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第八章 真実は何処に
お向かいさん
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「それにしても、おじいさんが元騎士様だったなんて」
そう言って、老人の大きな荷物を左肩に引っ掛けながら。
ミリアは大通りを王城の方に向かい歩いていく。
横に並ぶように、白髭の老人――元剣士団長のエイベルが、小さな荷物を手に持ちながらこう言った。
「もう、十年以上前の話だがのう。あの頃は、大変じゃったが、充実はしておった。仕事帰りや休日は、良く若い連中と、やれ仕事の悩みだとか、やれ恋愛相談じゃと酒を酌み交わしたものよ」
懐かしそうに目を細める老人に。
ミリアはちょっとした興味本位で尋ねて言った。
「オルコット家とシールズ家の不仲は、ヘインズさんが団長だったころからあったんですか?」
「うん? お嬢さんは、オルコット家とシールズ家の不仲の噂を知っておるのか?」
目を丸くしてそう尋ねるヘインズに。
ミリアは頬をかきかき、苦笑気味にこう言った。
「知っているというか、巻き込まれたというか……」
そう言って、言葉をに濁すミリアに。
ヘインズは、ため息交じりにこう言った。
「あそこはの、団長のエダンと副団長のスタンリーは仲が良いのじゃが、奥さん方がプライドの塊でのう……二人とも顔は良いんじゃが、性格が何とも。エダンとスタンリーも昔から面食いじゃったから、二人とも自業自得と言えばそうなんじゃろうが。一応、わしは忠告したんじゃよ。『人は、顔じゃない。心が大事だ』とな。それが、結果あれじゃよ。全く……」
そう言って、大きなため息をひとつ吐くヘインズに、ミリアは乾いた笑いで相槌を打つと、苦笑しながらこう言った。
「ほんと、綺麗なのに勿体無いですよね」
イヴォンヌを思い浮かべながら、ミリアは、心の底から大きく頷く。
そんなミリアの受け答えがえらく気に入ったのか、ヘインズは、うんうんと、深く頷くと、更に話を続けてこう言った。
「特に、シールズ家のイヴォンヌと、その兄サイフォスの性格の悪さは目に余る。お嬢さんも、彼らには目を付けられないことじゃ。あの兄妹に目を付けられたら面倒くさい事この上ないからの」
そう言って、深いため息をひとつ吐くヘインズに。
ミリアは首を捻ってこう言った。
「サイフォスさん、ですか……」
そう言って眉間に皺を寄せ、考え込むミリアに。
ヘインズは、心配そうな顔でこう言った。
「なんじゃ、奴に目を付けられとるのか?」
「いえ、フェリクスさんは知っているのですが、サイフォスさんは知らないなぁと」
そう言って、ヘインズをじっと見つめるミリアに。
ヘインズは、少し悩まし気な顔でこう言った。
「フェリクスはシールズ家の次男坊じゃよ。サイフォスはの、現騎士団長エダン・シールズの長男でな。将来の王太子のお目付け役兼相棒になると目されていた男なんじゃが、状況が変わってのう」
「状況が、変わる?」
(それって、王太子のお目付け役兼相棒じゃなくなったってことだよね? どうしてそんなことになっちゃったんだろう)
そんなことをぼんやりと考えているミリアを前に。
ヘインズは、苦笑い気味にこう言った。
「まあ、詳しくは騎士の機密という奴で触れることは出来ないのじゃが。まあ、色々とあって、奴は王太子の目付兼相棒にはなれなかったのじゃ」
「それは……凄くショック、というか悔しいでしょうね」
「じゃろうな。そんなこともあって、未だ奴の、王太子の元相棒や王太子殿下への恨みは消えていないらしい」
そう言って、少し悲しそうに遠くを見るヘインズに。
ミリアは少しだけ話題を変えるためこう言った。
「あの、今……王太子殿下には、相棒に当たる人はいらっしゃるんですか」
「いないようじゃの。王太子が頑なに拒絶しているとも言われておるが、真実は分からんのう」
そう言って、少し険しい顔をするヘインズの横顔を見つめながら。
ミリアは、話が少し暗くなってしまったことを申し訳なく思ってこう言った。
「なんか、話を暗くしてしまったみたいで、ごめんなさい」
そんなミリアに、ヘインズは「気にするな」というように笑って見せると。
徐に足を止めてこう言った。
「おっと、話し込んでいたら家についておったわ。ありがとな、お嬢さん」
そう言って、家の鍵を開けるヘインズ。
そんなヘインズを待つ間、辺りを何気なく見回していると。
「あ……」
「ん? どうしたんじゃ?」
いつもの見慣れた景色に、ミリアは驚いたようにこう言った。
「ここ、ヘインズさんの前の家……私の家みたいです」
そう言って、恥ずかしそうに笑うミリアに。
ヘインズは、嬉しそうに目を細めると、豪快に笑ってこう言った。
「おお、そうか、そうか! ご近所さんじゃったのか。これからもよろしくな……と、ところで。お嬢さんの名前を聞いとらんかったのう」
そう言って、ミリアの顔をじっと見つめるヘインズに。
ミリアは笑顔で答えてこう言った。
「私は、ミリアです。ミリア・ヘイワーズと言います!」
「ミリアか。よろしくのう、ミリア」
こうして。
ミリアの王都での知り合いは、また一人、増えたのであった。
そう言って、老人の大きな荷物を左肩に引っ掛けながら。
ミリアは大通りを王城の方に向かい歩いていく。
横に並ぶように、白髭の老人――元剣士団長のエイベルが、小さな荷物を手に持ちながらこう言った。
「もう、十年以上前の話だがのう。あの頃は、大変じゃったが、充実はしておった。仕事帰りや休日は、良く若い連中と、やれ仕事の悩みだとか、やれ恋愛相談じゃと酒を酌み交わしたものよ」
懐かしそうに目を細める老人に。
ミリアはちょっとした興味本位で尋ねて言った。
「オルコット家とシールズ家の不仲は、ヘインズさんが団長だったころからあったんですか?」
「うん? お嬢さんは、オルコット家とシールズ家の不仲の噂を知っておるのか?」
目を丸くしてそう尋ねるヘインズに。
ミリアは頬をかきかき、苦笑気味にこう言った。
「知っているというか、巻き込まれたというか……」
そう言って、言葉をに濁すミリアに。
ヘインズは、ため息交じりにこう言った。
「あそこはの、団長のエダンと副団長のスタンリーは仲が良いのじゃが、奥さん方がプライドの塊でのう……二人とも顔は良いんじゃが、性格が何とも。エダンとスタンリーも昔から面食いじゃったから、二人とも自業自得と言えばそうなんじゃろうが。一応、わしは忠告したんじゃよ。『人は、顔じゃない。心が大事だ』とな。それが、結果あれじゃよ。全く……」
そう言って、大きなため息をひとつ吐くヘインズに、ミリアは乾いた笑いで相槌を打つと、苦笑しながらこう言った。
「ほんと、綺麗なのに勿体無いですよね」
イヴォンヌを思い浮かべながら、ミリアは、心の底から大きく頷く。
そんなミリアの受け答えがえらく気に入ったのか、ヘインズは、うんうんと、深く頷くと、更に話を続けてこう言った。
「特に、シールズ家のイヴォンヌと、その兄サイフォスの性格の悪さは目に余る。お嬢さんも、彼らには目を付けられないことじゃ。あの兄妹に目を付けられたら面倒くさい事この上ないからの」
そう言って、深いため息をひとつ吐くヘインズに。
ミリアは首を捻ってこう言った。
「サイフォスさん、ですか……」
そう言って眉間に皺を寄せ、考え込むミリアに。
ヘインズは、心配そうな顔でこう言った。
「なんじゃ、奴に目を付けられとるのか?」
「いえ、フェリクスさんは知っているのですが、サイフォスさんは知らないなぁと」
そう言って、ヘインズをじっと見つめるミリアに。
ヘインズは、少し悩まし気な顔でこう言った。
「フェリクスはシールズ家の次男坊じゃよ。サイフォスはの、現騎士団長エダン・シールズの長男でな。将来の王太子のお目付け役兼相棒になると目されていた男なんじゃが、状況が変わってのう」
「状況が、変わる?」
(それって、王太子のお目付け役兼相棒じゃなくなったってことだよね? どうしてそんなことになっちゃったんだろう)
そんなことをぼんやりと考えているミリアを前に。
ヘインズは、苦笑い気味にこう言った。
「まあ、詳しくは騎士の機密という奴で触れることは出来ないのじゃが。まあ、色々とあって、奴は王太子の目付兼相棒にはなれなかったのじゃ」
「それは……凄くショック、というか悔しいでしょうね」
「じゃろうな。そんなこともあって、未だ奴の、王太子の元相棒や王太子殿下への恨みは消えていないらしい」
そう言って、少し悲しそうに遠くを見るヘインズに。
ミリアは少しだけ話題を変えるためこう言った。
「あの、今……王太子殿下には、相棒に当たる人はいらっしゃるんですか」
「いないようじゃの。王太子が頑なに拒絶しているとも言われておるが、真実は分からんのう」
そう言って、少し険しい顔をするヘインズの横顔を見つめながら。
ミリアは、話が少し暗くなってしまったことを申し訳なく思ってこう言った。
「なんか、話を暗くしてしまったみたいで、ごめんなさい」
そんなミリアに、ヘインズは「気にするな」というように笑って見せると。
徐に足を止めてこう言った。
「おっと、話し込んでいたら家についておったわ。ありがとな、お嬢さん」
そう言って、家の鍵を開けるヘインズ。
そんなヘインズを待つ間、辺りを何気なく見回していると。
「あ……」
「ん? どうしたんじゃ?」
いつもの見慣れた景色に、ミリアは驚いたようにこう言った。
「ここ、ヘインズさんの前の家……私の家みたいです」
そう言って、恥ずかしそうに笑うミリアに。
ヘインズは、嬉しそうに目を細めると、豪快に笑ってこう言った。
「おお、そうか、そうか! ご近所さんじゃったのか。これからもよろしくな……と、ところで。お嬢さんの名前を聞いとらんかったのう」
そう言って、ミリアの顔をじっと見つめるヘインズに。
ミリアは笑顔で答えてこう言った。
「私は、ミリアです。ミリア・ヘイワーズと言います!」
「ミリアか。よろしくのう、ミリア」
こうして。
ミリアの王都での知り合いは、また一人、増えたのであった。
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