異なる二぀のものが結び合っお䞀぀のものを構成しおいるからではないか。それが即ちこの䞖界なのであっお、぀たり䞖界は線ではなく円なのだずレむは思った。














   ïœïœ‚ずい盎線は、ずいう盎線即ち、右ず巊が逆になるずいうこずは、䞖界が円であるずいうこずの蚌巊なのであっお、円には右も巊も存圚しないからである。それは、円ずいうものが、ずいう䞀本の線のみで描き切れるものだからなのだずレむは思った。













   ãƒ¬ã‚€ã¯ã„぀たでもいずおしそうに銬喰坂の卒塔婆のような棒杭  もずは角材のように角があったのだろうけれど、砂ず颚に削られ䞞みを垯びたのではないか  に、手を掛けたたたどこたでも぀づく砂挠の果おしなさのなかで途方に暮れるほかなかった。















   ãšã€ãã®åºƒæŒ ãŸã‚‹æ­»ã®äž–界の䞀角に䜕やら倉化が生じた。たるで間欠泉のように、砂䞊に氎が噎出しはじめた。巚倧な氎柱が幟本も立ち䞊がり、膚倧な氎が滝のように頭䞊から萜ちおくる。













 そしお、その氎のアヌチのなかを䜕者かがレむの方ぞず近づいおくる。 














   

  ãã‚Œã¯ã€ã²ãšã‚Šã®å°‘女だった。


















 少女は、クマのぬいぐるみをずるずるず匕きずりながら、こちらぞず近づいおくる。














 そしお少女は、いった。















「あなたが来るこずは、わかっおいたした」














   ãƒ¬ã‚€ã¯ã€é©šã„お目を瞠いた。













「ゞュネ   ã‚‚しかしおゞュネじゃないの」

















   ãƒ¬ã‚€ã¯ã€è‡ªåˆ†ã§ã‚‚よくわからないが、ゞュネの名前が咄嗟に口を぀いお出おきおしたったのだった。
















   ã™ã‚‹ãšã€ã‚¯ãƒžã®ã¬ã„ぐるみを持぀少女は蚀った。   
















「ゞュネ   ãã†ã€‚わたしです。わたしは、ここに幜閉されおいるんです」  





















   ã™ã‚‹ãšã€çªç„¶ã€ç›Žäž‹åž‹ãšã„うや぀だろうか、ドカンず䞀発䞋に萜ちたず思ったら、立っおいられないほどのハンパない暪揺れがきた。















   ãã—お、埌はもう、ただひたすら䞋ぞ䞋ぞず萜ちおいく感芚に囚われ、やがお胃がせり䞊がっおきお、胃の䞭の内容物が逆流し口から溢れ出すに任せるしかなかった。

















   ãã—お䜕も嘔吐するものがなくなっおしたっおも、ヌラみたいなものをレむは吐き続けた。
















   ãã®ãƒ•リヌフォヌルの萜ちおいくずいう䟋えようもない恐怖の䞭でレむは、䞀瞬だけ光を芋た。













   ã ãŒã€ãã®äž€çž¬ã¯æ°žé ãšã‚‚いえた。刹那は氞遠であり、氞遠は刹那でもある。
















   ãã—お、レむはたた芋た。倧通りはぐんにゃりず曲がり、蛇行を繰り返しながら西の空の圌方ぞず䌞びおいる。たるでアスファルトの郚分だけ巚人の手によっお地面から匕き剥がされたようだった。
















   å€§ããæ³¢æ‰“っお曲がったアスファルトは、トンネルをいく぀も䜜り出し、そこから向いのひしゃげたビルが芋えおいた。















   ãšã©ã®ã€ãŸã‚Šãƒ¬ã‚€ã¯ã€ãŸãŸæŒ¯ã‚Šå‡ºã—に戻っおきただけに過ぎなかった。
















   ã©ã“かにたた転送されるのかず思ったが、どうやら無限ルヌプ地獄にはたっおしたったようだ。いや、そうにちがいないずレむは感じた。















 レむは剥き出しの黒い地面を螏んでトンネルをくぐりぬけ、銬喰坂ぞず急いだ。















   ãã—お、前にも感じ取ったように、元の䞖界には二床ずもう戻れないのかもしれないずいう恐怖に襲われた。














   çˆºã•んになるたで、この銬喰坂のルヌプ地獄から抜け出せないのかもしれない。















   æˆ–いは、死ぬこずも出来ないたた、ひしゃげた道路から始たっお、ゞュネのアバタヌみたいな少女に䌚うたでの長い道皋ず、わけのわからない考察を、䜕千䞇回、䜕億䞇回ずルヌプし続けるのだ。




















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