クリシェ

トリヤマケイ

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メタモルフォーゼ

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◇京アニの事件をナオトは忘れられないんだけれど、あの痛ましい事件みたいに人命には関わらなかったけれども、ある爆弾事件を起こしたカズマという人物の話をナオトは知っている。





   その事件は、闇から闇へと葬り去られ世の中の人の耳目を集めることはついぞなかった。





   そのカズマなる人物は、若い男性というくらいしか情報はなかったが、彼がそもそもそんな大それた事件を起こしたその理由が、梶井基次郎の『檸檬』を読んだからだという。





   なので、一切の因果関係は『檸檬』にあるとし、弁護側はカズマの無罪を主張した。





   小菅に拘留中に、知人が面会した際に聞いたところによると、カズマはいま三島由紀夫の『金閣寺』を読んでいることがわかった。





   カズマは、やがて実刑判決を受けたが、特殊な能力を有し非常に危険な人物であることに鑑み、前代未聞の刑を言い渡された。





   裁判官は、カズマが三島由紀夫の『金閣寺』を読んでいることを知り、金閣寺がどうなってしまったかをむろん知っていた為、異例中の異例な刑となったらしい。





   しかし、それは、表向きには刑とも思われない軽いものだった。カズマの言い渡された判決は、執行猶予三年、保護観察の元、カフカの『変身』を読破することだった。






   やがて、カズマはこの世から姿を消した。






   カズマは、代官山の小洒落たオープンカフェで『変身』を読んだ。そして、読了されたであろう、カフカの『変身』の文庫本から、カサカサカサカサと這い出てきた、世にも怖ろしいGがいたといふ。








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