45 / 73
魔王編
ユタカとモンスター
しおりを挟む
ユタカがサッカーボールを蹴るようにして、なんだかわけのわからない化け物の頭を蹴りながら歩いていると、明らかにヒトの生首だと思われるモノの長い茶髪を鷲掴みにしてブンブン振り回している化け物がいた。
そいつは、全身が深緑で横に黒い縞模様が入っていた。シッポらしきものもあるようだ。どうやら生首でなにをするでもなく、子供が玩具で遊ぶように弄んでいるに過ぎないみたいだが、身体がそれほど大きくなく子どものようにも見える。だが、成体であるかも知れずとにかく油断はならない。
化け物はどこからでもよく見えるような、交差点の朽ちかけた美容院を背にして立っていた。なぜまた物陰に潜んでいずに、そんな見晴らしのいい場所に突っ立っているのだろうか。よほど自分の殺傷能力に自信があるのか、狩りの相手を油断させるためのポーズなのか、まったく緊張感ゆるゆるのおマヌケな化け物に見えた。
すると、もう車など走ることなどない雑草に半ば覆い尽くされている車道のずっと向こうの方から物凄い速さで何かがやってきた。ユタカは瞬時に悟った。
ズミぺコナフチャロフスカだ! ズミぺコナフチャロフスカに違いない。そいつは伝説の化け物で、やつの目を見たものは、必ずやズミぺコナフチャロフスカの性の下僕にされてしまうのだった。
ヤッベー!
マジ、ヤッベー!
ユタカはこの状況を心底楽しんでいるようだった。で、ユタカはそのとき、そうか! と思った。
わかったぞ、そうだったのか、美容院の前にアホ面下げて突っ立っているあの化け物は、妖怪ガタチナヨヴコンチャロフソナチナヴヨだ!
で、これからズミぺコナフチャロフスカと一騎打ちだ。竜虎相食むってやつだろうか、ユタカはこれから行われるであろう殺戮に武者震いした。
どっちが勝つんだろう。やっぱ伝説の化け物ズミぺコナフチャロフスカだろうか、はたまた伝説の妖怪ガタチナヨヴコンチャロフソナチナヴヨか。
どっちでもいいけど、どうしたんだ、殺戮は。まるで顔見知りみたいに立ち話ししたまま、それも談笑といった感じで、酸鼻をきわめたジェノサイドなんてどこへやら、和やかな雰囲気すら漂いはじめているではないか。
いい加減見るのにも飽き飽きしてきたユタカは、くそ面白くもないので、足許の生首をそれこそサッカーボールに見立てて、二十メートルのフリーキックを決める感じで思いきり化け物たちをねらって蹴り込んだ。いわゆるバナナシュートだ。
生首は、蹴られたことによって傷口が開いたのかドス黒い血飛沫を吹き上げながら美しい弧を描きながら化け物たちめがけて飛んでいき、見事に化け物おやじたちに命中してホールトマト缶の中身をぶちまけたように炸裂した。
いや、炸裂したのは生首だけではなかったようだ。それとわかる化け物の青い血が、ピューピューと四方八方へと飛び散っている。
みると、青い返り血を浴びながらガタチナヨヴコンチャロフソナチナヴヨのハゲ頭に鋭い牙を突き立てているのは、ズミぺコナフチャロフスカだった。やはり、談笑めかして話をしながら殺るタイミングをずっと計っていたのだ。
と、ズミぺコナフチャロフスカの視線がスーッと流れた。来る! と直感したユタカは、チノパンのポケットをまさぐって、チビたHBの鉛筆を取り出すと、躊躇することなく自分の右の鼻の穴に思い切り突き刺した。
凄まじい痛みと出血で意識が遠退きかけるのだけれど、激しい痛みがそれを許してくれず、結局ユタカは、怖いくらい激しくケイレンしはじめる。
やがてユタカは、ねらいどおりに変身を遂げていた。ズミぺコナフチャロフスカの天敵、ヌベナパベヌマメリシロヒトゥだ。
なにか少し既成のアニメキャラに似ているけれども、とんでもない。なんせ、ズミぺコナフチャロフスカをいとも簡単に葬り去ることも可能なほどの潜在能力を秘めているのだ。
ヌベナマメリシロヒトゥにメタモルフォーゼしたユタカは、こちらに向かってくるズミぺコナフチャロフスカを返り討ちにしてやろうと、てぐすねひいて待ち構えた。
しかし、さすがはズミぺコナフチャロフスカ、雲行きが怪しいとみると風見鶏のごとく戦術を変えてくる。そして、その百戦錬磨の最後の切り札である呪文を唱えた。
「キリキリクウ」
すると、どうだろう。ユタカの、いや、ヌベナパベヌマメリシロヒトゥの皮膚という皮膚がべロンと剥がれた。まるでイナバの白ウサギだ。そして、元のユタカの姿に戻ってしまった。
しかし、ユタカも負けてはいない。右の鼻の穴に突き刺さったままのチビたHBの鉛筆を抜き取るや、すぐさま右の耳に差し込み、そこをグーパンチで真横から思い切り叩いた。
HBの鉛筆は、完全に見えなくなり、血液がどっと耳からあふれだした。ユタカは、再び恐ろしいほどのケイレンに見舞われ、やがてアメーバみたいな見たこともない化け物に変身して、ズミぺコナフチャロフスカと刺し違えようとした。
意味のない無駄死にだけはしたくはなかったものの、結果そういうことになってしまった。ユタカは、ほんとうに己の浅知恵を呪った。
かくなるうえは、マジに……なんて思っているうちにも、早くもユタカの頭は、ズミぺコナフチャロフスカの毒牙に刺し貫かれるや、スイカみたいに真っ二つに割られて、脳漿をジュルジュルと吸われつづけていく。
ユタカは、意識が薄らいでゆくなかで自分がおっぱい星人などではなく、人類であったらよかったのになんてチラっと思った。人類ほど冷酷で残虐な生き物はいないからだ。
過去が走馬灯のように、脳裏を過ぎっていく。
おっぱい星人の父とヒトの母の間に生まれたユタカ。現在進行形の恋愛真っ只中だったのに……。若い身空でこの世とおさらばしなくてはならないなんて、あまりにも現実は、残酷すぎる。
というのが、気に入っているマイブームなシナリオだった。むろん、一気に殲滅できるのだが、やられて死んでゆくシチュエーションがたまらない。
ユタカには相手に幻想を見させるという能力があった。そのスキルを用いて、ホンモノ以上にホンモノのようにきっちり作り込まれた幻想の世界に、自分を存在させるのは容易なことだった。
そいつは、全身が深緑で横に黒い縞模様が入っていた。シッポらしきものもあるようだ。どうやら生首でなにをするでもなく、子供が玩具で遊ぶように弄んでいるに過ぎないみたいだが、身体がそれほど大きくなく子どものようにも見える。だが、成体であるかも知れずとにかく油断はならない。
化け物はどこからでもよく見えるような、交差点の朽ちかけた美容院を背にして立っていた。なぜまた物陰に潜んでいずに、そんな見晴らしのいい場所に突っ立っているのだろうか。よほど自分の殺傷能力に自信があるのか、狩りの相手を油断させるためのポーズなのか、まったく緊張感ゆるゆるのおマヌケな化け物に見えた。
すると、もう車など走ることなどない雑草に半ば覆い尽くされている車道のずっと向こうの方から物凄い速さで何かがやってきた。ユタカは瞬時に悟った。
ズミぺコナフチャロフスカだ! ズミぺコナフチャロフスカに違いない。そいつは伝説の化け物で、やつの目を見たものは、必ずやズミぺコナフチャロフスカの性の下僕にされてしまうのだった。
ヤッベー!
マジ、ヤッベー!
ユタカはこの状況を心底楽しんでいるようだった。で、ユタカはそのとき、そうか! と思った。
わかったぞ、そうだったのか、美容院の前にアホ面下げて突っ立っているあの化け物は、妖怪ガタチナヨヴコンチャロフソナチナヴヨだ!
で、これからズミぺコナフチャロフスカと一騎打ちだ。竜虎相食むってやつだろうか、ユタカはこれから行われるであろう殺戮に武者震いした。
どっちが勝つんだろう。やっぱ伝説の化け物ズミぺコナフチャロフスカだろうか、はたまた伝説の妖怪ガタチナヨヴコンチャロフソナチナヴヨか。
どっちでもいいけど、どうしたんだ、殺戮は。まるで顔見知りみたいに立ち話ししたまま、それも談笑といった感じで、酸鼻をきわめたジェノサイドなんてどこへやら、和やかな雰囲気すら漂いはじめているではないか。
いい加減見るのにも飽き飽きしてきたユタカは、くそ面白くもないので、足許の生首をそれこそサッカーボールに見立てて、二十メートルのフリーキックを決める感じで思いきり化け物たちをねらって蹴り込んだ。いわゆるバナナシュートだ。
生首は、蹴られたことによって傷口が開いたのかドス黒い血飛沫を吹き上げながら美しい弧を描きながら化け物たちめがけて飛んでいき、見事に化け物おやじたちに命中してホールトマト缶の中身をぶちまけたように炸裂した。
いや、炸裂したのは生首だけではなかったようだ。それとわかる化け物の青い血が、ピューピューと四方八方へと飛び散っている。
みると、青い返り血を浴びながらガタチナヨヴコンチャロフソナチナヴヨのハゲ頭に鋭い牙を突き立てているのは、ズミぺコナフチャロフスカだった。やはり、談笑めかして話をしながら殺るタイミングをずっと計っていたのだ。
と、ズミぺコナフチャロフスカの視線がスーッと流れた。来る! と直感したユタカは、チノパンのポケットをまさぐって、チビたHBの鉛筆を取り出すと、躊躇することなく自分の右の鼻の穴に思い切り突き刺した。
凄まじい痛みと出血で意識が遠退きかけるのだけれど、激しい痛みがそれを許してくれず、結局ユタカは、怖いくらい激しくケイレンしはじめる。
やがてユタカは、ねらいどおりに変身を遂げていた。ズミぺコナフチャロフスカの天敵、ヌベナパベヌマメリシロヒトゥだ。
なにか少し既成のアニメキャラに似ているけれども、とんでもない。なんせ、ズミぺコナフチャロフスカをいとも簡単に葬り去ることも可能なほどの潜在能力を秘めているのだ。
ヌベナマメリシロヒトゥにメタモルフォーゼしたユタカは、こちらに向かってくるズミぺコナフチャロフスカを返り討ちにしてやろうと、てぐすねひいて待ち構えた。
しかし、さすがはズミぺコナフチャロフスカ、雲行きが怪しいとみると風見鶏のごとく戦術を変えてくる。そして、その百戦錬磨の最後の切り札である呪文を唱えた。
「キリキリクウ」
すると、どうだろう。ユタカの、いや、ヌベナパベヌマメリシロヒトゥの皮膚という皮膚がべロンと剥がれた。まるでイナバの白ウサギだ。そして、元のユタカの姿に戻ってしまった。
しかし、ユタカも負けてはいない。右の鼻の穴に突き刺さったままのチビたHBの鉛筆を抜き取るや、すぐさま右の耳に差し込み、そこをグーパンチで真横から思い切り叩いた。
HBの鉛筆は、完全に見えなくなり、血液がどっと耳からあふれだした。ユタカは、再び恐ろしいほどのケイレンに見舞われ、やがてアメーバみたいな見たこともない化け物に変身して、ズミぺコナフチャロフスカと刺し違えようとした。
意味のない無駄死にだけはしたくはなかったものの、結果そういうことになってしまった。ユタカは、ほんとうに己の浅知恵を呪った。
かくなるうえは、マジに……なんて思っているうちにも、早くもユタカの頭は、ズミぺコナフチャロフスカの毒牙に刺し貫かれるや、スイカみたいに真っ二つに割られて、脳漿をジュルジュルと吸われつづけていく。
ユタカは、意識が薄らいでゆくなかで自分がおっぱい星人などではなく、人類であったらよかったのになんてチラっと思った。人類ほど冷酷で残虐な生き物はいないからだ。
過去が走馬灯のように、脳裏を過ぎっていく。
おっぱい星人の父とヒトの母の間に生まれたユタカ。現在進行形の恋愛真っ只中だったのに……。若い身空でこの世とおさらばしなくてはならないなんて、あまりにも現実は、残酷すぎる。
というのが、気に入っているマイブームなシナリオだった。むろん、一気に殲滅できるのだが、やられて死んでゆくシチュエーションがたまらない。
ユタカには相手に幻想を見させるという能力があった。そのスキルを用いて、ホンモノ以上にホンモノのようにきっちり作り込まれた幻想の世界に、自分を存在させるのは容易なことだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる