猛獣・災害なんのその! 平和な離島出の田舎娘は、危険な王都で土いじり&スローライフ! 新品種のジャガイモ(父・作)拡散します!

花邑 肴

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第九章 不穏な予感

秘密の関係

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 王太子ユートから、衝撃の事実を知らされた次の日。

 ミリアは、ぼんやりと物思いにふけりながらも、農作物の収穫作業に精を出していた。
 いつもの如く、市場へと向かう最後のリアカーを見送り、ミリアは額の汗を手の甲で拭うと、ふと辺りを見回した。
 いつもなら、農場管理人のブーンが給与を片手に作業員たちを待ち構えているはずなのだが、そんなブーンの姿は、今日は見当たらなかった。

(ブーンさん、体調崩しちゃったのかな)

 そんなことをを思いながら、辺りをきょろきょろしていると。

「ミリアちゃん、給与はあの女の人から貰うみたいだよ」

 顔なじみになった作業員仲間がそう教えてくれて、ミリアは笑顔で彼に礼を言う。

「ありがとうございます」

 見ると、ミリアの視線の少し先に、小さな人だかりが出来ていた。
 真ん中には、女性らしき人の姿が見える。

 ミリアは、早速、給与を貰いにその場までゆっくりと歩いていく。

 そして、給与を配っている女性の側で待つこと数分。
 順番に給与が渡されていく中、最後の最後でミリアに給与袋が渡された。

「はい、ヘイワードさん。今日もありがとうございました」

 そう言って、長く艶やかな癖のない金色の髪を、すっきりと後ろで束ねたみどり色の瞳の女性は、ミリアに優しく微笑みかけるとそう言った。
 その、包み込むような優しい笑顔に、ミリアも思わず笑顔でこう言う。

「こちらの方こそ、ありがとうございます」

 そう言って、給与袋を受け取るミリアを、もの言いたげに眺めていた金髪碧眼の女性は、思い切ったような顔をしてこう尋ねてくる。

「あなたが、ミリアちゃん?」

 ファミリーネームではなく、ファーストネームで呼ばれたことに、ミリアは少し驚きつつも、金髪碧眼の女性に向かってこう言った。

「あ、はい。そうですけど……」

 そう言っておどおどと、不安そうに女性を見つめるミリアに。
 金髪碧眼の女性は、ホッとしたような顔をしてこう言った。

「やっぱり! ミリアちゃん、いつも弟がお世話になってます」

 そう言って、深々と頭を下げる金髪碧眼の女性に、ミリアは訳が分からずこう言う。

「あのー。えっと、弟さん……って、どなたでしょうか?」

 その問いに、金髪碧眼の女性はハッとしたような顔をすると、眉を八の字に寄せて、恥ずかしそうにこう言った。

「あ、ごめんなさい。申し遅れました。私はアイリス。アイリス・ボールドウィンと言います。弟は、シャインです。いつもお世話になっています」

 そう言って、改めて頭を下げる金髪碧眼の女性――アイリスを。
  ミリアは、まじまじと見つめながらこう言った。
 
「シャインさんのお姉さんですか……」

(サイフォスって人の幼馴染で、彼が思いを寄せている人……)

 そんなミリアの心の中を読んだかのように。
 アイリスは表情を暗くすると、申し訳なさそうに目を伏せてこう言った。

「それと……私の幼馴染のサイフォスが酷い事をしたみたいで……ごめんなさい。彼にはそれとなく釘を刺しておくから安心してね」
「あ、はい。ありがとうございます」

 アイリスの申し出に、ホッとした様なため息を吐き、心の底から感謝するミリアに。
 アイリスは、微笑を浮かべるものの。
 でも、何か言いたそうに眉を顰めると、意を決したようにミリアに向かってこう言った。

「あの……今、この王都に、ガイさんの弟さんがいらっしゃるって聞いたのだけど、本当なのかしら」

 思いつめたような表情かおで、そう問いかけて来るアイリスに。
 ミリアは、脳裏に疑問符を浮かべながらこう言った。

「あ、はい。アキさんのことですよね。アキさんなら、今王都に居ますよ」
「そう、ですか。良かった……」

 なぜか、安心したようにそう胸を撫で下ろすアイリスに。
 ミリアは思わずこう聞き返す。

「アキさんと、お知り合いなんですか」
「あ、いえ……。ガイさんとは、少し親しくさせて頂いていましたから。それで……」

 そう言って、眉を顰め俯くアイリスに。
 ミリアは合点がいったとばかりに頷いてこう言う。

「ガイさんからアキさんのこと、聞いていたんですね」
「はい。あの人の一番の気がかりでしたから……」

 そう言ったアイリスの言葉に疑問を覚え、ミリアは心の中で首を捻る。

([あの人]って、なんか距離感が凄い近い気がするんだけど……気のせいかな)

 そう、首を捻るミリアをよそに。
 アイリスは、ミリアの顔色を伺うように、控えめな口調でこう言った。

「あの……ガイさんの弟さんに、私も一度、会ってみたいのだけれど。やっぱり、迷惑よね?」

 そうミリアに尋ねるアイリスに。
 ミリアは困惑気味にこう言った。

「それは……一度、シャインさんに頼まれてみては」

(シャインさんとガイさんは元々友人同士だし、言ったらアキさんに会わせてくれそうな気がするけど。あ、でも……シャインさんはアキさんの居場所知らないか)

 そんなことを思いつつ、「うーん」と唸りながら腕組みをするミリアに。
 アイリスは、少し気まずそうにこう言った。 

「出来れば、あの子に気付かれないように会いたいんです」

 そう言って、悩ましく俯くアイリスに。
 ミリアは思わずこう尋ねてしまう。

「えっ? どうしてですか。ガイさんとシャインさんは友人だったって聞きましたけど……何か問題でも?」

 そう軽く探りを入れるミリアの言葉に、アイリスは別段気にした様子も無く、素直にこう言った。

「実は、私……シャインには黙ってガイさんと、その……付き合っていて」

 そう言って、頬を赤く染めて俯くアイリスに。
 ミリアは訳が分からず尋ねて言った。

「え……シャインさん、アイリスさんがガイさんと付き合うことを快く思っていなかったんですか」

(シャインさん……サイフォスさんは心底嫌いそうだったけど、ガイさんに関してはそんな感じ、少しもしなかったけどなぁ)

 そんなミリアの予想の斜め上を行くように。
 アイリスは、首を大きく横に振ると、少し顔を青白くさせてこう言った。

「サイフォスの……サイフォスに知られないために、身内にも付き合っていることを内緒にしていたんです。彼に知られたら、どんなことになるか……」

 そう言って、体を抱えるアイリスに。
 ミリアは気の毒そうにこう言った。

「そう、だったんですね」

 そう言って、視線を落とすミリアに。
 アイリスは、胸の前で両手を組むと、真剣な表情でこう言った。

「お願いです、ミリアさん。一度、ガイさんの弟さん……アキさんに会わせて頂けませんか」

 そう言って、懇願するアイリスの顔は、まるで、自分の弟のことを親身に思う本物の姉の様であった。
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