猛獣・災害なんのその! 平和な離島出の田舎娘は、危険な王都で土いじり&スローライフ! 新品種のジャガイモ(父・作)拡散します!

花邑 肴

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第八章 真実は何処に

氷の貴公子

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 オレンジ色の夕日が辺りをピンク色に染める頃。
 ミリアは家を出ると、酒場[狼と子羊亭]を目指し、王城から市場へと続く大通りをゆっくりと歩いていた。
 
 時折、空に浮かぶ紫色に染まった雲を眺めながら。
 ミリアは今日の話し合いに思いを馳せる。

(アイザックさんがアキさんに会わせたい人って、誰なんだろう)

 アイザックは、ガイと懇意にしていたと、アレンが言っていたのを思い出す。

(そう考えると、アイザックさんて、アキさんのこともガイさんから聞いて、よく知ってそうだよね。ということは、絵の上手いアキさんの為に、絵の先生を紹介してくれる……とか)

 そう考えてはみたものの。

「ちょっと、ガイさんの情報とは釣り合わないよね」

 アイザックが、ガイの情報と取引してまでもアキに会わせたいという人物である。
 もっと、アキにとって重要な人物に違いない。

 違いないとは思うのだが――。

(私の知ってる人の中に、アキさんにとって重要な人物って、全く心当たりがないんだよね……)

 そう首を捻って足を止めると。
 ミリアは、少し紺色がかって来た空を仰いだ。

「そう言えば、アキさん。青い絵の具、買いに来てたっけ。絵……売れたのかな」

 何をどうやって生活しているのか、全く分からないアキである。
 ミリアは少し心配になって、目の前にある市場に足を向けた。

「パスタとパスタソース、アキさんに差し入れしよう。一日三食、ちゃんと食べれてるかも怪しいし」

 そう呟くと、ミリアは、早速、市場へと急ぐのであった。



     ※     ※     ※



「あっ、もうだいぶ暗くなって来ちゃった。急がないと……」

 既に陽は落ち、王都の街灯が暗い夜道を照らし出す頃。

 パスタとパスタソースの瓶が入った紙袋を小脇に抱えながら、ミリアは市場の人混みを掻い潜り、酒場方面へ続く道へと向かっていた。

 と、その時――。

「あっ!」

 何か、大きくて硬いものと激しくぶつかり、ミリアは後ろに弾き飛ばされ、ドンと尻もちを付いてしまう。
 その衝撃で、瓶詰のソースや袋詰めのパスタが、袋から飛び出て、地面の上に投げ出されてしまった。

「あ――」

(ひ、拾わなきゃ)

 ミリアは、急いで臀部の砂を払うと、ばら撒いてしまった瓶詰のソースや乾燥パスタを拾い集める。
 そして、パスタとソースの瓶、全てを紙袋の中に収めたのを確認し、ミリアがふと顔を上げると。

 そこには――。

「おい、娘……」

 色素の薄い、癖のない金色の長い髪を後ろで縛った男が、不機嫌そうにミリアを見下ろしていた。
 嫌な予感に、ミリアはすぐに頭を下げると、そのままの姿勢でこう言う。

「す、すみません! 急いでいたもので……本当に、すみません!」 

 そう言って、何度も頭を下げるミリアを冷たい目で見遣ると。
 金色の髪の男は、眉間に深い皺を刻んでこう言った。

「お前のソースの瓶が私のソードベルトの飾りに当たって、飾りが傷が付いてしまった……どう埋め合わせしてくれるつもりだ?」
「え……」

 ミリアの脳裏に、[お金]の二文字が絶望的にぐるぐると回る。

「そ、それは……」

 そう言い淀み、顔を青くするミリアに。
 男は小ばかにしたように鼻を鳴らすと、表情の無い顔でこう言った。

「土下座しろ」
「は……」
「この場所で、私に土下座しろ。そうすれば許してやる」

 気が付けば、周りには人だかりが出来ており、皆、気の毒そうな顔でミリアを見つめている。
 
(こんな、みんなの前で土下座なんて……)

 余りの恥ずかしさに、ミリアは顔を赤くし、途方に暮れて立ち尽くしていた。
 だが、そんなミリアに、男は容赦なくこう言い放つ。

「もし、嫌だとうなら……服を脱げ」
「え」
「俺はどちらでも構わん」

 その男の命令に。

 人だかりの中の男どもが、口笛を吹き、ミリアに下卑た笑みを向ける。
 一方女たちは、やってられないというように、その場から姿を消していく。

「さて、どうする?」

 そう言って、薄ら笑う金髪の男を前に。

 ミリアは意を決すると、地面に這いつくばると頭を下げてこう言った。

「す、すみませんでした……」

 周りから、残念そうなそこかしこから声が上がる。

しかし――。

「残念だが、気が変わった」

 そう言うと、金髪の男は、ミリアの前に片膝を突くと、ミリアの顎を強引に上向かせると、冷酷な眼差しでこう言った。

「脱げ」
「え……」
「お前のしたことは、それだけでは足りないぐらいに罪深いものだ。その罪、お前の恥を晒して私に償え……」

 絶望に、目の前がぐるぐると回るミリアを冷酷な目で見遣ると。
 金髪の男は、そう言ってミリアの前に立ちはだかると、剣を抜いてミリアの喉元に突きつけてこう言った。

「脱げ」
「い、嫌です――!」 

 目に涙を溜め、そう叫ぶミリア。

 と、その時――。

「何やってるんだ、サイフォス。冷静なお前にしては、えらく感情的過ぎやしないか、おい」

 そう言って、金髪の男――サイフォスの剣を持つ腕をむんずと掴み、ミリアとサイフォスの間に割って入ったのは、斧士ふしのエース、アイザックなのであった。
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